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今月読んだ本|2026-1|ひっぱられる読書


『成瀬は都を駆け抜ける』(宮島未奈 著 新潮社)

——私より先に最新刊まで読んでいました

2026年は成瀬で年が明けました。

前回帰省したとき、駅の書店の棚を父とながめていたら、平積みの成瀬がいました。おもしろいよ、読むか、読むか、いいね、じゃまず最初の、ん、とその場で〈天下〉を会計して渡しました。

それから数ヶ月、再び帰省すると、父は〈信じた道〉と〈都〉を自分で買っていました。私より先に最新刊まで読んでいました。

実家にあった父の〈都〉を借りて、元日から読書。元日から成瀬。これはさいこうの読み初め。

紅白を観ていた父が、成瀬出せばいいのに、と言っていました。宮島未奈さんの『婚活マエストロ』(文藝春秋)も私はおもしろく読んだのですが、娘としてはよけいな意味をつけてしまいそうで、それは口にせず、そうだね、出ればいいのにね成瀬、と応えてお酒を飲みました。

“そんな気負わずとも、生きてるだけでいいんだ”

p.23

『しんせかい』(山下澄人 著 新潮社)

——ここに詩が

はじまりは『65人のこどものはなし』(飛ぶ教室の本 光村図書出版)でした。そこに山下澄人さんがほんの数行寄せていた文を、私はその後しばらく何度も思い出しては笑い、思い出しては笑いしていました。

次は『おれに聞くの?』(平凡社)でした。質問者が著者に質問することを“星と星が話すようなもの” (p.39) とあらわしていました。ここに詩が。

そして『わたしハ強ク・歌ウ』(河出書房新社)。これがすごかった。どうすごかったかというと、まず時間がかかった。1月はこの本と格闘、格闘ではない、なんだろう、そばにいる、というか、寄り添う、はなんか違う、全然違う、読む、うん、読む。この本を読んでいる時間が長かった。ぐんぐんは読めない。全然読めない。今日はここまでとして、次の日にひらくと、きのうの流れを覚えていない。でも読み返さない。そうするのがいいと思った。とにかく次のページに進む。他の本を読むときもそれは影響した。読み返さない。今。今。読んでいる今。読みやすいか、読みにくいか、文が長いか、短いか、時制、人称、そういうのより、今。読む。今。

こうして文体もひっぱられ、私だけではなく私のスマホもすごくひっぱられ、〈わたしは〉と打つと〈わたしハ〉と予測変換されます。

あっ、『しんせかい』の話

『やわらかなレタス』(江國香織 著 文藝春秋)

——いちど目にしてしまったら、もうそれは

読む前に思い描いていたのは、スープに入っているくたっとしたレタスでした。箸で持ちあげた感じはくたっとしているけど、歯応えのある。それから、太陽の光が透けるほど薄くてなめらかな、絹のような葉っぱも浮かびました。

江國さんの〈やわらかなレタス〉は、そのどちらとも違いました。それがわかったのは、このエッセイ集のいちばん最後のページまで読んだあとです。

そこにたどり着くまでに、いろいろな食べ物が登場しました。鰻や、のり弁や、柑橘や。なかでも、そこでしばらく読むのが止まってしまったのが「ぷきっとした」と描写された食べ物です。

「ぷきっ」というオノマトペをいちど目にしてしまったら、もうそれは「ぷきっ」という音しかしないほどの接地っぷりです。せっちっぷり。私はその食べ物があまり得意ではないけれど、「ぷきっ」と音をさせて久しぶりに食べたい。でもほんの一口だけでいいです。

“ぷきっとしたあの脂身”

「『ぷりぷり』のこと」p.90

『ハッカーと画家』(Paul Graham 著 川合史朗 監訳 オーム社)

——あなたはどこにいますか

香山哲さんが紹介していたので読みました。
紙がしっとりしていて、それほど厚い本ではないのにずっしりと重さがありました。プログラマーによるWEB掲載記事をまとめた本でした。

プログラミングをしたことがなく、プログラミング言語というものもよく知らず、これは大変な本を読み始めてしまったと思いました。一章だけ、1ページだけ、いや、1行だけ読んで閉じてもいい、というようなことを香山さんはたしか言っていた、うん、言っていた言っていた、と自分に言い聞かせながら読みました。何度ももう閉じてしまおうと思いましたが、今理解できなくても、一度も接したことがないか、一度目にしたことがあるかのちがいは生まれる。せっかく今目の前にあるのだから、としがみつきました。

私が書くものを、人々は読みたいと思うだろうか。そんなことは人々でないとわからない。私は人々なのだろうか。私の中に、人々はいるのだろうか。いる気もするし、いない気もします。

とにかく書き続けること。今日も明日も、わたしハここにいます、と書き続けること。そして、あなたはどこにいますか、と聞き続けること。

“人々があなたに注意を払うのは、あなたがそこにいることに気づいたときじゃなく、あなたがまだそこにいることに気付いたときだ”

p.214

▶今読んでいる本

『ぼくはこうやって詩を書いてきた』(谷川俊太郎・ 山田馨 共著 ナナロク社)

ついに。


以前SNSに書いていた読書記録を、ここで静かに再開してみています。大きな音や映像が次々と流れ込むところから、すこしはなれて。

このページにたどり着いていただき、そしてここまでお読みいただきありがとうございました。

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