添えられていた小さなフォークで|2026/06/04 木|朝のノートのつづきの話
“ちびり、ちびりと食べながら、持ってきた文コ本を読んだ”
家ではあんなにすぐ消えてしまうのに、カフェでは長いあいだそこにある。
文字を追いながら、視界の隅にいつもある。
疲れたら、ふうと息をついて、その小さな皿に手を伸ばす。
作業のお供の甘いもの。
きのうは、バナナパウンドを。
パウンド型から取り出され、きちんとスライスされて、レジ横のガラスケースで待機していた。
これを、と注文して席につく。
しばらくして、エチオピア豆のコーヒーと一緒に、厚みのある皿に乗って運ばれてくる。
“ここ置いときますね”と、店内のレコードをしゃがみ込んで見ていた私に店員さんが声をかけてくれる。
席に戻り、その断面をしばし愛でる。
粉々しいざらついた壁から、くったりしたバナナが覗いている。
添えられていた小さなフォークで、小さく四角形を作りながら、ちびり、ちびりと進んでいく。
本を読んで、ちびり。
文字を書いて、ちびり。
途中でL字になって、それからI字になって、そこからは、少しずつ小さな四角形になって。
皿の上に何もなくなって、物語は少し先の場面に進んだ。
