RTA in Japan Summer 2022 非公式会場レポート

あなたは、RTA in Japanというイベントを知っているだろうか。夏と冬、だいたい年2回開かれる日本の奇祭だ。開催期間中、ビデオゲームをとにかく短時間でクリアしようとするやり込みプレイ、RTA(リアル・タイム・アタック)を、運営と参加者が24時間ぶっ通しで披露・配信する。単なるビデオゲームのファンミーティングと思うなかれ、開催による収益を全て国境なき医師団へと寄付するチャリティーイベントでもある。

もっとも、この説明を聞いて〈単なるファンミーティング〉と思う方が少数派だろう。ただひたすらビデオゲームをプレイするというだけでも、世間的に見れば相当な奇人変人だ。それがやる側も見る側も配信する側も一ヶ所に集まるのだから、そりゃあ想像も付かないお祭りと化するに決まっている。

元々はそんなヤバい人々を本当に一つの会場へと集めていたRTA in Japanだったが、コロナ禍の煽りを受け、この頃はオンラインオンリーでの開催が続いていた。だが、2022年夏、ついに2年半越しとなるオフライン開催が実現した。

この記事は、RTAが好き過ぎて盆の帰省を諦めた人間が綴る、歓喜の非公式会場レポートだ。今回協賛にNoteが入ったのでは○なで書くのが躊躇われこちらで書いている。

RTA in Japan Summer 2022

日時:2022年8月11日(木・祝)~2022年8月15日(月)
於 :Note Place(東京都渋谷区)

I はじめに──RTAって何?

冒頭でRTAとはなんぞやと紹介したが、これだけではどういうものなのか分からない人もいるだろう。そこで、RTAについて軽く説明しておきたい。そんなん知ってるよという人は次の章に飛んでもらって構わない。

ひと口にRTAとはいうが、実際のところ、見るRTAと走るRTAはだいぶ別物だと思う。より正確にいうと、純粋なビデオゲームのやり込みプレイであるRTAが土台としてまずあり、そこから配信エンタメとしてのRTAが派生している。

走るRTAはとてもシンプルだ。とにかく動画を残しながら短時間でビデオゲームを完走する。実際には、作品ごとにユニークなカテゴリが用意されていることもある。自分が面白いと思えば、勝手に独自カテゴリを提案してもいい。たとえば『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』には最速でパンを焼くカテゴリがある。こんなもん誰が走るんだよと思ってはいけない、その辺のマイナー作品が束になってかかっても敵わないくらい記録がアップロードされている(まさしく変人)

これらを取りまとめるサイトとしてはSpeedrun.comが有力。だいたいのビデオゲームにおいて、このサイトで一番になれば世界一とみなされる。もっとも、RTAはやや尖った遊び方なので、この作品でRTAを走るのは自分が世界初、というケースもままある(というかそっちの方が多い)。そういう場合はSpeedrun.comに作品が登録されていないので、動画サイトへ投稿するだけになるかもしれない。作品は登録されていてもカテゴリが無いという場合もある。昔、私はあるRPGの記録をSpeedrun.comに投稿しようとしたのだが、そのカテゴリは実は誰も走っていなかった(現在は諸事情により動画削除済み)。つまり、投稿したその瞬間、私は世界一になっ(てい)たのである。

また、作品によってはSpeedrun.com以外のサイトが〈RTA・のようなもの〉を集計しているケースも。たとえば、私はSpeedrun.comの『Google Minesweeper』タッチスクリーン(モバイル)・ハードモードカテゴリでかつてリーダーボードを握っていた、つまりランキング1位の記録を持っていたが、だからといって世界一『Minesweeper』が上手かったわけではない。むしろSpeedrun.comにある『Minesweeper』関係作の記録はやや水準が低い。実際には、Authoritative Minesweeperに掲載された記録や、有力なブラウザ版『Minesweeper』上の記録と競争していくことになる。もっとも、『Google Minesweeper』のタッチスクリーン版だけは他の『Minesweeper』と仕様が違い過ぎるので、独自記録ということになるだろうが。

こうしたRTA自体は、やっている本人からすれば、楽しい遊びだ。苦しくてやっている人はほとんどいない(たまにいる)。RTAプレイヤーが持つ真の悩みは、「走者=RTAプレイヤーが増えない!」。特に自分の好きな作品、自分の走っている作品のプレイヤーが増えてほしい。その打開策を兼ね、動画の再生回数を稼ぐため、RTAに実況や解説を付け、エンタメ性を向上させたものが現れた。こちらの方こそ、一般の人が思い浮かべるRTAかもしれない。

こうした種々のRTAが交わる地点として、複合RTAイベントがある。実は、日本でも毎週のようにオンラインRTAイベントが開催されている。大半はゲームジャンルやプレイ時間(走破時間)を定めてプレイヤーを募る。

RTA in Japanには、動画に施した工夫のあるなしやゲームジャンルにかかわらず、記録を投稿したことがあれば応募可能だ。ただ、結果的に走者自身がプレイしながらトークを展開したり、別に解説役を手配して自身のスキルを説明してもらうケースが圧倒的に多い。こうしたエンタメ性の成熟が、RTA in Japan、ひいてはRTAへの世間的関心を向上させたと言ってもいいだろう。

いずれにせよ、RTA in Japanは、おそらくは世界で2番目か3番目に大きいRTAイベントとしての地位を確立しつつある。そう聞くと、なんとなく、オフライン開催と聞いてワクワクしてこないだろうか。してくる……と思われるがどうだろうか? してきてほしい。してきたところで、RTA in Japan Summer 2022の会場レポートへと移っていきたい。

II 会場の風景

今回会場となったNote Placeは、渋谷区・青山近辺に位置する某ビルの2階にある。オープンしたのが2年前、まだ床に汚れすらないピカピカのイベントスペースだ。

入り口前にあった掲示。中央の女の子は通称RTAちゃん。
メイン会場の様子。参加者が映り込まないようにとのお達しにモザイクで対処したらほぼモザイクになってしまった……。ちなみに椅子の座面は固め。

プレイヤーが実際に走っているメイン会場のほか、チャリティーグッズを展開する無敵時間さんの物販所や休憩スペース、さらには走者の練習所まで完備。広い会場をありがとうNoteさん。

休憩スペースには国境なき医師団のアピールブースも。
これは……今回協賛に名前が無かったはずでは!?

以下では、ところどころ現地レポートを挟みながら今回のプレイを紹介しよう。会場で鑑賞したものは全て項目を立てている。オンラインで視聴したもの(作品名に★が付いているもの)についてはピックアップ式。物理的に全てのプレイを観れていないのでその点のみご留意を。

III 初日・8月11日

まず迷った。会場どこやねん。確かに立地自体は外苑前駅から徒歩5分くらいで非常にいいのだが、2階への入り口がどこか分からず詰みかける。入場RTA失敗。とはいえリカバリに抜かりは無い。そもそも、こういう事態を想定してかなり早くに外苑前まで到着していたのだ。ルート構築時におけるリスク管理はRTA基本のホ。覚えて帰ってほしい。ちなみに基本のキは「まず走る」。

諸々の手続きを済ませると、受付スタッフから何やら仰々しいマスクを受け取る。なんでも、N95なるガチガチの医療用マスクらしい。付け方が分からず、しばらくの間耳をキツめのゴムバンドで痛めつける羽目に。もしかしたら付け方指南なんかを掲示しておくだけで悩む人は減ったかもしれない。

ただ、こんなことでめげるような人がわざわざ会場へ来るはずもない。午前11時、開会1時間前の時点ではまだオーディエンスもまばらだったが、正午が近づくにつれどんどん人が増えていく。機器トラブルなどで開会自体は30分ほど遅れたが、その分席は埋まったのでどっこいどっこいかもしれない。オンラインの人はごめんなさい。

『地球防衛軍5』【DLC1&2 Any%】《PlayStation4》

──ここぉ! これ大事なんですけど、まずタワマンを壊すんですね。こうやって。タワマン民の住処をまず壊していく。これが大事。
──射線通すためにね(苦笑)。

開幕は『地球防衛軍5』(『EDF5』)。カテゴリのAny%というのは「何をやってもいいからとりあえずクリアしろ」くらいの意味で捉えておけば当座はOK。『EDF5』は難易度が設定できる作品なので、そのような場合普通は難易度ごとにカテゴリを作る。今回難易度で縛っていないのは、一部だけEasyではなくNormalで走った方が速いから。この辺り、既に意味を理解できない人がいるかもしれない。動画内で解説しているので、気になった人はチェック。

画面中央左で異様な存在感を放っている解説担当のすないぬ氏は『アーマード・コア』シリーズのRTAで有名なプレイヤー。実況・解説上手としても知られ、おそらくはその腕を見込まれる形でトップバッターを任されたのだろう。最近はイベント主催にも注力している。RTA in Japanのパブリックビューイング会場を借りていると知ったときは涙を禁じ得なかった。もっと宣伝した方がいいですよ……。

しかし場の盛り上げは確かに上手かった。お笑いで一番難しいのはトップバッターともいうが、確かにそのとおりで、場が全く温まっていない、なんなら見ている側が緊張している状況で喋り続けるというのは常人にできる業ではない。その辺り、「EDF!」コールを煽って場を解したすないぬ氏の判断はパーフェクトだったと思う。なんなら途中で歌い始めたし。

プレイの方もスタイリッシュで爽快感溢れるものだった。ラン(プレイ)のコンセプトは「簡単なモードをDLC(課金コンテンツ)の強武器で蹂躙する」なので、もうとにかく速い。画面外では敵が爆散し、画面内ではレーザーが躍る。よくもまあこんな絵映えするカテゴリを用意したもんだと感心してしまった。

中盤以降、すないぬ氏の軽快な口調がさらに乗ってきてからはオフライン鑑賞の良さが一気に噴き出てきた。トップバッターは難しい──会場の温度感とオンラインの温度感が一番違ったランで、そういう意味ではオフラインらしい体験を享受できたと言えるかもしれない。

なお最後にすないぬ氏からRTA in Japan落選組によるRTAイベントの告知があった。負け……じゃないよ。縁が無かっただけだよ。コメントの真意は動画最終盤でご確認を。

***

この辺りで会場のほぼ全員が買っていたRiJうちわが欲しくなり、物販スペースへ。なぜか『リングフィットアドベンチャー』のRTAで同接6桁を達成したえぬわたさんがいて、名刺をいただいてしまった。私も何か用意しておくべきだったかなあ……でも渡せる名刺が無いんだよなあ……。

『AKIBA'S TRIP2』【New Game - Easy】《PC》

──エッキンパツ※?;↑メイドノカティライコネンッテイウキャラクターガイルンデスケレドモォ、シンチョウガ168cmデシュミガオドッテミt、エ~オドッテミタドウガヲトウコウスルコトトコスプレスルコトデェ~、スキナタベモノハナットウデェ~、デキライナモノハホラー※↓、ホラーゲームナンデスケレドモォ、フジクラコノキャラ、すきンゴねえ~~~~~~!!!

すないぬ氏から「絶対に滑らない」とプレッシャーを掛けられる中現れた走者は、東京のど真ん中で愛を叫ぶタイプのオタクだった。

場が温まってきたところで大胆な茶番を仕込んでくるタイプの走者を続けるという配置は良策だろう。ある意味エンタメRTAのいいサンプルなので、RTA界隈に伝わる痛めのノリや茶番(小芝居)がどういうものなのか知る上では必見かもしれない。作品内のネタを拾った自作感溢れる看板、破ける服、突然の宣伝、愛すべきランだ。会場の微妙な空気とそこからのリカバリチャート(?)で生まれた笑いがこのRTAの全てを表しているだろう。あの、空気が一瞬固まってはすぐ緩みだす感覚、まさに笑いの真髄だと思うが、それを肌で感じた、これまたオフライン冥利に尽きる茶番だった。

プレイ自体はとても上手い。運にも恵まれ、走者的にも満足のいくRTA in Japanになったのではなかろうか。個人的にはとても好きな一本。

『Castlevania 白夜の協奏曲』【MAXIM ALL BOSSES】《WiiU VC》

──ここでさらに快速急行に乗ると、さらにまた上に戻ることができるので、階段を転がり上がっていきます。

これは傑作だった。『Castlevania』とは『悪魔城ドラキュラ』シリーズのこと。RTAに馴染み深い人であれば、『Castlevania』と耳にしただけで「ああ、よく分からないことになるだろうな」と勘付くだろう。RTAを見たことが無い初心者にとっても、やり込みプレイの醍醐味に触れられる良いプレイだと思う。15分と短いランなので、とにかく一回見てほしい。何が起きているかさっぱり理解できないだろう。

あまりにも展開がスピーディ過ぎ、テクニックや作品自体の解説がほとんど無いというストロングスタイルのRTAになってしまったが、これもご愛敬というもの。ガヤ担当のスタッフが喋ったとおり、「みんな知ってるから、いいでしょう(笑)」。説明されたからといって理解できるとは限らないし、『Castlevania』のRTAは『Castlevania』のRTAなので。

ちなみに、カテゴリの「MAXIM」は操作キャラクターに関する制限、「ALL BOSSES」は「全てのボスを倒す」というルール上の制限だ。こんなかんじで、作品独自のレギュレーションがあることも多い。

『Ori and the Blind Forest: Definitive Edition』【All Skills, No OOB/TA】《PC》

──16回リスポーンしてしまったということで、×1,000円分ね、寄付しようと思いますので、皆さんも見ながら寄付していただければと思います。

打って変わって真面目系RTA。オーストラリアのゲームスタジオが作ったアクションゲーム『Ori and the Blind Forest』(第1作)。海外の分類だと「プラットフォーム」というジャンルになる。『マリオ』などもこのジャンルになるが、この作品はどちらかというと『メトロイド』に近いだろう。カテゴリについては動画中でも解説されているが、端的にまとめると「インチキなし、普通にクリア」。

PvPのFPSやMoBAが流行している今こそ事情は変わりつつあるが、ひと昔前まで、日本は日本で作られたビデオゲームばかりプレイする国だった。アクションやRPG、特にPCでプレイするものについては今もその傾向が結構強い。RTAイベントでは、日本であまり知られていないこうしたゲームもかなり採用される。今まで知らなかった名作に出逢える、これも、RTAの楽しみだ。どうして、どうやって走者がこの手の作品に出逢ったのかは定かではないが、走りたいと思うくらいの熱意はよく伝わってくる。今作についていうと、個人的にコンセプトからデザイン、実装まで一貫性のある作品はかなり好みなので、強く印象に残っている。

前3本に比べると、作品それ自体が静謐な雰囲気をまとっている都合、地味だと思う人が出てくるかもしれない。ただ最後に解説されているとおり、実際には1フレーム技=(この場合は)1/60秒の隙間内に入力を間に合わせなければならないテクニックをバシバシと決めているとてつもないランであり、常人にはとても真似できないプレイだ。最後に「16回リスポーンした(やられて復活した)」と言っているが、これは圧倒的に少ない。やり直しの利かない一発勝負のイベントでこれだけのプレイが披露できるのは、普段からの練習と持ち前の胆力、その双方が揃っていたからだろう。素晴らしい走りだった。

『VVVVVV』【Glitchless 100% 2.3+】《PC》

──まず前半でミスが多すぎて、もうダメかと思ってたんですけど、後半なんとか……自我を取り戻しました。
──(笑)。

作品自体の出来映え、スピーディかつ正確無比なラン、話を聞く前にまず見てほしい一本だ。完全クリア目掛け颯爽と駆け抜けていくキャラクターとゴキゲンなBGMが絶妙にマッチしている。

『VVVVVV』も海外産のビデオゲーム。こちらはさらに制作規模が小さく、いわゆる「インディーズゲーム」に分類される。インディーズの作品は開発者の練ったコンセプトやゲームプレイが純度100%のまま固められることが多い。リッチではないかもしれないが、丁寧に作られた上質なビデオゲームに出逢える……こともある(大多数は……)

海外産インディーズゲームともなると、見ている側がその作品を知っていることの方が稀なので、『VVVVVV』くらい明らかに見せ場のある作品であっても躊躇いに似た困惑混じりの反応しか得られないこともある。その点今回のランでは解説が積極的に拍手を煽っており、集中して見るべきポイントをよく抑えられた。こういう細かな気遣いが行き届いているとありがたい。

なお、カテゴリの100%とはいわゆる「全クリ」のこと。これは様々な作品で使われるカテゴリ名なので、頭の片隅に留めておいて損は無い。

『SKYGUNNER』【Copain%】《PlayStation 2》

──いや~、本番だからってなんか想定外のことするのやめてほしい(苦笑)。

そもそもRTAというのはマイナーな遊び方なのだが、その中でも特に走者数の少ないゲームジャンルがいくつかある。その1つがシューティングゲーム。特に3Dシューティングは面構成が固定されておりタイムを短縮できる部分が少ないこと、タイムアタックよりもハイスコアを競うスコアアタックの文化が伝統的に強いこと、などがその背景にある。RTA in Japanにもなかなか登場してこない。近頃、スーパープレイ枠として難度の高いシューティングゲームがようやく採用され始めた。あとは東方Projectとかも走られている。

『SKYGUNNER』は極めて難度の高いシューティングゲームというわけではないが、3DシューティングをRTA in Japanで目にするのは珍しく、その意味で意義のあるプレイだった。ラン自体も高いレベルで安定しており、難所とされる3面のリカバリも丁寧だった。

PS2は、あまりにも大量の作品がリリースされたという事情や、ハードウェアがやや特殊という物理的な要因など、様々な要素が絡まった結果、なかなかソフトのアーカイブ化が進展していないゲーム機という側面を抱えている。触れる環境の限定されている名作シューティングがプレイされたことそれ自体、RTA in Japanの豊かさに貢献しているのではなかろうか。

どうでもいいが、個人的にはシンプルなキャラクターデザインについてずっと考えていた。ああいうデザインこそ、実はまとめるのが難しい。

***

初日はこの辺りで17時を回り、私用の関係で会場を後にした。まだまだ暑かったが、会場と駅はさほど離れていなかったので助かった。興奮の余韻で汗をかきやすかったので。ありがたいハコだ。

★『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』【Any%】《GC》

──オルディン地方そしてラネール地方は……解放する価値のある地方となっておりますので、雫集めをこなしていきます。

初日のオンライン視聴枠からは『ゼルダの伝説』シリーズから『トワイライトプリンセス』(『トワプリ』)を。3Dゼルダは最もRTAの研究が進んでいるゲームシリーズで、これまでのRTA in Japanでも多くの素晴らしいランが披露されてきた。他の作品の中に体験版として搭載された『ゼルダ』をクリアしてやろうという文字列だけでは全く理解できない試みすらレース形式で実施した実績がある。レース形式ということは、そのカテゴリを完走できる走者が複数人いた、ということだ。ますます理解できない。

今回『トワプリ』を走ったサンダーボルト氏も、以前『風のタクト』で凄まじいプレイを見せたことがある。そのときのクリア目安は1時間半だった。一方、『トワプリ』は3時間オーバーと、倍の時間がかかっている。これは、『トワプリ』が『風のタクト』の倍ボリューミーな作品だからだろうか。

答えはNOだ。時間差が付いている理由はいくつかあるが、そのうちの1つを述べると「『トワプリ』の最終ステージとなるハイラル城への不法侵入ルートが見つかっていないから」である。3Dゼルダに限らず3Dゲーム全般に言えることだが、基本的に壁抜けやバリア抜けといった技法はやろうと思えばできる。なんでもありのAny%カテゴリでは、こうした裏技を駆使してタイム短縮を狙うのが常道だ。ただ、なぜか『トワプリ』では、肝心要の最終ステージへ突入する手段が見つかっていない。『風のタクト』では発見に懸賞金が用意されたほどのバグ技がある。3DゼルダRTAの研究というのはそのレベルの話なのだが、『トワプリ』では上手くいっていないようだ。

とはいえ、『トワプリ』日本一、世界でも有数という走者の実力は本物。最序盤、緊張からか大がかりなグリッチ(バグ技)にこそ手間取ったが、そこから3時間、集中を切らさずに次々と大技を決めていく。時間がかかるからこそ、3DゼルダのRTAとしては「今からRTAを見てみたい!」という人にも分かりやすい仕上がりになっている。解説も充実した大満足の一本だ。

ちなみに、実は『トワプリ』こそ私のビデオゲーム観を決定づけた作品だったりする。コンセプトとモチーフを最後まで保ち続けたビジュアル面でのデザイン、舞台設定と親和的なゲームシステム、そしてオタクが好きそうなシナリオとタイトル回収。最高の作品かどうかは分からないが、ゼルダシリーズの中で埋没していい作品でないことは確かだ(どうでもいいけどリンクがゼルダを置き去りにするカットなんて劇物をエンディングに挟み込んだ人間は絶対にミドナ派)

IV 2日目・8月12日

★『ゾンビ式 英語力蘇生術 ENGLISH OF THE DEAD』【Any% - Hardest Settings/激しい設定】《DS》

──Hmm…もしかしたら英語イケるかもしれない(笑)。
──HAHAHA!
──もう二度とアメリカ語、勉強しないからな!

一体何を考えたら日本語ネイティブスピーカー向けの英語学習ソフトを英語ネイティブスピーカーがやることになるのだろうか。思考回路が読めないどころの騒ぎではないが、とにかく海外からオンラインで参戦した走者のラン。動画中紹介されているとおり、この他にももっと華のある作品で記録を持っている人なのだが……。まあインパクト(?)はある。

言語の壁は思ったよりも薄く、思ったよりも厚い。特に日常会話レベルだと混沌とした言語でコミュニケーションが成立してしまうケースもある。私自身、今作の舞台となっているヴェネツィアで、日本語と英語とイタリア語の混じった謎言語を口にしてしまった経験がある。驚いたことに、応対相手のホテルスタッフも3ヶ国語で混沌とした返しをしてきた。これがホスピタリティの本質かもしれない。

そんなことを考えながら、走者と解説のハートウォーミングなやり取りを耳にしていたら……走者の本当の敵が終盤明らかに。そっちか……。敵は身内か……。

こういうカジュアルなゲームのRTAは取り組みやすく、「今からRTAを始めてみたい!」という人にもおすすめだ。どんな作品だろうと、記録を録って投稿すればあなたもRTA走者になれる。ゆくゆくは、5万人の前でプレイを披露することになるかもしれない。

ちなみに、解説が説明しているとおり、この作品は『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド2』を土台とするビデオゲームだ。「数日後に『3』を走る人がいる」というそのひと言がまさか壮大な伏線だったとは、このとき気が付かなかった……。

***

2日目は出かけようとしたところでまさかの寝落ちが発生し、初日どころの騒ぎじゃないロスを叩きだしてしまう。RTA in Japan開催中は寝不足になりやすい。睡眠時間管理も大切だ。そういえば、世の中には休憩時間を組み込んでいるRTAなんてトンデモ代物も存在する。ぜひ調べてみてほしい。

『ポケモンレンジャー』【Any%】《DS》

──このゲームが発売された当初のキッズからはですね、下画面破壊ゲーだとよく言われております。

ポケモンは簡単だからRTAに向かないんじゃ……と思ったそこのあなた。勘違いが2つある。まず、簡単だからといってRTA映えしないわけではない。ぶっちゃけレース形式にすれば嫌でも映えるし、なんならやり込みの深さと研究の精度で観衆をぶっ飛ばす走者もかつていた

もう一つの勘違いは、「ポケモンシリーズにも難しめの作品/カテゴリはある」というもの。特に『星のカービィ』で知られるHAL研究所が開発に入っている場合、やや難度が上がってしまうケースも見られる。上でリンクを貼った『ポケモンスナップ』(初代)や、本作『ポケモンレンジャー』がそれに当たる。感覚としては、ギミックあるいは遊ばせ方のアイディアが先行しているタイプの作品だと難度やや高め。

『ポケモンレンジャー』は見た目以上に難しい作品なので、中古で買ってプレイしたら面食らうだろう。RTAともなればさらに厳しい戦いになる。よく画面を見てみると、ワイプ窓の方で走者が奇妙な持ち方をしていることに気が付くかもしれない。動画中でその解説をしている。そこまでするのか……。するのだ……。RTAはそこまで詰めてしまう遊び方なので。

こんな風に書くと尻込みしてしまう人もいるだろうが、心配しないでほしい。だいたいの場合、走者やチャート組みの専門家(なんてやってる風変わりな人間が実在するのだ……)に絡めば優しく手ほどきしてくれる。シリーズ作でも難易度の低いものから手を付けてみる択もあるだろう。難易度はRTAの本質ではない。さっき書いたとおりだ。『ポケモンレンジャー』なら最終作『光の軌跡』あたりは触りやすいので、興味を持ったら中古屋へGO。

『スーパーマリオブラザーズ』【Warpless】《FC》

──100人いたら100人当たります。普通はね。その100人にkosmicさんは入ってないです。

言うことは無い。とにかく見てくれ。最高のエンタメだ。

『スーパーマリオサンシャイン』【120 Shines】《GC》

──スピンジャンプを出したかった。
──言わなかったら今のは大丈夫だったのでは(爆笑)。
──スピンジャンプを出したかったんですが出ませんでした。

3Dゼルダは研究の進展著しいが、3Dマリオはとにかく層が厚い。そんなん人間のする動きじゃねえだろって操作が山のように出てくるわ出てくるわ、しかもそれで世界1,000位なんて言っているので頭が痛くなってくる。

Speedrun.comの統計データを見る限り、『サンシャイン』は他の3Dマリオ、たとえば『マリオ64』に比べるとその層は薄いのだが、いかんせん怪作『サンシャイン』。RTAを始めるにあたって必要な初期アクション練度はかなり高水準だ。幅跳びが使えない一方、ポンプを使った移動手段はストーリーを進めるごとに増えていくので、ルート構築も難しい。

今回のランは120 Shines、事実上の完全クリアということで、熟練の業をどこまでも堪能できる。基本的なRTAテクニックについては解説からフォローがあり、良心的なプログラム設計だ。長丁場なので、全体的な方針を先に示してもらえるともう少し見やすかったかもしれない。ただ、動画を見てもらえれば分かるとおり、華やかなプレイが続くので会場は相当盛り上がった。

解説と走者の掛け合いも魅力的だ。これほど長いRTAともなると、細かなミスはいくらでも出てくる。そのたびに解説がチクチク冷静に刺し、失敗を笑いへと変換していく。その割に、致命的なアクシデントに対する視線は優しい。

見どころはいくつもあるが、敢えて挙げるなら各所に散らばるアスレチックステージ。玄人を自称するあなたには、青コイン回収ルート、その構築の巧みさに注目してみてほしい。3DマリオRTAの恐ろしさが垣間見えるかもしれない。

***

長丁場だったこともあり、『サンシャイン』が終わる頃には日が沈みかけていた。この日はメイン会場出入り口付近で鑑賞していたのだが、『サンシャイン』中盤からやたら涼しくなってきており、クーラー負けしたかな、などと勝手に思っていた。

しかし、これは翌日日本列島を襲ったヤツの仕業だったのである。このとき静かに、私の計画は崩壊の兆しを見せていたのだった……。

V 3日目・8月13日

台 風 直 撃 。

いやまあ無理。午後2時だったか3時だったかそれくらいの時間は小止みだったんだが、宵の入りにはまた荒れ狂い始めたので、外に出なくて本当に良かった。

実際問題、ある走者はとんでもない足元の中会場まで到達しなければいけなかったらしい(逆にいうとそれでも走者はやって来る)。他にも飛行機が欠航になった走者やらなんやら色々いたようだ(それでも走者はやって来る)

楽しみにしていたプログラムも結構あったのだが、やむなく全面オンライン視聴に切り替えざるを得なかった。こんな形で全通失敗するとは……うぬぬ。

★『エストポリス伝記II』【Any% (JP)】《SFC》

──再現通りました。さあ後は4連戦切り抜けていくだけ。
  ……え? なんで「はかいのしょうどう」?
  …………えっなんでなんでなんでなんで、なんでなんでなんで?

データキャラがデータを捨てる瞬間って美しくないか?

台風が来たとなっては仕方ないが、背景のギャラリー数も少し寂しい状態で始まった3日目。しかし、お昼から始まったこのRTAはとんでもない代物だった。

SFCで発売されたいわゆるJ-RPGの中でも名作の呼び声高い『エストポリス伝記II』。普通にプレイすればウン時間かかる大作を、なんと3時間半でクリアしてしまうという。

その仕掛けは乱数の初期化とコントロール。ビデオゲームでは、運要素の導入など様々な場面で活用するため、ことあるごとに乱数を発生させている。この乱数が変動することで、敵の動きや攻撃のクリティカル発生などがランダムになる。逆にいうと、この乱数を完全に操ることができれば、ラスボスの未来すらこちらが確定させられてしまう。

普通、そんな真似は到底できないのだが、一部作品では乱数の初期化に関する仕様の穴を突くことで、非常に複雑な乱数発生メカニズムをコントロールできる……ことがある

『エストポリス伝記II』でもできるはできる。実際、走者が最序盤、ほとんど全くランダムエンカウントに遭遇せず、相手の攻撃はギリギリで、しかし確実に耐えているとすぐ気が付くだろう。ただ、乱数を完全に操るために必要な操作精度と複雑なチャートの構成能力は並大抵の努力で手に入るものではない。

信じられないことに、前半、走者は本当に森羅万象を手のうちに収めてしまう。ぜひ動画を見てみてほしい。ゲーム画面は普通だが、何一つ走者の意にそぐわない現象が勃発していない、という、最も奇妙で理解しがたい事態が発生している。完全に固定化された世界を動かすその姿は、さながら精密コンピュータだ。

しかし、コンピュータも徐々にエラーを出すようになる。後半、かつて誇った完璧さが陰りを見せてから、本当の『エストポリス伝記II』が始まる。そこからの怒涛のリカバリ、その場の対応力、そして、万一の場合を想定した事前調整、見事としか言いようが無い。

人間がやるビデオゲームのやり込みとはなんなのか考えさせる、素晴らしいプレイだった。個人的には今イベントでも五指に入るラン。必見。

★『アンシャントロマン ~Power of Dark Side~』【Any% - All Glitches】《PlayStation》

──こういうので思い出すのは……戦闘中に自分の体力が1桁カットされる『星をみるひと』……を、思い出すんですよね。やっぱね~、親和性あるんじゃないかな、そこら辺な。うん。
──(爆笑)。
──『FF7』を参考にしたという風にさっきお話ししましたけど、実は『FF8』を先取りした要素もあったのかもしれない。ひょっとしたらな。
──(爆笑)。

『エストポリス伝記II』の感動的なエンディングが余韻を残す中、ネクストアップに表示されたビデオゲームは『アンシャントロマン』。嘘やろ?

いや、スケジュールを見たときからこれどうなるんだと思っていたのだが、実際に次がこれという状況に陥ってみると混乱しか無い。落差で頭がどうにかなってしまいそうだ。

『アンシャントロマン』というタイトルは知らない人も多いだろう。だが、まさに動画のサムネイルになっているこのシーンはどうだろう。どこかで目にしたことのある人も多いのではなかろうか。押しも押されもせぬ歴史的クソゲー迷作だ。

世に出回るクソゲー迷作には何タイプかあり、この後に走られた『たけしの挑戦状』のように挑戦的な要素を詰め込み過ぎた結果まとめきれなかったと察せられる部分があるものもあれば、論ずるポイントすら無い虚無の塊もあり、さらに明らかに開発力不足としか言いようの無い作品も存在する。『アンシャントロマン』がどのタイプに該当するかは動画が始まって数分で分かるだろう。

しかしこの迷作が放つ異様な雰囲気はなんだろう。どんなに理不尽な仕様や実装であっても一瞬真顔になった後笑ってしまう。これも緊張と弛緩というやつか。であれば現地で見たかった……。無念。走者の喋りも流暢だっただけに。

VI 4日目・8月14日

★『最後の忍道』【Normal(基盤)】《Arcade》

──ちょっと待ってなんかいるなんかいるなんかいるなん何何何何君っ君は誰!? っぉん?

RTA in Japanは深夜に怪物が潜む。ここまで披露されてきた作品はどれも家庭用ゲーム機かパソコンでプレイするものだった。過去にはブラウザゲームなども走られたことがある。だがもう一つ、ビデオゲーム文化に欠かせないメディアがあるではないか。そう、ゲームセンターに置かれているアーケードゲームだ。

信じられないことに、なんと古いアーケードゲームの基盤を入手し、これをなんとか画面につなげパソコンにも接続、その上でRTAを走ろうとするとんでもない奇人行動力の塊がこの世にはいる。しかも複数人いるのである。

アーケードゲーム枠はRTA in Japan運営が意図的に確保していると思われ、実際直近数回の大規模開催ではいずれも1作以上のアーケードゲームが登場している。今回その枠をつかみ取ったのは『最後の忍道』。家庭用ゲーム機版があり、さらに近年バーチャルコンソールとして最新機種でもリリースされているにもかかわらずなぜオリジナルのアーケード版で走ろうとしたのか。理由は走者のみぞ知る。

特にアーケード版はWikipediaに記述があるくらいの高難度ゲーであり、Normalだろうとなんだろうととにかく死ぬ。しかも不自然な挙動が随所に見られ、そもそものクリア自体に相当のハードルがある。

逆にいうと、腕に自信があるのであればRTA向きのタイトルだ。一発通しのイベントだったが、それを感じさせない安定したランを見せてくれる。注目は5面。溢れんばかりに押し寄せて来る敵の群れを掻き分け、颯爽と突破していく姿は必見。そしてたどり着いたボスセクション、そこにいたのは……。

古のゲームというだけで敬遠しないでほしい。むしろRTA in Japanは、RTAイベントは、知られていないゲームの知らない走りにこそ面白さが詰まっている。

***

台風一過、じっとりとした陽気が戻ってきた4日目。この日も見たいものが多かった。気象条件もばっちり、今度こそ早起きチャートを成功させて、外苑前に乗り込む。昨日の今日で、しかも午前中。人の入りは心配だったが、果たして……?

『スーパーマリオブラザーズ3』【100%】《NES》

──そしてここでPメータを維持する謎の儀式が始まります。さあそして入って、ちょっとでもPダッシュをする、と。もうほんと、0コンマ数秒の時間を稼いでいきます。
──今すっごい緊張しました。
──(爆笑)。まあね、あそこまで前振りして失敗したらなかなか悲しいものがありますからね。

はい、ご覧のとおりの満席。画面外にも座る場所はほとんど無かった。2Dマリオはとにかく人を呼び込む。個人的な感覚だけれども、任天堂の有名タイトルは人の入りがいいだけでなく、女性オーディエンスの割合も増える。カップル来場もそこそこいた印象だ。

『スーパーマリオブラザーズ3』(『SMB3』)はとにかくスピーディな作品で、100%カテゴリでも1時間とちょっとで終わってしまう。眺めている分にはなかなか楽しいタイトルなのだが、オフライン開催だとちょっと困りもの。展開の速さと、詰められ過ぎて何が凄いのか分からなくなっている走者の技術とが噛み合わさり、拍手するタイミングを見失いがちなのだ……。動画序盤、観客の反応が薄いのは、RTAに慣れていない層の人が見に来ているという事情と、『SMB3』RTAのゲーム性に遠因がある。

そのあたり、解説の軽快なトークがありがたかった。走者への振り、観客への煽り、実にいいタイミングで挟み込んできてくれる。知識量も豊富でウィットも利き、聞いているだけで楽しくなるコメンタリーだった(若干畜生ポイントを貯めていく場面もあったのだが格ゲープレイヤーと聞いて膝を打った)

相当の実力者が走っているだけあり、プレイの精度は相当に高い。それはそれとして運に見放される瞬間もあり、見どころだらけのランだった。ちなみに、NESとは非常に大雑把にいうと海外版FCのこと。この辺りは説明すると長くなるので適当に検索してみてほしい。

『Yooka-Laylee』【Any% w/Flight】《Switch》

──あれ? 行かないなあ……今日固いな。
──固いですね、ちょっと。
──いつもはするっと抜けられるのですが……あれ? だいぶちょっと……あっ抜けられました。カジノ側もちょっと対策してるかもしれないですねこれ。

『SMB3』がお昼前にあったのが不運というべきか客層が違い過ぎるというべきか、お昼ご飯抜けのオーディエンスが大量にいる中で始まったのがこちら『Yooka-Laylee』。『バンジョーとカズーイの大冒険』(『バンカズ』)で知られるレア社のスタッフが独立して開発した3Dアクションゲームだ。そのせいか随所に『バンカズ』のエッセンスが見られる。

というか一応分類的にはインディーズゲームになるのだが、これをインディーズゲームといっていいのか……? 画面はとてもリッチだ。その割に、ステージ名の日本語はなんというか……ちょっと間の抜けたフォント。開発もローカライズ担当も日本語フォントのアセットを持っていなかったのだろうか。微妙にちぐはぐというか……う~ん、なんだろうこの感覚は。妙にインディーズらしい雰囲気もあるというか。ちぐはぐ。うん、これだ。

プレイ内容自体は問答無用の壁抜けパラダイス。どういう理屈なのかは把握しきれなかったが、特定の手順を踏むとかなり簡単に壁の向こうへと突入できるようだ。手間取っているシーンの方が少ないので、よほど簡単なのか。

そう思っていたら、プレイ終了後、ある観客2人組が「なんとなく分かったわ」と談笑しているところに出くわした。青年よ、やれるかもしれないと思った瞬間がやりどきだぞ。今すぐ『Yooka-Laylee』を買って走るんだ。今日から君も、RTAプレイヤー。

『ツヴァイ!!』【Any%】《PC》

──今まで手に入れた宝玉を6つ全て捧げることが鍵になってきます。ということで今から6つ捧げていきましょう。
──カッコいい柱が出てきて、そこにこう……収められる、ということですね。まあちょっとね、出どころの怪しい宝玉が1個ありますけども(笑)。大丈夫なのかな(笑)。
──そうですね。1個なんかどっかから湧いてきましたよね。

日曜昼下がりの不運を被ったタイトル2本目がこちら(実は私もお昼休憩を取っていたりいなかったり)。日本ファルコムがWindows向けに作ったJ-RPG『ツヴァイ!!』だ。

RTA in Japanを見続けている人にとってはお馴染みのBGMが次々流れてくる。その昔、準備画面のBGMに日本ファルコム製の音楽が使われていたことがあった。ちなみに今はSony Musicが運営するLo-Fiストリーミングチャンネル、Sakura Chill Beats / サクラチルビーツから提供を受けている。イカしたLo-Fiミュージックが日曜日の午後に良く似合う。

ラン自体は大技も決め、走者自身の個人的な目標タイムも超え、と、なかなか順調なプレイだった。見下ろし型のRPGも今日日なかなか目にしない、というか、お金を掛けて作るビデオゲーム(いわゆるAAAタイトル)でそういうタイプの作品はまず無いので、コアなビデオゲームファン以外触れる機会はあまり無いかもしれない。イラストのテイストも含め、懐かしい気分に浸らせてもらった。そういう意味でもゴキゲンでゆるっとしたサンデーアフターヌーンにぴったりの作品だったかもしれない。

この作品は最初にペットを選ぶのだが、これを今回は寄付額投票で決めている。寄付額投票というのは、オーディエンスに対し各候補への寄付を募り、その額が最も多かった選択肢を走者が採用する、というシステムだ。昔はTwitterのアンケート機能を使って視聴者参加型のプログラムを組んでいたのだが、今はチャリティー的な要素をここにも導入している。皆さんもどしどし寄付を。

『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威Ⅴ』【Any%】《PSP》

──数の暴力なんですね、戦いっていうのはね。

柔らかい上方言葉でなんてこと言うの……?

本作は『機動戦士ガンダム』の舞台設定を利用した本格SLG。いくつかのストーリー(ルート)が用意されており、それぞれの目標を達成すべく部隊を進めていくことになる。

しかしこの走者、なんとどのルートを走るのかという選択を寄付額投票に掛けてしまったのだ。つまり、直前まで自分がどの物語を進めることになるのか分からない状態で本番を迎えたのである。なんという豪胆……。

そんな訳の分からないことをするプレイヤーだけあり、操作速度は爆速。一方喋りは、聞いている側が心地よくなってくるくらいソフトな西の言葉。画面の忙しさと喋りの緩急差で風邪を引きそうになる。

しかも次第にやっていることが過激になってくる。落ち着いた語り口でコロニー落としやらレーザーやらどんどん説明していくので逆に笑ってしまう。そんな調子で(昔協賛に入っていた某飲料のコピーに掛けて)寄付の呼びかけをするものだから軽く思想めいたブラックジョークが飛んでくる。西の人の皮肉は鋭い。いやあ、参った。寄付をしたので許してほしい。

***

4日目はこの辺りでお暇させていただいた。というのも、夜に注目のオンライン参加プログラムがあり、それを知り合いと音声通話しながら見ようと画策していたので、その準備が必要だったのだ。しかし、そのお目当てのプログラム前にもう1人怪物が現れるとは、外苑前駅でちっとも思っていなかったのである。

★『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド3』【二丁拳銃 Very Easy】《PlayStation 3》

──今回ちょっと、かぃ、解説……をさせ、してもらう友達がいな……用意していないので、まあ喋ることはちょっと、手元にあるスマホで台本を読んで、自分で解説をしていきながらプレイしていきますので……。

夜も深まってきた頃、“本物”が突然現れた。タイトルは『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド3』。レールシューティングと呼ばれる、定められた道筋に沿って敵を倒していくスタイルのシューティングゲームに含まれる有名作だ。

だが、カテゴリ名が不穏だ。二丁、拳銃……? 見れば、Wiiリモコンによく似たPlayStation用コントローラ、PS Moveをなんと左右両方に握っているではないか。当たり前の話だが、このゲームはソロプレイなら握るリモコンは1本のはずだ。つまりこの走者、2人用モードを二丁拳銃でソロプレイしようというのであるク、クレイジー……。

2人用モードを走るのが1人なら喋るのも1人。友達がいな……用意できなかったのでは仕方がない。喋りのトレーニングには時間を割いていないのだろうな、と察せられるトークではあるが、画面の方はどうだ。孤独だけが人を強くする。困難を潜り抜ける中で培われたスキルが存分に発揮されている。話しながらのプレイとは思えない精度で敵が爆散していくではないか。なんとこの走者、連射コンと呼ばれる勝手に連射してくれるツールを使って打ち立てられた記録を人力で抜いてしまったという。アンビリーバブル。一体この人はどこへ向かっているんだ……。

向かう先は孤独か栄光か、そんなものは全くうかがい知れないが、ルーツだけは垣間見えた。とてつもないランの終わり、走者は次々と、ゲーム開発企業に新作を呼び掛けていく。そう、このプレイヤーは生粋のシューティングゲーマーなのだ。RTA in Japanとは元々、愛ある走者のお祭りではなかったか。深く静かな衝撃が私の身を襲っていた。

★『スーパーマリオオデッセイ』【Any%】《Switch》

──結論から言いますと、Switch内の時計があの一瞬の間に1時間進みました。その1時間進めるために、Switch内に搭載されたある機能を利用していました。それがサマータイム制度です。この瞬間を利用して、1時59分に種を植えて、戻ってくるまでの20秒の間に3時を迎えておく、と。このようにすることで、Switch君は「あ、1時間経過したんだ」と勘違いして、種が爆速で成長すると。

強烈な前菜をいただき、もう満腹と思っていたのだが、どうだ、メインディッシュもとんでもない仕上がりだった。3Dマリオの最新作にして決定版、『スーパーマリオオデッセイ』の登場だ。本作のAny%カテゴリにおける1時間切りはRTA走者の勲章であり、1つの極みと目されている。走者は、開催時点で日本人にたった2人しかいないサブ1hの達成者だ。

『オデッセイ』は、これまでの3Dマリオと異なり、スターやシャインといった目標物(今作ではムーン)を1つ取得しても、ステージから抜けない。というより、広大な箱庭ステージの間をオデッセイ号で旅する、いわゆる拠点移動型のビデオゲームなので、ステージから抜けるという概念自体がほとんど通用しない。その分、『マリオ64』や『サンシャイン』、あるいは『ギャラクシー』や『3Dワールド』と比べ、箱庭内におけるアクションの連続性が高く、ルート構築の自由度も向上しているといえるだろう。

しかし恐るべきは『オデッセイ』のボリューム。ルートの自由度が高く、アクションも洗練された実装となっているにもかかわらず、1時間切りは至難の業だ。成し遂げた走者の実力、そこから繰り出される驚天動地の離れ業は筆舌に尽くしがたい。ぜひ全編通しで見てほしいが、特に注目したいのは砂の国都市の国だ。ここまで高水準のプレイはトライアンドエラー前提の通常配信でも難しい。それを一発勝負のRTA in Japan本番で披露できるとは。

結果的に走者の個人的な目標タイムこそクリアできなかったが、最終盤まで大技があり、飽きることが全く無い。RTAの真髄に迫る最高のランだ。

VII 最終日・8月15日

★『シャリーのアトリエ ~黄昏の海の錬金術師~DX』【Shallotte Hardcore Any%】《PC》

──今回なんでシャルロッテを選んでるかっていうと、私がシャルロッテが好きだから。

『オデッセイ』の超人的プレイが終わり、日付が変わった直後から始まったのは、RPG『シャリーのアトリエ』。

正直な話、この並び順はかなり警戒していた。『オデッセイ』の後を務めるとなると、相当強調できるポイントが無ければかすんでしまうのではないか。私自身、フランチャイズのファンとして、アトリエのRTAは見えづらい難しさや分かりづらいスゴ業が多く、難易度の割に地味と受け取られがち、という事実は重々承知していた。その分、『シャリー』は余計に不利だったといえるかもしれない。

結論からいうと、『シャリー』のプレイは『オデッセイ』とは全く異なるベクトルの大きさで勝負してくるものだった。『シャリー』の走者が絶対に負けなかったもの。それは、「シリーズ愛」。

動画が始まって数分、飛ばせないオープニングムービーを鑑賞する中唐突に始まったのは「推しポイント紹介」だった。まあ作品の特徴を並べている部分もあるし、事実上ゲーム紹介だな……と思っていたら、その後もやたら繰り返されるではないかこのコーナー。もはや何を聞いているのかさっぱり分からない。

中盤の長尺ムービーではいよいよ走者が主人公のシャルロッテについて喋り出す。その語り口をぜひ聞いてみてほしい。これは台本が無いと止まらないやつである。

こういう深夜ラジオ的なRTAは、市井の人に受け入れられるのだろうか。私自身、黄昏シリーズではないが、別のアトリエフランチャイズで人生の歯車が狂った人間なので、走者の語りに共感できるところはいくつもあった(歯車の1つや2つ狂っていないとこんな記事は書かない)。もちろん、走者にも高難易度でのRTAを走り切る実力はあり、調合速度やコマンド決定速度はとてつもないことになっている。だが、走り抜けるために必要なおびただしい量の燃料があまりにも引火しやすく、私のような人間以外が果たして受け止めきれるのか、不安で不安で仕方がない。ある種、自分ごととして心配になった。

ここまでまとめながら、視聴しきった後、ぼんやり、RTA in Japanがどういうイベントだったか考えた。走者はある意味、イベントの場で自分自身を投げ出している。しかも、走者が賭けに出しているものは、自分の腕ではなく、自分の価値観ではなかったか。そこに、プロの興行とアマチュアチャリティーイベントの差があったのではなかったか。

『シャリー』しかり、『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド3』しかり、もしかすると、見せたかったものは別の何かだったかもしれない。それはたぶん、『オデッセイ』のRTAとどこかで通じていて、どこかで袂を分かったものだろう。『オデッセイ』のランは間違いなく、RTAの本質的な何かに触れているのだが、『シャリー』の深夜ラジオは、RTAを支える何かに近づいていたのかもしれない。

こういう肯定的、見方によっては楽観的な思考が受け入れられるかという賭けも、また一つの〈投げ出し〉なのだろう。果たして、私の思惟はどこまで届くだろうか。できれば、『シャリー』RTAを見たら、こういうことを考えてみてほしい。

***

迎えた最終日の朝。この日は会場入りしたら最後までいようと画策していたので、とにかくお腹を満たす。外苑前、何もかも高い。美味しいから文句は無かった。外のアクティビティというのは、オフライン開催RTA in Japanのちょっとした楽しみ、なのかもしれない。RTAとは関係ないが、RTAイベントの本質……なわけないか。ご飯は本当に美味しかった。

『アトランチスの謎』【Any% - No Turbo】《FC》

──みらいの アトランチスの おうに なるのは あなたかも しれません

入場するなりちょうど始まったのがこちら『アトランチスの謎』。クソゲー迷作とはいいづらいがちょっと評価の難しい、良くも悪くもFC時代の理不尽ゲーという表現がぴったりくる謎多き作品だ。

一体どういう天変地異が起きたらこの作品の走者が3人も揃うというのか。3人RTAの記録を残しているというだけでもだいぶinsane奇跡的なのだが、世界とは分からないものだ。

だが間違いなく、この走者の全員、少なくとも「アトランチスの王」は『アトランチスの謎』を愛している。初心者並走会(RTAを初めて走る人限定のレース)を主催するくらいなのだから、布教に熱心という言葉で片付けるのは失礼だろう。極東の地にアトランチスを伝える……ザビエルもびっくりの責任感だ。なんのために、という疑問が霧散してしまうくらいのパワーに満ち溢れている。

その熱意に押されたのか全然関係ないのか、人の詰まった会場は大ウケ状態。というか『アトランチスの謎』ってこんなに訴求力のあるタイトルだったんだな……。

惜しむらくは、『アトランチスの謎』が見た目ほど簡単なゲームでも分かりやすいゲームでもないところだろうか。でもみんなRTAやってみようね。

『Bomb Chicken』【All Gems】《PC》

──飛べない鶏は、ただの鶏だ……。

『アトランチスの謎』から爆弾武器つながりで後続を引き受けたのはイギリスのビデオゲーム『Bomb Chicken』。開発元は元々ブラウザゲームやモバイルゲーム(スマホ用ゲーム)を多くリリースしているところで、家庭用ゲーム機向けの作品はほぼ無い。主戦場が主戦場だけあって、簡単なシステムから多様なギミックを作り出している点が『Bomb Chicken』の面白みだろう。

ジャンプできないというのはインディーズを中心にプラットフォームゲームの仕様あるあるなのだが、今作はその代わりに爆弾を生み、その上に乗ることで一段上がることができる。本来攻撃手段や開削手段であるボムに垂直方向への移動手段という属性を付け加えたところが『Bomb Chicken』のアイディアだ。

もちろん攻撃や道の開通といった用途もカバーしており、走者はボムの様々な使い方を網羅しながらフィニッシュへと突き進んでいく。愛らしいコロコロの鶏が敵を木っ端微塵にしながら猛進する姿に心惹かれる人もいるかもしれない。実際、華美ではないが効果的で、コンセプトにもしっかり沿っているエフェクト、背景も印象的だ。

いいゲームだが、まだまだ世界規模で走者は少ないようだ。ちょっとでも気になったらレッツプレイ。

『爆ボンバーマン』シリーズリレー【Relay Race】《N64》

──通常はボンバーマン、ジャンプできないんですけども、ボムに当たって気絶したとき、ちょっとだけ浮くんですね。

ボムでジャンプするのは『Bomb Chicken』だけのお家芸じゃねえぜ!

ということで『爆ボンバーマン』シリーズリレー。シリーズリレーは何作かのRTAを複数人でつないでいくスタイルのRTA。今回はさらにレース形式も取り入れている。今回継走するのは『爆ボンバーマン』と『爆ボンバーマン2』。

走者の1人、後頭部(kotobu)氏は大がかりな茶番が代名詞の走者で、過去にもワリオさんに登場してもらったことがある。ちなみにこのときマリオで茶番に応じてくれたのは今回チームを組んでいるEiP氏。今回はどうなることやら……と思っていたら、ボ、ボンバーマンさん!? まさかあのときに続いてまたRiJへやって来るなんて……。

レース自体は対戦相手の初走・スピンス氏が上手すぎて早い段階からだいぶ差が付いてしまったが、全員盛り上げ上手だったので観客としてはかなり楽しかった。むしろ解説が大変だったかもしれない。

しかし、爆ボンバーマンRTAは何回見ても、何が起きているのか、一瞬思考がストップする。ボムに当たると一瞬浮くので、それを活かして高さのあるギミックを突破する、という、正攻法(?)のRTAなのだが、跳ね続けられる仕組みとか、爆風の判定とか、よく見てみると不可解極まりない動きをしている。そういう意味では、初心者から玄人まで楽しめるRTAなのかもしれない。

***

気が付けばRTA in Japanも残すところあと1種目。最後は長尺のRPGということでのんびりいい位置で観戦しようと思っていたのだが……まさかあんなことになるとは……。

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』【Race】《SFC》

──せっかく バラモスを たおして せかいが へいわに なったと おもったのに こーんな こわい やつが でてきて しまって せかいは いったい どうなって しまうん…… だー!?

大トリを飾るのは超有名タイトル『ドラゴンクエストIII』。日本のRTA界隈では資料が充実している作品でもある。今回はなんと、世界2位と世界5位が対戦し、解説が世界チャンプという超豪華なレースになった。特に画面右側の走者Maru氏は、以前のRTA in Japanで『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』を走ったことで有名だ。歴代のRTA in Japanでも各エンタメ要素のバランスがかなり良い回なので、ぜひご視聴を。ちなみに今回は『剣神』の直後に走られた『3』のようにホットプレートを使ったり、2021年のように任意コードを実行したりすることなく、普通にクリアしていくレギュレーションで走る。

序盤はMaru氏の豪運が光る光る。凄まじいエンカウント運と逃げ運で並走のけった氏にみるみる差を付けていく。一方のけった氏はレベル上げのメタルスライム狩りで運を手繰り寄せ、一瞬抜き返す。メタルスライムの登場数には相当の差があったと見え、Maru氏の自虐と僻みが飛んでは会場が笑いに包まれた。もっとも欲張りが過ぎロスがあったため、けった氏がMaru氏のほぼぴったり後ろに付く形で進行していくことに。

喜劇はそこからだった。先行するMaru氏がラスボス(笑)のバラモスに負けた段階でけった氏が明確にリードし、茶番でプレッシャーを掛けにいく。いよいよ最終決戦というところでお互いに不運が降りかかる。ついに迎えたRTA in Japan Summer 2022のクライマックス、そして伝説へ……。

世界記録級の走者2人がまさかあんな泥沼にはまり込むとは、本番一発勝負はげに恐ろしい。これまでつつがなく走ってきたRTAプレイヤーの腕と肝っ玉に驚嘆すると共に、これが人間のRTAなのだとも思った。沼1周目が終わった辺りで周りの人々が一斉にスマホをいじったり水分補給のため外に出たりと、まあ一気にアットホームな雰囲気に様変わりした。途中までは走者と解説こそ軽妙に喋り続けていたが、見ている側は展開に緊張し続けていたので……。

まあ最後はこういうのもアリなのかもしれない。RTA in Japanの大トリといえば、『リングフィットアドベンチャー』はじめ、これまで多くの逸話が生まれた非常に重圧のかかる大役だ。今回も別の意味で記憶に残るレースになったのは、率直にいって良かった。

***

『ドラゴンクエスト』のファンファーレが鳴り終わり、全プログラムが終了したところで、主催のもか氏が挨拶に登場。国境なき医師団からのビデオメッセージが流れた後、今回の寄付額の目安を伝えたところで、背後から「ありがとうございます」と微かに声が零れた。おそらくは、国境なき医師団の広報担当者かどなたかだったのだろう。

実際、RTA in Japanはいい方向に、そして、主催や運営が当初目標としていた方向に進んでいると思う。確かに、『リングフィットアドベンチャー』のときほど同接は集まらなかったが、実は画面上に表示されていた寄付総額は開催終了時点でSummer 2021を超え、6日間開催だった2021(Winter)とほぼ同額だった(今回は5日間開催)。おそらくは遜色ない寄付額が後日PRされるだろう。PayPalを使った直接寄付や寄付額投票といったチャリティーのシステム作り、導線作りも順調だ。ビデオゲームのファンイベント、そして、チャリティーイベントとしてのRTA in Japanが持続的に開催可能となる地盤が固まり始めている。

主催もか氏がよく語るエピソードが今回も紡がれる。Twitchの偉い人からの言葉、「ビデオゲームを短時間でクリアできるというだけで世界が良くなる。そういう価値観が生まれたところに、GDQの意義がある」。RTA in Japanもそういうところがあるイベントだろう。

一方で、振り返ってみると、今回は単にささっとクリアできるというだけでなく、「ビデオゲームが好きだ」、あるいは、「『この』ビデオゲームが好きだ」という想いのかなり重い走者が、今回多かった気がする。いや、たぶん、これまでも同じくらい感情をベットしていたのだろう。それが原動力に無くては、RTAなど走らない。ただ、一度オフラインで見てみると、色々思ってしまうところが出てきてしまった。世間様から見れば、自分もああいう人々と同じくらいビデオゲームが好きな人間なのだろうか。たぶんそうなのだろう。

オフライン観戦は(恥ずかしながら)今回が初めてだったが、期せずして「RTAってなんだっけ」と考え込む機会をもらってしまった。そういう流れで今回I章を書いてみたり色々仕込んでみたりしたのだが、やっぱり上手くはまとまらなかった。まだ、歓喜の方が思考を上回っていたのだろうか。それで良いのかもしれない。もか氏の言葉を少しだけ翻訳してみるなら、チャリティーRTAイベントは、興奮を世界へと〈開く〉催しだったはずだ。ならば、今は興奮を伝えるだけで十分だろう。拙い文章で恐縮だが、ぜひRTA in Japanの動画を視聴してみてほしい。その興奮の一端が感じられれば筆者冥利に尽きる。

あと、RTA、あなたもやってみないか。


(了)


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