おやすみは意識が溶ける時間じゃない
睡眠が大事。
これって「朝、一杯の水を飲むと体にいい」と同じくらい当たり前で、誰に言われても「うん、知ってる」って返事をしてしまうやつだ。
でも本当に「知ってる」のか?って考えると、私はずっと、その大事を大事にしていなかった気がする。
ここ数年、眠る前にお酒を飲むのが習慣になっていた。別に酔い潰れるほど飲むわけじゃない(いや、たまにやるけど)。まぁ、アルコールがいい感じにまわって、心がポワポワする程度の量。
でもその「いい感じ」が、いつの間にか「寝るための儀式」みたいになっていた。
お酒を飲むと、眠りに落ちるんじゃなくて、意識がストンと墜落する。眠りと失神の間には、線が一本あると思っていたけど、それはだんだんグレーになっていった。
「今日は疲れたから」「明日も早いから」「考え事が多いから」って、理由はなんでもよかった。とにかく飲んで、無理やりスイッチを切る。
でもある夜、気づいたのだ。
あれ? 私、ここ数年、眠りを味わっていないんじゃないか。
本来、眠るってもっと静かで穏やかで、体と心が同時に脱力する感覚があったはずだ。瞑想に近いものだと。
それをわざわざアルコールでぐいっと引きずり落として、翌朝には微妙に頭がもやっとしている。
これって「寝る」じゃなくて「逃げる」だったんじゃないかと、やっと思いなおして。
だから最近は、お酒を飲まずに寝る練習をしている。いや、飲んでるけど量は減らしてる。
ちょっと怖い。
眠れない夜は、やたら壁掛け時計の秒針の音が大きく聞こえるし、昼間に言われた何気ない一言が、3Dみたいにくっきり浮かび上がってくる。
それでも、あの感覚を思い出したい。
布団に入って、少しずつ意識がにじんでいく心地よさを。
眠りは、眠ろうとする者に敬意を払ってくれる。逃げる人には、そのぶんだけ代償を請求してくる。これから先は、眠りにちゃんと敬語を使って接したいと思う。
今日も、静かに深呼吸して、おやすみを言おう。私が明日をちゃんと迎えられるのは、この睡眠のおかげだから。

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