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うしろのこえ


公園の砂場でお山をつくっていた頃から友だちの小川(仮名)。もう1人はギャグマンガをいっしょに読みまくった高井(仮名)。3人でよく遊んでいた。

20歳を越えてからは高井が車を出し、ボウリングやビリヤードをしたり。ご飯もよく行った。回転寿司にファミレス。お金があったら焼肉が定番で。

ある頃からスーパー銭湯に行くようになった。広いお風呂は、いいよね。



小川と高井は恋人がいなかったから、女の子を紹介した。4人グループになった途端、小川と高井は女の子をとりあってしまった。そりゃそうなるか。

小川がひどくて。女の子の北浜さん(仮名)は高井に惹かれていたようで。それが小川はおもしろくない。高井のいないところで陰口を言いまくっていたんだ。「あいつは女癖が悪い」「ロ※コン」「ゲームオタク」だのと。いやいや、悪手だろ。恋は盲目だ。

結局、北浜さんは高井と付き合うことに。小川は離れてしまった。私と小川、私と高井では会うんだけど、3人で集まることはなくなったんだ。

小川は北浜さんに貸したバイオハザードを返してほしいと、私に愚痴っていた。お前がゲームオタクやん。本人に言え。めんどくさい。



数年後のある日。小川から電話が来た。「会おう。前みたいにさ、温泉に行こう」と。

高井は?

「誘ったんだけどさ、都合が悪いみたいで」

ほー、因縁の高井を誘ったのか。まぁ、大人になったのね。
じゃあ二人で行きますか。

「スーパー銭湯じゃなくて、本物の温泉地に行こう」

いいね。

小川は家まで車で迎えに来てくれた。

「その前に寄りたいところがあるんだよ」

ん、いいけど、どこ?

「人形供養の神社」

ほー。私たちはオカルト好きだったからね。

山を超えた先にある神社に到着した。お社には、ぎゅうぎゅう詰めに人形が並んでいる。ぬいぐるみがいっぱい。雛人形や日本人形、フランス人形みたいなのも。ちょっと異様で怖い。

小川がリュックからぬいぐるみを出して「供養する人形はこちらへ」と書かれた箱に入れた。

何を入れたの?

「前にさ、北浜にもらったぬいぐるみだよ。UFOキャッチャーで取ったって言ってたやつ」

あー、NARUTOの女キャラのやつか。懐かしいな。あれ、小川がもらったんだ。

「もう、いいかなって」

おいおい、そんなに思い入れあったのかよ。

「うるせーよ」

ピュアだね。

「うるせーよ」

人形供養の神社をあとにして、温泉に車で向かう。

山道をグネグネ。信号があってね。一車線しかないから、向こうから車が来てると、こちらは赤信号、通り過ぎると青になる。信号がないと正面衝突するからね。

………いで





小川、なんか言った?
声が高いけど。

「は?なんも言ってねーよ。ラジオの曲を口ずさんでただけだよ」

そう。
……って、おい。
今、信号赤じゃなかった?

「は?青だよ」

そう。見間違いか。

……ないで





おい、今うしろから女の声が聞こえたよな?

「絶対に振り向くなよ!人形供養の帰りは、うしろを見たら駄目なんだよ。やめろよ!」

おいおいおい。なんだそれは。
どこからそんな知識を得たんだ?

「2ちゃんねる!」

2ちゃんかよ!

「振り向くなよ。ついてくるからな」

……な…で。





ほら、今のは絶対に聞こえたろ。
ヤバいのがついてきてるって。
ヤバいヤバいヤバいヤバい!

「絶対に振り向くな!」





おい、小川。

今、絶対に赤信号だろ。
なんか、おまえ、顔色おかしいぞ。



「は?青だ…










いかないで




大きな声と同時に光が迫る。対向車のヘッドライトだ。そして私たちの車に危うく衝突しそうになったが、道の横に車一台分のスペースがあったので、事故は免れた。

小川、なんで信号無視するんだよ。
マジでやばかったぞ。

「だから、無視してないって。青だったろ」

帰ろう。やばい気がする。あの声は怖すぎるし、信号が青に見えてるし。これ、アカンやつだ。

帰りは特に何も起こらなかった。声も聞こえなくなり、小川が信号無視をすることもなかった。

家まで送ってもらい解散する。

「もう、ああいうとこに行くのはやめよう。本気で怖かったわ」

なんだ、声が聞こえてたのかよ。

「うるせーよ。またな」


その後はなにかに取り憑かれるわけでもなく、肩が重くなるわけでもなく、夢にナニかが現れることもなかった。

1週間後に高井から連絡が来るまでは。



高井から着信。
「久しぶり。小川のお見舞い行った?」

え?なにそれ。

「あ、知らなかったか。小川のおばちゃんから連絡きてさ、あいつバイクで事故って入院してるんだよ。一時は危なかったらしい」



……え。


まさか小川、人形に取り憑かれた?
やっぱりあの声はヤバいやつ?
高井、それさ、いつの話?





「1ヶ月前かな」





最近、会ったんだよ。

「嘘だろ?」

電話が来て温泉に行こうって人形供養行って声が後ろから

「落ち着け。小川はずっと入院中だから。誰かと間違えてるんじゃない?」

間違えるわけがない。



私は、誰と一緒にいたんだ。
 


今でも解決していない、すっきりしない話。
あの日の小川の着信履歴は、残っていた。

 
(1,998字)
#モノカキングダム2024

[画像協力:さちわ]

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