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あちら側に嫉妬する


「ボクのが上手く演技できるのに」

幼稚園のお遊戯会で配役されたのは、白雪姫の鏡だった。世界で一番うつくしいのはだぁれ?

「それは、お妃さまです」

台詞はこれだけ。本音は主役(姫だけど)や準主役の七人の小人がよかった。ハイホーハイホー言いたかったのに。

ボクのがうまいこと演技ができる。
あの役はボクにこそふさわしい。

小学校の劇でも、ほとんど台詞がない役しかもらえなかった。陰キャだからだ。配役決めのときに立候補できなかったんだ。

大学生になり、転機がきた。

1年生のとき学園祭の裏方をしていたんだ。陰キャな自分を変えたくて、華やかだった学園祭実行委員に入ったわけだ。けどやっぱり裏方。ビビるよね。大学デビューはむずかしいよね。で、ひっそり裏方。裏で支える人ががいれば、表舞台の仕事ももちろんあるわけで。

劇だ。

地元の幼稚園児をまねき実行委員のメンバーが劇を披露する。実行委員のなかでも賑やかなメンバーたちがその役割だった。本番前に内輪でやる、先輩のリハーサルを見て思った。また思ってしまった。

「おれのが演技も演出もうまい。先輩たちのものより、いい劇をおれは作れる」

次の年も学園祭実行委員に在籍した。今度は、表舞台だ。とうとう動いたのだ。

打倒!先輩!を掲げ、同級生や新たに入ってきた後輩たちと劇を仕上げた。20歳をこえているのに、夜中まで演技を練習し、発声練習では大学キャンパス内で叫んでいた。理想とする劇にするため、細部まで妥協しなかった。演劇部でもないのに。

そして学園祭当日。

私たちは完璧な劇を披露した。観客の園児からは拍手喝采声援御礼。園児の歓声が耳に入ると、私は泣いた。

昨年の先輩たちも観に来てくれてて。

どうだ。お前らよりも素晴らしい劇だろ?と内心思いつつ、先輩のところへあいさつに駆け寄った。

思いもしない言葉をかけられる。

「ヤス、ありがとうな」

自分たちが作った劇をここまで昇華してくれるなんて、とそんな賛辞をおくられてしまったのだ。私はまた号泣した。

その次の年は、学園祭で行われるあらゆるイベントの司会をしまくった。前の時の司会者をみて、「おれのがしゃべりはうまい」と思ったからだ。

思えばこの時代に、私は人前で話すスキルを身につけたんだ。「あの人って吉本の芸人?」とステージを見てる人の話し声を聞いてニヤニヤしてたよね。調子にのったよね。

そして大人になった。運とラッキーと行動力で本を出版した。

大学で目立つようになり、人気者になって、話も(昔より)うまくなったから、モテたんだ。うん、誰も言ってくれないから言うけど、まぁ、モテた。

その時の経験が恋愛論の元になり、本になったというわけで。(ざっくりの説明だけど、ほんとはもうちょい色々あったの)

で、出版のおかげで講演をやらせてもらうことになった。イキった大学生の自信は、プロの講演家といっしょにトークショウをした時に見事に打ち砕かれたね。コナゴナさ。

けど「もっとうまく話せるはずだ」の気持ちは消えることがなかった。

嫉妬は私のガソリンだ。

誰かを羨ましいと思えば思うほど燃え上がる。あちら側に行きたいと強く思う気持ちが、行動になって現れてくる。

今?

「あの人の文章、うまいなぁ。いいなぁ。ああいうの書きたいなぁ」

だから書くことに執着している。

「アイツより私のが文章はうまい」とはさすがに思わなくなったけど。

私が新たなチャレンジや行動を始めたら、誰かに嫉妬していると思ってくれていい。「あちら側、いいなぁ」が、私を新しい世界に連れて行ってくれるんだ。

#嫉妬祭り
#フィードバック希望


[画像協力:さちわ]

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