20年前のシナリオを小説に――短編小説『刻印』
なんでやねん!
と、突っ込まれそうですが、
表現することが好きだったけれど、
この領域はほんの僅かな時間だけ
許されたことがあったのを
残したいと思います。
間もなくクズ作品も下記にて展開します。
※とりあえずかいたやつを置いております。
推し活してただけなのに、いつの間にか推しと結婚して公爵夫人になっていました / 第1話:推し活の果ては、まさかの「嫁」
https://mypage.syosetu.com/3004170/
第1章:乾いた風と、不当な「正義」
裁判所の外は、皮肉なほど晴れ渡っていた。
母・和江(かずえ)の耳には、
法廷で読み上げられた判決の言葉が、
今も呪詛のようにこびりついている。
「――犯行時、被告人が未成年であったこと。
更生の余地が認められること……」
更生。
その言葉が、最愛の娘の尊厳を踏みにじり、
命まで奪った少年に与えられた。
少年は、裁判の間じゅう反省の影すら見せなかった。
退廷の列が動いたとき、傍聴席の近くで、
彼は弁護人に小さく漏らした。
「……どうせ、すぐ出られるんだろ」
和江は、その声音を聞き逃さなかった。
帰り道、和江は娘が変わり果てた姿で
見つかった川沿いの土手へ向かった。
見渡す限りのススキが逆光を浴び、
黄金色の波のように揺れている。
「ねえ……痛かったよね。怖かったよね」
夫に捨てられてからも、娘と二人、
肩を寄せて生きてきた。
社会に出た娘と、これからの幸せを語り合った日々が、
たった一人の獣に――しかも「法」という盾に守られながら、
終わらされた。
和江の胸の底で、黒いものが膨れ上がる。ススキの擦れる音が、
それに息を吹き込む。
そのとき、急に濃い靄(もや)が視界を遮った。
穂先が、まるで無数の白い手のように波打ち、
和江を招き、呑みんでいく。
足元が、ふっと消えた。
第2章:街道の掟札と、鏡合わせの罪人
靄が晴れると、そこには舗装されたアスファルトなどなかった。
土煙が舞い、着物姿の旅人や飛脚が忙しなく行き交う――江戸の街道だ。
和江は自分の洋服に向けられる怪訝な視線を背中で受けながら、
人だかりの中心へと歩を進めた。
そこには、一枚の大きな札が立てられていた。
『大罪人につき、穴晒しの上、三日三晩これを曝す。
道行く者は戒めとして――(以下、読ませるに堪えず省略しました)』
胸の奥が、きゅっと縮む。
札の傍ら、街道の土に首まで埋められている男がいた。
その顔、その卑劣そうな口元、その怯えた瞳――。
和江は息を呑む。
それは、現世で娘を奪い、不敵な笑みを浮かべていた「あの少年」と、
寸分違わなかった。
第3章:錆びた刃の重み
男は、現世の余裕など微塵もなく、
涙と鼻水で顔を汚しながら叫んでいた。
「……おれじゃない! 冤罪だ! 助けてくれ、頼む、誰か!」
周囲の村人たちが、おそるおそる備え付けの錆びた刀を手に取る。
鈍い軋みと、湿った音。悲鳴が街道の空気を震わせるたび、
和江の胃が冷えた。
ここでは「未成年」という言葉が、盾にならない。
命の重さだけが、ただ秤に載せられている。
村人の一人が、立ち尽くす和江に錆びた刀を差し出した。
「おまえも、やりな。こいつは人間の屑だ。恨みを晴らしな」
手に取った刀は、驚くほど重く、そして冷たい。
目の前にいるのは、娘を奪った男だ。
現世では叶わなかった「復讐」を、ここなら遂げられる。
和江は刃先を、ほんのわずかに寄せた。
触れたのは喉ではなく――自分の中の暗い衝動だった。
「……おれじゃない、人違いだ!」
その叫びを聞いた瞬間、和江の胸に、別の記憶が走った。
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