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スタッフの不安から生まれた、MUJI HOTEL GINZAの接客マニュアル

MUJI HOTEL GINZAでは、サービスに対するポジティブな口コミの割合が81%から92%に上昇し、ネガティブな口コミは11.6%から6.4%へと半減しました。リピーターの割合も、この一年で15%程度から20%近くまで伸びています。

きっかけは、スタッフの不安からうまれたサービスマニュアルでした。「地域文化のショーケース」を掲げるMUJI HOTEL GINZAが、接客の指針として選んだのは「ちょうどいいお節介」という言葉。マニュアルが生まれた背景と、現場に浸透するまでの試行錯誤を振り返ります。

書き手
牧野 佑 ホテル事業部 MUJI HOTEL GINZA
ビジネスホテルチェーンにて現場スタッフから始まり、営業企画部を経験後はUDSへ転職。前職では、顧客分析からオペレーション改善まで取り組んでいました。
好きなホテルは、スーパーホテル

松本 光 ホテル事業部 MUJI HOTEL GINZA
2019年新卒でUDSへ入社。ONSEN RYOKAN 由縁 新宿にて6年勤務した後、MUJI HOTELGINZAに異動。
好きなホテルは、別府おぐら


サービスマニュアル作成のきっかけ

サービスマニュアルを作成するきっかけとなったのは、別拠点から異動して来たスタッフの不安でした。「これまでいた拠点よりADR(単価)が2万円近く高いので、ゲストが期待されているサービスを届けられるか心配」という思いから、当時の支配人へ相談。サービス品質がスタッフ・状況によってバラつきがあるため、高い水準で常にキープできるようにして欲しいと要望を受け、サービスマニュアルを作成することを決めました。

自分たちが大事にしているサービスとは何か、写真や言葉でまとめることで、接客時に迷ったときに振り返りできる内容をイメージしながら作成していきました。


「ちょうどいいお節介」が生まれるまで

マニュアルを作成する上で考えていたことは以下の2つ。

1.他社ではどのようなサービス・接客をしているのか、また自分たちと比較してどのようなギャップがあるのか分析する。
2.MUJI HOTEL GINZAのスタッフが大事にしているサービス指針の共通点は何かまとめる。

1.他社分析

他社を分析する上で、何名かで試泊を行いました。ホテル選定の条件は、価格帯が近いこと、顧客評価が高いこと、実際に比較されそうな近隣(都心)にあることの3項目です。

3項目に当てはまったホテルを2つに絞り込み、拠点内のサービスチームスタッフで実際に宿泊し、エンドユーザー目線でよかったことをメモしていきました。

・清潔感
試泊に行ったホテルのフロントカウンター、エントランス周りからは洗練された清潔感を感じた。フロントカウンター周辺には手続きで使用するペン以外は何も置かれておらず、ゲストの目に入る範囲のデスク周辺は綺麗に整えられ、シンプルなかっこよさがあった。また、女性スタッフの髪がピシッとまとめられていたり、制服もしわがなく、設備の清潔さだけでなく、スタッフも清潔さを意識している。

・チェックインの際の自己紹介
台湾出身の方にチェックインを担当いただいた。案内が終わってから「台湾出身の〇〇です。何かあればご連絡ください」と言ってくださったのが印象に残っている。今までホテルに宿泊してチェックインのスタッフに名乗られることはあまりなく、実際に名乗られると定型的な接客ではなく、個人に寄り添った接客をしてくれているなと感じられた。

・物に付加価値をつける接客をしていること
廊下を歩いている時にスタッフの方が「ここは海の中をイメージしているので暗くなっています」と教えてくれたことで、ただ泊まるだけでは知り得ないコンセプトを知れた。接客の中で、ただ宿泊するだけでは知りえない物の価値を伝えることで、宿泊体験に付加価値をつけることが出来る気付きを得られた。

これら3つはMUJI HOTEL GINZAでは実施していなかったサービスで、自分たちが接客を高品質な状態にしていくために必要であると考え、MUJI HOTEL GINZAのサービスの中に組み込んでいくことになります。

2.MUJI HOTEL GINZAのサービス指針

MUJI HOTEL GINZAのスタッフが考える、自分たちが大事にしているサービス指針の共通点とは何かをまとめる上で、サービススタッフ全員に対してアンケートをとりました。

スタッフのアンケートからは「ゲストに寄り添うことを第一とする」や「印象に残るチェックインをしたい」などさまざまな意見が出る中で、コンセプトの内容とも紐づけ、「ちょうどいいお節介」をMUJI HOTEL GINZAのサービス指針に決定しました。


マニュアルに込めた3つのアクション

他社の試泊経験やサービス指針の言語化をもとにマニュアルを作成しました。試泊した際に良かった3つのアクションを、現在のMUJI HOTEL GINZAの接客に組み込んでいます。

1.行き届いた清潔感(5Sの維持)

毎日実施する定型業務に並行して、決まった時間でフロント周辺を整理整頓することにしました。どのような状態にするのが正しいのか、マニュアルに写真とともに記載しています。

また、スタッフの身だしなみもルールをつくり、毎月月初に身だしなみチェックを行っています。爪、髪の色や長さについて、スタッフ同士で身だしなみの指導はしにくいですが、マニュアルがあると「正しい状態は〇〇です」と伝えられるので、 これまでよりも是正依頼がしやすくなりました。新しいスタッフが入社した時も身だしなみ基準を伝えており、教育ツールとしても活用しています。

2.自己紹介(ウェルカムカードのお渡し)

チェックイン終了時や、ゲストからのリクエストを受けた際等にウェルカムカードをお渡ししています。ウェルカムカードにはスタッフの名前とイラストが記載されているだけでなく、印象に残ったサービスをそのまま口コミとして投稿出来るようWEBサイトの二次元(QR)コードも記載しています。

3.付加価値を付ける接客

チェックイン終了後、客室に向かうエレベーターの待ち時間に、ウェルカムスイーツをお渡しする設計にしました。

スイーツをお渡しすることが目的ではなく、エレベーターのボタンを押して十数秒、その場で待機するお時間に+αのコミュニケーションができればと、タッチポイントを意図的に創出しています。

スイーツはMUJI HOTEL GINZAの近くにある松屋銀座の、お菓子売り場のバイヤーさんに選定いただいたものを提供しています。現在はCHIANTIというお菓子屋さんの、リモーネという夏にぴったりなさわやかな香りのレモンケーキをお配りしています。


最初は、全く浸透しなかった

新しい活動はなんでもそうかもしれませんが、はじめのうちは上記3つの活動はあまり浸透しませんでした。マネージャー陣で、まずは自分たちがお手本となる接客を示し続け、具体的なやり方を口頭で説明することにしました。

実際に口コミでゲストからの良い反応が増えていることを共有した他、毎日必ず目に留まる引継ぎ帳にサービスマニュアルの行動と関連させた接客時の行動を記載して、少しずつ活動が浸透し、今では全員実施できるようになりました。


マニュアル導入後の変化

1.口コミ

ウェルカムカード導入後、嬉しいことにスタッフの名前が記載されたプラスの内容の口コミが増加しました。口コミサービス上でも、マニュアル導入後はサービスの評価・数値は改善しています。サービスに対する肯定的な口コミの割合が81.3%から92.8%に、批判的な口コミは11.6%から6.4%に半減しました。

口コミの事例:KodyやReyは、サービススタッフのインバウンド向けの呼び名です。

2.リピーター率

宿泊におけるリピーターの割合も増加。2024〜2025年は約15%程度だったものが、活動を始めてから一年、2026年上期は20%近くまで上昇しました。


あとがき

ADRが上がった状況でゲストの求めているサービスの基準も変化していると感じます。マニュアルに記載されている内容をただ徹底していくだけではなく、試泊等の市場調査を継続的に実施し、エンドユーザー目線で価格帯にふさわしいサービスを研究し、自分たちのサービスへ落とし込んでいきたいと考えています。牧野

ホテルの価格帯が変わっても、振り返ってみると接客の基本にある「お客様を想う気持ち」は同じでした。「仕組み」として、通常のチェックインやチェックアウトに+αの行動をマニュアルに落とし込んだことで、接客の水準が上がり、チーム全体としても強くなったと感じています。「私たちがいるからこのホテルを選んでもらえる」。そんな場所を目指して、これからも笑顔でお客様をお迎えしたいと思います。松本


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