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【サプライチェーンの目詰まり】物流はモノではなく信用で動いている

紅海危機による海上輸送の混乱、コロナ禍のトイレットペーパー不足、近年のナフサ供給不安。こうした「突然モノがなくなる」ニュースを見るたび、多くの人は需給バランスの崩壊を想像する。しかし実際には、市場全体の需要量も供給能力も大きく変わっていない場合が多い。それでも不足は発生する。まさに「目詰まり」だ。目詰まりとはモノ不足ではなく、流動性不足だ、というお話です。


銀行取り付け騒ぎと似ている

 銀行は預金者全員が同時に現金を引き出すことを前提としていない。信用があるから、人々は必要な時だけ引き出す。しかし不安が広がると全員が一斉に動き、健全な銀行でも破綻する。
 サプライチェーンも同じ構造だ。企業は普段「必要になれば補充される」と信じているから、20日分の在庫で運営できる。しかし供給不安が発生すると40日分を確保しようとする。他社も追随し、実需は変わっていないのに市場からモノが消える。これがブルウィップ効果の正体であり、トイレットペーパー騒動もナフサ不安も、根は同じ信用危機だ。

物流も信用創造の仕組みである

 金融が信用創造によって実際の現金以上の経済活動を支えるように、物流も「補充される」という信用によって、全員が実際に必要な量より少ない在庫で経営することを可能にしている。もし全企業が常時、供給不足に備えて在庫を持とうとすれば、物流システムは成立しない。
 だからSCMが本当に管理しているのは、モノではなく信用だ。信用の実体は、リードタイムと納期遵守率である。

安全在庫は担保——誰が誰を信頼するかの問題

 リードタイム短縮とは単なる効率化ではない。補充への信用力向上だ。補充に60日かかるなら60日分のパイプライン在庫が必要だが、3日なら大幅に減る。安全在庫も同様で、供給を信頼できないから積む。つまり安全在庫とは信用不足を埋めるコスト、サプライチェーンにおける保険料である。
 金融では、借り手の信用が低いほど、貸し手は担保を要求する。サプライチェーンも同じだ。サプライヤーへの信頼が低いほど、買い手は安全在庫という担保を積まなければならない。在庫とは、供給への信用不足を補うための担保だ。

サプライチェーン改革は利害調整の再設計

 ただし、ここに重要な非対称性がある。改善費用を負担するのはサプライヤーで、在庫削減というメリットを享受するのは顧客だ。顧客が支払うべき対価は、発注増か、単価アップか。だからこそサプライチェーン改革は、自社最適では進まない。信用の設計は、利害調整の設計でもある。

キャッシュフロー改善は在庫削減ではなく信用力向上の結果

 在庫を減らせばCCCは短縮され、営業キャッシュフローが改善する。しかし順番は逆だ。納期遵守率向上・リードタイム短縮・供給安定化という信用力向上の結果として在庫が減り、その結果としてCCCが改善する。在庫削減を目的にしたSCM改革が頓挫する理由はここにある。
 物流をモノの流れではなく信用の流れとして見ると、SCMと財務は一本の線でつながる。在庫は結果の指標だ。COOが問うべきは「在庫量」ではなく「我々はサプライヤーを信頼できているか——そして顧客は我々を信頼しているか」ではないか。

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