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「…てか、それ洗脳だから。」災害や事件のたびに濫造される動画のあれこれ

さて、以前にも未解決事件を「エンタメ」としてメシの種にする同業者に思うところありということを書いた筆者だが、そんな人間からすれば、このところ、熊本地震を「エンタメ」としてネタ化し、濫造されている動画を見ると、食傷どころか、もはや溜息も苦笑も面倒に感じるほどである。

さて、そんな「熊本地震ネタ」で世人の気を惹こうと躍起になっている手合いだが、動画を観ていくとわかるのは、大まかにいうと下記の3パターンに分類されるという点だ。

【1】予言・予知・超能力系

まずこちらについては熊本地震に限らず、大きな騒動や事件・事故の際には必ずと言ってもいいほど「湧く」タイプの、王道ともいえる芸風の皆さんだ。この手の連中というのは、そもそも食べ物を出した途端に寄ってくるコバエのようなものであるから、もはや「湧くな」というのが無理なのかもしれないが、世人の多くが知るように、そもそも「地震」というものは、有感・無感すべてを含めると年間100万回以上、世界の至るところで発生している。

…で、アメリカ地質調査所(USGS)や気象庁などのデータに基づく大まかな目安としては、

  • M8.0以上(巨大地震):年間平均 約1回

  • M7.0〜7.9(大地震):年間平均 約14回

  • M6.0〜6.9:年間平均 約130〜150回 (M6以上で約152回)

  • M5.0〜5.9:年間平均 約800〜1,000回

…であり、ここに「ニュースにもならない地震」を加えれば、100万回以上、発生しているというわけだ。つまり、「地震が起きる!」と“予言”していれば、そこそこの打率でヒットすることになり、結果として「ハイ、当たりましたァーーーっ!!!」とドヤれるという寸法である。従って、これから預言者やら超能力者やらになりたいという人は、「地震」を主な予言内容に設定しておくと、割と短期間に出世できる可能性がある。転職転業をお考えの方、是非ともオススメしたい。

【2】陰謀論系

…さて、次に厄介なのがこのタイプで、WEB上に限っていえば、東日本震災以降急速に増え、それがようやく落ち着き始めたかに見えた矢先に巻き起こったコロナ禍によって逆に激増したというのが筆者の肌感覚なのだが、この手の人々は、こと地震に限っていうと、

(1)HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)が人工地震装置である」とする世迷言を筆頭に、米国や中国、ロシアといった大国が意図的に地震を引き起こしたとする説。

(2)「一部の政府高官は事前に地震を知っていた(にもかかわらず知らん顔している」「意図的に引き起こした地震(あるいは、発生予想を黙殺してそのまま地震発生を迎え、いざ発生したら国民が大混乱となる状況)のなかで、しれっと国民に不利益な法案を通す」といったトンデモ説。

(3)「事前に発生を予測していた一部の富裕層は混乱に乗じて市場を牛耳り、莫大な富を得ている」というもの。こちらは(2)の派生ともいえるが、その実、一般人の中には「この世の中は一部の権力者によって動かされている」と本気で考えている人というのが一定数存在しており、さらにそのなかには、「金持ちが火事場泥棒的に災害でボロ儲けしている」という妄想に取り憑かれていることも少なくないのだ。ゆえに、筆者のような実話畑が長い人間というのは、往々にしてこうした妄想を「事実」あるいは「真実」と信じて疑わぬ読者から「スクープになるタレコミがある」と呼び出されては、無駄足を踏むという経験を少なからずしているものなのである。ユダヤの財閥もオイルマネーもM資金もUMAもUFOも妖怪も心霊もキオクシア株の暴落も、だいたい似たり寄ったりである。

もちろん、支持層の少ないものにまで目を向ければ、もっと強烈なトンデモ陰謀論もあるにはあるが、その多くは後述する【3】の「単なる毒電波系」に類するものだと見て差し支えないだろう。

【3】単なる毒電波系

…というわけで最後は、ある意味「安定の」電波系だ。「不安定」なのに「安定」というのも些か言葉遊びのきらいがあるように思うが、【2】の後半でも触れたように、妄想に取り憑かれている人というのは、得てして、周囲の冷ややかな視線とは裏腹に、相当なエネルギー、それもリミッター解除なのかクロックアップなのかわからないが、人知を超えたレベルのトンデモ説を“生成”するものである。しかしそうした人も、なぜかWEB上では一定の支持を得られてしまうのが恐ろしいところで、それが現代社会ならではの、さらにいえば、情報過多型情報弱者ともいうべき人々が形成する「ムラ」ならではの恐ろしさであると筆者は感じるのである。

…と、例によってくだらぬ話からスタートし、そのまま長々と書き連ねてしまって恐縮だが、ご安心頂きたい。ここからはさらにくだらぬ話の始まりである。

実は(というほどではないが)今回の熊本地震においても、上記3タイプの“ヤバいご一行様”は、これでもかと言わんばかりに、精力的に与太話を発信している。無論、その多くは、もはや何を言っているのかさえわからないほどに荒唐無稽なものなのだが、なかにはそうした内容でありながらも、なぜか「バズって」いるものもあったりと、なかなかどうして、油断ならぬものも含まれているのだ。そこで今回は、最近目にしたものの中でも、とりわけ筆者のハートを鷲掴みにした“作品”を、ご紹介したいと思う。

「違和感」という「主観ベース」の感覚を共有しようとしている時点でそれは洗脳である。

ドアタマからして、テロップにまともな内容がほとんどないという、実に豪快な作風のこの作品は、そのフレーズもさることながら「気」という文字が中国語の繁体字(旧字体)である「氣」であったり(※このあたりは後述する投稿者ならではのこだわりのようだ)と、本筋とは別の部分で違和感しか感じないという、なかなかレベルの高い作品。なにせ並んでいる文字列のうち「ドライブレコーダーの映像」と「フォローする」というボタンの文字ぐらいしか、「事実」が見当たらないのだ。その馴れ馴れしい口調(フレーズ)が醸す空気も相まって実に凄まじい破壊力といえるだろうが、さらに問題なのはその内容である。なんと、イオンモール熊本の爆発事故直前に、「謎の飛行物体」とやらが施設上空を高速で飛び、その直後に爆発した、つまりはこの「謎の飛行物体」とやらが爆発させたとでも言いたげな内容なのだ。9.11テロの直後にもこの手の話は出ていたが、その大半が箸にも棒にもかからぬものであったことを覚えている人も少なくないだろう。

「謎の飛行物体」だという何か。その①
「謎の飛行物体」だという何か。その②

この手の動画にいちいちツッコミを入れるというのは、小さな子供がお楽しみ会でドヤ顔披露しているような手品を見せられた際に、大人げなく「トリックを見破った!」とやってみせるようで、なんだか独特な気恥ずかしさを覚えてしまうのも事実なのだが、なにせこの画像(元は動画である)に記録された「これ」を、「攻撃兵器」であるかのように言われてしまうと、さすがに言いたくもなってしまう。殊更言う必要もないかと思うが、多くの人々が、スカイフィッシュなどというものは存在せず、カメラ近くを飛び交う虫&撮影環境で説明づけられていることを知るように、映像に映る「これ」は、結論からいえば鳥(あるいは虫)であり、「攻撃兵器」でも「謎の飛行物体」もない。さらにいえば、イオンモール熊本の「上空」と呼べるほどの高度ではなくドラレコから比較的近い場所、せいぜい「駐車場のちょっと上を横切った」程度でしかない(※このあたり、お時間のある方は夏休みの自由研究の題材か何かとして、映像解析を行って頂くとよいかもしれない)。こうした撮影環境においては、それこそ鳥でも虫でもだいたいが「謎の飛行物体」と化してしまうマジックがあるのだが、それを(たぶん)わかった上で(…逆に本気だったらそれはそれでヤバいが)わざわざ煽るように投稿・公開するのだから実に始末が悪い。

しかも、こうした「ツッコミさえ無粋」と思える荒唐無稽なトンデモ動画を発信しているのが、こういう人物である。

https://www.instagram.com/ryujinreiki.shinsuke/

プロフィールや投稿内容からして、これまたこの界隈でしか聞いたことがないような文言だけが並ぶという、なかなか強烈な内容であるが、それでいて恐ろしいのはこのアカウントを12000人もフォローする人物がいるという点だ。彼らはこの人物にいったい何を期待しているのかは知る由もないし、さらさら知る気もないが、おそらくなにがしかの影響力を持っている人物なのだろうし、事実、筆者は今回初めて知ったが、『龍神レイキ: 「天命の道」へと導き、新しい時代を生き抜く (アネモネBOOKS 034)』なる本も出されているとか。紙の仕事が多かった筆者としては、ひとまずこの本がどういう性質で流通するに至ったのかが気になるところだが、版元の株式会社ビオ・マガジンとやらのサイトを見る限り、“そっち系”に需要のある会社のようだ。なお、まったくの余談だが、アネモネの古い花言葉は「病気」である。

これはもうかれこれ四半世紀近く前の話になるが、筆者は当時、PC・ネット誌の仕事もしていて、そこでお世話になっていた担当編集氏と、「ネットの登場でヤバいヤツが自由に発言することも、そういうヤバい連中同士が物理的な距離を超えて結びつくヤバい時代になった。これからは地球上のあちらこちらでカルトが増えるだろう」という話をしていたものだが、今やそれが当たり前の状態にさえなりつつある。なんとも難しい時代になったものである。


(猪)

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