今日の海は、少し機嫌がいい
サーフィンをしていると、
海がふと優しくなる瞬間がある。
それは上手く乗れたときでも、
最高のコンディションの日でもなくて、
ほんの小さな偶然が重なったときに訪れる。

この日、志田下に着くと、
空がまだ半分だけ眠っているような色をしていた。
風は少し冷たくて、波は気まぐれに割れていた。
「まあ、ゆっくり入ればいいか。」
そんな気持ちで浜に立ったとき、
雲の隙間から突然、虹がのびた。

まるで海から空へ、
一本の道がつながったみたいだった。
そのとき、沖では
一人のプロサーファーが軽くターンを刻んでいた。
スプレーが光に溶けて、
虹の下に舞い上がるように見えた。

なんてことのない朝のはずなのに、
急に“特別な一日”に変わる瞬間がある。
サーフィンは、そんな日を時々くれる。
上手く乗れなくても、
波が荒れていても、
寒くて足が動かなくても、
「ああ、今日ここに来てよかった」
そう思える瞬間が必ずどこかにある。
それだけで、また次の海を楽しみにできる。
志田下の虹を見た朝は、
たぶんずっと忘れない。
人間科学部心身健康科学科 熊谷勝義
