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光る石、幻のヒスイ ─ 鉱物採集の旅 ─

東北方面のとある山にて


山の採取現場。足もとには無数の石。

ライトを消すと、山は一瞬で深い青に沈んだ。手の中の小さなUVライトを点ける。照らした石が、静かに呼吸を始める。上の石は鈍い飴色、下の石は紫の炎。「ほんとに光った!」息子の声が夜気を弾いた。蛍光鉱物——紫外線を浴びて発光する、不思議な石。昼の太陽の下ではただの岩くずのように見えるのに、闇の中ではまるで生きているように輝く。それを見つけた瞬間、誰もが少しだけ子どもに戻る。

UVライトで浮かび上がる蛍光鉱物1

拾うのは5つまで。ルールは単純だけれど、選ぶたびに迷う。光の強さ、形、色。最後は直感で決めた。「この子、連れて帰ろう」
小さな石をジップ袋に入れる。袋越しでも、まだ少し温かかった。

UVライトで浮かび上がる蛍光鉱物2
UVライトで浮かび上がる蛍光鉱物3

新潟県のヒスイ海岸

とある日、朝食を手短に済ませて旅館を出て、朝の風は潮の匂いがした。雲ひとつない空の下、ヒスイ海岸と書かれた看板が海に向かって立っている。砂利浜の上を、波が軽く撫でる。ひとつの石を拾っては、水で濡らして光を見て、また戻す。ただそれだけの繰り返しなのに、飽きない。石たちは、波と時間に磨かれて、みんな穏やかな顔をしている。
「これ、ヒスイかな?」
息子や妻が拾い上げた石を見せてくる。灰緑色、手にずっしりと重い。
でも、判断は難しい。見分けの鍵は“重さ”と“光沢”、そして“冷たさ”だと聞いた。私は何度も手のひらで転がしてみた。冷たい。けれど、なんだか柔らかい。それが答えだった気がした。

新潟県にあるヒスイ海岸の看板。青空と波、拾う前からすでに宝探しの気分。

ヒスイミュージアムへ

午後、私たちは近くのヒスイミュージアムへ向かった。受付で「鑑定お願いできますか?」と聞くと、係の方が笑顔で頷いた。テーブルの上に、拾った石をそっと並べる。白い光の下で、石の表情がまた変わる。
「これはヒスイの可能性がありますね。繊維の流れが見えます」
専門家の指が、優しくその石をなぞった。胸の奥がじんとした。
夜の山で光った石も、朝の海で拾った石も、みんな同じ地球の一部だ。
見え方が違うだけで、どれも確かに“ここ”から生まれたもの。

学芸員による石の鑑定

展示室をまわる。大きな原石、研磨されたヒスイのブレスレット、昔の人が磨いた勾玉。
「こんなに光る石も、もとはただの岩なんだね」
息子がぽつりと言う。私は頷いた。
「そう。けど、“ただの岩”を見つけて、名前をつけて、大事にした瞬間、それは宝になるんだよ」

帰り道で

帰りの車の中、助手席の袋からカラコロと音がした。拾った石たちが、また話しているみたいだった。ライトで照らせば光る。波に洗えば輝く。どちらも、光を信じる時間があってこそ見えるもの。アウトドアを楽しむって、結局は自然の中で“自分の目”を取り戻すことなんだと思う。

家に帰ると、机の上に石を並べた。カードに書かれた名前の横に、日付を入れる。東北で採取した光る石、新潟の幻のヒスイ。どちらも、家族で見た小さな奇跡の証拠だ。

   人間科学部心身健康科学科 熊谷勝義

#アウトドアをたのしむ

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