【ショートショート】インフル念写
「私のこと好きなら、ちゃんと念写して」
そんなコマーシャルとともに発売された【撮れるんです】。真剣にその相手のことを念じないと写真にその姿は写らない。好きならその背景は天国のように眩く光り、嫌いならば地獄のような様相を呈する。
若者を中心に爆発的な勢いで浸透した念写ブームは、愛の証明のツールとして使われている。
「このオヤジを念写してもらいたいの」
薄暗い路地のどん詰まり。看板も出ていない寂れた店内に、似つかわしくない上等な服を着た淑女が訪れていた。淑女は1枚の写真を目の前の男に手渡した。
写真を見ただけで、どんな人物でも好きになることができる特異体質の持ち主。それがこの店の店主【念写屋】である。
「ほうほう、なるほど。これは……高く付きますよ」
「いくらでも構わないわ。私がいくら念写しても地獄三昧なのよ」
男はライトに透かすように写真をかざした。
「ドナルド・トランプね。まあ、嫌いじゃないですよ、おれは」
「日本の未来はあなたに掛かっているわ」
「では、あちらの部屋でお待ち下さい、総理」
終
たらはかにさまの毎週ショートショート【インフル念写】に参加させて頂きました。
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