【ショートショート】ドラム式選択肢
ぐるぐる グルグル──
目の前で未来が音を立てて回っている。どれを選ぶかはおまえ次第。老婆はそう言った。
普段使っているコインランドリーが閉まっていたので、洗濯物を抱えて当てもなく街をさまよった。
【未来堂】と書かれた看板を見付けたのは、もう帰ろうかと思い始めたときだった。薄暗い店内を覗くと確かに洗濯機が置いてある。しかも最新のドラム式だ。
恐る恐る中に入ると、「いらっしゃい」の声に体を硬直させた。
「あの、ここはコインランドリーでは?」
「ふむ、違うね。ここはしいて言うなら未来乱取り。ランダムな未来をその手で選び取る場所だね」
そんなこんなで、ぼくは目の前でグルグル回る洗濯機を眺めている。中には言葉が書かれたたくさんのカラーボール。
「目に飛び込んできた言葉がおまえの未来だよ」
ガラガラガラ──
音を立てるボールに目を凝らしていると、渦が螺旋を描き、深淵に木漏れ日のような光が現れる。
「『変』?いや、『恋』……かな?あと、『おでん』?」
「それが、おまえの未来だよ」
首をひねりながら家路に着くと、公園の横でいい匂いを漂わせる屋台が、ひっそりと明かりを灯していた。
「……おでん」
暖簾をくぐると先客がひとり。ちくわをお箸に玉子を食べようとしていた。怪訝な目で見つめていると女がぼくを振り返り、「食べれそうで食べれない、これが玉子を美味しくするんだよ」と不適に笑った。
『変』はやっぱり『変』だったのか、それとも『恋』だったのかはわからない。わからないけれど、ぼくは店主に注文した。
「玉子と、ちくわをふたつ」
終
屋台に憧れているものの、未だに食べたことがありません。ふらっと入って一杯引っ掛けて、「またなオヤジ」とか言って立ち去ってみたい。そんなおじさんに、私はなりたい。
たらはかにさまの毎週ショートショート【ドラム式選択肢】に参加させて頂きました。
【ギター式洗濯機】はこちら
前回のお題はこちら
#毎週ショートショートnote
#ドラム式選択肢
#ギター式洗濯機
#ショートショートnote
#ショートショート
#短編小説
#掌握小説
#創作
