【ショートショート】ゴールデンユニーク
新宿ゴールデン街。
言わずと知れた飲み屋街に、1本の細い裏路地がある。
人ひとりがやっと通れるその狭い路地を通り抜けると、その店はあった。
『芸事酒場 遊餌来』
客は己の特技を酔客の前で披露する。それが店主のお眼鏡にかなえば、サービスを受けられるのだ。
しかし採点は厳しい。
『凡夫』店主おすすめの青汁ドリンクを1杯強制注文、『及第点』ドリンク1杯無料、『遊餌来』お代は結構という太っ腹ぶりだ。
私が先日披露した特技、けん玉世界一周は、惜しくも最後に剣先に刺さらず、『凡夫』と成り果てた。
だが今夜の私はひと味違う。子供の頃からのとっておきを引っさげてきた。今日こそ『遊餌来』の称号を手にするのだ。
扉を開けると、カランコロンと小気味の良い鈴の音が私を迎えた。酔客と店主がじろりと私を睨めつける。
震えそうになる膝をぐっと前に突き出し、舞台へと上がる。舞台上の机に左手を静かに乗せた。
「見さらせ!!」
気合とともに右手のアイスピックを左手の指の間に打ちつける。指と指のすき間を縫うように、最初はゆっくりと、徐々にスピードをあげていく。
薄暗い店内にカンカンカンカンという音だけが木霊する。速度が最高潮に達した瞬間、私はゆっくりと目を閉じた。
「はい、及第点ドリンク」
私は会釈をしつつ、左手の包帯を撫でた。夜の色を濃くしたゴールデン街は、まだまだ眠らない。

こんなお店あったら良いですね。まあ、何もできませんけど😅
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