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辞書パロディ「第3章 世は解説 ひょうたんなまず」(その2)郡司利男『カッパ特製 国語笑字典』(昭和38年)より【第9回】

※今回は「とらえどころがなく、要領を得ない、くどい解説の笑い」の後半です。いや、ご本人が意図したほどには、あんまりくどくないんですよね(笑)。早速行きましょう。

タ行
〇だば〔駄馬〕ちのみごを背負い、右手に荷物を持ち、左手で子供の手をひいて、夫のあとからトボトボついていく日本の女。※今は女性の方が強いみたいな定義の多い郡司さんにしては珍しく、女性を貶しています。かつての日本女性、ってことですかね。
〇だめをおす〔駄目を押す〕念のために確かめておくこと。たとえば、パチンコの玉が下の穴から消えているのに、もう一度はじいてみること、など。
〇チャージ〔charge〕交通事業の専門語。バスの車掌などが、客から受けとった料金を、胸に下げたかばんに入れるのをまちがえて、どんどん自分のふところに入れること。
〇ちょうしもの〔調子者〕おだてると、裸踊りをしてかぜをひいたり、やかんをかぶって抜けなくなったりする男。がいして善人。
〇ていそう〔貞操〕情をもって肉体を裏切ることなく、肉体をもって情を裏切るなかれ。※いかにも出典がありそうですが分かりませんでした。
〇テキスト〔text〕無能な教授ほど多くの学生を教えたがる。かれにとっては、学生の一人一人は、よそでは絶対に売れる心配のない自作のテキストの一冊一冊に見えるのである。
〇でたらめ〔出鱈目〕さいころを振るのに、どの日が出てもかまわないという態度。したがって、鱈の目とは関係がなく、「出鱈目」と書くのは、まったくでたらめな書記法である。
〇てんいしゅうしょくご〔転移修飾語〕美人のつぐ酒を美酒と言うがごとし。※転移修飾語とは「眠れない夜(←眠れないのは夜ではなく人)」のように被修飾語をわざと転移させる比喩法。
〇どうこうほう〔道交法〕まちがいだらけの性生活。※この人「交通」を「性交」に掛けるパターンがめっちゃ多いですね。
〇とうちほう〔倒置法〕修辞学用語。倒置法による文章の例――花を召しませ、召しませ花を。※「東京の花売娘」(岡晴夫)
〇どうぶつがく〔動物学〕「蛙の子は蛙」というようなことを研究する学問。

ナ行
〇なまり〔訛〕火の用心を、死の用心、屁の用心、のように発音すること。
〇にまいじた〔二枚舌〕二枚舌を使うな、同時に。
〇ぬえ〔鵺〕源頼政(みなもとのよりまさ)が殺したことになっていたが戦後の日本の風土がその生息に適するものか、あちこちで見かけるようになった。※鵺の正体とされるトラツグミのことを言っているのか、妖怪のような不審者のことを言っているのか分かりません。
〇ねうち〔値打ち〕付属物を除いた裸の男のねうちは、古来一貫から百貫までとされている。まあ、十六貫もあれば、凡人は気にやむことはない。女となれば、話はまた、ゼンゼン別。※「裸一貫から出直す」「百貫(375kg)でぶ」あたりを踏まえているようです。16貫は重さでは60kgです。
〇ねしょうべん〔寝小便〕寝ていても、体の休まるときがないという忙しい一例。
〇ねる〔寝る〕疲れやすいときに、疲れたときに、全身の抵抗力をつけるときに、肝臓が弱っているときに、二日酔いや自家妊娠中毒に、神経痛や関節の痛みに、病中・病後の回復に――。※万能薬ですね。「心の安らぎに」とかもつけ足したい。

ハ行
〇はじめ〔始め〕始めがだいじである。とくに人生においては、この感が深い。よい友を選び、よい学校を選び、よい仕事を選び、よい配偶者を選ぶのもよい心がけであるが、重要なことは、これらすべての始め、つまり、すぐれた両親を選んで生まれることである。※60年前から親ガチャみたいな考え方はあったんですね。
〇はちこうひろば〔ハチ公広場〕渋谷駅前にある理想的な待ちあわせ場所。忠犬ハチ公に感化されて、三時間ぐらい待ちぽうけをくっても、待っている男は少なくないという。
〇はんさつ〔藩札〕江戸時代に各藩が発行して、その領内だけに通用させた不換紙幣。転じて、他の大学では学者として通用しない大学教師。
〇ひざ〔膝〕男性のそれは退化して無きにひとしいが、女性のひざは、幼児の揺り藍となり、恋人のひざ枕となり、ついには夫の遺骨の運ばれるところである。また野外にあっては食卓としても利用される。女はひざを見てもらえ、と言われるゆえんである。※「嫁は手を見てもらえ」この人が膝フェチなだけだと思います。
〇ひつよう 〔必要〕なくてはならぬこと。たとえば、離婚するには相手が必要である、 というぐあいに。
〇ひまんしょう〔肥満症〕やせる思いで太ってる。
〇ふかのう〔不可能〕もし字書に「不可能」の字がなかったら、「可能」の項か、「不」の項を見ること。それでもないときは、誤植か脱落であるから、出版社に知らせて、とりかえてもらうこと。※もしくはナポレオン専用の辞書かも知れませんね。
〇ブラジャー〔brassiere〕吊れば二人用ハンモック、かぶせるだけなら二人用の枕蚊帳。※どれだけ大きいんでしょう?
〇ぶんめい〔文明〕より多くの人間を、より短い時間に、殺そうとする一連の試み。
〇ほうちこく〔法治国〕悪いことをして、見つかったが最後、よほど金でもないと.法律で罰せられる国。
〇ほととぎす〔時鳥〕共かせぎで忙しい鳥なので、ほおじろ、うぐいすなどの巣に産卵して、託児所にする。

マ行
〇まがりかど〔曲がり角〕まがりかど、などと思うのは希望的観測であって、しばしば行き止まり。
〇まご〔孫〕ごみの一種であるが、目の中に入れても痛くない、と言われる。
〇まちびと〔待ち人〕待っている人、といっても、日本語では曖昧であるが、たとえば、甲が乙を待っているとすれば、ここでは乙を指す。まちびとは、大きく二つにわけて、来るのと来ないのとある。前者を待ち人来たると言い、後者を待ち人来たらずと言う。
〇みうり〔身売り〕あさり貝などについて言う。中身だけを売ること。※貝類を女性器の隠喩として使っているのかも。
〇みけいけん〔未経験〕経験のあるふりをする人と、経験のないふりをする人とあり。
〇みず〔水〕ひやせばギョッと氷結し、熱すればポーッと気化し、汚れた靴下をひたせば、にごる性質がある。
〇みずのみぴゃくしょう〔水呑み百姓〕水なんぞ呑んでいては働けないので、じっさいには、茶の子、朝めし、小昼、昼めし、おやつ、夕めし.夜食の七回めしを食って重労働する百姓。
〇みぼうじん〔未亡人〕いまだ亡びない人、の意であるが、なかなかほろびるどころではない。それは、喪服を着るやいなや嫣然と輝きを増し、口に亡夫をとむらい、「私などもう――」などと、枯淡をよそおいながら、目、いや全身で「求めよ、さらば――」のそぶりを見せる、まことに美しき矛盾の権化である。※「求めよ、さらば開かれん」(マタイ伝)。未亡人フェチの人ですかね?
〇むせきにん〔無責任〕責任がないこと。たとえば、子供は親を選ぶことができないので、親に対して責任がない。
〇むなげ〔胸毛〕胸、とくに男性のそれにはえる毛。流行とはいえ、これを自慢にするようになっては男もおしまいである。人間はいまさら猿(えて)公に逆もどりもできない。※007のショーン・コネリーみたいに胸毛が男らしさの象徴として流行ってたようです。今ではムダ毛処理の方向ですよね。
〇むりしんじゅう 〔無理心中〕 デパートの屋上などから、通行人に飛びおりていっしょに死ぬこと。
〇め〔目・眼〕女性にあっては口以上に物を言う器官。ただし、両方同時に用いることはまれである。すなわち、目で物を言うときは、口は栄養の補給に忙しく、口で物を言うときは、目は通常伏せられている。鼻汁やよだれを避けるため顔の上部に位置している。
〇めいしきょり〔明視距離〕見合いのとき、相手がもっともはっきり見える距離。二十五センチから三十七センチとする。
〇もうけん〔猛犬〕じっさいには、いない犬。たとえば、女所帯などで無用心なので、猛犬ありというフダをかかげる。
〇もちあわせ〔持ち合わせ〕多くのぱあい、ないもの。したがって、いつも否定語と共に川いられる語。

ヤ・ラ行
〇やきゅう〔野球〕プロでないものをアマ、アマでないものをプロ、どっちでもないのをノンプロと呼ぶスポーツ。
〇ゆうき〔勇気〕生まれるのにもいらず、死ぬのにも不必要で、生きるにはむしろじゃまなもの。
〇りっぷく〔立腹〕「腹へり男は腹だち男」と言うが、一匹の魚を釣るのに十時間もつくねんとしていた男が、帰宅して魚の焼けるのが十分もかかると、即座に女房をけとばすことになる。したがって、ある文明国の刑法では、空腹時の暴力行為は、罪が軽いことになっている。
〇りゅうこうさっか〔流行作家〕四百字詰め原稿用紙の二百字を税金のために書く愛国者。
〇レディーファースト〔lady first〕婦人を優先すること。たとえば、心中したぱあい、女の名前を先に呼ぶこと。例――お夏清十郎、お半長右衛門。※お半長右衛門は「桂川連理柵」で心中した二人。年の差が二十歳以上でお半はまだ14歳でした。まあ、二人とも強盗に殺されたというのが真相らしいですが。

※うん、これで4000字くらいで、noteの記事一回の推奨文字数は2000字くらいらしいので、既にだいぶ超過しています。しかし、このペースでもなかなか最後まで行き着かないのが分かったので、次回からはさらにスピードアップしていきます。一応章立てと一回のアップ量を最後まで決めたんですが、チョッ早で行っても全部で22回のシリーズになりそうです。まだ半分も行っていないんですよ。次章は見出し語に対して具体例を挙げるパターンの笑いです。
〇貧乏=立てば借金、すわれば家賃、歩く姿は質屋行き。
こんな感じのやつを一気に行きます。

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