ひとつづつ
いまから20年くらい前。
ジム初のボクシング世界戦。
デンマーク・コペンハーゲンでの
WBA世界バンタム級タイトルマッチへの挑戦が、
1ヶ月後に控えていた。
私は裏方としてやることが山ほどあって。
しかも、すべてが初めて。
呼吸が浅い日々を過ごしていた。
そんなとき、何度も何度も
電話で励ましてくれた人がいる。
ジョー小泉さん。

『ボクシングにとりつかれた男』
日本人で2人目の世界ボクシング殿堂入りを果たした国際マッチメーカーであり、ボクシング評論家、そして解説者。神戸出身で、50年以上前、父が現役プロボクサーだった頃の姿も見てきてくれた人。
約1ヶ月のあいだ、
電話口の向こうから、何度も繰り返し言ってくれた。
「ひとつづつ片付けていきましょう」
世界を見てきた人の声は、
しずけさの中に、強さがあった。
世界戦は敗れた。
コペンハーゲンの夜、
ジョーさんとソーセージを食べビールを飲んだ。
それ以来、焦りそうになるたびに
私は自分に言い聞かせている。
――ひとつづつ。
うくりえ

日本ボクシング協会の忘年会
ジョー小泉さんと

右がデンマーク、左が韓国
世界戦のときのもの
