ファンタジー|雲の上の配達屋リュカ|GPT5.4T
雲の上に、お菓子の町がありました。
町の名前は《シュガークラウド》。
朝になると、鐘の音より先に、パンやドーナツの焼ける甘いにおいが広がります。
白い雲の橋のあいだを小さな飛行グライダーが飛び回り、ケーキや飴、焼き菓子を町じゅうへ届けていました。
リュカは、その町で働く配達員のひとりでした。
黒い飛行帽に、大きなゴーグル。
金色の髪は風に流れ、少しとがった耳の横で揺れます。
そして、リュカの瞳は少し変わっていました。外側は青く、奥には金色がにじんでいて、空に夕日が溶けたような色をしていたのです。
けれど、リュカ自身はそんなことをあまり気にしていませんでした。
目の色より、空を飛ぶことのほうがずっと好きだったからです。
その日も、ひとつ配達を終えたあと、町はずれの風見台に腰を下ろして、いちごのドーナツを食べていました。
砂糖のかかった表面をひとくちかじると、さくっと音がして、甘い香りが口の中に広がります。
「やっぱり、ここのドーナツがいちばん」

そうつぶやいたとき、飛行帽の横で小さな鈴が鳴りました。
緊急の配達を知らせる合図です。
リュカは帽子の内側から細い伝票を取り出しました。
宛先:七番外縁区《青玻璃温室》
品物:夜明け前のリングタルト
日没までに、本人へ届けること
「青玻璃温室?」
リュカは眉をひそめました。
そこは町の外れにある古い区画で、最近はほとんど使われていない場所です。風の流れが不安定で、配達員たちもあまり近づきたがりません。
けれど、届けなければならない荷物があるなら話は別です。
リュカは残りのドーナツを食べ終えると、工房へ向かいました。
受け取った箱からは、こがし砂糖と、少しだけ柑橘の香りがしました。
工房の店主のおじいさんは箱を渡しながら、いつもより静かな声で言いました。
「気をつけるんだよ。あそこには、長いこと待っている人がいるからね」
リュカは首をかしげましたが、それ以上は聞かず、空へ飛び立ちました。
町の中心を離れるにつれ、景色は少しずつ変わっていきました。
明るくにぎやかだった通りは消え、古びた雲橋や、ひびの入った塔が目立つようになります。
空気まで静かになっていくようでした。
やがて見えてきたのは、青いガラスでできた丸い温室でした。
あちこちに細いひびが入り、その上から銀色の金具で補強されています。遠くから見ると、ひび割れた宝石のようでした。
リュカが中へ入ると、そこにはひとりのおじいさんがいました。
細い体をベンチに預け、静かな目でこちらを見ています。
「配達です。夜明け前のリングタルトをお持ちしました」
そう言って箱を差し出すと、おじいさんはすぐには受け取らず、リュカの顔をじっと見つめました。

つづく…
かも
