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【禍話リライト】使用不可レンジ

 足音が聞こえる怪談というのがある。古くは『遠野物語』から『新耳袋』『山怪』にいたるまで、名作も多い。
 これは、そんな短い話。

【使用不可レンジ】

 Aさんが郊外のコンビニに入った時のこと。
 時間は夜中の3時ごろだった。どこにでもある全国チェーンのコンビニで昔は地元の商店か何かで後にチェーンに入ったような店だった。
 広い駐車場に車を止めて、入店音を鳴らしながら皆で店に入る。
 奥には省力化のためかセルフレジだけがあった。そこに『御用の方は押してください』と厚紙に貼った紙が立てかけられており、横にベルが置かれていた。
「夜も遅いし、田舎だしな」と思ったのだそうだ。
 その紙の横に、もう一枚注意書きがあった。
『23時30分から朝4時まで電子レンジの使用をお断わりしています』
 友人2人と顔を見合わす。
「何で?」
「電圧? 関係ないか」
 よく見ると、注意書きの下に小さな字で説明がなされていた。
 曰く、
『(音が響きやすいため)』
「チーンて音が?」
 Aさんたちは、面白いことがないかと深夜に徘徊していたわけだから、若干愉快犯気質があった。電子レンジそのものは、店のガラス側、イートインスペースにあって、レジから少し距離があった。電子レンジの横にはその注意書きはない。
「知らない振りしてやってみない? 向こうには紙がないから、『知りませんでした』で通るよ」
 仲間と小さな声でささやき合う。
 店内を巡って、レンジにかけられそうなものを選んで会計を済ませ、電子レンジにかける。
「来るぞ来るぞ」

「チーン」

 音は普通だった。大きな音がすると思ったものだから肩透かしだ。
 息をのんで観察していたのがバカみたいだ。
 電子音が鳴っても、店員は出てくる気配もない。
「音は響いたって言えば響いたけど、そんなにうるさくもないよな」
 中のものはしっかり温まっている。
「まぁまぁ。もう出ようか」
 自動扉が開いて、田舎ならではの広い駐車場に出る。その先に国道があり、田園風景が広がっている。
 その田んぼの向こうから、一直線にこのコンビニに向けて走ってくる人が居る。
「えー!!」
 暗くてよく分からないが、女性のように見える。
「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ」
と水たまりを踏むような音がする。
 ただ、この日はもちろん、この数日は雨など降っていない。
 その女は、田んぼの中の簡単に舗装された農道をこっちに向かって全速力で走ってきており、おかしな足音がだんだん近づいてくる。
「怖い怖い怖い!」
 どうしていいか分からなかったので、店内に戻って、3人でトイレに逃げ込んだ。
「何、何?」
「怖い!」
「お前、見て来いよ。言い出しっぺだろ」
「嫌だ」
 コンビニ特有の、入店時の音が鳴る。
「ヤバい奴来た!」

 そこから皆で耳をふさいで外のことは気にせずに20分ほどトイレに籠っていた。恐る恐る出ると、店内には客はいない。
「めちゃくちゃ怖い」
「帰ろう帰ろう」
 窓越しに駐車場を見るも、人影はない。
「急げ急げ」
 自動ドアを抜けようとすると、後ろから、
「ありがとうございました~」
と声がかかった。
 今まで姿を見せなかった店員がレジに居て、こちらを見ている。
 全国共通の制服を着ていたから、普通の人間の店員だったっぽいがAさんたちには確認する勇気も体力も残っていなかった。

 Aさんは言う。
「バカバカしいと思っても、郊外のコンビニレジ横の指示には従った方がいいですよ」
 申し訳ないが、従わなかったAさんたちの自業自得といえる。
 最後にかぁなっきさんが聞いた。
「走ってきた人がどんな服装だったか思い出せませんか。例えばコンビニの制服だったとか」
「いや、普通の農作業をする人の服装でしたけどねぇ。あんまりちゃんと見てませんけど」
 それも、考えようによっては恐ろしい。
 なぜ、深夜の電子レンジの音で人が走ってくるのかはさっぱり分からない。禁忌を破ったからだろうか。
                           〈了〉
──────────
出典
禍話TTD 第十二夜(2026年6月27日配信)
23:48〜

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/837369705

※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。ボランティア運営で無料の「禍話wiki」も大いに参考にさせていただいています!

2026年上半期 禍話REBORN - 禍話 簡易まとめ Wiki*

★You Tube等の読み上げについては公式見解に準じます。よろしくお願いいたします。

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