親が亡くなったあと、家のこと。正解ルートを、全部お見せします
不動産を相続したとき、正解の進め方があります。
知っている人と知らない人で、最終的な手取りが数百万円変わります。
今日は、その正解ルートを全部お話しします。途中で「ここで間違えるとこうなる」というポイントが5つ出てきます。どれも、知っていれば防げることばかりです。
まず最初に、実際にあった話をさせてください。
「いつか売ろう」が、400万円の税金になった
相続した実家を「いつか売ろう」と思いながら、3年が過ぎた方がいました。
いざ売ろうとしたら、名義が亡くなった親のままだった。相続登記をしていなかったので、売却の手続きに入れない。手続きをして、ようやく売れた。
でも、本当の問題はそこじゃなかった。
使えるはずだった「3,000万円の特別控除」の期限が、いつの間にか過ぎていた。売却益2,000万円に対して、約400万円の税金がかかった。
控除を使えていれば、ゼロだったのに。
知っていれば、防げた話です。
まず、全体像を1枚で

親が亡くなったあと、やることは多いです。でも、全部を一度に覚える必要はありません。
重要な点を3つだけ、頭に入れておいてください。
重要な点3つ——
①「相続放棄の判断」
②「相続登記」
③「3,000万円控除の期限」
これが全部、不動産に絡んできます。しかも、誰も教えてくれない。
今日はこの「不動産の部分」に絞って、正解ルートをお話しします。
STEP1:まず不動産を「全部」把握する
最初にやること。亡くなった親がどんな不動産を持っていたか、全部把握してください。
「実家の1つだけでしょ」と思いますよね。ところが、そうとは限らないんです。
固定資産税の納税通知書に載っている不動産が全部だと思っている方が多いのですが、そこに載っていない不動産が存在する場合があります。非課税の土地、別の市区町村にある不動産、私道の持分。これが後から出てくると、手続きが全部やり直しになることがある。
2026年2月に始まった「所有不動産記録証明制度」を使ってください。法務局に申請すると、亡くなった方の名義で登記されている不動産を、全国一括でリスト化した証明書がもらえます。1通1,600円です。
正解ルートは、まずこれを取る。ここがすべての出発点です。
★間違えポイント① 知らない不動産が出てくる
ある方が、相続登記を司法書士に依頼していました。プロに任せたから安心だと思っていた。
ところが、実家の前の道路の私道の持分が漏れていた。
私道の持分って、固定資産税がかからないことが多いので、納税通知書にも載りません。司法書士の先生も、依頼された不動産の登記はきちんとやってくれていたのですが、私道の存在自体を把握できていなかった。
売却を進めていざ契約というタイミングで、私道の持分が名義変更されていないことが発覚した。そこから共有者を調べて、持分の処理をして——結局、売却が3か月遅れました。
プロに任せても、漏れることがある。
だから所有不動産記録証明で全体を把握する。1,600円で防げるトラブルです。
STEP2:きょうだいで話し合う
不動産の全体像が見えたら、次はきょうだいとの話し合いです。実家をどうするか。
法律上、きょうだい2人ならそれぞれ2分の1ずつ相続する権利があります。現金なら半分ずつ分ければいい。でも不動産は半分にできません。ここが揉めるポイントです。
遺産分割の調停件数は年間約1万7,000件で、増加傾向。相続財産の約4割が不動産です。
正解ルートは、早い段階で「売るのか」「住むのか」「貸すのか」の方向性を決めること。そのためにまず不動産の査定をして、「この家はいくらで売れるのか」「貸したら月いくら入るのか」を数字で共有すること。
感情で話し合うと、まとまりにくい。でも数字が見えると、選択肢が整理しやすくなります。「3,500万円で売れるなら、1人あたり1,750万円」とか、「月10万円で貸せるなら、年間120万円の収入」とか。
★間違えポイント② 配偶者が出てきて壊れる
きょうだい2人で話し合っていました。「売って半分ずつにしようか」と、ほぼまとまりかけていた。
ところが、次の話し合いのとき、きょうだいの奥さんが一緒に来た。
「この家、もっと高く売れるんじゃないの」「うちの主人はお義父さんの介護を手伝っていたんだから、もっともらえるはずでしょう」。
法律上、きょうだいの配偶者に相続権はありません。でも、実際の話し合いの場では、配偶者が一番強く意見を言うことが本当に多い。
きょうだい本人は「まあ、半分でいいか」と譲れるんですが、配偶者は「うちの家族の損」として受け止めるから、譲りにくい。こうなると、2人の話だったのが4人の話になる。感情が入って、収拾がつかなくなる。
正解ルートは、最初の話し合いを相続人だけでやること。方向性が決まってから、それぞれの配偶者に共有する。
★間違えポイント③(番外) 遺言書があっても揉める
「うちには遺言書があるから大丈夫」と思っている方にも伝えたい話があります。
ご両親が遺言書を作成していました。内容は、長男に多めに配分するというもの。理由は、長男夫婦が親の介護をする前提だったからです。長男夫婦は自宅を売却して、親と同居を始めました。
ところが、1年半ほどで両親は施設に入ることになった。
そうなると、きょうだいから見たらどうなるか。「介護をする前提で配分が多かったのに、1年半しかやっていない。話が違うじゃないか」。
遺言書の内容自体は有効です。でも、感情としてきょうだいが納得できない。これは揉めます。
遺言書は「その時点での前提」で書かれます。でも、相続が発生するまでの間に、状況が変わることがある。介護の期間、施設入居、健康状態——全部変わりうる。
遺言書があるから安心、ではない。状況が変わったら見直す。
★間違えポイント③ 「とりあえず共有名義」の結末

きょうだいの話し合いで、一番やってはいけない結論があります。
「とりあえず、2人の共有名義にしておこう」。
これ、公平に見えるんです。半分ずつだから平等でしょ、と。でも共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば売れない。
今は2人の仲がいい。でも5年後、10年後。片方が「もう売ろう」、もう片方が「まだ売りたくない」。こうなると身動きが取れない。固定資産税は毎年かかり続ける。管理もしなきゃいけない。でも売れない。
さらに怖いのは、共有者の1人が亡くなった場合。その持分がさらにその子どもに相続されます。
実際にあった話です。10年前に2人で共有にした実家。その後、片方が亡くなって、その子ども2人に持分が相続された。今、所有者が3人。3人の意見がまとまらない。もう弁護士を入れないと解決できない状態になっている。
正解ルートは、単独相続か、売却して現金で分けるか。どちらかを選ぶ。共有にしない。
そして、2023年の民法改正で、相続開始から10年経っても遺産分割が済んでいない場合、法定相続分で画一的に分割されることになりました。「介護をしていたから」「同居していたから」——こういう事情が考慮されなくなる可能性があります。先送りにして、いいことは1つもないです。
STEP3:売るか、住むか、貸すか
きょうだいの話し合いで方向性を決めるとき、「売る」以外の選択肢も考えてほしいのです。
判断するには、3つの数字が必要です。
売ったらいくらか(売却査定)
住んだ場合の維持費はいくらか
貸したら月いくら入るか(賃貸査定)
この3つが揃わないと、実は判断ができません。「売る」しか選択肢を考えていない方が多いのですが、住む場合のコストや貸した場合の収入も見た上で、比較して初めて「うちはこうしよう」と決められます。
ここで、売却を選ぶ場合に絶対に知っておいてほしい話があります。
★間違えポイント④ 3,000万円控除の期限を知らなかった

相続した空き家を売却すると、一定の要件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引ける制度があります。「相続空き家の3,000万円特別控除」です。
売却益が3,000万円以内なら、税金がゼロになる可能性が高い。
ただし、この控除には期限があります。
親が亡くなった日から3年目の年末まで。
制度自体の期限は2027年12月31日。2026年に亡くなった方の場合も、実質的にここが期限になります。
冒頭でお話しした方は、この期限を知らないまま「いつか売ろう」と放置しました。気づいたときには期限を過ぎていて、売却益2,000万円に対して約400万円の税金がかかった。
控除を使えていれば、ゼロだったのに。
主な要件も確認しておいてください。
昭和56年5月31日以前に建てられた家屋
親が亡くなる直前まで1人で住んでいた(老人ホーム入所も一定要件で可)
相続後、売却するまで空き家のまま
売却価格が1億円以下
相続人3人以上の場合、控除額は2,000万円に下がる
確定申告が必須
2024年の改正で、買い主が解体や耐震改修をするケースもOKになりました。売る前に自分で解体しなくてもよくなった。
正解ルートは、この控除の期限を把握した上で、逆算してスケジュールを組むこと。
不動産の売却は、査定から引渡しまで3〜6か月かかります。期限ギリギリで動き始めると間に合わない可能性があります。
「いつか売ろう」が、一番高くつきます。
STEP4:名義変更と売却を並行して進める
売ることが決まった。では、実際に売却を進めます。
★間違えポイント⑤ 名義変更せず、売れない
不動産を売却するには、名義が相続人に変わっている必要があります。亡くなった親の名義のままでは、売買契約ができません。
これが相続登記です。2024年4月から義務化されていて、相続を知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。
でも過料より切実なのは、「登記しないと売れない」ということ。売却を決めてから登記を始めると、そこからさらに時間がかかって、3,000万円控除の期限に間に合わなくなることがある。
正解ルートは、方向性が決まったら、相続登記と売却査定を同時に進める。
2024年4月より前に発生した相続で、まだ名義変更をしていない方。期限は2027年3月31日です。
もし、きょうだいの話し合いがまとまらない場合は「相続人申告登記」という応急措置があります。「私は相続人です」と法務局に届け出るだけで、義務を果たしたとみなされます。まとまらないなら、まずこれだけでもやっておく。
STEP5:確定申告を忘れない
売却が完了したら、翌年2〜3月に確定申告をしてください。
3,000万円控除を使う場合、申告しないと控除が適用されません。「控除で税金ゼロだから何もしなくていい」ではないんです。申告して、初めてゼロになる。
もう1つ。取得費——つまり親が家を買ったときの売買契約書——がある方は、必ず用意してください。これがないと、売却価格の5%しか取得費として認められず、税金が大きく増える可能性があります。古い契約書が数百万円の価値を持つことがあります。
正解ルート vs 間違えルート

同じ不動産を相続して、同じ家を売却して。でも、進め方を知っているかどうかで、結果がここまで変わります。
どのポイントも、特別な技術は必要ないんです。「知っているかどうか」だけ。
最後に
相続は突然来ます。転倒1回で入院して、そのまま——ということもある。「自分はまだ先の話だ」と思っていても、そのときに「あの記事で読んだやつだ」と思い出せるかどうかで、最初の一歩がまったく違います。
この記事を保存しておいてください。いつか必ず見返すときが来ます。
最後に1つだけ大事な話をさせてください。
相続した家をどうするか。多くの方が不動産会社に「いくらで売れますか」と聞きます。でも、本当に必要なのは「売ったらいくらか」だけじゃなくて、「住んだ場合の維持費はいくらか」「貸したら月いくら入るか」。この3つを並べて比較することです。
普通の不動産会社に頼むと、「売りましょう」しか提案されないことが多い。売った方が不動産会社は儲かるので。
でも売る・住む・貸す、3つの選択肢を整理した上で判断しないと、あとから「住んだ方がよかったんじゃないか」「貸した方がよかったんじゃないか」と後悔することがある。
当社では、3つの選択肢を全部整理した上で、一緒に判断するスタイルでやっています。しかも、親御さんが施設に入っていた場合は施設紹介もセットで対応できます。施設の費用と不動産の収入を並べて見られるのは、うちならではだと思います。
「うちの場合、どうすればいい?」と気になった方は、お気軽にご相談ください。相談だけでも大丈夫です。
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