見出し画像

IHI(7013)は本当に「やばい」「不正」なのか 〜40年の検査データ改ざんでも過去最高益・株価5年8倍、航空エンジンと防衛の実像を3層検証〜

こんにちは、ウマキです。

「IHI」と聞いて、何をつくっている会社かすぐに答えられる人は、そう多くないと思います。かつての石川島播磨重工業。名前を聞いてもピンとこないけれど、実は飛行機のジェットエンジンや、次期戦闘機のエンジン、ロケット、橋、発電設備といった、社会の裏側を支える重厚長大な事業をいくつも抱える、日本を代表する重工メーカーのひとつです。

その地味な会社の株が、この数年で様変わりしました。株価は5年で8倍近くにまで駆け上がり、2025年には株式を7分割してもなお上場来の高値圏。防衛と航空の追い風に乗って、日本株のなかでも指折りの出世株になっています。

ところが、この銘柄を検索すると、華やかな数字とは裏腹の言葉が並びます。「IHI 不正」「IHI やばい」。実際、子会社では40年近くも検査データの改ざんが続いていたことが明るみに出て、大きく報じられました。株価が高いところにいるだけに、「これはもう天井では」「不正体質の会社を高値で買って大丈夫なのか」という不安の声も、決して小さくありません。

絶好調の株価と、まとわりつく「不正」「やばい」の評判。この二つは、いったいどう折り合いをつければいいのでしょうか。

この記事では、IHIにつきまとう「やばい」という評判を、いったん全部そのまま受け止めたうえで、決算とニュースの事実に照らして解体していきます。あの不正は会社の根っこを腐らせているのか。株価5倍・6倍の上昇は、防衛バブルのただの熱狂なのか。そして最後に、いまの株価でこの株に手を出せるのかどうか、私なりの見方まで書いていきます。

なお、筆者のブログでも株・仮想通貨の情報発信をしています。よかったら覗いてみてください。
👉【ウマキの株と草コイン】ブログはこちら!

👇以下の記事ではテンバガーを発掘する方法を、詳細に記載しています。そちらも併せて参考にしていただければ幸いです。


まず、IHIがどういう会社かを押さえる

IHI(7013)は、東京に本社を置く総合重工メーカーです。ルーツは1853年、江戸時代の終わりに造られた石川島造船所までさかのぼります。日本で最も古い造船所のひとつから始まり、造船、橋梁、ボイラー、産業機械、そして航空エンジンへと事業を広げてきました。170年を超える歴史を持つ、まさに日本のモノづくりの原点のような会社です。

いまのIHIの事業は、大きく4つの領域に分かれています。発電設備やプラントを扱う資源・エネルギー・環境、橋や都市開発を担う社会基盤、車のターボチャージャーや物流機器をつくる産業システム・汎用機械、そしてジェットエンジンやロケット、防衛装備を手がける航空・宇宙・防衛です。

このなかで、いまのIHIの利益をほとんど一手に引き受けているのが、最後の航空・宇宙・防衛です。あとで詳しく見ますが、この1つの事業が全社の営業利益のおよそ7割を稼ぎ出しています。ほかの3事業が土台を支え、航空・宇宙・防衛が果実をもぎ取る。それが、いまのIHIの姿だと考えてもらって大きくは外れません。

残りの3事業も、地味ながら世界に通用する技術を抱えています。産業システム・汎用機械の部門は、自動車のエンジンに空気を送り込んで力を絞り出すターボチャージャー(過給機)で世界屈指のシェアを持ち、世界中の自動車メーカーに供給しています。乗用車から大型トラックまで、道を走る車の多くに、IHI製の過給機が積まれています。

資源・エネルギー・環境の部門は、火力発電のボイラーや、原子力関連の設備、そして石炭にアンモニアを混ぜて燃やす脱炭素発電の技術などを手がけています。社会基盤の部門は、大きな橋や、トンネルを掘るシールド掘進機といった、社会のインフラそのものをつくっています。派手ではないけれど、どれも一朝一夕には真似できない、重工ならではの厚みのある事業です。稼ぎ頭の航空・防衛だけでなく、こうした土台の事業が幅広くあることも、IHIという会社の底力になっています。

なかでも屋台骨は、民間航空機のジェットエンジンです。IHIは自社単独でエンジンを丸ごと1基つくるというよりも、アメリカやイギリスのエンジン大手が主導する国際共同開発に、有力なパートナーとして深く入り込んでいます。世界中を飛ぶ旅客機のエンジンの内部には、IHIがつくった部品が数多く組み込まれています。

そしてもうひとつの柱が、防衛です。戦闘機のエンジン、ミサイル(誘導弾)、ロケット。国が防衛費を大きく増やすなかで、この分野の受注が急速に膨らんでいます。日本・イギリス・イタリアが共同で進める次期戦闘機の開発では、IHIがエンジンの中核を担うことが決まっています。

つまりIHIは、「地味な重工会社」の顔をしながら、その内側では航空と防衛という、いま世界でもっとも需要が伸びている二つの分野をがっちり押さえている会社なのです。まずは、その足元の株価と指標を見ておきます。

数字で見るIHI

株価 2,878円(1Y +27.05%) / 時価総額 3兆1,167億円 / PER 18.5倍 / PBR 4.68倍 / 配当利回り 0.8%

株価は2,900円前後、時価総額は3兆円を超えています。日本の重工・機械メーカーのなかでも、堂々たる規模です。1年前と比べると株価は3割近いプラスで、チャートを見ると、いったん4,500円近くまで一気に駆け上がったあと、2,500円前後まで大きく調整し、そこからまた持ち直してきた、という荒い値動きになっています。

指標を見ると、PERは18倍台。これだけなら、特別に高いというわけではありません。ところがPBRは4.68倍と、重工メーカーとしてはかなり高い評価がついています。配当利回りも0.8%と、大型株のなかではむしろ低いほうです。

この「PBRが高くて利回りが低い」という組み合わせは、市場がIHIをどう見ているかを物語っています。配当をもらってのんびり持つ株ではなく、これから利益がぐんぐん伸びる成長株として買われている、ということです。重工メーカーというと、どっしり構えた地味な値動きを思い浮かべがちですが、いまのIHIは、市場からは完全に成長株の扱いを受けています。

「時価総額3兆円の重工大手」で「株価は5年で8倍」。この時点で、少なくとも明日どうにかなるような会社ではないことは、先に押さえておいてよいと思います。「やばい」という言葉の中身が、経営の危機なのか、それとも別の何かなのか。そこを混同しないことが、この記事の出発点です。

業績は、むしろ絶好調の側にいる

「不正でやばい」という評判とは裏腹に、IHIの足元の業績は、実はかなり好調です。ここを最初にはっきりさせておきます。

直近の2026年3月期(2025年度)の決算は、売上収益が約1兆6,434億円、営業利益は1,655億円で前の期から15.3%の増加、純利益にあたる親会社帰属の当期利益は1,610億円で42.8%もの増加でした。営業利益は過去最高を更新しています。減益に苦しむ会社ではなく、最高益を叩き出している会社なのです。

さらに会社自身が示している次の2027年3月期(2026年度)の見通しは、もっと強気です。営業利益は2,400億円で、なんと45%の増益を見込んでいます。利益が減るどころか、来期にかけて一段と伸びる、という絵を会社は描いています。

この好業績を引っ張っているのが、先に触れた航空エンジンです。世界の航空需要がコロナ禍から力強く回復し、飛び続ける旅客機の整備や部品交換の需要が爆発的に増えました。ここにきて防衛の受注も積み上がり、二つのエンジンが同時に噴かした格好です。

💡ここで一つ、頭の片隅に置いてほしいことがあります。「不正でやばい」と言われている会社が、同時に過去最高益を更新し、来期は45%の増益を見込んでいる。この時点で、評判と実態のあいだには、かなり大きなズレがありそうだ、ということです。

では次に、世間が言う「やばい」の中身を、ひとつずつ分解していきます。

「やばい」と言われる理由を、否定せずに並べてみる

まずは、IHIに不安を感じる人が挙げる材料を、こちらから先に並べます。都合の悪い話を伏せてしまうと、検証になりません。私が見るかぎり、「やばい」の中身は次の4つに集約されます。

  • ① 子会社で40年近く続いた、検査データの改ざん

  • ② 防衛バブルで買われすぎ——高値から一度4割も下げた

  • ③ 株価指標が割高——PBRは4.68倍、配当利回りは0.8%

  • ④ 来期の純利益は、ほぼ横ばいの予想

ひとつずつ、事実として確認していきます。

① 40年続いた、検査データの改ざん

これは、隠しようのない事実です。2024年、IHIの子会社であるIHI原動機で、船舶用エンジンの燃費データが長年にわたって改ざんされていたことが明るみに出ました。

規模も深刻でした。国内向けに出荷された舶用エンジンのうち、実に1,594台で燃費データが書き換えられており、そのうち796台は、実際の測定値が顧客と約束した仕様に届いていなかったとされます。しかもこの改ざんは、内部告発をきっかけに発覚したもので、証言によれば1980年代の後半から、およそ40年にわたって口伝えで引き継がれてきたというのです。

さらに読後感が悪いのは、社内で何度も内部通報があったにもかかわらず、開発部門の担当者がそれを握りつぶしていた、と特別調査委員会の報告書が指摘している点です。単なるうっかりミスではなく、組織ぐるみで長年ふたをしてきた不正だった。「不正体質の会社」という評判が立つのも、無理はありません。

💡ここは強がっても仕方がありません。「IHIの子会社が40年も検査データを改ざんしていた」——これは100%事実です。問題は、その不正がIHI全体にとってどれくらい致命的なのか、という話に尽きます。

② 防衛バブルで買われすぎ——高値から4割下げた

2つ目が、株価そのものへの不安です。IHIの株は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに世界中で防衛費の増額が意識されると、防衛関連株の代表格として一気に買われました。

その勢いはすさまじく、株価は分割前の水準で1万8,000円を超える上場来高値をつけます。ところが、その後は熱狂が冷めて、株価は高値から一時4割ほども下げる場面がありました。「防衛バブルに乗って上がっただけで、ブームが去れば元に戻る」「高値づかみした人が、たくさん含み損を抱えているのでは」という警戒感は、いまも根強く残っています。

チャートの荒さは、その不安を裏づけているようにも見えます。1年のあいだに4,500円近くまで駆け上がり、2,500円割れまで急落し、また戻す。これだけ荒い値動きだと、「怖くて手が出せない」という人がいるのも当然です。

③ 株価指標が、割高に見える

3つ目は、指標の割高感です。さきほど触れたとおり、IHIのPBRは4.68倍もあります。会社が解散したときに株主に戻ってくる純資産の、4倍を超える値段がついている計算です。重厚長大な重工メーカーとしては、これはかなり高い水準です。

配当利回りも0.8%と低く、インカム(配当収入)を目当てに持つ株ではありません。同じ重工大手の三菱重工と比べても、指標のうえでIHIは安いとは言えません。「これだけ買われたあとで、いまさら割高な値段で乗るのは危ないのでは」という声が出るのは、数字のうえでは筋が通っています。

④ 来期の純利益は、ほぼ横ばい

4つ目が、成長の頭打ち懸念です。さきほど「来期は営業利益45%増」と書きましたが、実は純利益のほうを見ると、来期の会社予想は約2.5%増と、ほぼ横ばいにとどまっています。

「営業利益は伸びるのに、純利益はほとんど増えない。ということは、成長はもう止まりかけているのでは」。ここだけを切り取れば、そう読めなくもありません。株価がこれだけ買われているのに、最終的な儲けが増えないのなら、割高感はますます強まります。

ここまでが弱気材料です。40年の不正、バブルの反動、割高な指標、そして純利益の頭打ち。並べてみると、たしかに「やばい」と言いたくなる気持ちも分かります。ただ、ここからが本題です。この4つは、IHIという会社の価値を、いったいどこまで壊しているのでしょうか。

その「やばい」を、事実で解体していく

弱気材料を並べたところで、今度は同じ事実を、別の角度から見直していきます。ひとつずつ丁寧に潰していくと、「やばい」の輪郭がかなり変わってきます。

不正の舞台は、稼ぎ頭とは別の場所だった

まず①の不正です。ここが一番の誤解だと私は考えています。

たしかに、40年の検査データ改ざんは深刻な不祥事です。でも、冷静に押さえておきたいのは、その不正が起きたのは「舶用エンジン」という、IHIの稼ぎ頭ではない事業だったという点です。

思い出してほしいのですが、いまのIHIの利益のおよそ7割は、航空・宇宙・防衛が稼いでいます。一方、不正の舞台になったIHI原動機の船舶用エンジンは、これとはまったく別の、規模の小さな事業です。つまり、会社のいちばん大事な稼ぎ頭である航空エンジンや防衛が、この不正で傷ついたわけではありません。

しかもこの舶用エンジンの燃費データ改ざんは、IHIだけの問題ではありませんでした。同じ時期に、川崎重工や日立造船(現・カナデビア)の子会社でも、船のエンジンをめぐる同種のデータ不正が次々と発覚しています。業界全体で長年見過ごされてきた根深い問題であって、IHIという一社が特別に悪質だった、という話とは少し違うのです。

もちろん、不正そのものを軽く見てよいという意味ではありません。信頼の毀損や、再発防止のコストは、確かに会社の負担になります。ただ、投資の観点で本当に大事なのは、その不正が会社の屋台骨を折るほどのものかどうかです。

この点で言えば、答えははっきりしています。40年の不正が世に出たあとも、IHIは営業利益を過去最高まで伸ばし、株価も高値圏を保っています。もし不正が会社の根幹を揺るがすものだったなら、こうはなりません。

舶用エンジンの燃費不正は、IHIの利益の芯である航空・防衛には、直接には及んでいないのです。ここを取り違えて、「不正が出た=会社全体がやばい」と短絡すると、判断を大きく間違えます。不正の深刻さと、投資対象としての傷の深さは、分けて考える必要があります。

💡「不正だらけの会社」というイメージと、「利益の7割を稼ぐ航空・防衛は不正と無縁」という実像。この二つのギャップこそが、IHIの評判と実態のズレの正体だと思います。

本当の稼ぎ頭は、飛び続ける旅客機の「アフター」

では、IHIは実際にどこで稼いでいるのか。その主役が、民間航空エンジンのアフターマーケット、つまり整備や部品交換のビジネスです。

飛行機のエンジンは、機体に取り付けて売って終わり、ではありません。安全のために、決められた時間ごとに分解して点検し、傷んだ部品を新品に交換する必要があります。世界中を飛ぶ旅客機が飛び続けるかぎり、この整備と部品の需要は、途切れることなく発生し続けます。

IHIは、アメリカやイギリスのエンジン大手が主導する国際共同開発に、長年パートナーとして参画してきました。代表的なのが、世界でもっとも売れた小型機エアバスA320シリーズに積まれてきたV2500というエンジンです。この機体は世界中に大量に飛んでおり、その膨大な数の稼働機が、これから何年、何十年と整備と部品交換の需要を生み続けます。

このビジネスの旨みは、その収益構造にあります。エンジン本体は、機体メーカーへの売り込み競争が激しく、必ずしも大きな利益が出るわけではありません。ところが、いったん世界の空に飛び立ったあとの整備と部品交換は、そのエンジンをつくったメーカーがほぼ独占します。安全にかかわる部品を、素性の分からない安物で代替するわけにはいかないからです。

だからこそ、本体を薄利で送り出しても、そのあと何十年と続くアフターで、しっかり利益を回収できる。プリンター本体を安く売ってインクで稼ぐビジネスと、構造はよく似ています。しかも飛行機のエンジンは、部品ひとつが数十万点にもおよぶ精密機械で、寿命が来た部品を計画的に交換していく必要があります。つまり、いったん世界の空にエンジンが増えれば増えるほど、その先の何十年ぶんの部品需要が、あらかじめ約束されたようなものなのです。

新しい機体向けでも、IHIは燃費のよい最新エンジンの複合材ファン部品などを担っています。エンジンを一度共同開発に食い込ませておけば、その機体が世界の空を飛ぶあいだじゅう、部品と整備の売上が入り続ける。これは、一度築くと簡単には崩れない、息の長い高収益ビジネスです。

いま世界の航空需要はコロナ禍から力強く回復し、旅客機はかつてないほど飛んでいます。だからこそ、このアフターマーケットの需要が爆発し、IHIの利益を大きく押し上げているのです。IHIは、この民間航空エンジン事業を2030年代に売上6,000億円規模へと育てる計画を掲げています。

防衛は「量」と「質」が同時に良くなっている

もうひとつの柱が、防衛です。ここも、いまのIHIを語るうえで外せません。

日本は防衛費を大きく増やす方針を打ち出し、この予算はエンジンやミサイルといった装備の受注として、IHIに流れ込んでいます。単純に受注の「量」が増えているのです。

日本政府は、防衛費を5年間で総額43兆円規模へ引き上げる方針を掲げています。この巨大な予算が、エンジンやミサイルといった装備の受注として、IHIに流れ込んでいるのです。

そして「質」も上がっています。象徴が、日本・イギリス・イタリアの3カ国が共同で進める次期戦闘機の開発計画(GCAP)です。機体づくりの主役は三菱重工ですが、そのエンジンの中核をIHIが担うことが決まっています。

戦闘機のエンジンは、国の安全保障の根幹にかかわる最先端技術のかたまりです。実際、IHIは自前で戦闘機用エンジンを開発できる、日本で数少ない企業のひとつです。簡単に他社が代わりを務められるものではなく、ここに食い込んでいること自体が、IHIの強力な堀になります。

しかもこの手の国家プロジェクトは、いったん始まれば開発から量産、その後の維持整備まで、何十年にもわたって続きます。目先の一発の受注ではなく、長い時間をかけて積み上がる仕事だという点が、防衛の受注の質を押し上げています。国の予算が裏づけになっているぶん、民間の景気に左右されにくい安定した稼ぎ場でもあります。

戦闘機だけではありません。相手の射程の外から撃てるスタンドオフミサイル(誘導弾)や、ロケットのモーター、無人の潜水機(UUV)など、防衛の最先端分野でIHIは中核的な役割を担っています。防衛費の増額が一過性のブームではなく、10年単位の国家方針として続くのなら、この受注の積み上がりも、長く続くことになります。

💡目先の株価がどれだけ荒く動いても、航空エンジンのアフターと、GCAPを軸にした防衛という二本柱は、簡単には揺らぎません。IHIの評価が上がったのは、ブームの熱狂だけが理由ではないのです。

脱炭素という、もうひとつの芽

強気の材料として、もう少し先の話も足しておきます。IHIには、航空と防衛のほかに、じわじわと育ちつつある次の芽があります。脱炭素、なかでもアンモニアと水素をめぐる技術です。

アンモニアは、燃やしても二酸化炭素を出さない燃料として、いま世界的に注目を集めています。IHIは、火力発電所で使う石炭にこのアンモニアを混ぜて燃やし、CO2の排出を減らす技術で、世界の先頭を走っています。すでに国内の大手電力会社の発電所で、実際に石炭にアンモニアを混ぜて燃やす実証を成功させました。

火力発電への依存が高いアジアの国々にとって、発電所をまるごと建て替えずに、燃料を混ぜるだけでCO2を減らせるこの技術は、現実的な脱炭素の切り札になりえます。IHIはこのアンモニアを、つくり、運び、燃やすという一連の流れを、事業としてまるごと押さえにいこうとしています。

もちろん、これはまだ本格的にお金を稼ぐ段階には入っていません。ただ、航空と防衛という足元の二本柱に加えて、10年単位で育つ第三の柱の種がまかれている。この点は、IHIの将来を考えるうえで、頭の隅に置いておいてよいと思います。

「純利益は横ばい」のカラクリ

最後に、④の純利益の頭打ち懸念です。ここは、多くの人が誤解しているポイントで、知っておくと見え方が変わります。

さきほど「来期は営業利益45%増なのに、純利益はほぼ横ばい」と書きました。一見すると矛盾していますが、これにははっきりした理由があります。

直近の2026年3月期は、土地の売却益といった、その年かぎりの特別な利益が純利益を大きく膨らませていました。純利益が42.8%も増えたのは、本業の力に加えて、こうした一時的な収益が乗っかっていたからです。来期はその一時的な利益がなくなるぶん、純利益の伸びが小さく見える、というだけの話です。

大事なのは、本業のもうけそのものを表す営業利益は、来期に45%も伸びる見通しだという事実のほうです。純利益の横ばいは「成長の頭打ち」ではなく、「去年の一時的なゲタが外れる」だけ。むしろ本業は、力強く伸び続けています。ここを純利益の数字だけで「成長が止まった」と読むと、IHIの実力を大きく見誤ることになります。

ここまで見てきたとおり、「やばい」と言われる4つの材料は、事実として確かめていくと、その多くが会社の芯とは別のところの話であったり、数字のトリックであったりします。では、この会社は投資対象として、いまどう向き合えばいいのか。ここからが本題です。

で、いまの株価でIHIは「買い」なのか

ここまでで、「やばい」と言われる4つの材料を並べ、その一つひとつを事実で見直してきました。40年の不正は深刻だけれど、その舞台は稼ぎ頭ではない舶用エンジンだったこと。利益の7割を航空・防衛が稼ぎ、その柱は簡単には崩れないこと。

株価は荒く動いたけれど、上昇はブームの熱狂だけが理由ではないこと。そして純利益の横ばいは、一時的な利益が外れるだけで、本業はむしろ伸びていること。ひとつずつ確かめていくと、評判と実態のズレが、かなりはっきり見えてきました。

材料はそろいました。ここからは、いちばん知りたいところに踏み込みます。では、2,900円といういまの株価で、IHIは実際に買えるのか、買えないのか。評判の解体だけで終わらせず、投資対象として手を出せるのかどうか、私なりの見方を書いていきます。

ここから先は

3,745字 / 1画像
この記事のみ ¥ 300
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

500円以下の個別銘柄・個別仮想通貨記事を、全て閲覧することが出来ます。ニッチな小型株情報など、より…

【20名限定】スタンダードプラン

¥500 / 月
あと1人募集中

【通常価格】スタンダードプラン

¥1,280 / 月

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?