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住友商事(8053)の株価は今後どうなるのか 〜1株→4株分割でストップ高、過去最高益6,003億円でも9部門の増益合計は5億円だけを3層検証〜

こんにちは、ウマキです。

住友商事(8053)の株価は、2026年7月28日の終値で1,591.5円でした。この1年で+64.97%、5年では+329.27%です。時価総額は7兆6,081億円あります。

数字だけ並べると、絵に描いたような優等生に見えます。実際、2026年5月1日に発表された2026年3月期の決算は、当期利益6,003億円で過去最高でした。同じ日に1株を4株に分ける株式分割、800億円の自社株買い、10円の増配まで一気に公表し、株価はその日ストップ高になっています。

ところが、そこから3か月たったいまの株価は、5月13日に付けた1年高値1,943.8円から18%下げた位置にあります。ストップ高で買った人は、まだ含み損の可能性すらあります。

そしてもう一つ、決算短信を最後まで開くと妙なものが出てきます。増益385億円のうち、9つある営業グループの利益合計の増加分は、たった5億円しかありません。残りはどこから出てきたのか。この記事では、決算短信・決算説明会資料・適時開示という一次情報を全部たどって、住友商事の株価がこれからどう動くのかを3つの層に分けて確かめていきます。

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1,591円という株価が置かれている現在地

1年で+64.97%、それでも高値からは18%安い株価

株価 1,591.5円(1Y +64.97%) / 時価総額 76,081億円 / PER 12.0倍 / PBR 1.63倍 / 予想配当利回り 2.51%

まずは株価そのものをたどります。

2025年の夏、住友商事の株価は分割後換算で920円台でした。1年安値の920.7円を付けたのが2025年8月4日です。そこからじりじりと水準を切り上げ、2026年1月には1,400円台へ乗せています。この間はきれいな右肩上がりで、急騰らしい急騰はありませんでした。

流れが一変したのが2026年5月1日です。前日の終値1,460.0円に対し、この日は値幅制限いっぱいの1,710.0円でストップ高になりました。分割前の株価で言えば5,840円から6,840円へ、1日で1,000円の上昇です。上昇率は+17.1%で、出来高は6,855万株と前日の約3.8倍に膨らみました。

きっかけは同日に出た決算発表でした。この日に公表された材料を並べると、次の5つになります。

  • 2026年3月期の当期利益6,003億円という過去最高益

  • 1株を4株に分ける株式分割

  • 800億円を上限とする自社株買い

  • 年間配当を150円へ10円引き上げる増配

  • 20年間ずっと足を引っ張ってきたニッケル事業からの撤退

これだけ一度に出たわけですから、市場が反応しないほうが不自然です。

ストップ高は1日で終わりませんでした。翌営業日の5月7日にはさらに1,850円まで買われ、5月13日には1,943.8円という1年高値を付けています。5月の連休を挟んだわずか2週間で、株価は1,460円から1,944円へ、33%も上げた計算になります。

ところが、そこから先が続きませんでした。6月から7月にかけて株価はじりじりと戻り売りに押され、7月28日の終値は1,591.5円です。高値からの下落率は18.1%になります。1年で+64.97%という華やかなリターンの中身は、5月の2週間で作った上げと、その後3か月かけて2割近く吐き出した下げの組み合わせです。

💡1年騰落率だけを見て買うと、こういう銘柄はいちばん危ないです。上げた時期と下げた時期が偏っている株は、平均のリターンが実態を隠してしまいます。

5年で4.3倍になった株を、いまから買うということ

もう少し長い時間軸も見ておきます。

5年チャートをたどると、2021年の住友商事の株価は分割後換算で370円前後でした。そこから5年で1,591.5円ですから、+329.27%、株価はおよそ4.3倍になっています。配当を含めればリターンはさらに上乗せされます。

この5年は、そのままバークシャー・ハサウェイが日本の商社株を買い集めた期間と重なります。2020年8月に5大商社の株式をそれぞれ5%超取得したと公表して以降、バークシャーは段階的に買い増しを続けてきました。

2026年3月の時点で保有比率は三菱商事10.8%、三井物産10.4%、伊藤忠10.1%、丸紅9.8%、住友商事9.7%です。そして2026年5月には住友商事と丸紅でも議決権割合が10%を超え、5社すべてで10%台に乗りました。バークシャーが持つ商社株の時価は354億ドル、日本円でおよそ5.5兆円にのぼります。

ただ、投資判断としてはここが悩ましいところです。株価が4.3倍になった後というのは、割安だから買われた局面がすでに終わったあとを意味します。2021年に住友商事のPBRは0.5倍台でした。いまは1.63倍です。同じ会社を、3倍の値段で買うかどうかという話になります。

5年チャートで一つ目を引くのは、上昇のカーブが2026年に入ってから急になっている点です。2021年から2025年半ばまではなだらかな右肩上がりでしたが、2025年秋以降は傾きがはっきり立っています。この加速がバリュエーションの切り上がりによるものなのか、利益の実力が伸びたことによるものなのか。ここを見極めないと、いまの1,591円が高いのか安いのか判断できません。

そこで、まずは利益の中身から確かめていきます。

過去最高益6,003億円を分解する

住友商事の2026年3月期は、当期利益(親会社の所有者に帰属)が6,003億円で過去最高でした。前期の5,619億円から385億円の増益です。ROEは12.4%から12.9%へ上がりました。

見出しだけ読めば文句のつけようがありません。ただ、決算短信の中身を開いていくと、この385億円の出どころがかなり特殊であることが分かります。

増益385億円のうち、9つの営業グループの合計はわずか5億円

住友商事は事業を9つの営業グループに分けて開示しています。決算短信のセグメント別内訳を、そのまま並べてみます。

  • 鉄鋼 684億円 → 743億円(+59億円)

  • 自動車 512億円 → 632億円(+120億円)

  • 輸送機・建機 1,015億円 → 889億円(△126億円)

  • 都市総合開発 771億円 → 815億円(+45億円)

  • メディア・デジタル 452億円 → 512億円(+60億円)

  • ライフスタイル 141億円 → △36億円(△177億円)

  • 資源 911億円 → 823億円(△88億円)

  • 化学品・エレクトロニクス・農業 214億円 → 265億円(+51億円)

  • エネルギートランスフォーメーション 964億円 → 1,024億円(+60億円)

増えたグループと減ったグループが入り混じっています。ここまでなら、どこの会社にもある普通の決算です。

問題は合計です。9グループの利益合計は、前期5,664億円に対して当期5,669億円でした。増加はわずか5億円、率にすれば+0.1%です。

では385億円の増益はどこから来たのか。答えは同じ表のいちばん下、消去又は全社という行にあります。ここが前期の△45億円から当期は+335億円へ、380億円改善しています。営業の現場ではなく、本社の勘定で385億円のほぼ全額が生まれた計算です。

会社自身も、この行の増減要因を隠していません。決算短信には「繰越欠損金等に対する税効果計上」と、はっきり書かれています。

⚠️ 事業セグメントの合計が横ばいで、本社勘定だけが380億円改善して過去最高益になった。これが2026年3月期の実像です。

304億円は、税金の計算をやり直して出てきた利益

もう一段だけ深く潜ります。決算短信の末尾、「会計上の見積りの変更」という注記に、この380億円の正体がはっきり書かれています。

子会社であるSCSK株式会社がグループ通算制度に加入する見込みとなったため、将来の課税所得の見積りを見直した。その結果、税務上の繰越欠損金と将来減算一時差異に対して、新たに繰延税金資産を認識した。この変更により、304億200万円の利益を法人所得税費用に計上した。会社の説明はこうなっています。

言い換えると、SCSKを完全子会社にしたことで、住友商事グループ全体で将来の税金を減らせる見込みが立った。その節税効果を、会計ルールにしたがって今期の利益として先に計上した、ということです。

実際、法人所得税費用は前期の△866億円から当期は△517億円へ、349億円軽くなっています。税引前利益が6,956億円から7,020億円へ64億円しか増えていないのに、当期利益が6,090億円から6,503億円へ413億円伸びたのは、この税負担の軽さが理由です。

ここは誤解のないように書いておきます。この処理は会計基準にのっとった正当なものですし、SCSKを買った以上、いつかは認識される効果でもあります。節税そのものは将来の現金支出を実際に減らします。

ただし、株主として押さえておくべき点が2つあります。

  • これは1回限りの計上です。同じ理由で来期も304億円が乗ることはありません

  • 現金が入ってきたわけではありません。将来の税金が減る見込みを、いま利益として先取りしただけです

つまり、過去最高益6,003億円という数字は事実ですが、その増益分をそのまま稼ぐ力が伸びた証拠として読むことはできません。

💡決算の見出しと注記の距離が、この会社ではかなり離れています。過去最高益という言葉に納得する前に、短信の最後の1ページまで開く価値がありました。

基礎的収益は5,150億円から5,280億円、伸びは+130億円

会社側も、この構造を分かったうえで開示しています。

住友商事は当期利益を、資産の売却益などを含まない基礎的収益と、資産入替関連及び特殊損益の2つに分けて示しています。この区分でいくと、2026年3月期は次のようになります。

  • 基礎的収益 5,150億円 → 5,280億円(+130億円)

  • 資産入替関連及び特殊損益 470億円 → 720億円(+250億円)

  • 合計 5,619億円 → 6,003億円(+385億円)

385億円の増益のうち、250億円は資産を売って出した利益や特殊要因の増加分でした。そして繰越欠損金の税効果も、この特殊損益の側に入っています。

平常運転で稼いだ利益の伸びは、+130億円、率にして+2.5%です。 売上高にあたる収益が7兆3,373億円ある会社の、130億円です。

もちろん、資産を売って利益を出すこと自体は商社の本業の一部です。買って、育てて、高く売る。この回転こそが商社のビジネスモデルだという見方は正しいですし、住友商事は中期経営計画でも資産入替を明確に戦略として掲げています。2024年度から2026年度の3年間で、資産入替による現金回収の計画を8,000億円から1兆1,000億円へ増額したほどです。

ただ、資産の売却益は積み上がるものではありません。売れば手元の事業は減ります。毎年同じ規模の売却益を出し続けるには、毎年それだけの資産を仕込み続ける必要があります。基礎的収益が+130億円しか伸びていないという事実は、そのまま来期以降の宿題として残ります。

1兆円を投じて、年30億円しか稼いでいない事業群

もう一つ、決算説明会資料のなかにさらりと置かれている、なかなか重い数字があります。

住友商事は事業ポートフォリオを、市場の魅力度と自社の強みの発揮度で4つの象限に分けて管理しています。その分類のうち、財務健全性の改善策を説明するページに、こう書かれています。

  • 低成長・低ROIC 投下資本 約1兆円(2025年度の基礎的収益 約30億円)

  • 資産回転型 投下資本 約0.7兆円(不動産・発電資産 等)

1兆円を投じている事業群が、1年で30億円しか稼いでいません。 投下資本利益率にすれば0.3%です。いまの日本国債の10年物より低い水準になります。

この1兆円は、もちろん死んでいる資産というわけではありません。会社はここを資産入替の原資と位置づけており、2026年度から2028年度の3年間で約1.2兆円を回収し、子会社の連結から外れることで負債も約0.5兆円減らす計画を示しています。つまり売却する前提の在庫のようなものです。

とはいえ、裏を返せば、住友商事のバランスシートには総投下資本5兆5,800億円のうち約2割が、ほとんど利益を生まない状態で滞留しているということでもあります。ROICの推移を見ると、この重さが数字にも出ています。

  • 2023年度 投下資本 45,500億円 / ROIC 8.9%

  • 2025年度 投下資本 55,800億円 / ROIC 8.1%

  • 2026年度予想 投下資本 55,500億円 / ROIC 9.0%

2年で投下資本を1兆円積み増したのに、ROICは8.9%から8.1%へ下がりました。SCSKやAir Leaseといった大型投資が利益貢献を始めるのは2026年度からなので、時間差による一時的な低下という説明は成り立ちます。実際、2026年度予想では9.0%へ戻る計画です。

ただし、その計画が達成できるかどうかは、まさにこれから確かめられる段階にあります。

20年で4,000億円を溶かし、669億円を払って手放したニッケル鉱山

住友商事の「やばい」を語るとき、避けて通れないのがマダガスカルのアンバトビーです。

住友商事がこのニッケル採掘・精錬プロジェクトに参画したのは2005年でした。低品位のニッケル鉱石を硫酸で溶かして取り出すHPALという技術を使い、採掘から精錬までを一貫して手がける大型案件です。

日本の資源確保という国策の色合いも濃い事業でした。出資比率は住友商事が54.17%、韓国の政府系機関であるKorea Mine Rehabilitation and Mineral Resources Corporationが45.82%です。

ところが、この事業はほとんど一度もまともに軌道に乗りませんでした。HPALは設備トラブルが起きやすく、稼働率が上がりません。

2020年4月から6月期には約550億円、同年10月から12月期にはさらに約300億円の減損損失を計上しています。この年、住友商事は一過性損失を累計3,510億円計上し、当期損益は1,531億円の赤字でした。5大商社で唯一の赤字であり、同社にとって過去最大の損失です。

さらに悪いことに、市場環境そのものが変わりました。中国勢がインドネシアで巨大なニッケル生産を立ち上げた結果、ニッケル価格は想定した水準まで戻らず、コスト競争でも勝てなくなります。EV需要の伸び悩みが追い打ちをかけました。累計の損失は4,000億円を超えたと報じられています。

そして2026年5月1日、住友商事は決算発表と同じ日に、全出資持分を英国のAmbatovy Mineral Resources Investment Holding Companyへ譲渡すると決議しました。

ここで注目してほしいのが譲渡の条件です。適時開示には、本譲渡における売却対価はマイナス4億1,800万米ドル(マイナス669億円)になると書かれています。

読み違いではありません。売って現金を受け取るのではなく、引き取ってもらうために669億円を払うという契約です。20年間投じ続けた事業を、最後は持参金を付けて手放したことになります。

損益への影響は次のとおりです。

  • 連結:2027年3月期第1四半期に「有価証券損益」等で約700億円の損失を計上する見込み

  • 個別:2027年3月期に「営業外費用」で約850億円の損失を計上する見込み

  • ただし税務上の損失に対する税効果を認識するため、連結の損益への影響は軽微

  • 譲渡実行は2026年度上半期中の予定で、以後この売却に伴う損失は発生しない

⚠️ ここは実務的にとても重要です。7月31日に発表される第1四半期決算には、この約700億円の損失がそのまま乗ります。 見出しの数字だけを見て驚く人が出るはずですが、会社はすでに通期予想に織り込み済みだと明言しています。

なお、2026年2月にはサイクロンGezaniの上陸を前に予防的に操業を停止しており、第1四半期中の再開を見込むとされています。譲渡後も住友商事は一定の引き取り権を確保する契約です。

💡持参金を付けてでも切る判断を、決算発表と同じ日にぶつけてきたところに、この経営陣の姿勢が出ていると思います。株価がストップ高になった理由の何割かは、間違いなくこの一件でした。

それでも住友商事が5大商社でいちばん安い理由

ここまで、増益の中身が税効果だったこと、1兆円が眠っていること、20年で4,000億円を失ったニッケル事業のことを見てきました。悪い話ばかり並べたので、逆側からも同じだけ丁寧に見ていきます。

住友商事は、5大商社のなかでPERがいちばん低い会社です。同時に、中身はこの5年でかなり別の会社に作り替えられています。

基礎的収益の8割を非資源が稼ぐ会社になった

商社株を買うとき、多くの人がまず気にするのが資源価格への依存度です。住友商事はこの点を明確に開示しています。

  • 資源ビジネス 1,220億円 → 1,000億円(△220億円)

  • 非資源ビジネス 3,980億円 → 4,250億円(+270億円)

  • 消去又は全社 △50億円 → 30億円(+80億円)

2026年3月期の基礎的収益5,280億円のうち、資源が1,000億円、非資源が4,250億円です。非資源の比率はおよそ8割になります。

しかも中身の動きが対照的です。資源は豪州石炭事業の価格下落と原料炭の販売数量減、南アフリカ鉄鉱石の価格下落で220億円減りました。一方で非資源は270億円増えています。資源が沈んだ年に、非資源がそれを上回って埋めたわけです。

三菱商事や三井物産が資源事業の比重の高さゆえに資源価格で株価が振られるのに対し、住友商事は良くも悪くもその感応度が低い会社です。資源価格が跳ねたときの爆発力では劣りますが、崩れたときの下落幅も小さくなります。

8,820億円のSCSKと、1兆2,000億円のAir Lease

非資源の柱を作るために、住友商事はこの2年でかなり思い切った買い物を2つしています。

1つめがSCSKの完全子会社化です。2025年10月29日に発表され、TOB価格は1株5,700円、買収総額は約8,820億円でした。

この交渉は簡単には進まず、SCSK側の特別委員会が価格に反対したため、住友商事はTOB価格を6回引き上げています。当初の提示から13%高い水準で、ようやく2025年12月にTOBが成立しました。2026年3月に完全子会社化が完了しています。

すでに50.6%を持っていた会社の残りを、これだけの金額と手間をかけて取りにいった理由は、開示された数字を見れば分かります。SCSKからの持分損益は2023年度205億円、2024年度234億円、2025年度429億円と伸びており、2026年度は750億円を見込んでいます。傘下ではネットワンシステムズもグループ化しました。デジタル分野の基礎的収益は2023年度から2026年度にかけて年率43.2%で伸びる計画です。

2つめがAir Lease Corporationの買収です。2026年4月8日に完了しました。SMBC Aviation Capital、Apollo、Brookfieldとの共同買収で、買収総額は74億ドル、日本円でおよそ1兆2,000億円にのぼります。住友商事自身の投資額は約3,200億円です。

Air Leaseはニューヨーク証券取引所から非公開化され、Sumisho Air Leaseという名前に変わりました。これにより住友商事グループの航空機リース事業は、保有・管理機数で世界トップクラスの規模になっています。

航空関連の基礎的収益は2025年度の197億円から2026年度は387億円へ、ほぼ倍増する計画です。リース分野全体では年率28.3%の成長を見込んでいます。

⚠️ 一方で、この2つの買収がバランスシートを重くしたのも事実です。親会社所有者帰属持分比率は40.0%から33.9%へ低下し、ネット有利子負債は2兆6,725億円から3兆1,472億円へ4,747億円増えました。ネットD/Eレシオは0.57倍から0.68倍です。会社は2028年度末までに2024年度末の水準へ戻すと明言していますが、それまでは財務の余裕が細い状態が続きます。

営業キャッシュフロー8,135億円という現実

利益の中身に疑問符が付いた会社でも、現金の動きは嘘をつきにくいです。

2026年3月期のキャッシュフローは次のようになりました。

  • 営業活動によるキャッシュフロー 6,123億円 → 8,135億円

  • 投資活動によるキャッシュフロー △4,614億円 → △1,559億円

  • フリーキャッシュフロー 1,509億円 → 6,576億円

  • 現金及び現金同等物の期末残高 5,706億円 → 1兆54億円

営業キャッシュフローは2,012億円増えて8,135億円になりました。フリーキャッシュフローは1,509億円から6,576億円へ、4.4倍です。手元の現金は1兆円を超えました。

会社はこれを「コアビジネスが着実にキャッシュを創出」と説明しています。ここは素直に評価していいところだと考えています。利益の見出しは税効果で膨らんでいましたが、現金は本当に増えました。

投資活動の支出が4,614億円から1,559億円へ大きく減ったのは、資産入替が進んだためです。実際に売却された案件が開示されています。政策保有株式の売却で約1,200億円、国内外不動産の売却で約800億円、ティーガイア株式の売却で約500億円、SCSKによるアルゴグラフィックス株式の売却で約190億円などです。

この動きは2026年度に入っても止まっていません。7月に入ってからだけで、次の2件が発表されています。

  • 7月1日:住商セメントの株式70%を住友大阪セメントへ譲渡(売却益 約90億円、実行は10月1日、30%は継続保有)

  • 7月3日:ベルギーの洋上風力3案件を売却(Nobelwind・Northwester2はJERA Nex bpへ実行済み、Northwindは2026年度中に完了予定、譲渡益は合計100億円超)

四半期に1件のペースではなく、月に何件という頻度で資産が入れ替わっています。 商社としての新陳代謝という意味では、いま5社のなかでもっとも動いている会社かもしれません。

💡買った話より、売った話のほうがこの会社の変化を正確に映しています。持参金を付けてまでニッケルを切り、洋上風力もセメントも回した。1年前とは明らかにテンポが違います。

7年で配当は70円から160円へ、総還元性向40%以上と累進配当

株主還元の設計も、この銘柄を見るうえで外せません。

住友商事は中期経営計画2026以降の還元方針として、次の2つを掲げています。

  • 総還元性向を40%以上とし、配当と機動的な自社株買いを実施する

  • 累進配当により、前期実績に対して配当の維持または増配を行う

累進配当という言葉は、要するに減配をしないという約束です。1株当たり年間配当の推移を並べると、この方針が言葉だけではないことが分かります。

  • 2020年度 70円(この年は1,531億円の最終赤字)

  • 2021年度 110円

  • 2022年度 115円

  • 2023年度 125円

  • 2024年度 130円

  • 2025年度 150円

  • 2026年度予想 160円(株式分割考慮後で40円)

過去最大の赤字を出した2020年度でさえ、70円の配当を維持しました。 そこから7年で配当は2.3倍になっています。2026年3月期は当初予想の140円から10円上積みして150円に着地しました。

自社株買いも継続的です。2024年度と2025年度はそれぞれ700億円を実施し、2026年5月1日には新たに800億円を上限とする取得を決定しました。内訳は2025年度分の追加還元100億円と、2026年度分700億円の合計です。

しかもこの800億円分は、取得した全数を2027年4月9日に消却する予定になっています。買い戻して金庫にしまうのではなく、株式そのものを消す設計です。

総還元性向の実績は、2022年度39.5%、2023年度40.5%、2024年度41.4%、2025年度41.6%と、方針どおり40%台を維持しています。

そして株式分割です。2026年7月1日を効力発生日として1株を4株に分けました。発行済株式総数は11億9,511万株から47億8,046万株へ増えています。分割直前の株価で計算すると最低投資額は68万円ほどでしたが、いまは16万円前後で100株買えます。新しいNISAで拾いやすい価格帯に入ったことになります。

分割そのものは企業価値を1円も増やしませんが、買い手の裾野を広げる効果はあります。売買代金は7月28日の1日だけで200億円を超えており、流動性の面では狙いどおりに機能しています。

いまの1,591円で買えるのか

ここまでで、過去最高益の中身と、この会社が5年で何を作り替えてきたかは整理できたと思います。残るのは、いちばん知りたい部分です。

増益の大半は税効果だった。1兆円が眠っている。ニッケルでは持参金を付けて撤退した。その一方で、非資源が8割を稼ぐ体質になり、営業キャッシュフローは8,135億円まで伸び、配当は7年で2.3倍になった。では、この状態の株を1,591.5円で買っていいのか。ここからは値段の話に踏み込みます。

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