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ステーキの国、オーストラリアに進出した「やっぱりステーキ」がとった海外進出方法とは — 翻訳ではなく編集であった勝ち筋

オーストラリアと聞いて、多くの人が思い浮かべる食べ物の一つがステーキではないだろうか。

広大な大地、牧畜、バーベキュー文化、パブで食べる分厚い肉。
オーストラリアでは、ステーキは特別な料理であると同時に、
かなり身近な外食メニューでもある。

つまり、オーストラリアは決して「ステーキを知らない国」ではない。
むしろ、ステーキにはうるさい国である。

その国に、沖縄発のカジュアルステーキ店「やっぱりステーキ」
が進出した。2023年8月にシドニーに1号店をオープンし、
その後、ブリスベン、メルボルンへと展開を広げている。

ここで面白いのは、やっぱりステーキが
「ステーキ文化のない国」に入っていったのではない、という点である。

すでにステーキが日常に根付いている国に、
日本式のステーキ店が入っていった。

では、なぜオーストラリアで、
沖縄発のやっぱりステーキは受け入れられたのか。

この問いは、単なる飲食店の海外進出の話にとどまらない。
日本企業が海外で勝負する時に、何を守り、
何を変えるべきなのかを考える上で、非常に興味深い事例である。

やっぱりステーキとは何か――日常型ステーキという発明

やっぱりステーキは、沖縄発祥のステーキチェーンである。
日本では、手頃な価格でステーキを楽しめる店として知られている。

特徴は、溶岩プレートで提供されるステーキ、ご飯、スープ、
サラダなどを組み合わせた定食的なスタイル、
そして一人でも気軽に入りやすいカジュアルな雰囲気にある。

高級ステーキハウスではない。
記念日に行く店でもない。

やっぱりステーキの面白さは、
ステーキを「特別な日の料理」から「日常的に食べられる外食」
に変えたところにある。

この点が、オーストラリア市場でも重要な意味を持つ。
オーストラリアにもステーキはある。高級レストランでも食べられるし、
パブでも食べられるし、自宅のバーベキューでも食べられる。

しかし、やっぱりステーキが提供しているのは、それらとは少し違う。
「早い」「気軽」「一人でも入りやすい」「ショッピングモールで食べられる」「自分で焼き加減を調整できる」「定食感がある」。

つまり、やっぱりステーキは、
オーストラリアにステーキそのものを持ち込んだのではない。
日本式の“日常型ステーキ体験”を持ち込んだのである。

シドニー、ブリスベン、メルボルンへ広がる豪州展開

やっぱりステーキは、2023年8月にオーストラリア1号店をシドニーにオープンした。その後、ブリスベン、メルボルンにも店舗を展開し、
現在はシドニー、ブリスベン、メルボルンで存在感を広げている。

注目すべきは、店舗の立地である。
ブリスベンの店舗は都心からわずか20分ほどにある、
マウントグラバットの大型ショッピングモール内にあり、
メルボルンでも都市部や商業施設の中に展開している。

これは非常に理にかなっている。
オーストラリアでは、ショッピングモールは単なる買い物の場所ではない。家族連れ、学生、会社員、カップル、観光客が集まる生活動線の中心である。週末に買い物をし、映画を見て、フードコートやレストランで食事をする。そうした日常の流れの中に、やっぱりステーキは入り込んでいる。

もし高級ステーキハウスとして出店していたなら、
ターゲットは限られていたかもしれない。

しかし、ショッピングモール内にあるカジュアルステーキ店であれば、
買い物ついでに立ち寄ることができる。
家族でも、友人同士でも、一人でも使いやすい。

ここに、やっぱりステーキの戦略のうまさがある。
オーストラリアの食文化に対抗するのではなく、
オーストラリア人の日常生活の中に自然に入り込んでいるのである。

なぜステーキ文化の国で、日本式ステーキが受け入れられたのか

では、なぜステーキ文化がすでにあるオーストラリアで、
日本式のステーキ店が受け入れられたのか。

その理由は、やっぱりステーキが既存のステーキ店
と真正面から同じ土俵で戦っていないからだと思う。

オーストラリアのステーキには、いくつかの典型的な場面がある。
パブで食べるステーキ。
高級レストランで食べるステーキ。
家の庭や公園で焼くバーベキュー。
どれもオーストラリアらしい食文化である。

しかし、そこには日本の定食屋のような
「さっと入り、さっと食べ、満足して帰る」
というスタイルはあまり多くない。

やっぱりステーキは、そこに入り込んだ。
高級感で勝負するのではない。
肉の分厚さだけで勝負するのでもない。

むしろ、日常の中で気軽に食べられる、
使い勝手の良いステーキ店として存在している。

これは、オーストラリアの既存のステーキ文化
を否定するものではない。むしろ、その隙間に入り込む戦略である。

ステーキをよく知る国だからこそ、逆に「こういう食べ方もあるのか」
と受け入れられる余地があったのではないか。

売っているのは肉ではなく、“気軽なステーキ体験”である

やっぱりステーキが売っているものは、単なる肉ではない。
もちろん、ステーキ店である以上、肉の品質は重要である。

しかし、それだけならオーストラリアにはすでに多くの選択肢がある。
やっぱりステーキの本当の商品は、「体験」である。
熱々の溶岩プレートで肉が出てくる。
客は自分の好みに合わせて焼き加減を調整する。
ご飯、スープ、サラダと一緒に食べる。
複数のソースで味を変えながら楽しむ。

一人でも入りやすく、長時間の食事でなくても満足できる。
この一連の流れそのものが、やっぱりステーキの価値である。

オーストラリアの高級ステーキハウスでは、
ステーキは「サービスを受ける料理」であることが多い。

一方、やっぱりステーキでは、客が自分で焼き加減を調整し、
自分のペースで食べる。

この少し参加型の食体験が、オーストラリアの客にとっても
新鮮に映るのではないだろうか。

つまり、やっぱりステーキはオーストラリアで
「日本のステーキ」を売っているのではない。

「日本式に編集された、気軽で楽しいステーキ体験」
を売っているのである。

変えなかったもの、変えたもの

海外進出で重要なのは、「何を変えないか」と「何を変えるか」
の判断である。

日本で成功したものを、
そのまま海外に持っていけば成功するとは限らない。

一方で、現地に合わせすぎてしまうと、
今度はそのブランドらしさが失われる。

やっぱりステーキのオーストラリア展開が興味深いのは、
このバランスが比較的うまく取れている点である。

変えなかったものは、日本式の手軽なステーキ体験である。
溶岩プレートで提供すること。
ステーキを定食のように食べること。
セルフサービスを取り入れた効率的な運営。
明るく、親しみやすいブランド感。

高級ステーキではなく、日常的に使えるステーキ店という立ち位置。
これらは、やっぱりステーキの核である。

一方で、変えた部分もある。
英語メニュー。
QRコード注文。
ショッピングモールや都市部への出店。
現地の食文化や多様な食習慣に合わせたメニュー。
ヴィーガンやベジタリアンへの対応。
現地パートナーとのフランチャイズ展開。

つまり、やっぱりステーキは、日本らしさを捨てたわけではない。
しかし、日本のやり方をそのまま押し通しているわけでもない。

日本らしさの核を残しながら、
オーストラリアの生活スタイルに合わせて形を変えている。
ここに、海外進出のヒントがある。

人件費の高い国で成立するオペレーションの強さ

オーストラリアの飲食業界で大きな課題となるのが、人件費の高さである。
日本と比べると、飲食店スタッフの時給は高く、労働法規も厳しい。さらに、家賃、食材費、光熱費も高い。日本の外食チェーンが海外に進出する時、このコスト構造は大きな壁になる。

その中で、やっぱりステーキの業態は非常に合理的である。
QRコードで注文を受ける。
ご飯やスープ、サラダなどにセルフサービスの要素を取り入れる。
肉は溶岩プレートで提供し、客自身が焼き加減を調整する。
メニュー構成を比較的シンプルに保つ。

これにより、少ない人数でも店舗を回しやすくなる。
オーストラリアのように人件費が高い国では、
単に「味が良い」だけでは不十分である。

店を回す仕組みそのものが、競争力になる。
やっぱりステーキの強さは、料理だけではない。
人が少なくても成立するオペレーション設計にある。

これは、日本企業が海外で飲食ビジネスを展開する上で、
非常に重要なポイントである。

海外では、日本のような安い人件費を前提にした
丁寧すぎるサービスモデルは、そのままでは成立しにくい。

だからこそ、サービスの質を落とさずに、
どこまで仕組みで効率化できるかが問われる。
やっぱりステーキは、その答えの一つを示しているように見える。

フランチャイズ展開と現地パートナーの重要性

やっぱりステーキのオーストラリア展開は、日本本社がすべてを直接運営しているというよりも、現地パートナーとのフランチャイズ方式を中心に進められている。

これも合理的な選択である。
オーストラリアでビジネスをするには、日本とは異なる知識が必要になる。
労働法、賃金制度、不動産契約、採用、ビザ、税務、食材調達、商業施設との交渉、多文化対応。

これらを日本本社だけで一から理解し、すべて管理するのは簡単ではない。
現地事情に詳しいパートナーと組むことで、出店スピードを上げることができる。リスクも下げられる。現地の商習慣にも対応しやすくなる。

しかし、ここで重要なのは、「現地化」
と「現地任せ」は違うということだ。

海外フランチャイズで失敗する企業は、名前だけ貸して、
あとは現地に任せすぎてしまうことがある。

その結果、味が変わる。接客が変わる。店の雰囲気が変わる。
ブランドの約束が守られなくなる。

店舗数は増えても、ブランドは弱くなる。
だからこそ、海外展開では線引きが重要になる。
現地に任せる部分。
本社が守らせる部分。
自由に変えてよい部分。
絶対に変えてはいけない部分。

この設計ができて初めて、海外フランチャイズは長く続く。
やっぱりステーキのように、独自の調理スタイルや接客、
オペレーションに特徴があるブランドでは、この線引きが特に重要である。

今後の課題――拡大後に品質を維持できるか

もちろん、やっぱりステーキのオーストラリア展開には今後の課題もある。
成功例だけを見ていると、海外進出は簡単に見えるかもしれない。しかし、本当の勝負は出店直後ではなく、店舗が増えた後に始まる。

第一の課題は、品質の維持である。
店舗が増えれば、味、接客、清潔感、提供スピードに差が出やすくなる。
特にオーストラリアは人材の流動性が高く、
学生、ワーキングホリデー、短期スタッフも多い。

日本式のオペレーションや接客を、
どこまで現地スタッフに浸透させられるか。

これは今後の成長にとって大きなカギになる。
第二の課題は、コスト上昇である。

牛肉価格、家賃、人件費、光熱費が上がった時に、
「安くて満足できるステーキ」という価値を維持できるか。

やっぱりステーキの魅力は、気軽さと満足感のバランスにある。
もし価格が上がりすぎれば、客は他の選択肢と比較し始める。
逆に価格を維持しようとしすぎれば、利益率が圧迫される。

このバランスをどう取るかは、今後の大きな課題である。
第三の課題は、話題性の後に何を残すかである。
最初は「日本から来た新しいステーキ店」というだけで注目される。

しかし、時間が経てば新鮮さは薄れる。
その後も現地の人々が日常的に通う店になれるかどうか。
海外進出の本当の成功は、1号店の行列では決まらない。
5年後、10年後も、現地の客が自然に選んでいるかどうかで決まる。

日本企業への教訓――海外進出とは、翻訳ではなく編集である

やっぱりステーキのオーストラリア展開から見えてくるのは、
日本企業が海外で成功するための一つの型である。

海外進出とは、日本の商品をそのまま海外に持っていくことではない。
日本語を英語に翻訳することでもない。

商品、価格、店舗、接客、メニュー、オペレーション、
ブランドメッセージを、現地の生活文脈に合わせて編集し直すことである。

この「編集」という視点が重要だと思う。
何を残すのか。
何を変えるのか。
何を削るのか。
何を加えるのか。

どこまで日本らしさを出し、どこから現地に合わせるのか。
この判断こそが、海外ビジネスの成否を分ける。

やっぱりステーキは、オーストラリアにステーキ
を教えに行ったわけではない。

ステーキをよく知る国に、日本式の「日常で食べるステーキ」
という新しい選択肢を持ち込んだのである。

それは、日本の味をそのまま輸出するというより、
オーストラリアの生活に合うように再編集された日本の食体験である。

海外進出で大切なのは、日本らしさを捨てることではない。
かといって、日本のやり方をそのまま押し通すことでもない。

変えてはいけない核を守りながら、現地の生活、価格感覚、
食文化、働き方に合わせて形を変えること。

その意味で、やっぱりステーキのオーストラリア展開は、
飲食店の海外進出というだけでなく、
日本企業が世界でどう戦うべきかを考える、非常に面白い事例である。

海外進出とは、翻訳ではなく、編集である。
やっぱりステーキの豪州展開は、そのことを静かに教えてくれている。


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