AIと"なんか違う"を一晩中やりとりした話
最近、創作をしていて不思議に思うことがある。
昔の僕は「今日は何ページ進んだ」が成果だった。
でも最近は「今日は一コマも完成しなかった」のに、妙に満足している日がある。
ある日。AIと一緒に、ある漫画のワンシーンについて話していた。
最初は単純な構図確認だった。
でも気づけば、話はどんどん細かい方向へズレていく。
「もっと距離近くない?」
「この二人、まだ離れられるよね」
「なんか緊張感が足りない」
「でも近づければいいって話でもない」
そんな会話ばかりしていた。
冷静に考えると、コマは完成していない。
ネームも進んでいない。
下描きも増えていない。
でもなぜか、無駄な時間を過ごした感じがしなかった。
むしろ逆に、少しずつ自分が、何に違和感を感じているのかが見えてきた。
「もっと近い方がいい」
と思っていたのに、実際には距離の問題じゃなかった。
「もっと迫力が欲しい」
と思っていたのに、実際にはカメラ位置の問題じゃなかった。
本当に欲しかったのは、
言葉にしにくい、もっと曖昧なものだった。
逃げられなさ。
離れきれなさ。
相手の呼吸が届く距離。
言葉になる前の空気。
そんなものをずっと探していた気がする。
だから最近の僕は、
絵を描いているというより、違和感を観察している。
AIに答えを出してほしいわけじゃない。
むしろ、「なんでそう感じたの?」と聞き返してほしい。
すると自分でも気づいていなかった感覚が、少しずつ姿を見せ始める。
その結果、一晩かけても一コマも完成しない。
でも不思議と、前には進んでいる。
たぶん創作って、完成したページ数だけじゃ測れない。
少なくとも僕にとっては、
「なんか違う」を追いかけている時間そのものが、
作品を作っている時間なんだと思う。
今日も、一コマも完成しなかった。
でもたぶん、ちゃんと前に進んでいた。
