「離れられない」をAIに説明したかった話
「離れられない」をAIに、どうやって説明すればいいんだろう。
僕はGPTとそんな話をしていた。
冷静に考えるとかなり意味が分からない。
漫画を描いているはずなのに、
「好き」や「寂しい」ではなく、
「離れられない」について議論していたからだ。
さらに意味が分からないことに、
その日は進捗が全く進まなかった。
完成した一コマも無い。
ネームも進んでいない。
下描きも増えていない。
代わりに変なメモが残った。
離れられない→接触維持状態
見入る→視線固定
崩れる→後傾重心
覆い被さる→上半身侵入途中
今見返しても、何のメモか分からない。
少なくとも普通の漫画の作り方ではない。
でも当時の僕はかなり真面目だった。
「もっと近い気がする」
「いや、距離じゃない」
「じゃあ何だろう」
「まだ離れられるんだよな」
そんな会話を延々と繰り返していた。
初めてマクドナルドで喧嘩したときは、ただの構図議論だった。
AIが作った完成品へ「なんか違う」と言い続けた。
そのうち、僕の言う「なんか違う」は感情そのものではなく。
感情が発生する直前のもっと構造的な「何か」だと気づいた。
「離れられない」という感覚は、感情の表現のように見える。
でも実際は、
身体がどの方向へ重心を預けているのか。
逃げようと思えば逃げられるのか。
相手との距離はどれくらいなのか。
そういった要素が積み重なった結果として、
初めて生まれるものだった。
だから僕たちは感情を語る代わりに、
重心。
距離。
視線。
接触。
そんな話ばかりするようになっていった。
あの日やっていたのは作画作業ではない。
感情を身体の構造へ翻訳する作業だった。
たぶん、僕にとってAIが面白かった理由もそこにある。
正解を返してほしかったわけじゃない。
綺麗な完成品が欲しかったわけでもない。
「離れられないって、どういう状態なんだろう」
という問いを一緒に掘り続けてくれる相手が欲しかったのだと思う。
