小さな瓶の中に、人の工夫が詰まっている。|佃煮の日|2026年6月29日|記念日上等
本日の記念日メール。6月29日は「佃煮の日」らしい。
佃煮と聞くと、食卓の真ん中で主役を張る料理ではない。白いごはんの端に昆布や小魚が控えめに置かれていて、箸でひと口取ると急にごはんが進む。派手ではないのに、妙に頼もしい存在だ。
名前の由来になったのは、東京の佃島だという。江戸へ移った大阪・佃村の漁民たちが、江戸湾で採れた小魚を保存できるよう煮たものが、佃煮の始まりとされている。
1646年6月29日に佃島の住吉神社が創建されたこと、そして29を「ツク」と読む語呂合わせから、全国調理食品工業協同組合が2003年に「佃煮の日」と定めた。
保存食と聞くと、昔の暮らしの知恵という言葉で終わらせたくなる。でも、甘辛く煮て日持ちさせる工夫は、冷蔵庫も流通網もなかった時代の切実さから生まれたものだろう。
魚が多く獲れた日、そのままでは食べきれない。明日も食べられるようにするにはどうするか。そんな台所の知恵が江戸の町に根づき、今も小さな瓶やパックの中に残っている。
余白人は、佃煮を買う時に妙に迷う。昆布にするか、あさりにするか、小女子(こうなご) にするか。ごはんのお供なのに、それぞれがかなり強い個性を持っている。
甘さの具合も、醤油の立ち方も、山椒が効くかどうかも違う。棚の前で長く考えるほどのものではないのに、選ぶ時にはその日の気分が出る。
忙しい日の食事ほど、こういうものが残っていると助かる。炊きたてのごはんでなくても、少し硬くなったごはんでも、佃煮があると食べる形が決まる。食卓を豪華にするわけではないが、何もない感じを消してくれる。
食卓の風景も変わった。ごはんのお供として定番だったものが、最近は種類も増え、道の駅や物産展に行けば地方ごとの佃煮が並んでいる。
山椒の実、海苔、あさり、昆布、ふきのとう。その土地で採れるものを煮詰めた一瓶には、その場所の季節まで入っている気がする。
ふと思ったのは、日本人にとって当たり前の佃煮は、海外ではどうなんだろう?
調べてみると、醤油、砂糖、みりんで煮詰める日本の佃煮そのものと同じ文化は、そう多くはない。
ただ、食材の水分を飛ばし、味を濃くして保存し、主食と一緒に食べる知恵は世界のあちこちにある。
インドには果物や野菜をスパイス、砂糖、酢などで煮詰めるチャツネがある。中国や台湾には、肉を甘辛く煮て水分を飛ばした肉鬆があり、お粥やごはんに合わせる。
フランスのリエットは、肉を脂でじっくり煮てほぐし、パンに塗って食べる保存食だ。地中海沿岸のアンチョビも、塩気と旨味を少量添えて、パスタやパンを支えている。
使うものは違う。日本なら醤油、砂糖、海藻、魚介。ほかの土地ではスパイス、塩、油、肉や果物。それでも、手元にある食材を少しでも長く、おいしく食べるために知恵を働かせたところは、どこかでつながっている。
江戸の漁師たちが考えた保存の工夫が、何百年も経って、今日のごはんの端にいる。そう考えると、いつもの佃煮も見え方が変わる。目立たないものほど、長く残っている理由があるのかもしれない。
今日は、冷蔵庫や戸棚のどこかにあるごはんのお供を、いつもより丁寧に味わってみたい。余白人としては、こういう地味な歴史の続きに出会うのをけっこう楽しむ。
無性に佃煮が食べたくなってきた。
{今日という一日を大事にしていきましょう。感謝!}
朝ジョグの帰りに佃煮を買おうとコンビニへ寄ったが、残念ながら置いていなかった。
駐車場で二羽の雀が目に留まった。
一羽が二~三メートル離れると、もう一羽がすかさず飛んで追いつく。それを五分ほど繰り返していた。最後は勢いよく一羽が飛び立った。どうもふられたのか、邪推かもしれないが。
求愛なのか、仲間同士のやり取りなのかはわからない。それでも、何とも愛らしい動きだった。佃煮とはまったく関係ないが、そんな和やかな朝である。
{次回も、また目にしていただくと嬉しいです。}
【今日のひとり時間】
気候という言葉の元になった二十四節気・七十二候をもとに、今日のひとり時間を提案しています。
今日は夏至の次候、菖蒲華(あやめはなさく)。雨の季節に、あやめの花が静かに咲く頃です。
① すぐできること|冷蔵庫や戸棚にある佃煮、ごはんのお供をひとつ見つけて、原材料や産地を眺めてみる。いつもの小さな瓶にも、海や畑の時間が詰まっている。雨の気配の中で花が開くように、ひと口から今日の食事を始めてみる。
② 今日できること|スーパーや専門店で、普段は選ばない佃煮をひとつ選んでみる。昆布、小魚、あさり、豆など、材料が変わるとごはんとの付き合い方も変わる。菖蒲の花を見比べるように、甘さや香りの違いを楽しむ時間にしたい。
③ これからやってみること|旅先や出かけた先で、その土地の佃煮やごはんのお供を探す習慣をつくる。大きなお土産ではなくても、家に戻ってから旅の続きを味わえる。花が季節を知らせるように、ひと瓶がその土地の記憶を連れてきてくれるかもしれない。
【ひとこと説明】
「佃煮の日」は、佃煮の発祥の地とされる東京・佃島に住吉神社が創建された1646年6月29日に由来する。全国調理食品工業協同組合が2003年に制定し、翌2004年1月1日付で日本記念日協会に登録認定された。29を「ツク」と読む語呂合わせも日付の理由になっている。
【今日のちょい得メモ】
・近所のスーパーで、普段は選ばない佃煮を一品だけ探してみる。
・東京・佃島と住吉神社の歴史を調べると、佃煮の名前の背景が見えてくる。
・旅先では、その地域ならではの昆布、小魚、貝、海苔の佃煮をお土産候補にしてみる。
・白いごはんだけでなく、おにぎりやお茶漬けとの相性も試してみる。
【今日のその他の記念日】
・星の王子さまの日
フランスの作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの誕生日にちなむ日。
・国際熱帯デー
熱帯地域の環境や持続可能な発展について考える国連の国際デー。
・聖ペテロと聖パウロの祝日
キリスト教で、使徒ペテロとパウロを記念する日。
・クレープの日
毎月9日、19日、29日に設けられている記念日。
・肉の日
「29」を「にく」と読む語呂合わせから親しまれている日。
【余白おみくじ】
