高IQ夫 奥さん?編
高IQ者の妻は、賢いと思われがちだ。
夫はよく、
「奥さんってどんな人なんですか」と聞かれるらしい。
何と答えているのかは知らないが、
少なくとも、うちに限って言えば違う。
私は、底辺高卒出身者だ。
覚えておいてほしい。
底辺高卒出身者だ。
知性も教養も、並以下。
普通の人間でも、
自分より賢くない相手と一緒にいるのはしんどいと思う。
面白い瞬間もあるが、
基本的には話が合わない。
たとえば、
「それはサピオロマンティックだね」と言われても、
「え?サピ……なに?」
単語の説明から始まる。
会話というより、ほとんど授業だ。
夫と過ごす中で知ってしまった。
賢い人との会話は面白いし、
理解力の高い相手にフリーライドできるのは、とても楽だということを。
IQが20離れていると会話ができない、とよく言われる。
正確には、できないわけではない。
上の側が下に合わせることで、
なんとか成立しているに過ぎない。
夫はきっと、幼い頃からそれをやってきたのだろう。
相手に合わせるというのは、思っている以上に疲れる。
これは、子育てをしていて気づいたことでもある。
ただ、子供には伸び代がある。
でも大人には、あまりない。
この違いは大きい。
だからといって、
夫が常にストレスを抱えながら私と会話しているかというと、
そういうわけでもない。
男性には、IQが3くらいになる瞬間がしばしばある。
つまり、
生理的な、そういうあれだ。
その瞬間は、
他愛のない会話が成立する貴重なタイミングでもある。
眠いときや寝起き、
仕事モードが切れているときも同じだ。
驚くほどどうでもいい話で、普通に盛り上がれる。
子供に合わせるように噛み砕く必要もない。
そんなやり取りを繰り返すうちに、夫も学習したのだろう。
「IQを下げればいい」と。
最近の夫は、顔を合わせるたびに同じセリフを繰り返す。
まるでオウムだ。
……オウムには失礼かもしれないが、
私にも失礼である。
下げ方が雑なのだ。
いや、下げすぎだ。
さすがに腹立たしい。
だからそういう時は、私もさらにIQを下げる。
返事はすべて、「ニャンス」。
私は上には行けないが、
下には行けるのだ。
———
高IQ者はごく少数派だ。
本当に伝えたいことが伝わらない状態が、
どれだけ孤独か。
それを思うと、
「相手に伝わるように話せ」という言葉も、少し乱暴に感じる。
受け取れないことまで、
すべて話し手の責任ではないはずだ。
私と夫のIQの差が埋まることは、一生ない。
それでも、
ほんの少しだけ私が背伸びをすることはできるし、
夫もほんの少しだけ、しゃがんでくれる。
その瞬間だけは、
同じ目線で話せる気がしている。
