(ショートショート)命を大切に
時間がほどける朝。
暗闇から朝陽が溢れ出す瞬間、名前のない野良猫が一匹、街を彷徨っていた。
「みぃ」
ふいに誰かが呼ぶ声がした。
それは、野良になってから誰にも、一度も呼ばれなかった、私だけの誰も呼ばなかった名前。
生まれてすぐ保護された先で、私は愛されていた。
けれど外への憧れに抗えず、ある日開いた窓から冒険へ飛び出したのだ。
しかし、外の世界は甘くない。飢えと寒さに震え、帰り道さえ分からず、私は何度も泣いた。
途方に暮れていた時、偶然通りかかった、あの人が私を見つけてくれた。
無事に帰宅した私の瞳には、もう外の世界は映らない。
中には、帰らない光としてあの世へ旅立った仲間たちもいる。
これからは見守ってくれている彼らの分まで、私はこの温かな場所で、精一杯生きてやるわ。
Fin。
参考までに
2025年度の保護猫の正確な全国人数はまだ集計されていませんが、飼い主のいない猫全体は約222万匹おり、そのうち約4.5万匹が保護されている状態です(2024年時点のデータより)。この数字は、保護団体や行政が把握・管理している猫の数であり、譲渡会が開催されたり、殺処分が減っているというニュースはあるものの、保護猫の総数は年々変動するため、最新の正確なデータは環境省や自治体からの報告を待つ必要がありますが、少なくとも数万匹規模で保護・譲渡されている状況です。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
