見出し画像

イラストから空想した世界を書いて下さい。

 荒れ果てた部屋の真ん中で、私は深く、深く息を吸い込んだ。 散乱した鏡の欠片。

 それらは昨日までの私が、必死に「自分ではない誰か」を演じようともがいた、痛みの痕跡だった。

 ふと窓の外に目を向けると、そこには驚くほど澄み切った水色の景色が広がっていた。

 明け方の空は、暗闇をすべて吸い取ったかのように透明で、どこまでも軽やかだ。

 私はドアを大きく開け放つ。

 流れ込んできたのは、冬の終わりの、凛としていて少しだけ甘い、新しい空気の匂い。

 床に散った鏡の欠片が、その水色の光を反射して、まるで小さな湖のようにキラキラと輝いている。

 「ああ、綺麗だな」

 独り言が、驚くほど素直に喉を通った。

 他人のものさしを気にしていた時は、空がこんな色をしていることさえ忘れていた。

 自分を測るものさしを自分自身の手に取り戻した今、私の視界には、濁りのない爽やかな水色だけが満ちている。

 私は、もう二度と古い殻を拾い集めたりはしない。

 この水色の風に乗って、どこまでも「私」という人間を運んでいこう。

 砕けた鏡の中に映る私は、まだ少し泣き出しそうな顔をしていたけれど、その瞳にはもう、迷いのない空が映っていた。



Fin。


※この小説はフィクションです。
登場人物は、存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。