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(ショートショート)空の上の約束と、お揃いの記憶

 三月の空は、僕の門出を祝うようにどこまでも青く澄み渡っていた。

 この春、高校を卒業して僕はこの街を離れる。

 ずっと隣にいた幼馴染をデートに誘ったのは、離ればなれになる前に伝えたい言葉があったからだ。

 待ち合わせ場所の遊園地の入り口。

 期待と不安で胸の鼓動がうるさく響く。

 ふと足元を見ると、コンクリートの上をのっそりと進む小さな影があった。

 「あれ? 亀?

 なぜこんな場所に、と驚いてまじまじと見つめていると、後ろから「お待たせ!」とはずんだ声がした。

 「ごめん、ちょっと寝坊しちゃった」

 少し頬を赤らめて、いたずらっぽく微笑む彼女。

 その笑顔を見た瞬間、僕の緊張はどこかへ吹き飛んでしまった。

 アトラクションをいくつか巡り、日が傾き始めた頃、僕たちは観覧車に乗り込んだ。

 ゴンドラがゆっくりと地上を離れ、街が一望できる高さまで昇ったとき、僕は思い切って心の内を明かした。

 心臓が飛び出しそうだったけれど、彼女は僕の目を見つめ、優しく微笑んで答えてくれた。

 「私も、ずっと好きだったんだよ」

 重なり合った想いが、夕暮れ時の狭いゴンドラ内を温かく満たしていく。

 その後、興奮冷めやらぬまま立ち寄ったショップで、僕たちは遊園地のキャラクターが描かれた靴下を選んだ。

 色違いのお揃い。

 それから、雲みたいにふわふわしたマシュマロも。

 「これを履くたびに、今日のことを思い出しちゃうね」

 彼女が笑う。

 三月。

 別れの季節ではあるけれど、僕の手の中には確かな温もりがある。

 お揃いの靴下をトランクに詰めて、僕は新しい生活へと踏み出そう。

 この恋が僕にくれた勇気があれば、どんな遠い場所でも、なんとかやっていけそうな気がした。


Fin。


※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。