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(ショートショート)未完全人間 アマノ文筆クラブ

 ステージの袖で、僕は自分の震える指先を見つめている。

 鏡に映る自分は、どこからどう見ても、まだ何者でもない。

 ダンスも踊れなければ、歌の音程さえ危うい。

 そんな僕が、なぜ「アイドル」という戦場に立っているのか。

 すべては、あの日から始まった。

 部活を終え、泥と汗にまみれた最悪の姿で帰宅していた僕に、一人の男が声をかけてきた。

 それが、僕をこの世界へ引きずり込んだスカウトマンだった。

 「君、なんだかキラキラして見えたんだ」

 男はそう言ったけれど、笑わせないでほしい。

 僕はキラキラなんてしていないし、内面をさらせばさらすほど、周りの大人は困惑し、眉をひそめる。

 世の中には「イケメン」という言葉が安っぽく溢れすぎている。

 そんなラベルを貼られても、微塵みじんも嬉しくなんてなかった。

 今のアイドルグループは、どれも似たような顔をして、同じような個性を演じている。

 僕は、そんな「完成された模造品」たちの列に加わる気はさらさなかった。

 僕はあえて、一人でデビューすることを選んだ。

 誰とも足並みを揃えず、奇抜な格好に身を包み、既存の枠組みを嘲笑あざわらうようなユニークな踊りを踊る。

 正攻法で勝負できるほど、僕は器用じゃない。

 「どうせ僕は、未完全人間だからね」

 自嘲じちょう気味にそう呟き、僕は不敵に笑った。

 完璧であることに価値なんてない。

 今は、バズったものこそが正義の時代だ。

 綺麗に整えられたアイドル像を壊し、誰も見たことのない不格好な「正解」を叩きつけてやる。

 ブザーが鳴り、ライトが僕を照らす。

 欠陥だらけの未完全人間による、最高にイカれた反撃の幕が上がった。


Fin。


※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
アイドルグループを批判して書いた作品ではございません。
不愉快な思いをされた方すみません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。