(ショートショート)履き古した日々と、真っ白な恋の始まり
突き抜けるような青空の下、私たちは今日、卒業の日を迎えた。
小学校受験した私は小学校から高校卒業までの十二年間。
同じ校舎、同じチャイム、そして同じ仲間。
長すぎると感じた月日も、終わってみれば瞬きのような時間だった。
人付き合いが苦手で、ずっと自分の殻にこもっていた私にとって、恋愛なんて別世界の出来事だと思っていた。
けれど、心の中にずっと住み着いている同級生の彼にだけは、どうしても伝えたい言葉があった。
今日を逃せば、二度と会えないかもしれない。
「行ってきなよ!」
友達に背中を押され、私は心臓の音を響かせながら屋上へと向かった。
階段を一段昇るたび、不安と期待が入り混じる。
人に想いを伝えるなんて人生で初めてのことだ。
扉を開けると、そこには彼が待っていた。
「あの、第ニボタン、もらえませんか?」
震える声で精一杯伝えた私に、彼は少し驚いたような顔をしたあと、ふっと柔らかく目を細めた。
「ずるいね」
予想外の言葉に、私は思考が止まり固まってしまう。
意味を測りかねている私に、彼は一歩近づいて言った。
「ずっと好きだったのは、僕のほうだよ。先に言われちゃうなんて、なんかずるいよ」
その瞬間、街に春一番が吹き抜けた。
二年ぶりに吹いたというその強風は、私たちのこれまでの停滞していた時間を一気に押し流し、春の香りを運んできた。
信じられない思いで足元を見ると、三年間毎日履き続けたローファーが視界に入った。
傷だらけで履き古したはずのそれが、この瞬間ばかりは、まるで新品のように見えた。
不確かなことばかりが溢れる世の中。
けれど、周りに流されず、自分の心の声を信じて歩き出せば、こんなにも眩しい景色に出会えるのだ。
夢のような心地のまま、私は彼の暖かい手を取り、新しい季節へと一歩を踏み出した。
この恋がうまくいきますように。
Fin。
※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
恋愛小説は不慣れでして読者さんの中には読みにくい部分があるかもしれません。
妄想で書きましたので恥ずかしかったです。
楽しんでお読みいただけたら嬉しいです。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
