(ショートショート)流れ星の手紙
マンションの部屋のカーテンの隙間から、細い光が差し込む。
その一筋の光に導かれるように、風間 絵里奈は静かに目を覚ました。
看護師になるための専門学校に通う彼女の朝は早い。
上京してきて、早二年。
今日で、絵里奈は二十歳になった。
「誕生日だからって、なにもないけどね」
誰に言うでもなく、そう呟く。
カーテンを開けると、雲ひとつない青空が目に飛び込んできた。
窓を開け、ひんやりと澄んだ空気を吸い込むと、不意に涙が一粒、ぽつりと頬を伝った。
小さいころから体が弱く、不器用で、いつも周りから浮いていたこと。
看護師さんの優しさに救われ、いつしか同じ道を夢見るようになったこと。
そして───医師から、治療の難しい病名を告げられた、先月のこと。
やっと過去を乗り越え、夢への一歩を踏み出したはずなのに。
あまりに理不尽な現実に、心が折れそうだった。
ベランダからリビングに戻り、無理やり気持ちを切り替えようとした時、テーブルの上に一通の手紙が置かれているのが目に入った。
見覚えのない、白い封筒。
(え…? 昨日の夜は、なかったはず。鍵もかけていたのに、誰が…?)
一瞬、背筋に冷たいものが走る。
けれど、不思議と怖い感じはしなかった。
絵里奈は椅子に座り、吸い寄せられるようにその手紙を手に取った。
『お誕生日おめでとう。
あなたは小さいころから、体が弱く、歩き方もおかしくて、同級生からからかわれていたよね。』
「……!」
心臓がどきりと跳ねる。
(どうして、私の過去を?このマンションに、昔の私を知っている人なんていないのに)
震える指で、手紙の続きをめくった。
『難病が発覚して、あなたはまた一つ大人になりました。
でも、大丈夫。何があっても、あなたは乗り越えられます。
夢に向かって頑張れ!!
空の上から応援してるよ。
流れ星より
追伸:性別は女性です。ドキドキしたでしょう? 流れ星にも性別はあるんですよ。』
手紙を読み終えた絵里奈の口から、こらえきれない笑いが込み上げてきた。
恐怖や戸惑いは、いつの間にか消え去っていた。
「ふふっ…流れ星に、性別あったんだ」
なんて温かくて、おかしな手紙だろう。
ついさっきまで胸を支配していた絶望が、この不思議なエールに溶かされていくのが分かった。
絵里奈はもう一度窓を大きく開け、新鮮な朝の空気を胸いっぱいに吸い込むと、晴れ渡る空に向かって誓った。
「今日も、がんばるぞー!」
それは、二十歳になった彼女の、新しい始まりを告げる力強い声だった。
おしまい。
(あとがき)
↑この企画に参加させていただきました。
小説を書くとき、自分と自分の周りの経験談からアイディアを浮かばせています。
ちなみに看護師ではございません。
このくだりはほぼ妄想です。
恋愛はほぼ経験ないので恋愛小説書けません。
難病を告知された時のこと思い出しながらこの小説を書きました。
「流れ星に性別があったら面白いだろうなぁ」と思いつき女性の流れ星の設定にしました。
