イラストから空想した世界を書いて下さい。(ショートショート)星降る夜、あの木の下で
見渡す限りの満天の星空の下、その木はあまりにも雄大に立っていた。
私は息を呑み、震える手でカメラを構える。
駆け出しのカメラマンとして世界を放浪していた私が、どうやってこの聖域のような場所に辿り着いたのか、今となっては記憶が定かではない。
ただ、目の前の光景に導かれるように、無我夢中でシャッターを切り続けたことだけを覚えている。
日本に帰国し、暗室で浮かび上がったその一枚を見たとき、指先が微かに震えた。
「いいのが撮れた」
自信作だった。
私は半信半疑のまま、その写真をある大きなコンテストへと応募した。
その後は日々の仕事に追われ、応募したことすら記憶の隅に追いやられていたある日。
ポケットの中でスマホがけたたましく鳴った。
「はい、えっ、大賞ですか?」
事務局からの報告は、あまりに現実離れしていて、最初はたちの悪い悪戯か何かだと思った。
しかし、授賞式のステージで浴びた無数のスポットライトが、それが現実であることを教えてくれた。
私のインタビュー記事とあの一枚は、写真愛好家たちのバイブルである雑誌『写真を上手にとるコツ』(存在しません)の表紙を飾り、それを境に仕事のオファーが怒涛のように殺到した。
かつての私は、自分の才能を信じられず、いつも足元ばかりを見て歩いていた。
けれど、あの日コンクールに一歩踏み出した勇気が、私の世界を180度変えてくれた。
今の私は、しっかりと前を向いている。
もう一度、あの星空の下へ行こう。
今の私があの雄大な木を覗いたとき、ファインダー越しにどんな新しい色が映るのか。
それを確かめるために。
Fin。
※この小説はフィクションです。
登場する人物やコンクールや雑誌は存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
