(ショートショート)月を拾ったねこ
まどろみの淵で、ふと視界の端が白くゆれた。
見上げれば、ビルの合間の狭い空から、何かが音もなく零れ落ちてくる。
星よりも大きく、真珠よりもまばゆい光の雫。
(逃がさない)
私は反射的に、しなやかな前足を伸ばした。
宙を舞い、爪を立てるまでもなく、その光の芯を優しく包み込む。
肉球に触れたのは、ひんやりとしていて、けれど不思議と作りたてのショートケーキのように甘く柔らかな感触だった。
それは、夜空を支配するはずの「月」そのものだった。
この瞬間、月を拾ったねこが誕生したのだ。
手の中にある月を愛おしく抱きしめる。
この柔らかな光が、私の進む道をいつまでも照らしてくれるに違いない。
これからの人生、きっと最高に素敵な時間が待っているはずだ。
「ふふ、おやすみニャン」
私は満足げに喉を鳴らし、銀色の光と共に、幸せな夢の続きへと沈んでいった。
Fin。

※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
