(ショートショート)夢をあきらめないで
透明な朝の音が、いつも聞こえてくる。
「もうこんな時間か」と僕は乾いた音のようなため息をつきながらベッドから起きだす。
また、いつもの日常がやってくると思うと、やる気さえなくなる。
僕には、明日へ歩く影さえ見えないように感じていた。
会社に行って上司の顔色うかがいながら仕事をして疲れ果ててマンションに帰ってくる。
休みの日は、お昼まで寝てるだけ。
起きて家のことをすませたらネトフリなど見て何となく過ごすだけの、堕落的な日々だ。
(何のために生きているんだろう?)
こんな生活とおさらばしたくて、とりあえず外に出る。
目的がないまま歩いていると本屋さんが目に入り、久しぶりに小説を2冊買った。
急いでマンションに帰り、リビングで小説を読んでいると、いつのまにか寝ていた。
夢の中で、巨大で、いつまで経っても砂が落ち切らない「消えない砂時計」が出てきては、僕を追っかけた。
トイレに行っては追いかけられ、ザラザラとした砂の音と共に、お風呂にもついてくる。
「なんなんだよ」と叫んで目が覚める。
あたりはすっかり暗くなっていた。
「消えない砂時計は、目標を持てって言ってるのか」
心の中には、学生時代に諦めた、物語を書きたいという夢が残っている。
夢は消えない。
その消えない砂時計が、夢をあきらめないでと教えてくれているのかもしれない。
決意した僕は、会社を辞めることにした。
久々に、心のなかが温かくなったのを感じた。
Fin。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
