1.終わって始まる
「やっとコンプリートした。」
小さな声が、冷え冷えと冴え渡った空間に鳴り渡り、反響を残して消えていく。
声の主たる黒髪赤眼の美青年は愉快そうに、その顔に笑みを作っていた。
美青年の眼前には、青白い輝く透明の板が浮遊して、板の表面には、文字の羅列が続いている。
美青年が板の表面を指になぞるたびに、文字の羅列が流動して、板の表示が変化する。

美青年が座すのは、白色の強大な王座。王座の周りは、鏡のような白い大理石が広大な空間に敷き詰められている。
「何とか間に合ったな。」
美青年の目前に浮遊していた板が空気中に溶け去るかのように板は消滅した。
彼が身を置くこの空間は、現実ではない。
現実には存在しないアイテムや技術が存在するゲームの世界である。
彼がプレイしているゲームはVRMMOのSF系シミュレーションゲーム 【ユバス・ワールド】。
完成度の高いオンラインゲームであり、高い自由度と膨大なゲームボリュームを誇る有名作である。
ユバス・ワールドは、宇宙を舞台に宇宙開拓と戦争のゲームとしての面白さに加え、機能の拡張が可能な点が高く評価された。ユーザーが世界中に存在しているユバス・ワールドは、MODの開発が盛んであり、MODの量や質は、VRゲーム中でも最大級であると称されている
そして、美青年はたった今、新作DLCと新作MODによって拡張された、新アイテムや新技術をはじめとする追加要素、その全てを入手・攻略し終えたところであった。
「これで終わりか」
20年も続いた人気ゲームだったけど、時の流れには勝てずにサービス終了の時を迎えた。
美青年は達成感の余韻に侵った後、様々な事を思い出していた。
ユバス・ワールドのすべてのランキングで1位をとり、プレイヤー同士の星間戦争でも無敗記録を更新し続けた。
美青年の視界の隅にメールが来た知らせがあった。
「何だ? 運営からメールが来たな」
美青年の眼前には、再び青白い輝く透明の板が浮遊して、メールの内容が表示された。
この度、ユバス・ワールドを最後まで楽しんでいただきありがとうございます。 今回は最強プレイヤーである、ツバイ様はコンプリートしたので特別プレゼントがございます。
新しい世界でご自由にお過ごし下さい。
運営から個人メールが来ることはない上に、とても抽象的な内容だった。
「プレゼントとはなんだ?これ以外のメールは無いし、内容が意味わからん。」
板の表面を指になぞえながら、プレゼントを探すがどこにも見当たらない。
視界の隅に映る時計には23;58と表示されている。サーバー停止は0;00。
時間が殆どないため、ツバイはため息をつき、プレゼントをあきらめた。
ツバイは緑白い輝く透明の板を消して、目を閉じて数えだす。
23;59;30、31、32、33,‥‥
「楽しい時間をありがとう。ユバス・ワールド。」
ここから先は
宇宙戦争シミュレーションゲームで最強の座を獲った俺。 サービス終了と同時にログアウトした――はずだったのに、目を覚ますとそこは「人類がまだ…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
