ポポル・ヴー 《ホシアナ・マントラ》

これ程至純な音楽はめったに聴くことは出来ないだろう
ポポル・ヴー《ホシアナ・マントラ》
ホシアナ・マントラ
①アー!
②キリエ
③ホシアナ・マントラ
第5のモーゼの書
④別離
⑤祝福
⑥礼拝
⑦天はそこに
⑧礼拝
ボーナス・トラック
⑨アヴェ・マリア
ポポル・ヴー:
フローリアン・フリッケ(ピアノ、チェンバロ)
ディヨン・ユン(ソプラノ)
コニー・フェイト(エレクトリック・ギター)
ロベルト・エリスク(オーボエ)
クラウス・ヴァイゼ(タンブーラ)
ゲスト:
フリッツ・ゾンライトナー(ヴァイオリン)
録音年月日及び場所の記載なし 1972年リリース〈セッション〉
SPV MAR04974
久し振りにクラシック音楽以外のCDを採り上げることにしました。先日おこなったこれまで記事にした音楽の傾向を見ると、クラシック音楽が圧倒的に多いのです。それはある意味仕方のないことでもありますが、『自己紹介』や他の記事ても書いている通り、ワタシは決してクラシック音楽一辺倒ではありません。ですが今のままではそのように見られかねませんので、これからは適時他のジャンルのCDも紹介するようにしましょう。
そういうことで、今回紹介するのは以前《アギーレ 神の怒り〜ザ・ベスト・オヴ・ポポル・ヴー》(milan)というCDを紹介したことのあるワタシの最愛のバンドの一つであり、ジャーマン・ロックのバンドであるポポル・ヴーの3枚目のオリジナル・アルバムです。
その『ベスト・オヴ〜』にも書きましたが、ポポル・ヴーそのものと言えるリーダーのフローリアン・フリッケは1st.アルバムと2nd.アルバムで使っていたシンセサイザーを使わなくなります。では代わりにどういった楽器を使うようになったかと言うと、自身の弾くピアノもしくはチェンバロに、元ギラのギタリストだったコニー・フェイトの弾くエレクトリック・ギター、カール・リヒター指揮によるバッハのカンタータ集(Archiv)にも独奏者として度々クレジットされ、またビトウィーンのメンバーでもあったロベルト・エリスクの吹くオーボエ、そしてクラウス・ヴァイゼの弾くタンブーラといった具合です。
こんな楽器を使ってフリッケはどのような音楽を創ろうとしたのでしょうか。ベースもドラムスもないのですからその音楽はロックと言うには語弊があるでしょう。だいたい、フリッケ自身がポポル・ヴーをロック・バンドとして認識していなかったのかもしれないのです。
ただ人脈的には間違いなくジャーマン・ロックの一翼を担っていたのは間違いありません。この時所属していたレーベルもそうですし、次作からは元アモン・デュールIIのドラマーだったダニエル・フィッシェルシャーが参加することで一気にロック色を増していくのですが。
そしてこの時期のポポル・ヴーのサウンドを決定していたのが韓国人作曲家で西ドイツに亡命したイサン・ユンの娘であるソプラノ歌手のディヨン・ユンです。彼女の歌があってこそのポポル・ヴーのイメージを強固なものにしました。
そのポポル・ヴーの音楽がどのようなものだったかは、以下のレヴューをお読み下さい。
「ジャーマン・ロック界においてその存在が燦然と輝くポポル・ヴーはフローリアン・フリッケそのものである。彼フリッケは残念ながら2001年に他界してしまったが、残されたアルバムはどれも今持ってその価値を失っていない。その中でもこの3作目になるこの ”Hosianna Mantra“ はひときわ高く聳え立つ高峰と言えよう。
それまでモーグ・シンセサイザーとパーカッションによるエレクトロニクス音楽を追求してきたフリッケが1st.アルバムの ”Affenstunde“ と2nd.アルバムの ”In den Garten Faraos“ の2作の後、『キリスト教音楽に関する限り、僕はシンセサイザーを使いたくない』と言って、そのシンセサイザーをかのクラウス・シュルツェに売却し、編成を見ても分かる通り、一種異様な楽器の組み合わせでこれ以上はないほどの至純な音楽を創り上げているのだ。
このアルバムに接したのは、1980年代初め頃に当時希少となっていた当Pilzとその他にOhr、Kosmische Musikというそれより10年前にロルフ・ウルリッヒ・カイザーなる人物が起こした3つのレーベルのアルバムがドイツでリイシューされて日本にも輸入され、それを購入して聴いて大変驚いた記憶がある。
それまでクラシック音楽を中心に興味の赴くままに様々な音楽を聴いていたが、このポポル・ヴーほどに神聖ながら至純な音楽を聴くことは出来なかった。それだけにフリッケの持つ恐るべき才能には敬服の言葉しかない。
だいたい、フリッケのピアノに元ギラのコニー・フェイトのエレクトリック・ギターを合わせ、それにロベルト・エリスクのオーボエを加え、おまけにクラウス・ヴァイゼの弾くインドの民族楽器であるタンブーラも使い、最後には韓国人女性歌手であるディヨン・ユンという編成がどう見ても尋常ではなく、事実後にも先にもなかったはずだ。だが、エレクトリック・ギターが宙を舞い、オーボエも存在感充分である。タンブーラが地を這い、楽器のすべてをピアノが結び付けている。そしてその上にソプラノが歌うことで、あたかも天上から降り注ぐようなサウンドを獲得しているのである。
なお、使用しているピアノはLPの見開きジャケットを見るとベヒシュタインのようで、そのことがこのアルバムの至純のサウンドにも大きく寄与しているものと思われる。
なお、当CDにはボーナス・トラックとしてソプラノを担当しているユンの唯一のソロ・シングルから ”Ave Maria“ が収録されているが、このアルバムと寸分違わない音楽なので、同一セッションで収録されたのかもしれない。
2012年12月16日 評価:★★★★★」
以上がポポル・ヴー《ホシアナ・マントラ》のレヴューでしたが、いかがでしたでしょうか。
このアルバムにはめったにない満点の評価をすることに何の躊躇もありませんでした。それほど完璧な出来映えと思っているのです。
また、このアルバムのCDはKingがNexusレーベルでリリースしたのを持っていましたが、今回はSPVレーベルのCDをBelle Antiqueが国内盤仕様にリリースしたのを使いました。これはデジパック仕様で、なんと言ってもそれまで聴くことの出来なかった⑨がこの時初めて聴くことが出来るようになったからでした。
しかし、ポポル・ヴーのCDはこの後ペーパースリーヴ仕様でリイシューされました。今思えばそちらを購入すれば良かったのでしょうが、これはどうしょうもありませんでした。ちなみにペーパースリーヴ仕様で成功したのがサンタナとジェスロ・タルで、失敗したのがマグマとこのポポル・ヴーでした。最愛のバンド2つとも失敗したなんて、泣けてしまいますね。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
お目汚し失礼しました。
