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私は今の私が好きな人

むかしむかし、ある村に、今(いま)という名の若者が住んでいました。
今は毎朝、村はずれの古い桜の木の下で、静かに座っているのが習慣でした。
ある日、村人たちが尋ねました。
「今さん、あなたはなぜいつも、ただ座っているのですか?」
今は穏やかに答えました。
「私は、今のこの瞬間を味わっているのです」
村人たちは不思議そうに首をかしげました。
一人の老婆が言いました。
「私はいつも、昔の良き日々を思い出しては、ため息をついてしまいます」
今は優しく微笑みました。
「昔の自分も、確かに大切です。でも、その時々を生きてきた自分が、今のあなたを作っているのですよ」
若い娘が言いました。
「私は将来が不安で、今の自分が好きになれません」
今は桜の花びらを一枚、手に取りました。
「この花びらは、昨日でも明日でもなく、今ここにあります。だからこそ美しいのです。あなたも同じ。今のあなたを大切にすれば、自然と未来のあなたも輝きます」
村人たちは、今の言葉を聞いて、少しずつ変わっていきました。
過去を責めず、未来を恐れず、今の自分を認めることの大切さを知ったのです。
やがて村には「今を愛する者は、己を愛する」ということわざが生まれました。
今はその後も、毎朝桜の木の下で、今という時を大切に生きたとさ。
めでたし、めでたし。

と思う2025年11月28日17時14分に書く無名人インタビュー1213回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】


今回ご参加いただいたのは 菜 さんです!

年齢:20代前半
性別:女
職業:フリーター



現在:今は上京してきて、めちゃめちゃ一人でお芝居を見て回っている人間です。

qbc:
今、何をしている人でしょうか?

菜:
今は、上京してきて、めちゃめちゃ一人でお芝居を見て回っている人間です。無名人インタビューに最初に応募しようと思ったきっかけが、この秋、自分の中で情報量が多くて。今年の秋に入ってからまずデカい失恋をして、職場が存続の危機に陥って、さらに結構デカい病気が見つかって。今私24歳なんですけど、30〜40歳ぐらいまでしか生きられないんじゃないかっていうことが発覚して最悪になっていたけど、人にそれを話すことがなかなかままならなかったので、出力先を探していたら、勢いで応募してしまったみたいな所があって。

qbc:
なるほど。そのご病気とは何でしょうか?

菜:(※インタビュアー様たくさん聞き取って下さったのですが、やはり公開にあたって躊躇する気持ちがあり伏せさせていただきます。すみません)

qbc:
それが見つかったのは、いつでしょうか?

菜:
10月末ですね。なんとなく内臓が痛いなあとは思ってたんですけど。病院にかかったら最終的にそんな感じになってしまいまして。

qbc:
30から40歳ぐらい。

菜:
好発年齢としては50〜60代なんですね。話を聞いた感じ、別にそんなに大きく寿命が縮む病気じゃないよって書いてあったので、最初そうなんだ、じゃあまあなんともないかって思ってたんですよ。でも、よく考えたら50〜60歳で発症して、例えば15年生きて75歳になったら別にそんなに平均寿命と変わんないじゃないですか?私は今20代なので、じゃあだめじゃん、と。

qbc:
なるほど、治療としてはどんな感じのことをされていらっしゃるんですか?

菜:
進行を遅らせるため、まずは食生活を節制して、かつ投薬治療をしてという形にはなるんですけど。まあ、でもどのみち、5年から15年ぐらい経つと、大体なんらか重篤な合併症になるよっていう感じなので、なかなか、詰んだなあと思っておりまして。

qbc:
どんな気持ちなんですか?今。

菜:
最初はもうわけが分からなかったんですけど。今はなんていうか、こうなった時の人間の行動って色んなパターンがあると思うんですけど。例えば本当にもう、何でもするから助けてくれというか、なるべく寿命を長く伸ばしたいって願ってすごく健康に気をつけたり、医療に投資したり。逆に破茶滅茶になる、もう「どうせ死ぬんならいっそ」みたいな破滅的な事をする人も多分いて、自分は割と後者寄りというか。病院も今月の途中ぐらいから行ってなくて。その分のお金でめちゃめちゃ芝居のチケットを取って観に行くっていう異常行動をやってるんですけど、吹っ切れてるのか、自棄なのかは自分でもよく分からないです。

qbc:
なるほど。失恋はいつ頃?

菜:
失恋は10月。それも10月の末か。最悪ですね。

qbc:
細かいことをお伺いしますけど、病気の宣告と失恋の順番はどっちだったんですか?

菜:
恋愛の方が先に「ああ、これはもうだめだな」っていう雰囲気になり始めて、その矢先に病気の宣告があったので。同情を引こうと思ったわけじゃないですけど、すぐさま相手にこれこれこういうことがあってって伝えて。それでももう向こうが「だったら一緒にいる」とかも考えないようだったんで「あ、(恋愛の方ももう)だめだな」と思って、そこで一緒くたに区切りがついたっていうのが一番正確かもしれないですね。

qbc:
お仕事はその後。

菜:
お仕事はその後ですね。

qbc:
どういう状況だったんですか?

菜:
多分単純に経営が傾いてるんですけれど。今年の夏がすっごい仕事が少なくって。どうなるかなあと思ってたんですけど、今年度ぐらいでもうなくなるかなっていう感じになっちゃって。まあ自分フリーターで、別に正社員になろうとかもあんまり思ってないので。別にこっからまたリクルートスーツ着てバタバタしなきゃ、とかも特にないので、社員さんほど困ってはいないんですけど。いやあ、なんかここまでくるとね、お祓いとか行った方がいいのか?とか思いました。行きませんけど。

qbc:
仕事は自分で辞めた?

菜:
いえ、まだ続いてますけど、今年度末ぐらいで放り出されるかなあっていう感じですね。

qbc:
あ、なるほど。今は働いてはいらっしゃるんですよね?何をされていらっしゃるんですか?

菜:
こっちで一人で、日中仕事をしつつ、次の仕事どうしようかなと思いながら日がなIndeedを見る、みたいな生活を送っています。

qbc:
上京はどのタイミングでされたんですか?

菜:
上京は、今自分が上京2年目だから、大学卒業とともに出てきて。愛知から出てきました。

qbc:
お芝居は何を見てるんですか?

菜:
お芝居は小劇場を中心に、劇団四季とかデカいのも見るんですけど、基本はギャラリーとかライブハウスとか、それよりもさらにちっちゃいような規模の小劇場を回るのを楽しみにしていて。名の知られていない劇団だったり、本当に立ち上げたばっかりの素人集団だったり、あるいはそこにずっとこだわって何十年も続けてるような。それこそ無名人インタビューに近いかもしれないですね。本当に玉石混合を見て回るのが楽しくてという感じです。

qbc:
なんでそんな事を始めたんですか?

菜:
元々、上京するきっかけっていうのもお芝居だったんですけど。大学生の途中ぐらいからお芝居見たり作ったりしていて、面白いなあと思って。名古屋でもこんなに面白いんだから、東京に出たら更に面白いものがいっぱい見られるかな?っていう非常に安直な部分はあって。で、来たんですけど、上京したての頃って(今も別に資金はないですけど)、資金力も無いし、どこに観に行ったら面白いか・どんな劇場があるかとかもわかんないんで結構長いことワタワタしてしまっていて、最近ようやくまた観劇が趣味に戻り始めたっていう感じですかね。

qbc:
今、自分の状況を普通の状況だと思いますか?特殊な状況だと思いますか?

菜:
普通か特殊かで言ったらめちゃめちゃ特殊だとは思いますね。だから「上京以前の趣味が戻ってきた」っていうのも、多分今の状況が特殊すぎて、普通の生活に戻ろうとしているというか、一層楽しいことをやろうとしているみたいな部分はあると思うんです。本当に2〜3日に1回とかそれぐらいのペースで狂ったように観ているので、やっぱり特殊寄りの特殊だとは思います。

qbc:
観てるっていうのは、何のために観てるんですか?

菜:
時間芸術っていうのが良くて。趣味でもあるし、ストレス解消法でもあるし。(例えば)仕事でめっちゃ嫌なことがあった時、それについてずっと考えてずっとその事についてSNSに連投して、それでスッキリすることもあるかもしれないけど、大抵それってその文字にすごく集約されていっちゃうというか、視野がギュっとそこへ行ってる間って苦しいじゃないですか。舞台って目の前で生身の人間が一刻一秒ずっとフィクションをやっているので、そこへ没入するっていうのは面白い部分。精神衛生にもいいし、非日常的な部分においていいなあと思っているんですね。あとやっぱりデカい舞台だと一席10,000円ぐらいしたりしますけど、小劇場演劇って安かったら2,000円、高くても5,000円ぐらいで見られるものが多いので、それが楽しみに事欠かない部分ではあるんですよね。

qbc:
どうやって無名人インタビューを見つけたんですか?

菜:
どこかで見かけたんですよね。何で見かけたんだろう。noteかな?人のnote読むの好きだったんで、そこから何か「こちらのユーザーもおすすめ」みたいな感じで出てきたんじゃないかなと。で、ずっと頭にあったんだと思います。無名人インタビューっていいな。小劇場演劇とか古着屋みたいな、なんかそういう良さってあるじゃないですか。ブランド的に信頼・担保されたものではないけど、画一化されていない、蓋を開けてみるまで分からないっていう面白さがある。何本か読ませていただいてますけど、過去のインタビュー記事を面白いなあって思っていて。それで、なんとなく自分の中で、この秋のことが渋滞しすぎてて人に話せないぞってなった時、ふっと頭の中に出てきちゃったんですよね。

qbc:
渋滞してる事ってまだ他にもあります?

菜:
失恋、病気、職場の事。今のところそれでストップしてます。このままストップしていてほしいです。

qbc:
観劇以外の趣味は何ですか?

菜:
お酒飲むことと料理すること。あと、自分もお芝居の脚本を書き溜めてたりしています。それだけですね。食う、寝る、働く、芝居に関わる。その四本柱で生きてます。

qbc:
どんな脚本を書かれるんですか?

菜:
会話劇です。小劇場で育ってきた、なんて言うには歴は浅いんですけど、やっぱり小劇場規模で上演される感じの会話劇。

qbc:
どんな作品が好きなんですか?

菜:
観るのも会話劇が好きですね。戦争ものだったり、ボーイミーツガールだったり。自分が書きたいものと割と似たようなジャンル。でも、たまに敢えて外すと、それはそれで面白かったり。半分コントのようなものだったり、半分ダンスのようなものだったり、幅広く観に行ってますけど、結局何を観ても自分は会話劇を書いてます。

qbc:
会話劇の良さって何ですか?

菜:
どうですかね。例えば動きについての指導だったら、腕の角度だったり、画一的にやろうと思えばやれる部分っていうのはあって、そこでも残る個性っていうのはあると思うんですけど。会話はその人の発話だったり、どれだけアクセント修正してもその人から出る「間」だったりっていうバラつきが比較的大きいように思っているので。本当に演じる人で変わる。同じセリフを言っていても、例えば小柄な女性と180cmぐらいある男性とではもう全く受けるものが違うし、かといってそこにセオリーは無い。男女の二人芝居の男女の役をお互い男装・女装して演じるようなものだってありますし、それはもちろん(戯曲と)印象がすごく変わってくる。まあセリフが一切ない舞台っていうのも少ないわけですけど、発話って演劇において一番ベタな部分、一番下敷きになっているような部分にコミットしていく。発話で広げていくことの可能性、さらにそこに、生身の肉体が乗ってくるっていうのが面白いんですよね。

qbc:
他に趣味はありますか?

菜:
他の趣味だと、去年は自炊に凝ってました。なんか一人暮らし2年目になるとあんまり「やるぞ」っていう感じにならないですけど、料理は好きです。

qbc:
どんな料理が好きですか?

菜:
レシピ見て作れそうだなと思ったらなんでも作っちゃう。仕事終わりとかはそんなに凝ったものを作らない、んですけど、たまに気が狂って退勤した後にとんかつを揚げ始めたり、見たこともない異国の料理にチャレンジしたりっていうことをやり続けてますね、断続的に。

qbc:
性格について人からなんと言われますか?

菜:
「極端」とか「短気」って言われます。猪突猛進な人間ではあるかなと思うんですけれど。衝動で動いてます。

qbc:
自分自身ではどういう性格だと思いますか?

菜:
考えてる事とか気分とかすぐパッと変わるので取っつきにくいだろうな、でも面白いんだけどなあって。まあそうですね、本当に短気です。

qbc:
短気ってどんな感じになるんですか?

菜:
本当に全部思いつきでやってて。無名人インタビューに応募させていただいたのもそうなんですけど。例えば「今日は絶対カレーを作る」ってカレー粉とジャガイモと人参と玉ねぎとお肉買って帰って、急に気分が変わって、「やっぱり今日はパスタを作る」って材料全部放置して…っていうこともやるし、一事が万事、全部そんな感じなんですよね。正社員にならないのも、正社員を辞めることってのもそう難しいわけでもないとは思うんですが、バイトを辞めてまた始めるのとは話が違ってくるので。じっと一つ所にいるのって多分向いてないんだよなあって。気分屋というよりは多分、思いつきで全部行動してるんだなっていう感じです。

qbc:
そんな自分のことをどう思いますか?

菜:
私からしたら、扱いにくくはあるんですけど面白いんですよ。周りからしたらびっくりされるんだろうけど、私はこんな自分が割と好きですね。だめだとか直そうとか後悔してるとか、そういうことが全然なくて「次はどんな突拍子もないことをしてくれるんだい?」って、自分で自分を面白がってるフシがあります。

qbc:
距離の近い人から言われる性格の一面ってあります?

菜:
妹に「素行は悪いけど、性格は良い人」って言いふらされてたのが発覚して、ショックでした。

qbc:
「素行が悪い」?

菜:
多分酒癖が悪いとか、二連休があったら大体夜通し飲み歩いてるとか、口が悪いとか。あとは実家にいた頃5回ぐらい家出してるので、多分それについても言われてるんだろうな。

qbc:
「家出」ってどういうことですか?

菜:
思春期にみんなやる…かは知らないですけど、単純に、リュックサックに着替えと生活出来そうな荷物を詰めて。名古屋駅周辺とか、遠くて東京とか千葉の方まで来たことがあるのかな?名古屋に居た時代に。というのを、16から大学出る直前まで繰り返してましたね。

qbc:
どこら辺に行くんですか?

菜:
別に目的地はないので、最初は名古屋駅周辺をてくてく歩いて夜明かししてましたけど、高校生の後半辺りから何の計画もなく東京に来るようになって。でも世間知らずだから、「東京に行く」ってなった時にちゃんと東京駅を目指して、ビル群を見て途方に暮れたりとか。あとお芝居にはまってからは一回、それこそ名古屋の劇場にスタッフとして出かけてそのまま居座って帰らなくなって、一か月ぐらい劇場で寝泊まりしてました。

qbc:
寝泊まりさせてもらえたと。

菜:
はい、一ヶ月ほど一つの団体が借りていて。で「明日も朝から練習したいから今夜いるわ」っていう人達の横で私もそのまま寝泊まりしてました。

qbc:
今、一番楽しいこと、好きなことってなんですか?

菜:
今で言ったら本当にお芝居を観ることです。退勤後とかにもぎゅうぎゅうに観劇の予定を詰め込んで、「タフだね」って職場の人からは言われるんですけど、いや、これが無きゃやってられない。みんなにもそういうものがあるでしょう?と思っています。

qbc:
病気と関係があるんですか?

菜:
はい。当たり前ですけど、人生で観られる本数、時間芸術は決まってるじゃないですか。理解が早い遅い、本読むの早い遅いとかに限らず、絶対同じ時間をかけて見るから。そこを考えた時に、周りの人間が80年生きるとして、自分がその1/2だとしたら、じゃあ人の2倍の速度でお芝居を見たらまあまあ元とか取れるんじゃないか。元ってなんだ?そういう安直な思いつきですけど。まあ、だから本当に先述の内容をお医者さんに言われて、じゃあ今後どうしようかなってなった時に、自分はとにかくなんとか治して、一秒でも長く生きたいというよりは、好きなことをしたいタイプだったんだなと。

qbc:
好きな食べ物は?

菜:
魚です。魚とか魚介。

qbc:
食べ方、種類は。

菜:
焼き鮭がこの世で一番美味しいと思っています。お刺身とか煮魚とか何でも好きです。海に住みたいなあと思ったこともありますね。

qbc:
住みたい。海辺じゃなくて?

菜:
まあ海辺です。海見えるマンションとか良いなあ、と思ってますね。実現しないと思うんですけど。


過去:お芝居に出会って、面白いなってなってこっちの道に来たっていう感じです。

qbc:
過去について見ていきますね。子供の頃はどんなお子さんでしたか?

菜:
子供の頃から集中力が無かったし、衝動的な行動ばっかりする子だったし、想像力は周りの大人曰く豊かな方で、5歳ぐらいの頃からチラシの裏に絵本まがいの物語とかを書いているような…まあ、取っつきにくい子供だったみたいですね。

qbc:
好きな遊びは何でしたか?

菜:
当時何してたっけなあ。かるたとか強かったです。

qbc:
それはなんで強かったんですかね?

菜:
文字を聞いて、そのストーリーに合う絵を探すのがすごい早かったんですよ。あと、一回面白いって思うと延々とやり込むので覚えるんですよね。結局あんなのやり込んだ方が強いじゃないですか。やり込みゲーマーでした。

qbc:
小学校とか学校ではどんな感じだったんですか?

菜:
学校ではずっと本読んだりと絵描いてたり窓の外見てたり、そういう感じだったので、全然友達がいなかったり、居てもすごい意地悪な子にバーッと引きずられていく関係だったり。いわゆる内向的な子供だったように思います。

qbc:
中学校はどんな感じでしたか?

菜:
中学校はもうなんていうか最悪でしたね。意地悪な子の意地悪が本格的になってくる時期でもあるし、私も私で内向的さをこじらせて、ちゃんと中学2年生で中二病発言していたので。机の上にこれ見よがしに原稿用紙を広げてずっと何か書いて、たまにそういうのが破られてたりして。でも書く。ちゃんと中二病してました。

qbc:
高校は?

菜:
親の希望で家の近くに進学したんですけれど、そこもさらに、中学校を激化させたような治安だったので、半年で辞めました。辞めるって言い出せなくって。その結果、最初の家出をするんですけど。とりあえずそれは変な話、成功したというか、「そこまでするほどなのは理解した、これ以上通えないのは分かった」ということで通信制高校に転校して。前を辞めてからすぐ入れたんでストレートで卒業してます。私の行ってたところはすごく出席が緩かったので、朝職員室に顔出して「じゃあ帰ります」って言ってそのまま一日散歩して帰る、みたいな事をずっとやってました。

qbc:
その頃書いてた作品の内容ってどんなもんだったんですかね?

菜:
今と全然違いますね。ファンタジー系だったり、あるいはあれかな、いわゆる百合小説、ガールミーツガールとかを書いてましたね。

qbc:
ガールミーツガールってどんなものですか?『アナ雪』みたいなやつですか?

菜:
あれも広義のガールミーツガールか。うーんと、もっと普通にガールズラブだったり、あるいは恋愛感情抜きのものだったりも普通にありますし。すごいスピードで書いてましたね、暇だったから。

qbc:
大学は?

菜:
大学はそのまま、好きが高じて文芸系の学科に進学しました。でもやっぱり、同期で同じ授業同じゼミを取っている人も、熱量だったり、考え方、クオリティっていうのに凄くばらつきがあって。私は当時かなり天狗になっていたので、結構人の作品にびしばし口を出して怖がられて、本当に性格の悪い。で、途中から学科の授業の一環でお芝居に出会って、面白いなってなってこっちの道に来たっていう感じです。

qbc:
どうでした?お芝居の方に入ってきて。

菜:
ド素人なので、出来ることは書くこととか、当日受付物販ぐらい。専門的な部分には全くコミットしていけなくて…今も右往左往してるんですけれど。それでも、それなのに面白いし、やっぱり小説を書くことより正直楽しい。っていうので、なんだかんだ、周りの温かい目もありつつ続いてますね。

qbc:
何が良かったんですかね。

菜:
大学3年の夏に1本見に行って、そこから急に「もっと見たい、脚本を書いてみたい」ってなっちゃった。それまで原稿用紙やタブレットで平面の奥の世界に関わってきた人間からして、すごく衝撃的だったんですよね、時間芸術。しかも目の前で人が動いてて、2回3回同じ芝居を見に行ったら当然、ミリのずれもない同じ回なんてない、っていうのが強烈に面白くて。小説にも地の文と会話文ってあるわけですが、私はそんなに「地の文を極めたい、凝った文章をやりたい」という訳ではない。っていうのはずっと思っていたので、会話と動作・舞台セットなどなどの指示で構成されていく、戯曲っていうのが肌に合ってきたんです。

qbc:
小説と共通する部分ってありますか?

菜:
大学の先生に言われてずっと頭に残っていることがあって。「演劇っていうのは、現実をモチーフにしている」ってことは覚えといてね、と教室で皆に向かって言ってて。最初は意味が分からなかったんですけど、いっぱいお芝居を見ていると「ああ」って思うことはあって。例えばファンタジーでも、「これはファンタジーだから何をしてもいいんだ」っていう理屈でリアリティの無い展開だったり、造形を無視したことをバンバン何の考えもなくやっていたらそれって面白くないし。先生は演劇の先生だから「演劇は〜」と言ってましたけど、結局ストーリーありきのものの多くはそうかなと思うんですよ。現実がモチーフになっている、「現実を下敷きにして」どんなジャンルを作ってくかっていうのは観てても書いてても思います。

qbc:
ご両親からどのように育てられたと思ってますか?

菜:
両親は不思議な人でしたね。「でしたね」ってまだ元気なんですけど。子供扱いされなかったような部分が良くも悪くもあってですね。名前も「さん」付けで呼ばれてましたし、大人と同等に、例えば「冠婚葬祭の席に連れてかれたらもうじっとしてて当然」みたいな方針は年齢不相応に強かったようにも思いますし。あとは、中学ぐらいからブログを開設して「これを更新するように」と言われてて、勉強とか差し置いて毎日「中学生らしい楽しい日記」を更新しなきゃいけなくて、それによって色々、書き物のスキルを鍛えられたようには思うんですけど、あれは子供心になかなか楽しいものではなかったなあと思っております。ちょっと不思議な親です。

qbc:
今の関係性ってどうなんですか?

菜:
距離ができたので、物理的にね。ある程度落ち着いてはいますけど。喋ってないことがいっぱいあるし、病気のことも喋らない、今後絶対。環境的に、ちゃんと色々秘密にできるようになった。そこが大きいなと。実家にいた頃は、子供部屋の扉も閉めちゃダメで、気が付くと引き出しが見られてるような環境だったので。今は嘘がつける環境にあることによって関係性が成り立っているなあと思います。

qbc:
大学の後はどんな感じなんですか?

菜:
とにかく私は一旦実家を離れようと思って、前述したように「お芝居いっぱいやってそうだから東京に行こう」と思って就活したんですけど。さっきも言ったように、正社員になってコツコツ勤めあげるルートには何の興味も無かったので、適当に内定出たとこで「じゃここで決めます」と。やる気もなく、当然業務が合うわけでもなく、それについて思い悩むこともなく、新卒二ヶ月で辞めてすぐフリーターになりました。

qbc:
で、何年ぐらい経って今になるんですか?

菜:
そこからおよそ一年半ってところですかね。一年半フリーターを続けて現在に至るって感じです。

qbc:
バーッと人生を振り返っていただいてどんな気持ちになりましたか?

菜:
思った以上に衝動的に生活してるなあと、他人事のように面白く思っているんですけど。「多分笑い事じゃないんだろうなあ」って思いながらも、まあ面白いからいいんじゃないかな?という気持ちが非常にデカいウェイトを占めています。

qbc:
人生の転換点って置くとしたらどこに置けると思いますか?

菜:
間違いなく最初の1本のお芝居を見た大学3年の夏の日ですね。

qbc:
何が変わったんでしょうか?

菜:
物心ついてから「何かを書くこと、読むこと」っていう部分にフルコミットして生きてきて。それまでは親が言う「若いうちに小説家にでもなるといい」とか「ブログだって今は書籍化できるんだぞ」みたいな話を信じてやってきた部分から「お芝居っていうものがあるんだ、みんな全然食えてないのにこんなに面白いんだ」っていう、出会いの衝撃によって、書くことに重きがあるのは変わんないんですけど、何を書くか?何を作りたいか?もすごく変わったし。本は自分のスピードで読めるけど、お芝居は「行ってきます」って家を出て、観て、一定の時間を置いて帰ってくるので、必然的に生活スタイルも変わりますし。で、良くも悪くも一人で完結しないから人との繋がりも広がるし。以前と以後は、別人みたいなところがあるなあって思ってます。


未来:葬式に来てくれる友達がいるぐらいに留めておいてほしいですね。

qbc:
最後、未来について聞いていくんですけれども、自分が死ぬっていうところまでイメージして、どんな人になってると思いますか?

菜:
多分相変わらず衝動的、思いつきでワッと行動してるんでしょうけど、それでも多分今ある「もっといっぱい観たい書きたい」っていう願いは叶えてくれているんじゃないかなと思います。あとは少しは落ち着きが出ているといいな。良い意味で。

qbc:
「落ち着き」ってどういうものですか?

菜:
今も多分、話してて分かると思うんですけど、話していい場が与えられたらワーッと喋ってしまうし、開示癖がすごくて。それによってやっぱり、人間関係のトラブルがあるので、(自分に対して)もう若干大人になってくれっていう気持ちがある。葬式に来てくれる友達がいる程度に留めておいてほしいですね。これ以上対人トラブルを起こさないでほしいです。

qbc:
過去のお話の中であんまり出てきませんでしたが、どんなトラブルがあったんですか?

菜:
かまってくれる人間がいると嬉しくなって、相手が疲れて離れていっちゃうまで喋ったり。逆に相手に思い入れがなければ、その人が物書き仲間だったとして「やっぱりもう辞めた方がいいのかなあ?」みたいな事を相談された時「うん、辞めた方がいいんじゃない?」と言っちゃう。そういう、人との距離感、人には人の大事なものがあるみたいなところ、ちゃんとブレーキかけていけるようになりたいですね。

qbc:
「言ってはいけない」「言いたい」「言っちゃってる」っていう感覚のどれに近いですか?

菜:
「言いたい」が勝ってしまったって感じですね。その瞬間にダメだって思えない、あとからダメだったなとしか思えない。ちょっと口に出す前に冷静になりたいですね。

qbc:
何で言ったらダメなんですかね?

菜:
他者にも人格があって、それに際してもうちょっと自分が自分がっていうところを抑えないと社会生物としてヤバいなとは思ってます。

qbc:
まあ、ある意味その演劇界隈ってその突破した人が多い、突破したことが許される界隈だと思うんですけれども、そのことに関してはどう思いますか?どっち側に行きたいと思ってらっしゃるんですか?

菜:
ですね。だからといって、そして自分のことを一旦棚に上げて、ハラスメントという形での突破は本当に、自分としても他人のことも許容できない。このワーッと全部言っちゃう、衝動的な性格をもって作家をやれていたりはするけど、やっぱりそれは対人に向けたら甚大なダメージを与えるな、ということは薄々ながら理解してきたので、こう「人に向けてはいけないものを人に向けてはいけない、ならぬものはならぬ」っていう、そこはちゃんと守っていきたい。というか本当にエネルギーの出力の仕方を間違えたくない。少なくとも「芸術のためなら人間は傷ついて当然」とか、そういうこと言いたくないし、自分の足元、襟元正していかなきゃなって思います。

qbc:
これはいつ頃からっていうか、どのタイミングでそう思ったんですかね?

菜:
ハラスメントはダメだろとはずっと思ってましたけど、自分だって所謂、ハラスメントとは異なる部分にしろトラブルを起こすし。「やっぱり人に向けちゃダメなものを人に向けちゃダメ」っていうのはそれこそこの秋、人に振られたことがきっかけというか。向けちゃダメなものを向けたら人は傷ついて去っていくね、っていうことを思い知りました。

qbc:
スッキリしましたか?渋滞したものを吐き出したりとか、整理したいみたいなお話だったと思うんですけれども。

菜:
整理。そうですね。本筋とはまた違うことを聞かれても、自分の大きな話題に収束していって、お芝居だったり病気だったり人間性、衝動性だったり。それがそこに繋がってるんだ、っていう部分ではすごく面白かったですね。「あ、この話題ってこの棚に入ってくるんだ」みたいな。お片付けしてる気分になりました。

qbc:
もしもの未来の質問っていうのをしていまして。もしも、演劇に早い段階から携わっていたら何をしていたと思いますか?

菜:
例えば高校演劇だったり、大学の演劇サークルっていうところでは、どんなに社会性が無くても、どんなに知識がなくても、いて参加できていたらある程度身についていくものはあると勝手に思ってるので、もしそういうところに入れていたら…今公演まだ数本しか打ててないですけど、もう少しは長く活動できていて、人生の中心になっていって。そうしたら結果的に、傷つけなくて済んだ人達っていうのもいたのかなっていう、ちょっと虫のいいことは考えますね。

qbc:
「傷つけなくて済んだ人達」。

菜:
お芝居だったり書き物だったりから離れている間、暇なんですよ。暇になると人間って人間と話したくなる。自分は人一倍それが強いと思うので、そこで特定の人間にのめり込んでしまって、相手に迷惑をかけることが相当あったように思うので。人間関係か芸術かとか、そういう二択も好きじゃないですけど、もっと作る方にコミットして、あんまり人にかまってかまってせずに済んでいたらよかったのになあっていうのはちょっと思います。

qbc:
悩みの多くっていうのは、そういう人間関係のことが多いんですかね?

菜:
はい。人との距離の取り方が人一倍下手だな、っていうか。口下手でもあるし、身体的な距離の取り方、目の合わせ方とかも難しいし。だからこそ幼少の頃から書き物に逃げていた部分もあるので。

qbc:
では、もしも人間関係が上手かったら、どんな人生になってたと思いますか?

菜:
そしたら書き物やってないな。あと、親にも上手く口答え出来てたら良かったのになあとも思うので、どうだろうなあ。ひょっとしたら地元出なかったかもしれないですね。そこそこ周りの友達と上手くやって、下手したらフリーターにもなってないのかもしれないなあ。特に何か創作活動とかしないし、お芝居なんて観たことないけど、それなりに楽しくやってるのかもしれないです。

qbc:
そのもしもの人生と今の人生、どちらが良いと思いますか?

菜:
絶対今の方が良いです。私は今の私が好きなので。

qbc:
どこが良いんですかね。

菜:
やっぱり面白い。面白いです。普通の社会人からとても外れてしまった、外れ値の人間である自覚はありますし、普通の幸せみたいなやつが欲しいなと思うこともなくはないですけど。ただやっぱり、自分のそのはみ出し方が、しょうがねえなと思いつつ面白がっているから抜け出せない。私は多分、別にもっかい過去をやり直すチャンスがあっても、今の私をちょっと整えた程度の人間にしかならないように思います。

qbc:
ありがとうございます。最後の質問が「最後に言い残したことは?」というもので、もし言い残したことがあればお伺いしています。

菜:
しっちゃかめっちゃかな内容だとは思いますが、ここまで見ていただきありがとうございます。ここまで読んでくれた方に、どこかで書き物とか通してお会いできたら楽しいなあと、月並みなことを思っております。と言ったところです。

qbc:
ありがとうございます。


あとがき

人生盛沢山!

【インタビュー・あとがき:qbc】

【編集:さめこ】


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#無名人インタビュー #インタビュー ** #演劇   #衝動的 #フリーター

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