爽やかに自由に歩けている時間と空間を手に入れた人
むかしむかし、ある城下町に、足取(あしどり)という名の若い商人が住んでいました。足取は朝から晩まで忙しく働き、いつも時間に追われて、せかせかと歩き回っていました。
「急がなければ、急がなければ」
足取の足音は重く、顔はいつも曇っていました。道行く人々も、彼を見ると自然と道を避けるようになっていました。
ある日、足取は仕事で隣の村へ向かう途中、深い森で道に迷ってしまいました。焦って走り回っているうちに、小さな祠を見つけました。
そこには白い髭の老人が座っていました。
「若者よ、なぜそんなに急いでいるのじゃ?」
「お爺さん、私は忙しいのです。時間がないのです」
老人は微笑んで言いました。
「時間がないのではない。君は時間に縛られているのじゃ。本当の自由な歩みを忘れておる」
「自由な歩み?」
「そうじゃ。一度、ゆっくりと歩いてみなさい。空を見上げ、風を感じ、鳥の声に耳を傾けながら」
足取は最初は戸惑いましたが、老人の言葉に従って、そっと一歩を踏み出しました。すると不思議なことに、足が軽やかになり、心に爽やかな風が吹き抜けました。
「あ...これは...」
空の青さ、雲の白さ、木々の緑、すべてが輝いて見えました。時間の流れがゆったりと感じられ、自分の周りに広がる空間がこんなにも美しいことに初めて気づいたのです。
足取は老人に深々と頭を下げました。振り返ると、老人の姿はもうありませんでした。
それから足取は変わりました。仕事の合間には必ず散歩の時間を作り、季節の移ろいを楽しみながら歩くようになりました。彼の足音は軽やかになり、笑顔が絶えなくなりました。
人々は彼を見て言いました。
「足取さんは、まるで風のように爽やかに歩いていますね」
足取は後にこう語りました。
「急ぐことばかり考えていた時は、本当は狭い檻の中を走り回っていただけでした。ゆっくりと歩くことで、無限に広がる時間と空間という宝物を手に入れたのです」
そして「急がば回れ、歩けば見える」ということわざが、この町から全国に広まっていったとさ。
めでたし、めでたし。
そして次にインタビューされるのはきっとこれを読んでいるあなただし、そしてインタビュアーになる日もそう遠くはないでしょう。
と思う2025年5月30日23時00分に書く無名人インタビュー1068回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】
今回ご参加いただいたのは のりこ さんです!
年齢:50代前半
性別:女性
職業:子どもと関わる仕事
現在:人間関係にしばられずどんどん環境を変えながらっていうそういう人に憧れがあって。
本間ユミノ:
今、何をしている方ですか?
のりこ:
今は学童保育で子供と接しながらおやつを作ったり一緒に工作したりする仕事をしています。
本間ユミノ:
学童保育のお仕事を始めたきっかけはなんですか?
のりこ:
学童を経営されている方と知り合いで、初めはボランティアで月1回おやつを作って提供するという形で関わらせていただいてたんです。
何年か経って、1人のスタッフの方が産休に入られるタイミングで声をかけていただいた際に、私も丁度仕事をしたいなと思っていた時期だったのでアルバイトから始めて社員になったという形です。
本間ユミノ:
毎日どんな気持ちですか。
のりこ:
本当に子供たち1人1人、当たり前ですけど個性が違うので、それがわかりやすく全面に出ている子供たちと接していると、すごい楽しいですね。
ようやく楽しくなってきたっていうか、アルバイトで関りはじめてから今4年目なんですけど、特に子供が得意という形で関わり始めたわけではないので、最初はちょっと怖々っていう感じだったんですけど最近本当に楽しいです。みんなの話を聞いたり、質問したりして、成長していく様子を見られるから。
本間ユミノ:
学童保育にあまり詳しくないんですが、具体的に時間帯とかって?
のりこ:
小学校1年生から6年生までが対象で、学校が終わった後、放課後を過ごす場所になります。学童に子供たちが次々と帰ってきて、おうちで過ごすように宿題して、おやつ食べて、みんなで遊んで、夜までいる子は夕飯食べてお風呂入っていくっていう。第2のお家であり居場所といった感じです。お父さんお母さんがお仕事終わった後、大体18時ぐらいにお迎えが来て、みんなそれぞれ帰っていくっていう感じです。ゆったり過ごせる場所ですね。
本間ユミノ:
ありがとうございます。
先程、「だんだん楽しくなってきた」と仰ってましたが、具体的にどんな瞬間が楽しいですか。
のりこ:
例えば、今4月なので新1年生が入ってきたのですが、まだ慣れていないので学校までお迎えに行くんです。私は1人の子を迎えに行って、学童まで歩きながらいろいろ話すんですけど、その子は宇宙にすごい詳しくて。なんだっけ…探査機「はやぶさ」の話とかしてくれるんです。またその子は弟が2人いて、弟くんのことが大好きなんです。
人生何回目なの?って感じの子なんですけど、クリスマスプレゼントの話になったときに「何をお願いしたの」って聞いたら、「弟たちが欲しいものを僕は頼んだ」って言ったんです。
本間ユミノ:
ええ。
のりこ:
「自分が欲しいものじゃなくて弟くんたちの欲しいものなんだね」って言ったら、「うん。僕は弟たちが喜んでくれるのを見るのが一番好きだから。」って。
「すごいなこの子は」と思って、そういう純粋な面に触れたときとかですかね、最近ではその子の話を聞いたりやりとりするのが毎日すごく楽しいです。
本間ユミノ:
学童保育のお仕事以外に普段やっていることとか趣味とか、何かありますか?
のりこ:
散歩が趣味で、今日もぐるっと歩いてきたんですけど。
行く場所を決めないで、例えば30分タイマーだけかけて、いきたい方向に歩いていくんです。何か気になる路地があったら入ってみたりして。
本間ユミノ:
はい。
のりこ:
途中で猫と会ったり、今いろんな花が咲き始めているので、「あ、もう咲いてる!」キレイだなって思ったり。
引っ越してきたばっかりで、まだ周りをあんまり知らないんですけど、路地を抜けたら川の方に出て急に視界がひらけたり、へーこんな景色になるんだ〜!という驚きがあったり短い時間で色々な体験ができるのがすごい好きです。
朝天気がいい日に散歩したりっていうのは個人的にやってるんですけど、月に1回ウォーキングの会を開催してまして、それはもう10年ぐらいやってます。
それは下見をして、どこに行こうっていうのを決めていくんですけど、あんまりガシガシ歩くとか観光名所に行くとかではなく、みんなで話しながらこんな風景があるねとか、楽しいねとか言いながらのんびり歩くっていうのが趣旨で。
ご飯食べた後に、あらかじめ設けておいたテーマについてちょっとみんなで喋ったりとかしてます。
本間ユミノ:
ウォーキングの会っていうのはのりこさん主催?
のりこ:
そうですね。
本間ユミノ:
参加する方はどのような方がいますか。
のりこ:
きっかけが区役所で開催されていた区民企画として立ち上がった会なので、そのときに参加していたメンバーですね。ただもう10年やってるので、参加者のだんなさんとか知り合い、私の大学時代の友達とか、あとは農業体験みたいなのに行ったことがあるんですけど、そこで知り合った人、案内をみて来たくださった方など。
今は元の区役所繋がりの方が半分、そのほかの方がが半分っていう感じです。
人数は毎回5人から多くても10人ぐらいっていう小規模なんですけど。
本間ユミノ:
のりこさんは周りの方からどういう性格だと言われますか。
のりこ:
優しいとか…でも、意外と突拍子もないじゃないですけど、突然行動するよねと言われたりもします。
あとは、性格じゃないですけど、人と人とを繋げる人だよねっていうのは言われますね。
本間ユミノ:
突拍子のないことをするっていうのは、思い当たる節があったりするんですか?
のりこ:
思い当たりますね。最近引っ越したっていうのも結構突然で、自分の中では温め続けてたことなんですけど、周りに言ったのは割と突然だったので、「本当に引っ越したんだ!」みたいな。
あとは、3年ぐらい前にも、フランスに日本人の友達が住んでるんですけど、まだコロナが収束してなくて外国に行きにくい時期だけど、ちょっとフランスに行ってくる〜みたいな感じで行ったらびっくりされましたし。
30代ぐらいの頃は、マラソンにハマって100kmマラソンっていうのに参加したり、メドックマラソンっていう、これもフランスなんですけど、ワインを飲みながらフルマラソンを走るマラソン大会に参加したり。
そういう行動がちょっと珍しいよねって。
本間ユミノ:
ご自身では自分のことをどういう性格だと思いますか?
のりこ:
割とコツコツ積み上げていくタイプなんですけど、でもその殻を破りたいっていう気持ちが常にあって。
どんどんいろんな行動を起こしていく人っているじゃないですか。
本間ユミノ:
はい。
のりこ:
人間関係にしばられずどんどん環境を変えながらっていうそういう人に憧れがあって。マラソンやってた頃はそういう方の近くにいて影響を受けてフランスに行ったっていうのもあったんですけど、とにかく常に殻を破りたいっていう憧れがある。
憧れがありつつ、もがいてるっていう感じかなと思います。
本間ユミノ:
その、殻を破りたいみたいな願望はどこから来るんでしょう。
のりこ:
どこから来るんでしょうね。
引っ越しもそれと関係してるんですけど、成長したいっていう人間の本質かな?
でも誰でもそうではないか…。
生まれながらに備わってるものだなって思うんですけど、本当にその願望がなければ割と楽に生きられるのにって思った時期が結構あって。
住まいとか、引っ越す前も別に何が嫌だっていう環境だったわけではないんです。
何かいろいろなことをちょっと変えたくなっていくんです。
もう、生まれ持って来たものって感じがします。
本間ユミノ:
最近お引っ越しされた理由をお伺いしてもいいですか?
のりこ:
私、結婚してちょうど20年ぐらいなんですけど。
10年ぐらい前に、ある人に知り合ったのがきっかけで、これまで自分が普通に思っていた「これが当たり前」とか「みんなこんな感じでやってる」みたいな考えに揺さぶりをかけられる体験があって。
常識を疑ってみようみたいな考えの人で、その人自身もいろんなチャレンジをしながら生きてる人なんですけど、その人に出会ってからちょっとずつちょっとずつ、「今の自分は幸せだけど、よくよく感じてみると何かが物足りない」って感じているなって思ったんです。
最初の頃は、例えばさっき言ったちょっと面白いマラソン大会に出てみるとか、自分でイベントを作ってみるとか、何か外側に刺激を求めていて。
そのときそのときで楽しい体験ではあったんですけど、やっぱり何か物足りないなっていうのが消えなかったんですよね。
その人の発信してることを読んだり聞いたりしていくうちに、生活の土台自体をちょっと見直さないとその物足りなさっていうのはもしかしたら変わらないのかも、と5年ぐらい前に強く思って。
そこから自分が感じてることとか考えてることをノートに書いてみたり、その人にコンサルみたいなことをやってもらったりして、人に話をする中で、旦那さんとの関係性を見直す必要があるって気づいて。特別何がいやってことはないんですけど、2人でいる未来が見えないというか、このまま一緒にいても、あんまりわくわくしないなって思ったんです。はじめは旦那さんにとっても意味が分からないっていう感じだったと思うんですけど…
「私は何か生活を変えたくて一歩踏み出してみたいんだよね」っていう話をして、2年ぐらい月1で、これからどうしていくって話し合った上で、「そんなに気持ちが変わらないんだったら、1人で暮らしてみれば」って了解ももらって一人暮らしすることになりました。
2人の関係性も、今は離婚とかしてないんですけど、6月ぐらいを目処に、どうしていこうかはっきりさせようっていう感じで今、過ごしてます。
本間ユミノ:
ありがとうございます。
今、のりこさんの生活は仕事と趣味、どっちが中心になってますか?
のりこ:
今は仕事が中心です。
でも6割ぐらいですかね。
本間ユミノ:
仕事と散歩の活動とで、得られるものに違いはありますか。
のりこ:
仕事はお金が得られるっていうところは全然違いますけど、でも今質問されて、そんなに変わらないかもって思いました。
やってることは表面的には違うんですけど、自分の中で子供たちの変化とか反応が喜びですし、散歩も日々の自然の変化とか発見が見られるのが楽しいなと思ってるので、自分の喜びについてはあまり変わらないですね。
本間ユミノ:
最近あったちょっと悲しい出来事は何かありますか?
のりこ:
1ヶ月前に旦那さんと会ったときに、彼は自分が希望したわけではなく今一人暮らしになっているので寂しいみたいなんですよ。
「寂しくないの?」って聞かれて「私はあんまり寂しくない」って言ったときに、ちょっと寂しそうな顔をしてたのが悲しいとはちょっと違いますけど、少し胸が苦しくなった瞬間でした。
そういうば「悲しい」って最近あまり感じてないですね。
本間ユミノ:
逆に、最近あった楽しいことは。
のりこ:
私、猫がすごい好きで。昔は実家で飼ってたんですけど、今は飼えてなくて。
引っ越し前は団地に住んでいて、そこも猫は飼っちゃいけなかったんですけど、外で飼っている方がいて、その猫ちゃんを毎朝見ながら楽しんでたんです。
こちらに引っ越してきてからはそういう猫がなかなかいないなと思って毎朝散歩してたんですが、この間ちょっと路地を曲がってみたら、猫がいて!
ダメもとで話しかけてみたらトコトコこっちに来て、ゴロンって横たわって触らせてくれる猫だったので、いい猫ちゃんを見つけたなって。飼い猫ちゃんだったんですけどね。
こんな身近に猫ちゃんがいた!っていうのが最近の心が踊った出来事ですね。
過去:そういう意味では山は本当に自分が心から望んでいて、楽しいってことに出会えた最初の出来事だったのかもしれないですね。
本間ユミノ:
子供の頃はどんなお子さんでしたか。
のりこ:
子供の頃は、すごい引っ込み思案。
兄弟は兄と弟がいるんですけど、弟と歳が1歳半ぐらいしか離れてなくて、よく家の中で遊んでたんです。
そんなこともあってか、幼稚園に行くときにすごい泣いていて。
私立の幼稚園で、年少のときは抽選で入れなくて年中から入ったっていうのもあったかもしれないんですけど。
母が帰る時に、門を掴んで泣き喚いていたのを覚えています。
しばらく経っても幼稚園では誰かと仲良くなるって感じでもなく、本を読むのが好きだったので隅の方で本読んでたりしていました。
本間ユミノ:
小学校、中学校に進学してどうなっていきましたか。
のりこ:
小学校1年のときは幼稚園の延長っていう感じで消極的だったんですけど、2年生か3年生ぐらいのときに、国語とかで指名されて読むのもすごいちっちゃい声で読んでたんですね。
ちっちゃい声で読むと、聞こえませ〜んとか言われるじゃないですか。
で、ある日突然読んでるときに、「もっと大きい声で読んだら、言われないんだよね」と思って急に大きい声で読んだんですよ。案の定その後は何も言われなくなりました。
あとは、運動会のリレーの選手を決めるために体育の時間に順番に走って一番早い人がリレーの選手になるみたいな時があって。
消極的だから目立ちたくないわけです。
本間ユミノ:
うん。
のりこ:
足は結構速いっていうのは自分でもわかってたんですけど、「リレーの選手になってみたら面白いかも」「なってみたい」という気持ちがほんの少し湧いてきて、本気で走ったらリレーの選手になれてドキドキしながら運動会でリレーやったりとか。
心の奥底では、もっと見て欲しいみたいな気持ちがあったと思うんですけど、それが徐々に芽生え始めたのが2年生か3年生ぐらいですね。
そこからはそんなに消極的という感じでもなく、友達も常に何人かいるという感じの小学生時代でした。
でもすごく積極的に何かをやるっていうタイプではなかったです。
本間ユミノ:
中学生になると?
のりこ:
部活をやり始めるんですね。
軟式テニス部なんですけど、割と県内でも強い部で、過去の先輩が全国大会に行ってたりっていう。
私達の同期が20人ぐらい入って熾烈な争いがあったんですけど、自分は競争心が全然なくて、親がテニスをやってたから何となくテニス部に入っちゃったんですよね。
部活には入るものだみたいなそういう時代でもあったので。
だから全然強くもならず、だけど一度やり始めたことは続けるものだみたいな思い込みもあって、全く面白くなかったんですけど、3年間やり続けました。
全然面白くないっていうか本当にきつかったんです、毎日競争みたいな感じで。
強さでABCクラスとかに分けられて、私たちCの人はコートを作るところから入って、Aの人はもう出来上がったコートで練習みたいな感じで、部活漬けの毎日ではあったんだけど、なんかいつも楽しくはないっていう感じの日々でしたね。
ただ、どっかで修行みたいなのが好きだったんです。
何か大変なものを求めている自分がいて、家庭環境とか特に何も問題ない、割と裕福な家庭で育っていたんですけど。
当時から「物足りない感」をすごく感じていて、「こんな幸せなままでいいんだろうか」みたいなのが中学生ながらにあったので、その厳しい部活も特に上手くなりたいとかそういう動機ではないけど、毎日一生懸命ヘトヘトになるまでやって、精神的にも結構追い詰められてっていうのが意外と満足感に繋がっていたかもしれないです。
楽しくはないんですけどね。なんか、3年間やりきったぞっていう満足感としては今でやってよかったなと思ってます。
本間ユミノ:
「物足りなさ」とか「こんな幸せでいいのか」みたいなものはどこから来るんでしょう。
のりこ:
血筋というか、父方のおじいちゃんがすごく変わった人で、宗教家に途中でなったんです。
それまでは学校の先生とかやってたんですけど、とにかく自分に厳しくて、朝早く起きてお題目をずっと唱えて、自分の信じる道を進むうちに信者さんも集まってきてとちょっとカリスマ的な人なんですね。
父もそういう自分のお父さんを見ていて、何か感じるところがあったみたいで。
1回はサラリーマンになるんですけど、2年ぐらいで仕事を辞めて自分でこれをやりたいっていう職を選んで生きていくっていう道を選んでるんですけど、そういう祖父とか父を見ていて、自分もこれだっていう何かを掴みたいっていうのは、何となく肌で感じていたのかもしれないです。
中学ぐらいのときはおじいちゃんが何でそういうふうになったのかとかも知らないし、父のヒストリーも知らなかったんですけど。
そのおじいちゃんが開いた道場っていうのが今もあって、家族でいつもお正月にそこに行ってお題目を唱えるっていうのをやってたんですけど、その道場の神聖な感じっていうんですかね。
子供だから正座するの嫌だし寒いしつまらないし、行きたくないって口では言ってたんですけど、何となくそこに行くと落ち着くなみたいなのは感じていて。
そういう環境が、厳しさへの憧れとか、自分もこれだっていうのを見つけたいっていうのに繋がったのかなっていう気はしてます。
本間ユミノ:
高校生になると何か変化はありましたか?
のりこ:
高校生になると、相変わらずまた部活をやるんです。今度は陸上部に入るんですけど。
というのも、テニスは下手だったんですけど最後に校庭を5周走るっていうのがあって、テニスができなかったから私は毎回その校庭5周にかけていて、足も速かったんです。
次はちょっと走りで勝負をしてみようと思って入るんですけど、当然ながら速い人がいっぱい集まってるので、入ってみたら全然普通で。
中学のときのテニス部と違って割と普通の部で、中学の頃の部活漬けの生活と比べると部活はやってるけど、何となく中途半端な感じ…、かといって部活以外の遊びをするっていうタイプでもなく。
部活以外は物作りをしてましたね。
フェルト細工でマスコット作ったりっていうのは小学校の頃から好きだったんですけど、高校の時はカバンを作ってみたりとか、あとお菓子作りが趣味だったのでクッキーを焼いたりとかしていましたかね。
でも、あんまり高校時代も楽しいって感じじゃなかったです。
本間ユミノ:
中学生のときに感じていた「物足りなさ」は、高校のときはどうでしたか。
のりこ:
高校のときの方がもっと感じていて、生きてる実感がないなって思ってました。
だけど何か行動に出るっていう感じではなくてモヤモヤしてる感じでしたね。
本間ユミノ:
高校卒業後は、どういった道を歩まれたんでしょうか。
のりこ:
大学は、絶対ここに行きたいっていうところに行ったわけではなく、学力的な問題もあって文学部に進みました。
この4年間の中でこれだっていうのを絶対見つけるぞっていう気持ちで、いろんなことにチャレンジをしていて。
大したチャレンジじゃないんですけど、例えば、山に行きたかったので山のサークルに入って夏は3000m級の山に行ったり、女子大だったんですけどアメリカに短期留学できるチャンスがあったのでそれにチャレンジしてみたりとか。
あとは友達と北海道旅行に行ったりとか、ちょっと気になってることをいろいろ行動に移すようにはなってきましたね。
アルバイトをちょこちょこやってみたり。
本間ユミノ:
それで、これだっていうのは見つかりましたか?
のりこ:
これだっていうのは見つかりました。
見つかったっていうか、とにかく就職したくないなって思いました。
会社に勤めて雇われて働いてるっていう図が自分の中で全然想像できなくて、何か手に職をつけたいっていう気持ちがあったんです。
コツコツ積み上げていきたい、ずっとできる仕事をしたい、っていう。
昔からお菓子作りが好きだったし。半分、就職したくないから他の道はないかっていう理由もあるんですけど。
それで、お菓子の道を自分の道にしようと思って、そこからまた専門学校に行ってお菓子の道を目指すっていうことがようやく大学4年のときに決まりました。
本間ユミノ:
お菓子の学校は何年ぐらいですか。
のりこ:
1年間です。
1年間なんですけど、お菓子の勉強をしたい+ちょっと修行めいたことをしてみたいっていう気持ちもあって、横浜に住んでいて近くにも同じお菓子の学校があったんですけどあえて大阪の方の学校を選んで、学校が紹介してくれるお店で住み込みで働きながら学べるコースを選びました。
パン屋さんに住み込みしながら朝働いて学校に行って夕方もまた働くのですが、それがすごく楽しかったです。
本間ユミノ:
その後、今に至るまでの人生を教えてください。
のりこ:
その学校のあとは東京にある有名な洋菓子店に勤めるんですけど、本当にザ職人の世界で。朝は6時ぐらいから、新人は一番最初に行くんです。
夜は遅いと23時ぐらいまでっていう1日17時間位働いて、休みは日曜日だけ。
社会人1年生で、しかも女子はとらないって言われたところを無理やり入れてもらったんです、体力はあるのでみたいに売り込んで。
でも結局のところ全然体力的にも追いつかないし、専門学校に1年いただけなので実力的にも全く使えず、1年間で精神的にもボロボロになってしまって、最終的には社長からやめた方がいいって言われて、まぁクビってことですよね。
1年で辞めることになりました。
その後は一旦実家に帰って、1年ぐらい休んでたというか引きこもってたんですよね。
何したらいいのかわからなくて。
それから、1年ぐらい休んだ後に派遣の仕事でテレホンセンターで働くようになって、そのうちに徐々に元気になってきて、12年同じところにいました。その職場で知り合った人と結婚して、結婚してしばらくしてから不妊治療をしていたのもあり仕事をやめました。辞めた後は、近くの区役所で開催している区民企画の講座に出たりして、地域でいろいろ活動していくようになるっていう感じですかね。
本間ユミノ:
のりこさんの人生に転換点を置くとすると、いくつでもいいんですけど、どの辺りになりそうですか。
のりこ:
それは結構はっきりしています。
大阪の専門学校行った時と今かな。
10年ぐらい前に、ある人に出会ってって話をしたんですが、それも転換点ですかね。
本間ユミノ:
「物足りなさ」は学生時代のときに強く感じていたと思いますが、大学に行ってから「物足りなさ」は変わっていきましたか。
のりこ:
大学に行ってからも「物足りなさ」は続いていましたけど…
山に行ってみたいと思って行ってみたことが、「物足りなさ」は解消しないですけど、山で見た満天の星空とか、コツコツ登って最初は着くとは思わなかった頂上まで自分が登り切れたこととか…。
あっ、中学高校でやってたことはあんまり好きでもないのにやっちゃってたんですよね。
陸上も、走ることは好きでしたけどでも競い合うのは好きじゃなかったのでタイムはどうでもよかったというか。
そういう意味では山は本当に自分が心から望んでいて、楽しいってことに出会えた最初の出来事だったのかもしれないですね。
自分でやってみたいと思って行動に起こして、そこにたどり着けたっていう。
景色とかに感動したのもありますけど、「これだ!」の一つですね。
本間ユミノ:
山は今も登ってるんですか?
のりこ:
最近は高い山には登ってないんですけど、低めの山に行ったりはします。
でも、1年ぐらいは行ってないですね。今も山のグッズはありますし行ける状態にはなってますけど。
本間ユミノ:
今までの人生を通して、人間関係ってどんな感じでしたか。
のりこ:
人間関係で悩んだことはほとんどないんです。
お菓子屋さんに勤めていたときの先輩が、誰かをターゲットにしていじめるみたいなタイプの人で、その人に毎日、「お前は駄目だ」って言われ続けてたのは結構つらかったですけど。
でも、そのときはもちろんすごくつらくて嫌だったんですけど、その人のおかげで気付けたこともあったりしたので、何か結局変換しちゃうんですよね。
あの人がいたからこういうふうになれたみたいな。
なのですごく誰かを恨むとか、大嫌いっていう人はいなくて、おかげさまで人間関係は割と恵まれてきてます。
あまりそれで悩み苦しむという体験はないんですけど…
常に自分があまり表現できてないっていう、「物足りなさ」と似てるんですけど、表面的であんまり深く人と関われてないなって若い頃はずっと思ってました。
本当の自分を出せてなくて、常に緊張してる感じがありました。
どっかで何か偽っている感じがあって、だけど人とは表面的にはうまくやれるので仲間はいるんですけど、でも自分はどこに行っても居心地はあまり良くない。
周りの人は気づいてたかわからないですけど、でも最近はそこら辺の本音を話せる場ができて、本音で話せる人も周りにいて、そういう意味では今は人間関係がかなり良好です。
すごく繋がりがいっぱいあるわけではなくて、あえて少人数に閉じたっていうのはあるんですけどね。一時期すごい広がっちゃって。
表面的に広げてもしょうがないなって思って。
人間関係でも特に母親との関係は、面と向かうとどこか緊張する自分がいて、もうちょっと向き合わないといけないんだろうなと思いつつ、今はあえて距離をとってます。
本間ユミノ:
お母様と向かい合ったときにどうして緊張してしまうのかを言語化できたりしますか?
のりこ:
なんか、うまくやらなきゃいけないみたいになるんですかね。
母親は割と何でもテキパキできるタイプで、私はのんびりしてるタイプなんです。
子どもの頃から、私が洋服とか選んでても、「もうこれにしちゃったら?」「悩んでるならこれとこれ両方買えばいいじゃない!」みたいな。
私はじっくり選びたい方だし、時間内では欲しいものが見つからず結局何も買わないんですけどね。
なんか常に急かされてる感じがあって。今はもう歳もとってるし、急かしてくることはないんですけど、何となくそれを未だに引きずっている感じはあります。
お互いにあんまり心を開いていない感じもあるし、母の方も何か抱えてるものがある気がしていて。
なので、今回引っ越す前にもう一度母と2人で食事をしたり、じっくり話す機会を設けるべくチャレンジはしてみたんですけど、お互いぎこちないというか、何でもベラベラ話すっていう間柄では全くなくて。
ちょっと遠慮し合ってるというか、気遣ってるとも言うんですけどね。
なんなんでしょうね、この緊張感は。
未来:これからいろんなことをまた体験していって、新たな世界が見れるわけですので、これからの自分が楽しみだなっていう感覚でいます。
本間ユミノ:
5年後、10年後、そしてもっと先の死ぬときまでを想像していただいて、未来についてはどんなイメージがありますか。
のりこ:
未来は明るいイメージがあります。
年をとっていくことで、身体的にはここが痛いみたいなのも出てきて、不安がないって言ったら嘘ですけど。
でもとにかくいろんな可能性があるというか、体が悪くなるってことも一つの体験じゃないですか。
本間ユミノ:
はい。
のりこ:
だから、これからいろんなことをまた体験していって、新たな世界が見れるわけですので、これからの自分が楽しみだなっていう感覚でいます。
本間ユミノ:
何かやりたいこととか、新たに始めたいことはありますか?
のりこ:
やりたいことっていうのが一人暮らしを始めるっていうことだったので、落ち着いてきていて、「さあ、次何がしたいかな」っていうのを探っている状態です。
今もこうやってインタビューで話したりしてますけど、本音を話したり聞いたりするっていうことにとても興味があって。
子供の頃うまく表現できなかったからっていうのもあるかもしれないですけど、ウォーキングの会も歩くことがメインではあるんですが、本当にやりたいのは「ほっとして、本音を語れる場」をつくりたいからやっているのもあります。
それをもうちょっと周りにも発信して、今の自分にぴったり合う場を作っていけたらいいかなって思っています。
直近で、ゴールデンウィークにもそういう会をやってみるんですけどね。
本間ユミノ:
それは散歩もする?
のりこ:
散歩はなしです。
それは話すだけの会で、1年前にもやった、私の話をする会なんですけど(笑)。
それを聞きたいって言ってくれる人がいるので、どんな変化があって今どんな感じかって話す会をやります。
本間ユミノ:
もしも、のりこさんの人生において「物足りなさ」を感じることができなかったとしたら、どういう人生になっていたと思いますか。
のりこ:
面白い質問ですね…。
「物足りなさ」があってよかったって、今思いました。
「物足りなさ」がなかったら、何か表面的に面白いものをずっとやって満足して…
でも結局満足するのか…?
表面的なものがすごい駄目なものだってどっかで思ってるんだと思います。
表面的な面白いことをやって、表面的な自分で死んでいくのかなっていう感じがしました。
本間ユミノ:
表面的に面白いものは駄目って捉えてしまうのはなぜなんでしょう。
のりこ:
先程お話ししたメドックマラソンは、表面的にはすごく楽しそうなんですよ。
仮装とかもして、みんなでお酒を飲みながら42.195km走るので。
で、もちろん楽しいんですよ。
心から楽しんでる人はいっぱいいると思うんです。ただ私はそれに参加したときに、「楽しいんだけどやっぱりなんか違う」って思ったんですよね。
それよりも、初めて海外に、フランスに、1人で行ったっていうワクワクドキドキ感の方がそのマラソン体験よりも上回っていて。
見た目の華々しさとか写真で撮るとイケてる感じとかじゃなくて、見た目に惑わされずに、自分はフランスに1人で行けたことを心から楽しいと思った。
世間の評価じゃなくって、自分がこれだって感じたことを大事にしようって思ったのは影響していると思います。
自分も満足するだろうと思ってたんですよ、そんな馬鹿馬鹿しい感じの(笑)、ハチャメチャなのに出たらそりゃ相当楽しいだろうなという期待値が高かったっていうのもあるんですかね。
実際に、楽しくて何年も出てるって人もいっぱいいるんですけどね。
私はそれではなかったんだっていうのが分かって、地味でも例えば山でピンと来た感覚とか、何かやってみたいって思ったことは評価にとらわれずにやってみようとようやく気づいた感じです。
自分の感じる方、ですよね。
本間ユミノ:
今一番楽しいことはなんですか?
のりこ:
今一番楽しいのはいっぱいあるんですけど、でも行きたい方向に行ってみることができる。
散歩ができる。今日も天気もいいし、爽やかに自由に歩けている。
そんな時間と空間を手に入れてる自分っていうのがなんかすごく嬉しかったので、そういう何気ない瞬間が楽しいです。
本間ユミノ:
最後に、何か言い残したことはありますか?
遺言でも、この記事を読んでいる読者に向けてでも、西澤さんご自身に対する独り言のようなものでも大丈夫です。
のりこ:
とにかく自分の気持ちがちょっとでも揺れ動いたこと、「これ面白そう」とか「やってみたい」とか「ちょっと気になる」とか、ほんのわずかでも自分が思ったことをないがしろにしないで、とにかく試しにどんどんやってみればいいじゃんって思います。
別に誰に何を言われようが、やってみてそこでまた何かを感じて、またその次どんどん進んでいくのが、一番満足する人生なんじゃないかなと思うので。
新しいことをやるっていうのは、今日もこのインタビューはちょっとドキドキしながら参加したんですけど、ドキドキとワクワクは大体セットになってるので、ドキドキの方に負けないでちょっとでもやりたいと思ったら何でもやってみて、やり尽くしてくださいっていうのが遺言です。
本間ユミノ:
ありがとうございます。
あとがき
何気なく過ごしていると嫌なことばかり目についてしまうかもしれないけど、実はその日々の中に「自分が好きでやっていること=楽しいこと」ってたくさんあるんだろうなぁ。
例えば、朝起きてすぐ飲むコーヒーとか。
庭をヒラヒラ飛んで行く蝶を目で追うとか。
インタビューするとか、ね。
【インタビュー・編集・あとがき:本間ユミノ】
#無名人インタビュー #インタビュー #学童保育 #子どもと関わる仕事

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