創作の裾野を広げる——初心者も公募勢も集うアンソロジー『「汽水域」』編集者に聞く|文学フリマインタビュー
この記事は、文学フリマに参加する人たちのためのインタビュー。
今回参加いただいたのは 眞琴 さんです!
屋号:book_cafe_maco出版部
作者名:眞琴
近刊本:『汽水域』
参加イベント:文学フリマ東京41 ブース:け-62
HPなど:
どんな本を出されているんでしょうか?
諧謔:屋号と作者名を教えていただけますか?
眞琴:book_cafe_maco出版部というブース名で出します。作者名は眞琴(ペンネームは眞琴こと)です。
諧謔:今回出される本は、どのような内容でしょうか?
眞琴:はい。今回出す本は「汽水域」というアンソロジーです。著者は私を含めて13人になります。ジャンルとしては小説と詩と短歌です。
「汽水域」は初心者の方にも参加していただきたいというコンセプトのアンソロジーです。テーマを設けてしまうと書く際のハードルが上がってしまうため、作品の条件として「この言葉を入れてください」というものにしています。今回の条件は「水に関する言葉を作品のどこかに入れてください」というものになります。登場人物に水野さんがいる、でもよいですし、水を飲ませるだけでもいい。海でも水蒸気でも、スープでもOKです。
諧謔:今回その「汽水域」を発行しようと思ったきっかけって何があるんですか?
眞琴:今回は「汽水域」第二号になるんですけれども、もともと第一号は去年の文学フリマ東京39で発行したものでした。それがとても楽しかったのと意義があると感じましたので、またやろう思いました。
もともと第一号を発行した時には、book_cafe_maco出版部は私の個人の出店のつもりだったんですけど、個人誌の制作が思いのほかはかどりまして、制作の時間がまだ余裕があったので、その頃交流のあった創作界隈の人たちと一丁アンソロジーでも作っちゃいますか、みたいな軽いノリで始めたのが、もともと第一号のきっかけだったんです。
その時に、創作界隈の方に声をかけたのはもちろんなんですけど「この人のツイート面白いな」とか「この人のブログ面白いなみたいな」とか「言葉遣い面白いな」っていう人にも声をかけてエッセイ書いてもらったりしたんです。それが予想通り面白かったので、初めて創作をしてもらう人にも参加してもらうっていうのはいいもんだなと。
結構普段書いてない人でも書いてもらうと面白いものが上がってきたりとかするもんなんだなっていうのがわかったので、第二号となる今回に関しても初心者の方も積極的に参加してもらおうと思いました。フォロワーさん中心にはなるんですけども、作品を募集しまして、初めての方、創作が初めてないし初めてに近い方も含めた13人で作ることになりました。
諧謔:どんなところを面白いって感じますか?
眞琴:普段とは違う一面が見られるということとか、普段あんなこと言ってるけど、あ、その奥ではこういうことを考えてたのかっていう一個先のレイヤーの思考が垣間見えたりとかですね。なかなか気づけていなかったような習慣みたいなものが赤裸々に語られたりとかしたりするところに、面白さを感じたんです。第一号の時のエッセイで初参加してもらった人の文章の面白さっていうのはそういうところにあったなって思います。
第二号はエッセイの応募はなかったので、小説で参加してもらってる方の中に初めて創作に挑戦する方がいらっしゃったんですけど、やっぱりエッセイ同様見えてなかった、その人の世界観みたいなものが見えるっていうところとか、初めてなのにこんなに書けるんだっていう驚きがあったりとか、そういうところに面白みを感じました。ポテンシャルを感じるというか、そういったところですね。
諧謔:そういう時って、どういう気分なんですか?
眞琴:単純に嬉しいですね。こんな面白いものを書けるなんて、本当に初めてですか!? みたいな感じになります。とはいえやはり初々しさはあるので、ここはこういう風にしたらとか、ここももうちょっと膨らましたらもっと面白いのになっていうところをお伝えして、相談しながら作品を良くしていくっていう、そのやり取り、営み自体にも面白味を感じています。
諧謔:どんな人に読んでほしいですか?
眞琴:繰り返しになりますけども、初めての方にも参加してもらっているアンソロジーになるので、これから創作に挑戦してみたい人、創作することが気になっている人にはぜひ読んでいただきたいなって思ってます。
また、初めての人を今まで中心にお伝えはしてきてますけど、それ以外の方は公募勢の方だったりとか、書き慣れてる方とかにも参加していただいてますので、しっかりとした読みごたえを求める方にも、十分楽しんでいただける内容になってると思います。
これまではどんな活動をされていたのですか?
諧謔:これまでどんな文章を書いて来られましたか?
眞琴:私自身としては、ちょっと変わった設定の話とか、ちょっと変わった視点の作品を書くことが多かったです。
例えばこれは今回の「汽水域」に入ってる作品ではなくて、個人誌の新刊の方に入っている作品になるんですが、ゴミ捨てって、ちょっとあんまり人に会いたくない瞬間だったりするよなあっていうところから着想しまして、あるマンションのある一室の人物が、いかに誰にも会わずにいかにゴミ捨てできるかみたいな、ちょっと小さい世界を描いたりとかしている作品とか。
あとは私自身は男性ですが、女性目線に立ってみて、さまざまな場面において、たとえばクレーム対応とかの場面で男女で対応が変えられてしまうことってあるよね、こういう男性の言動って傷つきますよね、むかつきますよねっていうテーマで書いた作品もあります。
諧謔:そういった設定とか世界観を書くに至ったきっかけってありますか?
眞琴:私自身そういう話を読むのが好きだからというのがありますね。変わった設定や視点から社会を見るっていうのも面白いよね、っていうところを考えていたりします。
諧謔:なんで好きなんですかね?
眞琴:物事をいろんな角度から見ると、その対象物が今までの印象変わったりとか、新たな一面が見えて発見があったりもするので、それって面白いよねっていうか、私はそこに面白みを感じるからなんですけど。だから、ちょっと真正面じゃないところから何かを書くっていうことをしているんだろうと思います。
諧謔:眞琴さんにとって書くことってどういうことですか?
眞琴:書くことは、社会運動の一つだと私は捉えていて。今回の「汽水域」はそこまで強く、そういうコンセプトを押し出してるわけではないんですが、5月の文学フリマ東京40では「te/co(テコ)」っていうアンソロジーのZINEも作ってまして、そちらの方はより強く、その社会運動的な文章を自分でも書いて、他の方にも作品を寄せてもらってるんです。
書くことで新たな問題提起をしたりとか、書いてもらったことを読むことで、読者の想像力を掻き立てて、想像力の幅を広げて、その読者がいろんな視点から物事を捉えられるようになればいいなっていう風に思っているので。すごく高尚なというか、おごり高ぶったというか、壮大なことを言ってるかなあとは思いますけど、活動を通してその一端を担いたいなと思って書いています。
諧謔:そういう風に考えられるようになったきっかけとかってありますか?
眞琴:もともと社会に対して、何かしらの課題意識とかは持っているタイプだったんですけども、年齢を重ねていくに従って、自分でも何かできないだろうかっていうふうに思った時に、一つがその、始めたばかりではあったんですけど、創作でもってそういうことをやってみたいかなって思いました。
5月の文学フリマ東京40で出した「te/co(テコ)」というアンソロジーは、フェミニズムがテーマでした。なんで男性であるあなたがフェミニズムをテーマにしたんですか、みたいなことをよく聞かれたんですけど、男女間の権力勾配の問題だったりとか不平等の問題だったりとかって、私自身は男性なのでもちろん困ってはいないんですけど、実際困ってる人がめちゃめちゃたくさんいるんだなっていうことを調べれば調べるほどわかってきたので。困ってる人を、なかなかほっとけないタイプなので、困ってる人がめちゃめちゃたくさんいるんだったら、これは何とかせにゃあかんよね、というふうに思っています。
そういう、何かしら社会を良くしたいということは思っています。「汽水域」はわりと、楽しく創作をしましょうっていうカラーが「te/co(テコ)」よりは強いんですけど、そういうことを思いながら創作してますね。
諧謔:そういうことを考えながら創作してる時の気持ちってどんな感じなんですか?
眞琴:創作をしている瞬間自体は、一旦その目的に関しては、端に寄せて創作していることが多いかなって思います。創作している時は、いかに面白いお話を作るかとか、いかに文学的に作品を仕上げるかみたいなことに集中していて。出来上がってからまたその目的みたいなものを、真ん中に持ってきてそれと合致しているかっていうところを確認しています。
イベントへの意気込みをお願いします!
諧謔:文学フリマのどういうところに魅力を感じられてますか?
眞琴:もともと一般参加、お客さん側として参加していたんですけど、出店側がものすごく楽しそうに見えたんですよね。それで私も参加してみたいって文学フリマ東京37のときに思って、その場で1年後の文学フリマ東京39に出店すると決めたのが参加のきっかけでした。
参加を決めた際に、参加のハードルがとても低いところは魅力の一つかなと思いまして、本さえ作れば、あるいは私が文学だというものを、本に限らず持っていけば参加ができるっていうところは、とてもハードルが低いと感じます。出たいと思ったら出られるっていうのはとても魅力だと思います。
また、読みたい人がこんだけいるんだって可視化される、稀有なイベントだと思います。私、初めて文学フリマ行った時に、本を読みたい人がこんなにいるんだって、普段は周りに全然いないのに、と思ってすごく安心したのを覚えてるんですよね。なので、世の中にはこれだけ文字を読みたい人がいるんだっていうのが可視化されるイベントは、孤独感を感じている読書家の人たちには、嬉しい場なんじゃないかなと思います。
諧謔:今回の文学フリマ参加への意気込みをお教えてください。
眞琴:「汽水域」は、単なる小説・詩・短歌のアンソロジーとしてもちろん楽しんでいただける一冊になっておりますが、創作始めたての初心者の方から公募に挑戦するような方まで、幅広い書き手の方の発表の場として、書き手の裾野を広げていくことを大事にしているZINEでもあります。
「汽水域」は淡水と海水が混じり合ったり、重なり合ったりする場所のことを指しますが、そんな「汽水域」のようにいろんな方の個性とか、あとは筆力のレベルであったりとか、いろんなものが重なり合いながら、書き手の方も編集も一緒に成長していくZINEになってますので、ぜひお手に取って読んでいただければと思います。表紙もかわいいです。

諧謔:最後に読者へのメッセージをお願いします。
眞琴:文学フリマでお会いできるのを楽しみにしてます。「汽水域」も、先ほどお話もさせていただいた「te/co(テコ)」も、来年の文学フリマ東京42、43に向けて作品の募集をそろそろ開始しますので、そちらの方も私のX(Twitter)やnoteをチェックしていただけるとありがたいです。
今回の「汽水域」は、ネット販売の方で先行販売しておりますので、もし文学フリマ東京行けないよっていう方だったりとか、気になるなあっていう方はそちらもチェックしていただけると嬉しいです。
【ショップURL】
https://bookcafemaco.booth.pm/
インタビューを終えて
普段の会話、というか実生活の中で、仕事や実務に関係のない妄想や想像の話をする場面にあまり遭遇したことがないんですよね。大人になればなるほど遭遇するタイミングがあまりない気がしています。友人が少ないからだろ!というツッコミはいったん横に置いといて(まあ否定はしませんが)。
仕事や実務の会話って、ある目的やゴールを前提として話が進むことが大半だから、それらにまったく関係のない妄想や想像から起きる創作にこそ、その人の心の奥底にある気持ちや考え、希望が表れていると思う。それらの創作を読んだり見たりすることで、眞琴さんのインタビューで話されていた、「普段あんなこと言ってるけど、あ、その奥ではこういうことを考えていたのかっていう一個先のレイヤーの思考が垣間見え」ることになるのかなと。創作者の頭を少しだけこじ開けて、覗かせてもらってる感じというか。
自身の創作を他者に見てもらって、どう思ったか、感じたかを聞くのも、緊張するけど楽しそうですね。「同じこと考えてたんだ!感じたんだ!うれしい!」ももちろんあるけど、「これを見てこの人こう思ったんだ(自分は違うけど)」っていう相手の感想からも、その人の考えや希望が垣間見えたりして。フフフ。
インタビュー担当:諧謔
制作:栗林康弘・qbc(無名人インタビュー主催・作家)
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