死ぬまでこの仕事をやってたいって人
むかしむかし、ある村に情熱(じょうねつ)という名の職人が住んでいました。情熱は鍛冶屋で、朝から晩まで、心を込めて刀を打ち続けていました。
村人たちは不思議そうに尋ねました。
「情熱さん、もう十分な財産があるのに、なぜそんなに働くのですか?」
情熱は熱い炉を見つめながら答えました。
「私にとって、この仕事は命そのもの。刀を打つ音は、私の心臓の鼓動のようなものです」
ある日、若い弟子が訪ねてきました。
「師匠、技を極めたらどうなるのですか?」
情熱は微笑んで答えました。
「極めることに終わりはない。だからこそ、美しいのです」
年を重ねても、情熱の目は輝き続けました。手の皺が増えても、技は磨かれ、作る刀は一振り一振りが魂を宿したように美しくなっていきました。
臨終の時、情熱は最後の刀を打ち終えながら、静かに微笑みました。
「人は、心から愛することを見つけたとき、それは仕事を超えて、人生そのものとなる」
その後、村人たちは「真の幸せは、愛する仕事と共に生きること」と語り継ぎ、情熱の名は永く記憶されたとさ。
めでたし、めでたし。
と思う2025年07月01日01時11分に書く無名人インタビュー1115回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】
今回ご参加いただいたのは しのこ さんです!
年齢:30代前半
性別:女性
職業:個人事業主のwebデザイナー
音声バージョンもあります!
現在:仕事に向き合ってる時が一番集中して夢中になってるなって感じがします。
qbc:
今何をしている人でしょうか?
しのこ:
Webデザイナーをフリーランスでやっていて、今5年目ぐらいですね。
qbc:
どんなデザイン?
しのこ:
今30代半ばなんですけど、もともと20歳ぐらいからデザインを仕事にしてまして、そのときから色々なジャンルのデザインをやらせてもらってます。
会社員時代は化粧品関係からプロレス団体のものまでですが、現在はSass系サービスサイトやスポーツの代理店関係のクリエイティブ、地元商店のポップまで幅広く制作させててもらっています。
qbc:
Webデザインって、どの範囲までのことを示しているんですか?
しのこ:
多分、皆さんがよくスマホとかブラウザで見るWebページのことを指すんですけど、ECサイトとか通販サイトの楽天とかAmazonみたいなのもやります。キャンペーンサイトみたいなものもやらせてもらってます。
qbc:
コーディングとかはやらないんですか?
しのこ:
普段はあまり…ですが、コーディングもやります。
qbc:
サイト納品みたいなことをされるんですか?
しのこ:
そうですね。主には企業様のホームページを作らせてもらうんですけど、個人の方だと近所のお米屋さんのホームページをやったこともあります。
そういう方は、もう「自分が何したらいいかわからない」という方も多いので、相談から入る感じですね。
相談しながら、じゃあこういうの作りましょうかとか、じゃあこういうふうにデザインしますねとか、そういう感じで進めることも多いです。
qbc:
なるほど。その他にされていることは何かありますか?
しのこ:
何十年もデザイン業界にいさせてもらっているので、講師みたいなことをやったりとか。
あとは絵を描いたりしてますね。
qbc:
講師業はどんなことを教えているんですか?
しのこ:
デザイン系のスクールとかもあるんですけど、最近は制作会社さんに入らせてもらって、そこでデザイナーの子たちを教えさせてもらったりしてます。
デザインも教えてはいるんですけど、デザインに通じる仕事の仕方みたいなところを教えることも多いです。報連相とか、デザイナーだからこそ知っておいてほしいコミュニケーションみたいなことって、案外書籍とかには載ってなかったりするので。案件ごとに細かく教えたりしてます。
qbc:
育成対象の方たちはどんな人が多いですか?
しのこ:
私よりは若い子たちが多いので、20代から30代ぐらいの子たちですね。
qbc:
なるほど。社会人マナーみたいなことですかね。
しのこ:
社会人マナーのデザイナー寄りというか、そういうふうにした方がお客さまがわかりやすいよ、みたいなアドバイスですね。
例えばデザインを出すときに添付する資料があるんですけど、相手がどういうリテラシーの方かを考えると、言葉遣いの選び方や進め方が変わってくるので、そういうことも視野に入れるといいよっていう話もしてます。
qbc:
今はあまりないと思うんですけど、以前はイラストレーターのデータをそのままの形式で 送ってくるとかありましたよね。
しのこ:
はい、デザインデータだけを送りつけても、どういう意図なのかっていうのはわからないんですよね。それに加えて、じゃあ相手がどんな状態なのかとか、相手のことを慮るところが抜けちゃうっていうのが、作業者と技術者はどうしても多いなと思ってて。なので、そういうところを意識できるといいよねっていう話は結構してます。
qbc:
その他、趣味とかされてることってありますか?
しのこ:
昔から絵を描くのが好きなので、絵はずっと描いてます。人の似顔絵とか、自分が可愛いなって思っているキャラクターのシリーズを描いたりしてます。
qbc:
今はどんな気分や気持ちで過ごされていますか?
しのこ:
フリーランスになって5年くらい経つんですけど、思ったよりお仕事いただけてて。
qbc:
はいはい。
しのこ:
わたし、地味に「飽き性」なんですね。物事を始めるときは結構フットワークが軽い方なんですけど、続かなくて。そんな自分に対して信頼できないなと思ってたんですけど、デザインはずっと続けられてて。
qbc:
はい。
しのこ:
で、それを独立した形でやらせてもらってて。デザインができるっていうだけじゃなくて、お話したり、イベントを手伝ったり、今まで想像していなかったことがすごく多くできるようになったんですよ。
フリーランスになるときは、怖いなとか、できるかなって思ってたし、5年前に5年後を想像してって言われたら、こうはなってなかっただろうなって思う。なので、純粋に良かったなって思ってます。
qbc:
そもそもフリーランスになられたのは、どういう経緯だったんですか?
しのこ:
デザイン業界には新卒のときからいたので、会社員として10年くらいやってたんですよね。
qbc:
なるほど。
しのこ:
20歳から24〜25歳くらいまでは制作会社にいたんですけど、働き方が結構ブラックだったんですよね。
終電すぎるまで仕事して、その後近所の家系ラーメンにみんなで行って、銭湯に行くような生活をしていて。それを4年くらいやってました。
ストイックにやってたので、実際のところ色々なことができるようにはなってて。あと、何が起きてもだいたい大丈夫だな、っていうメンタルが鍛えられちゃったところもあります。
でも、体的には良くないなと思って退職して、その後は普通の企業に入ったんですよね。
qbc:
デザイナーをやめた?
しのこ:
いや、その中でデザインをやるみたいな。いわゆる事業会社なんですけど、そこの広告部みたいなところでデザインをしてて。
働き方というか、前職の会社とはやることも全然違うんですよね。制作会社にいたときは、デザイナーとか制作者が第一だったんですよ。そこで制作して納品する、っていうのがお仕事なので。
ただ、事業会社となると製品を売るっていうのが最終目標なので、色々な部署の方がいて、ぶっちゃけデザイナーってそこまで大事にされないなと思ったんですよね。別にできなくても外注のパートナーにお願いすればいいし、みたいな。
それもあって、ある意味あぐらかいてたなってすごく反省して。Webでものを売るっていうのを真摯に真剣に考えようと思って、その事業会社で6年ぐらいやってたんですよ。
そんな感じで、合わせて10年やってたんですね。
qbc:
はいはい。
しのこ:
それなりに色々やってきたし、周りからも「しのこさん別にフリーになってもいいんじゃない?」って言われてて。
夫が経理をできる人だったのもあり、「見てあげるからがんばってみたら?」って言ってくれて。それがなかったら絶対フリーにはなってなかったんですね、何もわからないんで。
その節目とか出会いで、その波に乗るべきなのかな?みたいなふんわりした感覚があって、こけてもいいからやってみようかなっていうところで、ちょうど自分のキャリア10年目のタイミングでフリーになったっていう感じです。
qbc:
ポジティブな意味で、フリーランスになった理由はありました?
今のは特に問題がないから、っていう感じのお話だったんですけど、プラスアルファでこれができるようになるだろうみたいなことで言うと。
しのこ:
フリーランス自体はやっぱり、自分はデザイナーって謳ってお話しに行きますけど、多分そうならないだろうなと思ってたんですね。もっと泥臭くいろんなことやんなきゃいけないなって思ってて。
qbc:
フリーランスになった場合?
しのこ:
そうです。自分が待っている状態で仕事が来るわけないよね、とか。デザイン以外のこともやった方が幅が広がるから、色々繋がりやすいよなとか。
そういうところは元々考えていたので、根本的にできない分野の経理とか法務面が抜けただけで、もうテンション的にめちゃくちゃプラスになっちゃって。そういう意味でポジティブでしたね。
だから、これができるっていうよりかは、いけるぞ!みたいな感覚だけで行ってしまったので、何ができるようになるとか全く思ってなかったです。正直なところ。
qbc:
フリーランスになったときの気分はどんな感じでしたか?
しのこ:
どこにでも行けるし、どこにも行けないみたいな。
qbc:
実際はどうだったんですか?
しのこ:
実際は、動けないときもあるけど、めちゃくちゃ遠くまで走ることもあるし。
こうだから行けるとか、こうだから行けないんじゃなくて、こう行きたい、みたいな。じゃあ行きたいところに行くために、どうしようみたいな感じですね。
そういうことが自分の中で芽生えていて、今頑張る必要はあるんですけど、もっと色々頑張りたいな、踏ん張ってみたいなってワクワクしてる感じはあったりしてます。
qbc:
それが30代?
しのこ:
そうですね。
qbc:
今不満なこととかあります?
しのこ:
そういう意味で言うと、不満は出てこないですね。
qbc:
今一番楽しいことって何ですか?
しのこ:
仕事に向き合ってるときが一番、集中して夢中になってるなって感じがします。なんだかんだで自分ってワーカーホリックだなと思ってて。
お客さまと喋るのがすごく好きなので、喋れる機会があればめちゃくちゃやりたいなっていう感じです。
qbc:
仕事って色々なプロセスがあると思うんですけど、どの部分が一番楽しいですか?
しのこ:
お客さまと初めて話したり、仕事を始めるときって、やっぱり最初は不安そうだなって感じるんですよ。何してくれるのかとか、フリーなので逃げないかとか。
そこを感じ取って色々な言葉とかアウトプットを出していくんですけど、どんどんお客さまの顔が晴れていったり、要望が増えてきたり、委ねていいなって思ってもらえてる感じが見えてきたときはよっしゃ!って思います。
qbc:
良いデザインができたときではないんですね。
しのこ:
自分的によく作れたなっていうのと、お客さまが思う“良い”は違うから。
お客さまが良かったわって言ってくれるのって、納品してから数ヶ月後とかなんですよね。そうやって伝えてもらったときに、「あ、これが良いデザインなんだな」ってやっと自分も自分が作ったデザインのことを認めてあげられるんですよ。
そこまではある意味自己満だし、納品した直後ですらそれってわからないなと思ってます。
qbc:
なるほど。
しのこ:
もちろん、納品した時点で良いですねとは言ってくださるんですけど、本当に色々な結果が見えてくるのって、数カ月後とかなので。
その上で、満足されたなっていうお声が届いたら良いデザインだなって思う感じです。だから逆に言うと、そこまではわかんないですよね。
qbc:
数カ月後というと、もうリリースされているということですかね?
しのこ:
そうです。もう公開してて、お客さまの方で運用してもらってたり、お客さま自身にももうエンドユーザーがいらっしゃる段階ですね。そこまで到達するのが、やっぱり最短でも3ヶ月くらいかかるので。
そこでやっと、わたし自身がクリエイティブに対してよかったと思えるっていうのはあります。
qbc:
仕事以外で描いている絵は、どんな絵なんですか?
しのこ:
古着が好きで、自分自身が古着をよく着るんですけど。
InstagramやPinterestにいる古着を着てるかわいい女の子たちを参考に、かわいい女の子を描きたいなーって思って描いてます。
それをアクリルキーホルダーやキャンバスに印刷して売ったりとか、イベントに出たりしてますね。
qbc:
どんなイベントに出るんですか?
しのこ:
デザフェスとかですかね。
qbc:
じゃあ、趣味で描いてるっていうよりも、そういうふうなこともされているってことなんですね。
しのこ:
そうですね。結局好きなものが仕事になっちゃうので、趣味っていうのがなかなか難しいっていうのはあるんですけど、まぁいいかなって気持ちでやってます。
qbc:
性格は人からなんて言われますか。
しのこ:
なんだろうな……。すごい人の話を聞くね、とはよく言われます。めちゃくちゃ相談を受けやすい。
qbc:
はいはい。
しのこ:
多分、話しやすかったりとかするのかなっていう。丸い印象みたいのがあったりするらしくて。でも、普段仕事だとわたし、多分怖くなっちゃうんですよね。怖いっていうか、容赦ないというか。
そういう二面性が自分でもあるなと思うので、なるべく丸くいようとは思ってます。
qbc:
怖くなっちゃうっていうのは、どんな?
しのこ:
これだとお客さまのためにならないなっていうところで、同じチームの人に結構ずけずけ言っちゃうんですよね。
なのに、仕事以外だとぽやっとしているタイプでポンコツなので、そのギャップを知ってる人からするとそれが怖いみたいです。ギャップがありすぎて、同じ人か?と思われることがあるっぽくて。
言ってることが怖いっていうよりは、ギャップが怖いってことだと思います。
qbc:
自分自身ではどんな性格だと思いますか?
しのこ:
二面性はあるなって思います。
さっきお話ししたような、仕事楽しいとかポジティブっていうのがすごいスピードで高まるんですけど、楽しいって言ってる中でめちゃくちゃ心配事も多いし、リスクヘッジをすごく考えたりしてて。
何も考えてなさそうだし、動いてなさそうに見えるのに、めちゃくちゃ色々な可能性を考えているので、そこまでは伝わりづらいなっていうのはあります。全部を第三者に見せることはあまりないので。
だから、すごく極端ですね。左の方向で話してて、周りからみてもしのこは左の方面を向いてるよね、って思われているのに、実は右のこともずっと考えてるみたいな感じ。自分でも変だなーと思ってます(笑)
qbc:
同時に両極端を考えてるってことですか?
しのこ:
そうですね。メリット、デメリットとかもそうだけど、Aが正しいならBの可能性もあるし、BをA案に内包できるなら、Cの可能性もないか?みたいな。あと、そもそもこの考え方って偏ってないか?誰目線だ?みたいな。
メタ的な俯瞰を何回もしてて、逆に潜るみたいなこともしてて。それらが同時に動く感じはありますね。面倒くさいなとも思います(笑)
qbc:
いつからそういう感じなんですかね?
しのこ:
昔からだと思います。多分小学生とか。ベースは昔から全然変わってなくて、大人になったからとか、仕事があるからこうとかではないと思ってます。一人っ子なので、多分一人で考える時間がすごく多かったのと、人付き合いのモデルみたいなのがいなかったんですよ。
お兄ちゃんとかお姉ちゃんとか、世代の近い世代の身近な人たちがいなくて、自分なりに色々考えたりとかしてたので。
あと、自分が話したことによって、周りの反応とかも見てるタイプで、相手のことを想像する力がすごく強かったのもあると思います。
ああじゃないか、こうじゃないかっていう仮説検証みたいなのを自分の中ですることが多かったっていう積み重ねが、今のベースにあるなって感じがします。
qbc:
最近楽しかったことってなんですか?
しのこ:
すごく普通ですけど、久々に銭湯に行ったんです。
今まであんまりお風呂が好きじゃなかったんですけど、この年になってちゃんと体が疲れてマイナスになったから癒しに行くっていうことで銭湯に行ったときに、自分の体ってちゃんと元に戻るんだみたいなことが面白いなって思いました。
こんなあからさまに癒されるのってなかなかないから、なんかすごいなって思って。銭湯通おうっていう話を夫としてますね。
過去:自分が何していいのかわからない漠然とした恐怖があって、人もモノも親も怖かった。
qbc:
子供の頃はどんな子でしたか。
しのこ:
あんまり積極的じゃなかったですね。むしろすごく消極的というか、当時の自分と喋っても今つまんないだろうなって思います(笑)
あと、結構何事にも怖いなっていう感覚があって。人も怖いし、モノも怖いし。親も怖いし。じゃあ何が怖いかとかって言われるとうまい言葉にはできなかったけど、多分全部が得体の知れないものだと感じちゃって、距離を置いたりしてました。わからないからこそ分析してんだろうな、みたいな。
だから、すごく漫画とか読んでましたね。そこから人間を学ぶ、みたいなことをしてた子でした。
qbc:
どんな漫画を読んでいたんですか?
しのこ:
結構色々なジャンル読んでいて、昔は『りぼん』とか『ちゃお』みたいな少女漫画が好きだったんですけど、その後は『鋼の錬金術師』とか、ダーク系のものも読んでましたね。
後は、うちの父も漫画が好きなんですけど、寿司職人の漫画があって、それをひたすら何周もしてお寿司の知識を入れて、お寿司がめっちゃ好きになったりもしました。
昔は偏ってたけど、どんどんジャンルが幅広くなっていって、昔よりも今の方が買ったり読んだりしてます。
qbc:
学校ではどんな子だったんですかね?
しのこ:
クラスの中でワーワーキャーキャー言うタイプではなくて、一人で角っこで絵を描いてるような子だったなぁと思います。
一人でいたい欲がすごい強くて、人とずっといると本当に疲れちゃうなっていうのはあの頃から感じてました。何かしら理由をつけて、なんとか一人になろうっていうタイプの子だった。
でも、お昼休みに男の子が10人ぐらいでキックベースをやってるところにわたしと男の子っぽい女の子の友達と二人で行こうぜって言って行ったりしてました。
「やりたいこと」と「自分が招いた状況」が、ちょっとちぐはぐだったなと思います。
qbc:
へぇ。
しのこ:
自分でも、自分自身に対して一貫性がないなっていうのは昔から思ってて。とはいえ根本的には何もかも怖いっていう感情は消えなくて。でも、それを言っても受け入れてもらえないだろうなっていう葛藤はあったのかなと思ってます。
qbc:
怖いっていうのは、いつ頃消えるんですかね?
しのこ:
高校生までは辛かったかな?辛かったというか、ずっとそれを思ってて、この世の中やんなっちゃう、って感じることがすごくあって。家庭環境とかもちょこちょこ変化があったりもしたので、その影響もあったと思うんですけど。
自分に対して自信がなかったです。周りに対して対等でいられる自信もないし、言葉数も減るし。
何か言っても、適応できているかわからないけど、なんか変な空気になってる自覚はあるからきついなーって思ってました。自分の軸みたいなものが本当になかったので。
qbc:
うんうん。
しのこ:
絵も昔から描いてはいたんですけど、周りもうまかったので自分はダメだなーって勝手に思っちゃったりしてて。
そのとき、ちょうど携帯でサイトを作るみたいなのが文化的に流行ったんですよ。
qbc:
はいはい。
しのこ:
それで、わたしもいくつかサイトを作ったんですよね。それの評判が良くて。
高校生だったんですけど、そのときからコーディングもしてたんです。
qbc:
へぇ。
しのこ:
しかも初心者でもできるようなやつではなくて、ちゃんとコーディングして自分のオリジナリティで組むサイトを作ってて。
当時は周りもそれをやってなかったし、自分も見よう見まねでやってたので、そこで褒められたっていうのと自分でもしっくりきたなっていうのがありました。デザインって楽しいというか、自分にとっての生きがいになりそうっていうのが、そのときの出会いでした。
そこから専門学校に入ったんですけど、そこでようやく自分を肯定できるようになった。
ただ、専門学校でも自分よりうまい人はいるので、イラストと同じように気持ちが打ち砕かれたりとかはあったんですけど。
qbc:
はいはい。
しのこ:
だけど、そのときは負けなかった。誰の目とか、誰が怖いとか、そういうのを全て取っ払って、自分がやりたいって思ったことをちゃんとやろうと思えました。そこから徐々に怖いなーっていう漠然としたものは薄まってきたかなって感じがしますね。
qbc:
なるほど。家のことというのは、何があったんですか?
しのこ:
わたしが一人っ子で両親がいて三人家族なんですけど、うちの母と母方の祖母が仲悪いというか、冷戦中だったんですよ。昼間から飲んだくれてるような家庭だったっぽくて。
うちの母もあまり人にものを伝えられない方なんですけど、父は元々銀行の営業をやっていて、それなりに成績も良くて、結構前に進むタイプというかイケイケな感じの人で。
そんな二人が結婚したんですけど、わたしが中学に上がる前までは母が専業主婦だったんですね。なかなか一人な状況の中で、お友達とか話ができる方がいなくて、落ち込んだり抱え込むことが多くて。そんな中で、わたしは唯一の話し相手でもあったんですけど。
それで、わたしがおばあちゃんと性格や言動が似てたみたいで、苦手意識を持たれてたっぽいんですよね。これは後から聞いた話なんですけど。
qbc:
子どもに対して?
しのこ:
はい。わたしもなんか、よそよそしいなとは思ってたんですよね、言葉にできないけど。多分、そこでわたしはこの人何考えてんだろうなと思って見るようになったのかなと思うんですけど。
でも、その当時はお母さんの思いとか分からないし、普通の親子とちょっと違うなとは思ってました。
qbc:
うん。
しのこ:
父は仕事一直線な人で、わたしがめちゃくちゃ仕事が好きなのとか、仕事に対して前向きなのは父の影響もあるんですけど、営業でなかなか家に帰れなかったりして、家庭がなんとなくうまくいっていない感じでした。
で、わたしが15歳になって受験するタイミングで、父がリストラにあいまして。もともと銀行員だったんですけど、新聞配達をやるって言い出したんですよ。それも勝手に決めてきちゃったりとかして。
それで母もダブルワークを始めて、一気に家庭がガラッと変わったんですよね。母は外に出て良い部分もあったんですけど、ストレスに弱い人なので、夜中突然飛び出しちゃったりとか、色々巻き込んでまずいことになりかけたりとか、結構バタバタしてて。
父も、そのあたりを理解したいんだけど知識がないタイプというか、理解ができないというか。理解したいけど、自分の中の常識が邪魔しちゃうタイプで。
そういうのもあり、わたしが25〜26歳くらいまで家にいないと怖いなっていう状況が続いたんです。でも、とはいえわたしも外に出ないとまずい気がするなと思って。共依存じゃないけど、何か変えないと多分みんな変わらないし、怖い部分もあるけど、一旦手放さないと相手の変わる機会も奪っちゃうし、わたしもわたしでなんともならないなぁと思って。それであえて外に出た感じです。無理矢理一人暮らしをしたっていう流れですね。
qbc:
前の話に戻って、高校生のときのコーディングとかサイトを作ったときの評判というのは、誰からの評判だったんですか?
しのこ:
部活の友達とかですね。サブカル系で自分でサイト作るみたいなのが流行ってたんで。
みんなやろうとはしてるんですけど、なかなか小難しくてパッと手に手出せないみたいな感じのものをわたしがスッと手出して。
そのときもまだプログラミングっぽいこと一回も触ったことないんですけど、いろいろ調べたら、あ、できるかもみたいな感じです。あと、友達にこの間聞いたんですけど、昔からわたしは新しいものをすぐ手につけてすぐ吸収するのが早かったっていうのが言われて。そのスピード感とかもあったのかなって感じです。
qbc:
そのときの気持ちって、どんな気分だったか覚えてますか?
しのこ:
今までは、暗中模索っていう言葉がすごく近くて。自分の特技や輪郭がわからないからどうしようってもがいてたり、消極的で動かないくせに、小学校の通知表でずっと落ち着きがないとか書かれてたり、謎に声が大きいとか友達に言われてたんですよね。矛盾していました。
qbc:
はいはい。
しのこ:
そういうのがあるって自分では意識してなかったんですけど、それって自分の中で自分なりに自分の存在をどう社会になじませていくかみたいな、自分なりのアプローチでやろうとしてたのかなって、今考えると思ってて。
ただなんか噛み合ってないなとか、うまいこといかないなって思ってたけど、自分が「できること」と、「好きなこと」、「社会に求められること」の三軸が重なりがあったなってそのとき思ったんですよ。
qbc:
はいはい。
しのこ:
自分の中で、ずっとそれを探してて。
自分が「好きなこと」じゃないと、わたしはやっていけないっていうのは性質上しょうがないし、かつ自分が技術的に「やれること」をちゃんと理解できていて、それを仕事とか業務として日常的に行えるとか、それが難しすぎないとか。
とはいえ、社会から需要がないと母数が増えないから。
それをやったとしても、いわゆる昔で言うYouTuberの端くれみたいな、横文字でかっこいいものになりたいんでしょ?みたいなことを親からも言われてたので。
そういう需要で見たときにも、これからWebデザインは増えるんじゃないかと高校ぐらいのときに思ったんですよね。
これだったら生きていける、みたいな、自分の中の活路を見出せたなって思ってるので、今の仕事を本当に大事にしたくて。自分を生かしてくれたものなので。
qbc:
高校のあとは、専門学校?
しのこ:
Webの専門学校に進みました。でも、そこでもデッサンのセンスが最初からずば抜けてる子もいたりして、全然勝てないなって思ってました。
qbc:
急に勝ち負けの話が出てきた気がするのですが、元々そういうメンタリティというか、勝負にこだわる性格だったんですか。
しのこ:
そうですね。地味に闘争本能みたいな、勝ちたいって気持ちがあるんだなって。誰にってわけじゃないですけど。
qbc:
他の領域では?Web以外で例えば料理とか、全く別の領域でも勝とうと思ったりします?
しのこ:
いや、それ以外は多分どうでもいいんでしょうね。
qbc:
なるほど。
しのこ:
そこだけ。なんとか自分が生きれるように上位にいきたいみたいな、生存本能的な気持ちがそのときは強くて。
で、そのときってやっぱり自分が出すデザインだけの勝負なんですよ。だからわたしは大したデザイナーではないのかもって思いつつも、でもここでやっていきたいという気持ちはあったんですけど。
それで、制作会社で面接をしてるときに、なんかわたし、異常に話がうまかったらしいんですね。この間十数年ぶりに当時の制作会社の社長と会ったんですけど、いまだにわたしの面接を超えられる奴がいないって言われたんですよ。
でも、それって自分では全然意識してなくて。特別な訓練を受けたわけでもないし、むしろそんな喋る方じゃなかったので。
qbc:
うん。
しのこ:
「しのこさんはデザインもできるけど、多分それを上回るぐらいコミュニケーションがうまい」って言われたんですよね。伝え方とか、どうしたらよりそのものが伝わるかっていうことを考えられるから。
だから、同じものが別のデザイナーから上がってきたとしても、多分採用されるのはわたしの方かなっていう話をされたんですよね。
qbc:
はいはい。
しのこ:
そのときに、自分の武器ってデザインだけじゃないんだってことに気づいて。
しかもこれってめちゃくちゃ頑張って習得したわけでもないし、とはいえ世の中的にいらないわけじゃないし。何より自分は話すことが苦じゃないので。
そういう自分に気づいたら化けていて、本当に昔からは考えられないぐらい、喋ったり、明るくって言い方はおかしいかもしれないですけど、強く在れる。
怖いっていう気持ちを超えて、自分が自分のためにとか、誰かのために動くっていうことが難なく動けるようになった自分ってすごいなって思ってて。
多分、昔のままで行ってたら絶対にこうなれなかったし、そのままでいったら全然違う仕事に就いて全然違う人生だったはずだから、今自分が不満なく楽しく話したり、お仕事があるのは本当に嬉しいです。
あとは、ものを作るのがやっぱりめちゃくちゃ好きなので、そこが15年経っても変わってないんですよね。離れることの方が考えられないというか、自分の一部になってます。
qbc:
うん。
しのこ:
そんなデザインに救われた自分もいて。
多分何回かアップデートはあったと思うんですけど、しのこさんってこうだよねって言ってくださる方が多くなって、自分でもそうなんだって気づけたので、すごくよかったなって思います。
仕事人間なので仕事の話ばかりしちゃうんですけど、本当に自分が救われたから、やっぱり大好きなんだなって思います。
qbc:
自分の人生の転換点ってどこにあると思います?
しのこ:
専門学校に入るときですね。
やっぱりうちって、父のリストラの件もあって、15歳から18〜19歳くらいまで本当にお金がなかったんですよ。だからすごく心配されて。
元々銀行員の親なので、固いところに行ってほしかったってのもあると思うんですけど、当時Webデザイナーって全然まだまだな職業だったし、絵描けるって言っても好きなだけでしょ?みたいな時代だったので。
でも、今までは親を論破できなかったけど、何としてでもそっちに行くっていう意志は強くあって、ダメだったら言うこと聞くっていうのも約束して、かなり賭けに出たのが専門受験のときです。だから、そこで頑張れてなかったら何もかも変わってた感じがしますね。
未来:死ぬまでこの仕事をやってたいって気持ち。
qbc:
5年10年30年、最後自分が死ぬっていうところまでイメージして、どんな未来を思い描けますか。
しのこ:
死ぬまでこの仕事をやってたいって気持ち。そこだけは、何が何でも持っていたい。
最近は、自分が苦労した話とかで救われる人がいたりとか、知識にしてくれるっていうこともわかったので、もっと年配らしく色々なことを若者に言っていこうかなっていうのはあります。説教垂れたいわけじゃないんですけど、誰かのためになるんだったら、そういうこともやっていきたいと思ってます。
qbc:
ご自身がコミュニケーションがうまい理由って何ですかね?
しのこ:
自分でも、上手いとか下手とかは意識してなかったんですよね。コミュニケーションに上手い下手なんてないと思ってたし。
でも、相手と話すときにお互いを知ろうっていうふうに話をすると思うんですけど、話がそもそも得意じゃない人もいるわけなので、そういう相手の前提条件とか見えない部分をわたしの想像で補完してるっていうのはあるかもしれないです。
こうかもしれないから、こういう言い回しって言いづらいよねとか、相手にとっては返答しづらいよねっていうブラックボックスのところを、見えないけど想像するっていう。
qbc:
うん。
しのこ:
その上で、後で答え合わせしてもいいと思うんですよ。聞きづらいことももしかしたら聞けるかもしれないし、触れられたくないことだったら、それはそれで仕方ないし。
でもそこの意図というか、色々な可能性を考えつつも、話ができたらいいなとわたしは思ってます、っていうところが伝わると話がしやすいのかなって思ったりはしてます。
qbc:
なぜそれができると思いますか?
しのこ:
多分、すごい相手のことを見て想像してるんだろうなって思います。わたしが思ってる以上に、自分がすごく相手を見ている。
qbc:
見ている理由は?
しのこ:
それこそやっぱり、怖いからじゃないですか?怖いっていう昔の感覚というか、癖だと思うんですよね。
qbc:
怖いって思うのはいつからですか?
しのこ:
小学生とかかな?
qbc:
幼稚園の頃とかは覚えてないですよね。
しのこ:
そうですね。物心ついたときですね。
qbc:
ちなみに、本当に小さい頃はどんな遊びが好きでしたか?
しのこ:
ボール遊びとブロック遊びです。
qbc:
絵じゃないんですね。
しのこ:
小さい頃は絵じゃないですね。
qbc:
絵はいつ頃から描いていたんですか?
しのこ:
小学校に入ったときぐらいかな?
qbc:
ご両親からはどのように育てられたと思ってます?
しのこ:
すごくちゃんとしてほしいんだろうなって感じがしました。いわゆる、みんなが知っている職業についてほしいなみたいな思いがあって、そういうふうに育てられたなって感じはします。しっかりしなさい、みたいな。
でも結果的には全然しっかりしない方に行っちゃったり、やりたい方向で全部行っちゃってるんですけど。
でもそれをやって独立して、親にもちょこちょこ話してるんですけど、本当にここまで行くと思ってなかったから尊敬してるって言われたので、よかったなと思ってます。
qbc:
しのこさんが、もしもWebデザイナーじゃなかったら。
現時点での記憶の状態で、高校生に戻って仕事選び自体をやり直すとしたら、何にしますか?
しのこ:
今の知識があってとかじゃなくて?
qbc:
自分が今、何で満足してるかって、わかってると思うんですよ。その上でWebデザイナー以外の選択肢を考えるとしたら何を選びますかね。
しのこ:
あー、そこは寿司職人になりたいなと思ってます(笑)
qbc:
なぜですか(笑)
しのこ:
やりたいこととか、大好きなことが続くから。
qbc:
寿司職人の良さってなんなんですかね?
しのこ:
お寿司大好きなんですよ。本当に。食べるのも、作るのも、学ぶのも好きで。
そこに好きな理由がなくて。
qbc:
ちなみに、どこにいる寿司職人ですか?極端にいえば、回転寿司の中にいる職人もいるわけですよ。
しのこ:
やっぱり築地に行きたいなとか思ってるんじゃないですかね。
チェーンじゃないお店に入って、そこで自分がどうしたら立てるか算段立てて、自分が勝てる知識を持ってるところに入るっていうのとは変わらない気がします。
qbc:
例えば銀座とかもあるし、あるいは荻窪の商店街にあるお寿司屋さんとかでもいいと思うんですけど、築地なんですね。
しのこ:
今パッと出てきたのはそこですけど、そこでお客さまと喋れて、自分がちゃんと続けられるような場所であればどこでもよくて。ただ、自分で店を持ちたいだろうなとは思いましたね。
はいはい。
しのこ:
回転寿司の従業員っていうよりかは、自分が食べたいなというところで、やっぱり今みたいに城を立てて、そこでやっぱりやっていきたいんだろうなっていう。大枠は変わらない気がしますね。なんとなくですけど。
qbc:
ありがとうございます。最後に言い残したことはありますか?遺言でも、読者向けメッセージでも、独り言みたいなものでもいいんですけども、最後に言い残したことがあればお伺いしています。
しのこ:
昔の自分宛てとかでもいいですか?
qbc:
全然大丈夫です。
しのこ:
なんだかんだで色々頑張って今があるので、自分を今なら褒めてもいいよってずっと思っていて。
それをこういう「誰に見られてもいい場所」で言えるのも、また自分が強くなったなってすごく思えるので、そんな状況で頑張れたらいいなって思います。以上です。
あとがき
明るい世の中にした、い!
【インタビュー・あとがき:qbc】
【編集:misato】

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