さはらとなみぶ その1
何の起きないただのおしゃべりな日常
外の空気がひんやりとしてきて、雪がチラチラと降ったり止んだりしている景色を営業先に年末のご挨拶に行くためにコートを羽織り、マフラーを巻きながら眺めていた。もう冬がやってきたんだなぁ〜と外へ出て、国道沿いを歩いていたら、不意に自販機が目に入った。視界の端からピントが合ってしまった。どういうわけかそういうことときたま起こる。
目が合ってしまった以上は素っ気ない態度を取るのはよくないので、そこで何か温かい飲みものでも買おうかなぁ。
あたたか〜いと書かれている商品ラインナップを見て、確かにあたたか〜いだよね。と思う。個人的にはあつーい!くらいの飲み物が好きなので、それを自販機で販売してもらいと思いながら、ボタンを押す。
「ガタッ」と音がして、取り出し口の缶を取り出す。薄いピンク色がベースになっていて、濃いめの茶色の模様が入っている缶。傍らにあったベンチに腰をかけて、一口飲む。
ホッと一息したら、懐かしい記憶が蘇ってきた。
それは小学5年の冬休みの同級生とのことだ。
さ「なぁなぁ、ちょっと暇すぎるから、ゲームでもしない?」
な「人んちに勝手にきておいて、
暇すぎるもないだろ
何のゲーム?」
さ「絶対にみどりって言っちゃダメゲーム」
な「なんかめちゃくちゃ簡単そうだな」
さ「じゃあ、やろう!
これからどんどん好きな色言ってて」
な「わかったわ、ほんじゃ、みどり」
さ「いやいや、なんでいきなり
みどりって言う!?」
な「いや、好きな色を言えって
だから、みどり」
さ「好きな色はいいんだけど、
みどりは言ったらダメなゲームだから」
な「あぁ、なるほどな、
じゃあきみどり」
さ 「おいおい、きみどりもダメだわ!」
な「えー、全然好きな色言えないじゃん!」
さ「みどりって言わなきゃいいだけだから」
な「わかった、これならいいな、
ビリジアン」
さ「ビリジアンな、
いいよ、次は」
な「サックスブルー」
さ「はいはい、サックスブルーね
次は」
な「ヴァーミリオン」
さ「ヴァーミリオン……
って横文字多くないか?」
な「いやいや、好きな色を言えば
いいだろ?どれも好きな色だし」
さ「だとしても、もう少し日本語の
色の名前があるだろ」
な「日本語の色ね、わかったわ
じゃあ、やまあいずり」
さ「やまあいずり?
どんな色だよ!まぁいいか」
な「次は、これな、
かめのぞき」
さ「かめのぞき??
日本語の色だけど、何色だよ
次は?」
な「いや、もうない」
さ「色を言えばいいんだぜ?
ないことはないだろ、
まだまだあるだろ」
な「いや、ないよ
好きな色はもうない」
さ「少なっ!
言えないなら、負けだな」
な「えっ、なんで?
好きな色がなくなったら
負けじゃないじゃん」
な「まぁ、でもそんなに少ないのは
もう負けだろ」
さ「いやいや、おかしいわ
みどりって言わなきゃいいんだろ」
な「はい、負け!
今、みどりって言ったな!」
さ「うわっ、マジか!」
な「みどりって言ったらダメな
ゲームだからな」
な「もう一回やろうぜ!
次は言わないから」
さ「いやいや、これは
最後が肝でそれ以外に面白みは
ないから、2度目はない」
な「あぁなるほどな、
他に好きな色もないしな」
さ「なみぶも誰かにやってみたらいいよ」
な「気が向いたらな」
このあとくらいになみぶの母さんがお汁粉が出来たから、熱いうち食べなさいと運んできて食べた。
小豆を炊いたの熱々のお汁粉だったことは今でもハッキリ覚えているし、それのおかげで好物が一つ増えた。
今、飲んでいるのはあたたか〜いというかぬる〜いお汁粉だけど、飲んだ拍子に思い出すなんて、記憶とは不思議なものだな。
最後の挨拶先がなみぶの店の近くだったはずだ。上顎がやけどするかもってくらい熱々のお汁粉を食べにいこう。
そういえば、なみぶが一番好きな色はあずき色だったな。
おわり。
