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kurayamisaka yori ai wo komete 全曲解説

はじめに

おばんです。kurayamisakaでギターと作詞作曲を担当している清水です。

今回kurayamisakaの1stフルアルバムである『kurayamisaka yori ai wo komete』のリリースに伴って、俺なりの全曲の解説を記事にまとめたいと思います。

解説と言っても、作曲当時の思い出や小話などの内容になるので、蛇足程度に気軽に読んで欲しいです。2年半くらいかけて制作しているので、昔の記憶がずいぶん朧げにもなっているので。

聴いてから読んでもいいし、読んでから聴いてもいいと思います。読まなくてももちろん大丈夫です。

では、エンジョイ。

アルバムについて

「kurayamisaka yori ai wo komete」の収録内容は12曲入り46分。フルアルバムは45分前後が個人的には一番丁度良いと思っています。

前作のミニアルバム「kimi wo omotte iru」は松井遥香と向井あかりという特定の2人に焦点を当てて"彼女たちの人生の一部を切り取る"といったコンセプトの元で作成しました。

対して今作は、もっと群像的な1枚にしたい、"いろんな誰かの人生の一瞬を集めたアルバム"にしたいという漠然とイメージの元、制作をスタートさせました。

決意を込めて旅立つ人。喪失と悲しみに暮れる人。恋に落ちた人。ずっと待ってた君が来なかった人。

その上でもう一つ、"人が生まれてから死ぬまで"といったイメージも、同時に軸としてアルバムの作曲作業を行いました。

年老いて名前や思い出も忘れてしまうこと、身体や内臓の機能が衰えて、代謝が追いつかなくなること。そういうことを歌に残したいという気持ちが強くありました。(俺が歌ってる訳じゃないけど。)

実際にやってみると、これが意外と難しい・・。

意気揚々とコンセプトを掲げて制作に取り掛かるはいいものの、それでフルアルバムに足るような曲数を用意するのは、思ったより時間がかかってしまいました。

制作を始めたのは2年以上前なのに、ギリギリまでアイデアを出してひいひい言いながら、何故、いつもこうなってしまうんだろうと夏休みの最終日が常に続いているような状態。思えば宿題はめちゃくちゃ溜め込むタイプだった。

でもその分、いろいろ試せて楽しみながら作れましたし、この12曲を以って一つの作品であると自信を持って言える音源が完成しました。

とにかく、どうしたら12曲を頭から最後まで聴いてもらえるだろうかと考えながらつくったので、そんなに苦労したなら一回くらいは通して聴いてやるかと、聴いてみてもらえたらうれしいです。

ジャケットについて

kurayamisaka yori ai wo komete ジャケット

本作のジャケットは引き続きめばちさんに描いていただきました。

完璧すぎる・・泣
完璧すぎませんか?

アルバムの構想が浮かんだ時点で「こういう作品を作る予定です。」と曲数も揃っていないのに怪文書のような資料を渡し、めばちさんにイラストの依頼をしました。そんな依頼だったのに、こんなにバチっとハマるジャケットを描いてもらえて頭が上がりません・・。

打ち合わせで、実は自分の故郷がめばちさんにとっても縁深い地であることが判明して、背景の海のイメージが深まったことがうれしかったです。

個人的にはジャケットは作曲作業と同じくらい大切なものだと思っていて、このジャケット込みで1つの音源になっているといっても過言ではありません。

そして、こんなに素晴らしいジャケットになったので、CD/LPともにフィジカルにもこだわりました。眺めながら聴くなり、部屋に飾るなりしても楽しめると思います。

CDはスリーブ入り。なくしたら、売る時に安くなっちゃうので、ちゃんと大事に取っておくことをおすすめしておきます。

楽曲解説

アルバムに収録されている音源について解説します。

制作時のエピソードやリファレンスなど思い出せる範囲で書いています。どの機材を使ったとかは、正直結構忘れてしまったので、すみません。

歌詞については、みんなが聴いて感じた印象を大切に持っていて欲しいのであまり触れません。あなたがこの曲は自分のことを歌っているに違いないと感じたなら、それはきっとそうだよ。

いくぜ!

1 kurayamisaka yori ai wo komete

アルバムの幕開けを飾る1曲目。遡って確認したところ、デモ音源が完成したのは2023年7月のようだった。

この曲ができたおかげでアルバムの全体像が鮮明に思い描かれた、まさにターニングポイントと言える曲。アルバムの1曲目はこれ以外にないと思ったし、アルバム名も同時にその時に決まった。

せだいの『春のまなざし』という楽曲を作成している時に得たエッセンスを流用していて、今度はギターリフの代わりにボーカルをドラムのキメを合わせたら何か生まれるのではないか、というアイデアの元作成した。

冒頭のコードはデモ音源では元々ギターだったが、珍しく阿左美から「俺が弾いてもいいすか?」と提案があったので任せてみたところ、バチっとハマった感触があった為採用。(bloodthirsty butchersの『banging the drum』を聴いてみて欲しい。)

今回もアルバム全編を通してレコーディングエンジニアは島田智朗くんが担当していて、本楽曲のバキバキのサウンドはトモロウくんが「今までに無い音にしよう」とギターをコンソール卓に直接突っ込んで歪ませたり、いろいろといじったりしてくれた結果生まれた。彼はkurayamisakaにとって6人目のメンバーだと思っている。

レコーディング自体は2024年1月頃にハイウェイと同時に録り終わっていたので『jitensha』より前に完成していた。みんなに早く聴いて欲しくて仕方なかったけど、これはアルバムのリリースまで大事に取っておくことにした。

歌詞は、このアルバムのテーマと決意表明だけど、誇大妄想も混じっている、そんなイメージ。

2 metro

アルバムの中でも最も疾走感のあるトラック。

制作中、ドラゴンがふと「アルバムの2曲目って1曲目だからね。」と格言を残した。本当にそうだと思う。

『kurayamisaka yori ai wo komete』が完成した時に、達成感を感じたのも束の間、この1曲目に耐えうる2曲目を作らねばならないと内心焦りを感じていた。1曲目のインパクトを引き継ぎつつ、ガラッと世界の色が変わるような曲を作りたいと思い、とにかく俺が考える"バンドのカッコいい部分"を全て詰めた楽曲となっている。制作中の仮タイトルは「2曲目」。

冒頭のギターはマーシャルをアンプが揺れるくらいの大音量、レコーディングブースに何本もアンビエントマイクを設置して、その空間ごと丸々録音している。

この曲は敬愛するI have a hurtというバンドからモロに影響を受けている。自主企画である「ザカどこ#3」にも出演してもらった、本当にカッコいいバンド。ずっとCD音源だけだったけど、最近サブスク配信も始まったのでぜひ聴いてください。あとはNUMBER GIRLの『I don't know』。

細かいところでいうと、この曲は三拍子(俺は3/4と6/8の違いがよくわからない。)なんだけど、パッと聴きでエイトビートっぽく聴こえるように、と堀田に無理な注文をして困らせたが、期待以上のものを返してくれた。

個人的なこだわりとして、三拍子のギターロック調の曲がジャンジャカジャカ ジャンジャカジャカ・・となってしまうことにどうしても抗いたかった。

歌詞は、故郷を旅立つ人と見送る人というイメージ。

3 sunday driver

『metro』のアウトロのフィードバックからシームレスに繋がって3曲目へ。

アルバムの最初の3曲は、そのアルバムの顔だと思っている。どうしたらその3曲までをみんなに聴いてもらえるかを想像しながら制作した。そこまで聴いてくれたら、まあ流れでその後も聴いてもらえるだろうという魂胆である。

イントロのドラムフレーズについては、何とは言わないがART-SCHOOLの2ndアルバム「LOVE / HATE」から『水の中のナイフ』〜『EVIL』の流れを聴いてみて欲しい。他にもMommaの『Speeding 72』やblurの『song 2』といった楽曲から強い影響を受けている。

レコーディング秘話としては、メロディを作るのに難航して、一回メンバーがメロディを知らない状態でオケを録った。当たり前だけどメロディを知った後の演奏の方が良くなっていたので、後日再度録り直した。そりゃそうだ。(本当にごめん。)

俺たちが機材車(tomoran号)で移動する場合、運転は俺か阿左美が担当している。高速道路では様々な車が走っていて、その中の誰か1人にきっとこんなストーリーがあったりなかったりするのだろうと歌詞を書いた。

4 modify Youth

せだいの佐久間ゲンソウ作詞作曲。ここからの3曲のセクションを俺は勝手に「夏三部作」と呼んでいる。

元々せだいでリリースしていた曲のカバーだけど、さらに実際の経緯を話すとこうだ。

せだいのゲンソウと沼尻と俺、kurayamisakaの内藤で一瞬だけ結成したバンド用に書き下ろされた曲で、それをせだいでアレンジを変えて流用、その後ザカでカバーしたという少々複雑な流れになっている。思えばゲンソウと初めてオリジナルで合わせた楽曲なので感慨深い。

この曲だけ俺のボーカルが入っているので、急に聴いた人は「なんだこのオッサン?!」と驚いてしまうかもしれないが許して欲しい。

元々存在する曲なので当時ゲンソウが作ったアレンジを意識して作っているが、この曲はなんとなくスーパーカーのスリーアウトチェンジっぽいなと思ってデモを制作した。

ライブで演奏すると、一緒に歌ってくれる人もいてうれしい。

歌詞については、俺が書いた訳ではないので、俺も想像する立場である。

5 nameless

アルバムに収録する曲を整理しようと、デモ音源とも呼べないネタ帳のようなものとを漁っている時に、元々リク(せだい Ba)とやっていたバンドの没曲のサビを発見した。これは使えるかもしらんといろいろ付け足して作った曲。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ムスタング』のような淡々とした曲になったらいいなと思って作った。

クアトロでのワンマンを控え、尺が足りないのでどうしても曲を作らなねばならない状況で、最後の最後に徹夜で作った思い出がある。内藤には歌詞を本番前日に渡すという無茶振り。(ごめんね。)

この曲は1コーラス作ってBメロをやっぱり削ろうか迷ったけど、メンバーに聞いたところ絶対に入れた方がいいとのことだったので入れた。今思えば削らなくて良かった。ギターフレーズなんかは、ドラゴンと深夜に俺の部屋であーでもないこーでもないと一番苦労した記憶がある。

結果として、今までのkurayamisakaにない壮大な感じの曲になって気に入っている。

余談だが、クアトロで初披露した際、観にきていたリクに「お前あの時のボツ曲のサビ流用したべ」とバレた。

歌詞は、逃避行的なイメージで書いてみた。

6 evergreen

シングルver.と比べても一番ミックスに変化があると思う。アコギの存在感が増してドライな印象になっている。

楽曲のリファレンスとしては、HiGEの『三日月』という曲をメンバーと車で移動している時によく聴いていたのでインスパイアされている部分が多いと思う。その他、柴田聡子さんや、柴田さんが楽曲提供したadieuのような曲が作れたらなと思って制作した。が、なんか思ったようにはいかなかった。これはこれでいいけど。

このアルバムの中では最初に出来た曲で、遡って調べたところ2022年12月にデモ音源をメンバーに渡していた。12月に「今年の夏もそろそろ終わるね」という歌詞を書いていたのである。

当時、「kimi wo omotte iru」が完成してもう曲なんて作れません・・という状態から、なんとか自分に鞭打って作った思い出がある。この曲ができたから、アルバムも作ってみようという気持ちになれた。

余談だけど、今年の夏は暑すぎて、全然足りてますって感じですね・・。メンバーもそう思ってると思う。

歌詞は片想いする人をイメージして書いた。上手くいくといいですね。

LPでいうところのA面はここまで。

7 sekisei inko

シングル版との違いでいうと、ミックス/マスタリング以外だと曲の頭にギターの弦を押さえる音を追加した。耳をすませば聴こえるくらいの音量だけど。

4コードのギターストロークからバンドインというイントロの構成は、きっと数多くの先人達のバンドも衝撃と憧れを感じていて、脈々と受け継がれるその連鎖に自分も多少なりとも連なっていたい、という気持ちからこの曲を作った。

昔観た、映画『桐島、部活やめるってよ』のワンシーンで、映画監督を本気で目指している訳ではないのに、何故わざわざ自主制作映画を撮るのかと尋ねられた時の主人公(神木隆之介)の回答が今でも俺の胸に刺さっている。

「時々、俺たちが好きな映画と、今自分たちが撮ってる映画が繋がってると思う時がある」

俺がこれまでバンドを続けてこれた原動力や燃料として、あの頃に受けた衝撃や憧れがある。

ほんのわずかでもいいので、それらと地続きのところに自分も身を置きたいというのが俺の望みだ。そして、その衝撃をいつか未来の誰かに受け取ってもらえたなら、それ以上にうれしいことはない。

歌詞は、故郷から旅立った人のことをイメージして書いた。

8 weather lore

このアルバムの中で最後に作成した曲。

漠然とELLEGARDENみたいな曲を入れたいなと作成した為、デモ段階での仮タイトルは「エルレ2」だった。結果、エルレみたいになったかと言われれば、うーん・・。でも、さっぱりとした曲で気に入っている。

こういうさっぱりした曲が急にアルバムに入ってるの好きなんだよね。敢えていろいろな部分をラフな感じで仕上げたので、手癖などが一番そのまま入っていると思う。

ちなみに、メロディをレコーディング最終日まで調整してたので、メンバーは歌の最終系を知らないままレコーディングを迎えている。これだけ制作期間を設け、結構余裕あるなーと思っていたのに、何故か最終的にはギリギリになってしまう。(大変、申し訳ない。)

歌詞は、旅立つ人を見送った人のことをイメージして書いた。

9 ハイウェイ

内藤さちが作詞作曲で、元々は内藤と俺がkurayamisaka以前に組んでいたバンドの楽曲。

阿左美がこの曲をザカでもやりたいと内藤に申し出て、ザカで演奏できるように再度アレンジした。原曲でピアノが担当していたフレーズの雰囲気を汲んでギターに落とし込んいるので、特にライブではかなり難しいと思う。ドラゴン、すまん。

元々はBandCampか『jitensha』のシングルCD限定で収録していたので聴ける環境が少なかったけど、今回でようやくみんなに聴いてもらえるようになってうれしい。アルバムver.ではアウトロに俺が弾いたピアノがうっすら入っている。

ミックス最終日へ向かう運転中に、唐突にハイウェイにピアノを入れたくなり、ミックスを中断してミキサールームにピアノを引っ張り出して来てもらった。自分で言ったはいいものの、俺はピアノが弾ける訳ではないのでかなり苦戦した。

同じメロディ展開が二度と来ないという展開が切なさを感じて、ライブで演奏していても感極まることが多い。

歌詞イメージは、自分が書いた訳ではないので割愛。

10 theme (kurayamisaka yori ai wo komete)

今回のtheme枠。アルバム流れとして『jitensha』の前にちょっとした弾き語り曲を入れたいと思い、作った。

この曲も『metro』と同じく3拍子だけどこっちは素直な感じ。録音はレコーディングブースではなく、ミキサールームの控え室にマイクを立てラフな感じで録音した。

包み隠さず言えば、この曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム「ワールド ワールド ワールド」でいう10曲目『ワールド ワールド』がやりたくて作った。

10代の頃に買った、スリーブの欠品した中古の「ワールド ワールド ワールド」が、俺をここまで運んで来てくれた。

kurayamisaka初のアルバムを制作するにあたり、どうしても俺の始まりのアルバムを踏襲する必要があった。(ゴッチには機会があって直接謝罪したが、伝わったかわからない。緊張していたので。)

歌詞は短いがこのアルバムの"テーマ"となっていると思う。

坂道 ふらふら歩いた 帰り道
人通り 信号機 誰かの笑う声

見つけ出せるよ 君のこと

失って 悲しんで 忘れて 忙しいね
傷ついて 傷つけて 生まれて 死んでゆく

見つめていたいよ 君の心

生きている限り、絶えず誰かの人生が互い違いに交錯する。本当の意味で他人の心を知ることは永遠にできないし、きっとそのまま死んでいくかもしれない。

でも、どんな雑踏の中でもあなたの声を聞き分けられる瞬間がある。根拠にするにはあまりに頼りないが、それでも腐らずに分かり合おうとしたい。死ぬまで。そんなイメージ。

11 jitensha

「イントロでEのコードをジャーン、ドカーン」+「アウトロが長くてフェードアウトする曲」がとにかくやりたくて作った曲。

アルバムの曲はどれもなくてはならないが、一番個人的な好みが詰まっている曲を選べと言われたらこの曲を選ぶ。

bloodthirsty butchersの「NO ALBUM 無題」、Yesの「危機 (Close to the Edge)」どちらも何回聴いたかわからない。俺を構成するアルバムなんて選べないけど、確実に自分の地肉になっている。それが滲み出ている曲なのかなと思う。

最初にデモの断片をメンバーに提出したのは2023年6月、そこから改修に改修を重ねて今の形になったは同年10月のようだった。初期デモは大分ごちゃっとしていたので、よくここまでまとめられたなと謎に関心してしまった。

このアルバムのテーマはいろいろ掲げてきたが、こうして見返すとアルバム全体を通して、悲しみが常に隣にいる印象を受けた。その中でも、この曲は特に喪失と悲しみについて歌っている。

曲中の彼は何故悲しみに暮れているのか、大切な人を亡くしたのか、失恋をしたのか、どう受け取ってもらってももちろん問題ない。

いつの間にかお腹が空くように、楽しいことを楽しいと思えるように、喪失からゆっくりと立ち直ることについてを書いた曲なのだから。

12 あなたが生まれた日に

アルバムの最後を飾る曲。

アルバムの構想ができた段階で、最後は「前半速い+後半うるさい」構成の曲で締めたいという構想があった。阿左美が『kurayamisaka yori ai wo komete』のアルペジオを推していたので、それを軸に作ると最初と繋がる感じで良いかなとも。

余談だが、メンバー以外で俺とよく遊んでくれる数少ない人間(この書き方だとメンバーとよく遊んでると思われるかもしれないが、そうでもない。)の中に1人、TTUDというバンドの本名という男がいる。そいつが一時期、「D-BEATとは何か」という話をずっとしてきてうるさかった。

「D-BEATには3種類ある。普通のD-BEAT、速いD-BEAT、そしてもっと速いD-BEATだ。」「D-BEATのテンポを遅くしていくと、ある地点で倍テンになり逆にもっと速くなる。」「Dischargeかけろよ。」ノイローゼになりそうだった。その結果としてこの曲ができた。冗談だけど。

アウトロはまたしてもトモロウくんの手腕によって轟音の渦にしてもらった。個人的にはアウトロは映画『ベンジャミン・バトン』のラストシーンをイメージして作ったセクションである。曖昧になった記憶が最後に走馬灯となって駆け巡り、消え去る瞬間を想像して作った。


俺は歌詞を書く時、基本的に架空の出来事を想像して書いているが、この曲だけは自分についてを書いた。まあ、俺が歌っている訳ではないんだけど。でも俺は自分のことを自分では歌えないと思うから、ちょうど良かったと思う。

歌詞についてはあまり触れないと言ったけど、この曲だけすこし触れてみる。

1曲目の『kurayamisak yori ai wo komete』では壮大なテーマと決意を歌っているが、最後の曲はそれに対する自分なりのアンサーソングを用意するつもりで書いた。

生きている限り、生きる上での意味を探したり、何を残して死んでいくか、そしてそれらを見失うことへの恐怖を考えてしまう。対して、生まれてきたことに意味なんていらなくて、朝起きて顔を洗って、毎日を生き抜いてること自体もそれだけできっと平等に尊くて、かけがえのないものだとも思う。1日中落ち込んだり、何もできない日が続いたってそれは変わらない。

アルバムの最後の曲を作るにあたっては、『kurayamisaka yori ai wo komete』でそうして掲げたテーマへの対比として、自分の日常の1コマを歌にすることが答えだと思った。

そして改めて考えると、全ての曲がアンサーになっているのかもしれない。このアルバムは誰かの人生の一瞬を集めて作ったのだから。

そうやって考え続けて、葛藤して生きていく中で、たまに出会う心震える瞬間に、心の底から感動するのかなとか、なんとなく思っている。

曲名を『わたしが生まれた日に』しなかった理由は、自分の両親の目線を想像したというのと、聴いてくれたあなたが少なくとも今日まで生きてきたことや、いつか生まれてくる誰かをささやかながら、祝ったり、労ったりするような曲にもしたかったから。

俺はいまだに早起きが苦手だ。自分が実際には何時に生まれたのか、生まれた時にどう感じたのか、もう誰に聞いてもわからない。そして、これから死ぬまでに魂が震える瞬間にどれほど出会えるかも、まだわからない。最後まで生きていくしかないのである。


最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。12曲分の解説を書くと、ざっくりとなるように意識してもどうしても中々の文量になってしまう・・。


前作を経て次にまとまった音源を出すとしたら、どうしてもフルアルバムで出したかったので、大分期間が空いてしまいました。バンドを取り巻く状況も変化してきて、聴いてくれるみんなや、マネジメントチームなど様々な人のサポートを受けながら、ようやく世に放つことができて本当にうれしく思います。

ご時世的にも、リリース形態としては1曲ごとにどれがハネるかの争いになりがちですが、この12曲で一つの作品になるように、意地でもアルバムを通して聴いてもらいたいという執念で作り上げた音源です。そんなのはバンドやっていたらどの人間も同じだろうけどね。


個人的な話になりますが、2022年12月にアルバムの制作に取り掛かり始めた矢先、翌2023年1月1日に母が亡くなり、その翌年には父が亡くなりました。

慣れない役所手続きを終え、落ち込む暇もないままバンドの状況は大きく動き、いろいろと激動の期間だったなと振り返って思います。結婚したことやフジロックに出演できたことなどを伝えられなかったことは、悔しく思います。

そういった経緯があって、人が生まれてから死ぬまで、誰かの人生の一瞬が集まったようなアルバムを作りたいと思いました。

アルバムという形態は、それだけバンドミュージックを愛する者にとって特別なフォーマットだと思います。

上京前、ライブハウスはおろかまともな楽器屋にいくのにも一苦労するような田舎に住んでいた頃。バンドへの情熱を燻らせつつも、腐らせないように静かに火を焚べてくれたのは、愛したバンドへの憧れや、そのCDたちでした。

実家から自転車で15分の中古ショップをパトロールして、お金もないので500円コーナーの棚でCDを物色し、そうして出会った当時の俺からすると10年や20年、もしくはそれ以上昔のCDに魂を吹っ飛ばされたせいで、人生を踏み間違え、こんなにも執念深くバンドを続ける羽目になってしまいました。

そうして完成した今回のアルバムに、時代をがらりと変えるほどの影響力はないと思いますが、時代を越えることはできると思っています。俺がそうして数々のバンドと出会ったように。

いつか未だ見ぬ君が、友達のおすすめや、誰かのブログ、中古ショップの棚、どこからか見つけてくれることを願っています。それが20年後でも何十年後でも。新譜も旧譜も関係なく、全ての音源は出会った時が聴くべき時なのだから。

そしてもし、俺が10代の頃に受けた衝撃と近い物を、君が受け取ってくれたのだとしたら、このアルバムを作ってよかったなと一番思います。そういう希望や願いも含めて「kurayamisaka yori ai wo komete」というタイトルにしました。(その頃には野垂れ死んでるかもしれないので、今のうちにこうして執拗に書き記しているのです。)


そして、今まさにこんな長い文章を最後まで読んでくれたあなたへ

1人でデモを作るだけでは飽き足らず、バンドメンバーを巻き込み、ライブハウスやマネジメントチームなど様々な人が関わって、結果、PCのフォルダに埋もれることなく、こうして世にバンドの音源を放てるのは、紛れもなく聴いてくれているみなさんのおかげです。

少なくともバンドで現状できることの全てを尽くしてこのアルバムを作ったけど、リリースされてバンドの手を離れて、俺たちのものではなくなって、そこで初めてやっとアルバムが完成すると思っています。当たり前だけど、良いも悪いも聴いた人が決めることに価値があるから。

俺たちを見つけてくれて、どうもありがとう。アルバム楽しんでね。

くらやみざかより愛を込めて
清水

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