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『KNEECAP/ニーキャップ』北村紗衣さんトークイベントレポート


第97回アカデミー賞®国際長編映画賞ショートリスト選出作品
アイルランド版トレインスポッティング!?
今世紀最大の過激なヒップホップ・トリオが
アイデンティティと権利のために“言葉”と“音楽”を武器に立ち上がる!
第97回アカデミー賞®国際長編映画賞ショートリストに選ばれたほか25の映画賞を受賞し、世界中で高い評価を得ている映画『KNEECAP/ニーキャップ』(原題:KNEECAP)が、8月1日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開
北アイルランド出身のヒップホップ・トリオ、KNEECAP。2022年まで北アイルランドでは公用語として認められていなかったアイルランド語でラップをし、政治的な風刺の効いたリリックに反抗的なパンク精神を融合したスタイルで注目されている。“セックス・ピストルズ以来、最も物議を醸すバンド”とも呼ばれ、先日開催された世界最大級の野外音楽フェス、コーチェラ・フェスティバルにも出演。

本作は、そんなKNEECAPの誕生を、アイルランド語法制化を求める抗議活動を背景に辿る半自伝的物語。北アイルランド紛争の傷跡が深く残る西ベルファストのドラッグにまみれた労働者階級の若者を、ユーモアを交えてポップなテイストで描く。スローモーションやストップモーションを駆使したスタイリッシュな演出から“アイルランド版トレインスポッティング”とも評され、オマージュシーンも随所に登場。アイルランドではアイルランド語映画として初週動員歴代1位の大ヒットを記録。さらに、第40回サンダンス映画祭では観客賞(NEXT部門)を受賞、第97回アカデミー賞®国際長編映画賞にアイルランド代表としてショートリストに選ばれるなど、25の受賞と63のノミネートを果たした。世界中で大絶賛された話題作がついに日本に上陸。


北村紗衣さんトークイベントレポート!

8月2日(土)、新宿シネマカリテにて英文学者でアイルランド好きの北村紗衣さんのトークイベントを実施!
 
昨年、アイルランドのダブリンにお住まいだった北村さんは、以前よりKNEECAPのファンで本作もとても楽しみにしていたそう。現地で鑑賞した本作について、「言語が生きるためには何が必要なのか、その言葉と音楽の力をストレートに描いているところがめちゃくちゃ面白い」と絶賛。
本作のテーマであるアイルランド語の話者はとても少なく、アイルランドでアイルランド語を第一言語にしている話者は8万人、北アイルランドではわずか6000人のみ。(北アイルランドでアイルランド語の知識を持っている人は約22万人、そのうち話すことができる人は約7万人)その現状について、「アイルランド共和国ではアイルランド語が義務教育だけど、日本人が義務教育で習うレベルの英語と同じくらいしか喋れない。例えば、トイレはどこですか? ギネスビールください。など、観光客の会話程度。それと汚い言葉は知っている。私もアイルランド語は喋れないけど、KNEECAPのおかげで汚い言葉は言える」と語った。
その背景には、19世紀のジャガイモ飢饉によるアイルランド語を喋るコミュニティの減少やイギリスの植民地支配による英語の覇権があるといい、「言語は自分で少なくなるのではなく、何かしらの圧力や権力関係で少数“化”される」と、抑圧されたことに起因すると強調。Wikipediaでも活動している北村さんはその一環で、和人の侵略によって少数化されたアイヌ語や琉球語の支援もしており、「少数化された言語の置かれた状況はとても厳しい。以前、マン島語(アイリッシュ海のマン島で話されるゲール語)の話者に会った時、喋る人が少なすぎてつまらないから少数化された言語のコミュニティにいたくないと言われ、とても悲しくなった」と、苛酷な現実のエピソードも披露した。

北アイルランドでも、アイルランド語が法的に認められたのは2022年。アイルランド語がなかなか普及しないのは、あらゆる場所で英語が通じるからだという。本作でモ・カラが英語を話すことを拒んでいたが、実際はアイルランド語話者はみんな英語が喋れるのだ。そんな北アイルランドの人が話す英語には、アイルランド共和国とも違う独特の訛があるそうで、「映画の冒頭でリーアムが“俺のダチ、ニーシャが赤ん坊だった時”の赤ん坊を”ウィーベイビー”と言っているように、小さいを意味する英語littleを北アイルランドの人はウィーと言う」と、北アイルランド独特の単語を紹介。
他にも本作には、アイルランド島の文化が多く描かれていて、「何度か本編に登場したスティックはハーリングというアイルランドで広く知られるスポーツのもの。ブリテン島(ロンドンが位置する島)ではアイルランド人しかやらないもので、他にもブリテン島に住んでいると分からないことが本作にはたくさん登場する」と解説。そして、「そんなブリテン島の人が1番知らないことは、いかに北アイルランドが分断されたコミュニティなのかということ。北アイルランド(イギリスの一部)で平和の壁と呼ばれる壁が対立するカトリックとプロテスタントの住む地域を隔てているように、アイルランドはイギリスの入植による紛争で物理的にも分断されたコミュニティ」と、本作のテーマでKNEECAPのアイデンティティでもある北アイルランド紛争について言及。北アイルランドは90年代に停戦したが、それ以前の北アイルランドは爆弾テロや私刑が横行し、内戦のような状態だった。その私刑こそが“ニーキャップ”と呼ばれるもので、KNEECAPの名前の由来だ。北村さんは、「膝を撃つ(ニーキャップされる)と後遺症でわかることがある。足を引きずって歩いている人が今でもいるように、暴力的な闘争が行われていた記憶がそういう面でも残っている」と、続けた。

さらに、ダブリンで行ったKNEECAPのライブについて北村さんは、「会場中にパレスチナの旗が翻っていた。アイルランドは占領されていた歴史から国民の8割がパレスチナ支持で、EUで最もイスラエル批判」と、昔からリパブリカン(カトリック)はパレスチナを支持し、それに対抗しているユニオニスト(プロテスタント)はイスラエル寄りだと述べた。しかし、北アイルランド、特にベルファストに行くとその雰囲気はガラッと変わるそうで、「ベルファストには、パレスチナとイスラエルの旗がどちらも街中にある。メモリアルデーには、ワールドカップがあるのかと思うくらい、たくさんの警察が歩いている」と、今もその分断や傷跡は残っていると話した。コーチェラ・フェスティバルやグラルトンベリーでの記憶が新しいように、KNEECAPメンバーは以前からパレスチナを支持しており、北村さんが行ったライブでも彼らは「自分たちが住んでいるところはパレスチナと同じでイギリスに占領されている」と連帯の声を上げていたそうだ。
 
KNEECAPはその政治的な風刺の効いたリリックや過激な言動で物議を醸しているが、「植民地支配の記憶を強烈にあからさまにアピールしているため、イギリスのメディアでは前から攻撃されていた」と、イギリスの保守派からは嫌われていることにも触れた。実際に、KNEECAPは昨年のロンドン公演でヒズボラの旗を掲げたことから、テロ罪で起訴され裁判中。北村さんは、その裁判で彼らについている弁護士について、「IRAの犯行とされるテロで無関係の一般人6人が逮捕されたバーミンガム・シックスという冤罪事件で、無罪を勝ち取った弁護士チームが今KNEECAPについている。そのようなところにも、彼らが北アイルランドの歴史と深く繋がっていることが象徴されているよう」と、指摘した。

最後に、「イギリス人が覚えていない植民地支配の記憶を突きつけながら、音楽や詩の力が言語を生かし続けるというメッセージを含んでいる映画」と、KNEECAPのアティチュードにもつながる本作の魅力をアピールした。
 
北村紗衣さんにはパンフレットに、ダブリンで行ったKNEECAPのライブレポートを含むコラムをご寄稿いただいているので必読。
また、こちらのnoteでも本作を詳しくご紹介いただいている。
https://note.com/kankanbou_e/n/n588d935d8371

『KNEECAP/ニーキャップ』最新情報は公式Xにて更新中!
https://x.com/kneecapfilm


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