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容積率が余っている土地は「お宝」なのか、最有効使用という考え方を調べてみた

「不動産評価のナゾを解く」シリーズ、第4回です。

不動産データを扱う仕事をしていると、物件紹介のなかで「容積率の消化率が低い」という文言を見かけることがある。たとえば商業地域で容積率600%が使えるのに、実際には200%しか使っていないビルとか。こういう物件を見ると「残りの400%を使って建て替えれば、収益が3倍になるのでは」と考えたくなる。

自分も最初はそう思っていた。容積率が余っている=ポテンシャルがある=お宝。単純にそう結びつけていた時期がある。

でも鑑定評価書を何本か読んでいくうちに、「最有効使用」という概念が出てきて、この話がそんなに単純じゃないと気づいた。今回はその「最有効使用」について、自分なりに調べて整理した内容を書いてみます。

建物と敷地が「合っていない」という状態

容積率600%の商業地域に、容積率200%分のビルが建っている。この状態を鑑定評価の世界では「建物と敷地の適応状態が劣る」と表現するらしい。つまり、その土地のポテンシャルに対して、今の建物が釣り合っていない。

ここまでは直感と一致する。問題はその先。

この「合っていない」状態が、収益の評価にどう影響するか。自分が引っかかったのは、純収益の永続性という論点だった。

容積率をフルに使ったビルなら、建物が耐用年数を迎えたときに同規模のビルを再築するのが経済合理的になる。「この土地にはこの規模のビルが合っている」という状態だから、次も同じような建物を建てる動機がある。純収益が将来も同じ水準で続くと想定しやすい。

ところが容積率を200%しか使っていないビルの場合、耐用年数が来たときに「もう一回同じ200%のビルを建てよう」とは普通ならない。600%使える土地なのだから、次はもっと大きなビルを建てるはず。ということは、今の建物から得られている純収益は、今の建物の寿命で終わる。永続しない。

この違いが、鑑定評価における還元方法の選択に直結する。永続する純収益なら永久還元法でいいけれど、永続しないなら有期還元法を使う必要がある。自分はここを読んだとき、「容積率が余っている」ことが必ずしもプラスとは限らないのだなと感じた。今の建物の評価に限って言えば、むしろマイナス要因にもなり得る。

もちろん、土地のポテンシャル自体はプラス。ただ、今この瞬間の収益性を評価するときに、「余っている容積率」は建物と敷地のミスマッチとして捉えられる。ここの区別が自分のなかで整理できるまで、少し時間がかかった。

用途変更するときの費用、どこに入れるかで答えが変わる

最有効使用がらみでもう1つ、自分が「え、そうなの」と思ったのが、用途変更に伴う費用の扱い方。

たとえば、今は事務所として貸しているビルがあるとして、その地域の需要を考えると物販店舗に変えたほうが収益が上がる場合。最有効使用は「物販店舗」ということになる。当然、事務所から店舗に変えるには内装の改造費がかかる。

ここで「改造費を毎年の経費に加算して、直接還元法で評価すればいいのでは」と考えたくなる。自分もそう思った。でもこれは間違いで、理由を考えてみると確かにそのとおりだった。

直接還元法の総費用に改造費を入れると、その費用が毎年発生する計算になってしまう。改造は一回やれば済む話なのに、毎年改造し続ける前提になるのはおかしい。

正しい方法は、まず用途変更後の状態(つまり物販店舗として稼働している状態)を想定して収益価格を求める。そこから改造費を一括で差し引く。こうすれば、改造費は一回限りの支出として処理できる。

書いてしまえば当たり前の話なんですが、直接還元法の枠組みのなかだけで考えようとすると、つい「費用に足せばいいか」となりがちで。自分もしばらく間違えた理解をしていたので、これに気づいたときは少し恥ずかしかった。

土地残余法で「存在しない建物」の収益を求める話

最有効使用の話をもう1つ。更地の評価で出てくる土地残余法について。

更地を収益還元法で評価するとき、土地残余法という手法がある。考え方としては、「この更地に最有効使用の賃貸用建物を想定して建てたとしたら、いくらの収益が上がるか」を計算し、そこから建物に帰属する収益を引いて、残りを土地の収益とみなす。

ここで「想定する建物」は実在しない。まだ空き地なのだから。実在しない建物の純収益をどうやって求めるのかという疑問が当然出てくる。

方法は2つあるらしい。直接法と間接法。

間接法は、似たような条件の他の物件の純収益を持ってきて、時点修正や要因比較の補正をかけて推定する方法。取引事例比較法の純収益版みたいなイメージ。ただ、実務ではほぼ使われないと聞いた。理由は、要因格差の補正が難しすぎるから。似たような物件を見つけること自体がまず大変だし、見つけたとしても立地や規模や築年の差をどう数字に落とすかが属人的になりすぎる。

直接法は、対象地に想定建物を建てたとして、賃料や空室率、管理費などを個別に積み上げて純収益を組み立てる。実在しない建物だけど、その地域の賃料相場や管理費の水準は調べられるから、パーツを積み上げれば推計できる。

自分はこの「実在しない建物の収益を直接的に組み立てる」という発想がおもしろいと思った。フィクションなんだけど、各パーツは市場データに基づいている。想像と実証のあいだにある手法、と言ったら大げさかもしれないけれど、そんな感触がある。

調べてみて変わった見方

「容積率が余っている=お宝」という見方は、完全に間違いではない。ただ、その余りがあるせいで今の建物との適応状態が劣ると評価され、純収益の永続性に疑問符がつき、還元方法まで変わってくる。つまり、ポテンシャルがあることと、今の収益性が高いことは別の話だった。

容積率の話から始まって、用途変更時の費用処理、存在しない建物の収益推計まで。鑑定評価書を読んでいると、こういう「言われてみれば当然だけど普段は考えない」論点が次々出てくる。

自分もまだ理解が追いついていない部分が多いので、引き続き掘り下げていきます。間違いがあれば指摘してもらえるとありがたいです。


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