JFLを1部・東西2部にした場合の制度設計
ここまで4回、確認できる事実を積み上げてきました。
最終回となる今回は、少し趣向を変えます。ここから先は、これまで確認してきた事実をもとに筆者が組み立てた制度案であり、私自身の立場です。JリーグやJFLが実際に検討している内容ではありません。
これまでに確認できたこと
提案に入る前に、これまでの4回で確認した事実を短く振り返ります。
「Jチャレンジリーグ(仮称)」の具体的な制度は、報道の時点では分かっていない(第1回)
地域リーグからJFLへの入口は、年間12チームしか挑戦権を得られない短期集中型の関門であり、実際に複数年にわたって足止めされるクラブがある(第2回)
JFLからJ3への移行では、具体的な売上高の基準こそなくなったものの、組織・施設・集客・財務の各面で相応の体制が求められる(第3回)
なでしこリーグ、Fリーグ、女子フットサル、JFL CUPなど、12クラブ規模の全国二部制や東西分割の運営は、日本サッカー界の中にすでに複数の実例がある(第4回)
これらを踏まえると、今後検討すべき問題は大きく三つあります。
一つ目は、Jリーグ参入を目指すクラブと、J3から降格するクラブを、どのカテゴリーで受け止めるのか。
二つ目は、地域リーグからJFLへの入口をどのように広げるのか。
三つ目は、経営規模や将来像の異なるクラブが全国一部制の負担を負っている現在のJFLを、どのように持続可能な形へ変えるのかです。
J4とJFL二部制は、扱う問題が異なる可能性がある
提案に入る前に、今回のJ4報道について一つ整理しておきます。
J4は、Jリーグ参入を目指すクラブの配置や、J3降格クラブの受け皿、秋春制への移行に伴う日程の接続などを扱う制度になる可能性があります。
第4回で見た通り、女子サッカーにはWEリーグとなでしこリーグという関係があります。競技上の上下関係はあるものの、成績だけで自動的に昇降格するのではなく、上位リーグへの参入には申請と審査が必要とされてきました。
Jチャレンジリーグも、Jリーグ参入を目指し、一定の条件を満たしたクラブを集めるカテゴリーになる可能性はあります。
ただし、現時点では参加資格も、JFLとの上下関係も、昇降格や参入審査の仕組みも分かっていません。
一方で、地域CLの昇格枠が少ないことと、JFLを全国一部制で運営する負担は、それぞれ別の問題です。
以下の案は、J4の正体を予測したものでも、J4に対する単純な代案でもありません。三つの問題を、一つの競技ピラミッドの再編によって同時に改善できないかと考えた試案です。
私は、クラブの参入意思や資格によって新しい境界を設けるよりも、既存のJFLを二部制に再編する方向の方がよいと考えています。
提案:JFL1部とJFL2部に分ける
【筆者による制度案】
現在16クラブで構成されているJFLを、次の二層に再編します。
JFL1部:全国リーグ、16〜20クラブ程度
JFL2部:東西に分割し、それぞれ8〜12クラブ程度
この案の本質は、Jリーグ参入を目指すクラブと、目指さないクラブを分けることではありません。
一つの競技ピラミッドを維持したまま、下のカテゴリーほどクラブ数を増やし、地域化によって負担を軽くすることです。
Jリーグ参入を目指すかどうかによって、クラブを別の競技体系へ分ける必要はありません。
JFL1部とJFL2部の間は競技成績によって昇降格し、JFL1部からJ3へ進む段階でのみ、Jリーグの入会条件を加えます。
Honda FCの扱いに、制度の違いが表れる
Honda FCは、想定されるJ4の仕組みと、ここで提案するJFL二部制の違いを考えるうえで、分かりやすい例です。
仮にJチャレンジリーグが、Jリーグ参入を目指すクラブだけを集めるカテゴリーとして設けられ、その下にJFLが置かれるのであれば、Jリーグ参入意思を持たないHonda FCは、競技成績にかかわらずJ4には参加せず、JFL側に残る可能性があります。
その場合、Honda FCが現在のJFLで上位に入る競技力を持っていたとしても、制度上はJ4より下のカテゴリーに置かれることになります。
ただし、J4とJFLの具体的な上下関係はまだ分かっていません。これは、あくまでそのような制度になった場合の話です。
一方、ここで提案するJFL二部制では、Jリーグ参入意思によって所属カテゴリーを分けません。
Honda FCは、Jリーグ参入を目指していなくても、競技成績に基づいてJFL1部に所属できます。
JFL1部とJFL2部の間で問われるのは、Jリーグを目指すかどうかではなく、競技成績です。Jリーグへの入会意思やライセンスが加わるのは、JFL1部からJ3へ進む段階に限ります。
Honda FCの扱いを比べると、二つの考え方の違いが見えてきます。
仮にJ4が、Jリーグ参入意思や資格を参加条件とする制度になれば、競技上の序列とは異なる境界が生じる可能性があります。
一方、JFL二部制案では、JFL内の所属カテゴリーを競技成績によって決めます。
JFL1部を16〜20クラブとする理由
J3が20クラブであることを一つの目安にはしますが、それだけを根拠にはしません。
現在のJFL16クラブを大きく排除せずに移行できること。J3からの降格クラブを受け入れる余裕を持てること。そして、地域リーグから新たに複数クラブを迎え入れられること。
この三つを踏まえ、JFL1部は16〜20クラブ程度の幅で考えます。
20クラブでホーム・アンド・アウェーを行えば、各クラブは年間38試合を戦うことになります。それが選手やクラブの体制、会場確保、運営費の面で現実的かどうかは、クラブ数を決める際に別途検討する必要があります。
第4回で確認したように、全国リーグは必ずしも20クラブ前後でなければ成立しないわけではありません。
最初から固定的な数字を置くのではなく、参加クラブの体制や競技日程に合わせて、現実的な規模を探るべきだと考えます。
JFL2部を東西分割とする理由
JFL2部の東西分割は、第4回で確認したなでしこリーグの一部・二部制や、JFL CUPで実際に行われた東西8クラブずつの大会運営を参考にしています。
JFL2部は、地域リーグからJFLへの入口を広げると同時に、全国一部制よりも遠征範囲と運営負担を抑えたカテゴリーとして設計します。
東西の区分は、例えば次のような形が考えられます。
東:北海道、東北、関東、北信越、東海
西:関西、中国、四国、九州
ただし、実際には東西のクラブ数が均等になるとは限りません。
具体的な地域区分やクラブ数、昇格大会の方式については、参加クラブの地理的分布に応じて調整する必要があります。
昇降格の設計
J3とJFL1部
成績条件とJリーグ入会要件を組み合わせる現在の基本構造を維持します。
具体的な自動昇降格枠と入替戦枠については、J3とJFL1部のクラブ数に応じて調整します。
JFL1部とJFL2部
JFL1部の下位2クラブが自動降格し、JFL2部東西それぞれの優勝クラブが自動昇格します。
さらに、JFL1部の自動降格圏直上に位置する2クラブが、JFL2部東西の2位クラブと、それぞれ入替戦を行います。
最大で4クラブが入れ替わる、流動性の高い制度です。
入替戦の組み合わせについては、抽選または事前に定めた方式によって決定します。
JFL2部と地域リーグ
JFL2部と地域リーグの間では、現在よりも昇格枠を増やします。
ここが、第2回で確認した「針の穴」への直接的な対応です。
JFL2部が東西に分かれることで、地域リーグからの昇格枠を、東西それぞれに設けやすくなります。
昇格大会については、現在の地域CLを全国一大会のまま残し、上位クラブを所在地に応じて東西へ配属する方法が考えられます。
あるいは、昇格大会そのものを東日本と西日本に分け、それぞれの上位クラブをJFL2部へ昇格させる方法もあります。
本案では、JFL2部の規模に応じて、年間3〜4クラブ程度が地域リーグから昇格できる枠を設けることを想定します。
2025年までの地域CLでは、12チームのうち自動昇格は1チームで、もう1チームが入替戦へ進む形でした。それと比べれば、入口は大きく広がります。
この案で残る課題
もちろん、この案ですべてが解決するわけではありません。
第一に、JFL1部とJFL2部の入替戦は、短期決戦にならざるを得ません。
第2回で見た地域CLと同じように、年間を通じて高い競技力を持っていたクラブが、短期間の結果によって昇格を逃す可能性は残ります。
第二に、JFL2部からJFL1部、さらにJFL1部からJ3へ進む際には、組織・施設・集客・財務に関する壁が残ります。
カテゴリーを増やしただけで、クラブに求められる運営体制が自動的に軽くなるわけではありません。
つまり、この案は地域リーグからの入口を広げることはできても、その先にある壁を低くすることまでは保証しません。
壁を低くするためには、J3のライセンス要件だけでなく、下部カテゴリーに求める運営水準や費用構造そのものについても検討する必要があります。
ただし、それは今回の連載の範囲を超える、別の論点です。
最後に
第1回で書いた通り、「Jチャレンジリーグ」という名前が、新しい問題を生んだわけではありません。
JFLと地域リーグの間にある狭い入口。
そして、経営規模や将来像の異なるクラブが、同じ全国一部制の中で活動している現在のJFL。
これらは、J4という名前が報道に出る前から、日本サッカーが抱えてきた問題です。
報道どおり、J4がJリーグ参入を目指すクラブを対象とするのであれば、それは主として「どのクラブをJリーグ側の制度に受け入れるか」を扱う仕組みになると考えられます。
一方、ここで提案したJFL二部制が扱うのは、地域リーグから上へ進めるクラブを増やしながら、下位カテゴリーの遠征範囲と運営負担を抑えるという問題です。
私が優先したいのは、Jリーグ側に新しい枠をつくることよりも、まず既存の競技ピラミッドを、より広く、持続可能な形に組み直すことです。
実際にJリーグとJFLがどのような制度を選ぶのかは、今後の続報を待つ必要があります。
それでも、報道の中身がまだ分からない今だからこそ、制度が発表されたときに何を評価すべきなのか、その基準を先に整理しておく意味はあったと思います。
