ケモナーは現代のオシラサマ信仰なのかもしれない─ケモナーの民俗学
ねえ、オタクくん。
インターネットにはさ、ケモナーっているじゃん?
動物耳とかだけじゃなくて、ガチで獣人とかケモノキャラが好きな人たち。
あたしね、最近ちょっと意地悪なこと考えてたんだ。
もしかしてケモナーって、
現代のオシラサマ信仰なんじゃない?
って。
最初は、冗談半分だったんだけど…
でも民俗学的に考えてゆくと、意外と笑えない気がしてきたんだよね。
今回は
オシラサマ
異種婚姻譚
ケモナー文化
創作
を一本の線で繋いでみようと思うよ✨
🐴 オシラサマは「馬と娘」の神様だった
東北地方にはオシラサマという神様がいる。
地域によって細部は違うけど、有名なのは
「馬娘婚姻譚」
と呼ばれる起源譚。
娘が馬を深く愛する。
怒った父親は馬を殺す。
すると娘は馬とともに天へ昇り、神になった。
ざっくり言うとそんな話。
柳田國男の「遠野物語」の中でも有名な話だね。
現代人の感覚だと、
「いや待って」
ってなる。
あたしもなる。
でも民俗学的には結構重要な話だったりする。
なぜならこれは、
異種婚姻譚という伝承や物語の類型
だから。
🦊 日本人は昔から異種と結婚していた
実は日本の昔話には、異種婚姻譚がめちゃくちゃ多い。
狐女房
蛇女房
鶴女房
魚女房
などなど。
昔話の世界では、人間はしょっちゅう人間以外と結婚している。
なんでそんな話ばかり出てくるんだろう?
ここで大事なのは、昔の人にとって異種は単なる動物じゃなかったこと。
異種とは、異界から来る存在だった。
怖い。
理解できない。
でも同時に、神聖な力を持っている。
だから異種と結婚することは、恋愛というより異界との契約だったんだよね。
✨ 異種と結婚すると神の力を得られる
異種婚姻譚を読むと、その後に不思議な力が現れることが多い。
富を得たり。
子孫が繁栄したり。
神になったり。
つまり異種婚姻譚は、神性獲得の物語でもあるんだ。
人間だけでは届かない場所へ行くために、人は異界の存在と結びつく。
オシラサマも、その流れの中にいる。
🐺 ケモナーは何に惹かれているのか
ここで現代の話。
もちろん全員じゃないよ?
でもケモナー界隈を見ていると、なんとなく共通する雰囲気がある。
それは、人間への違和感。
人間関係に疲れた
人間社会がしんどい
人間よりケモノキャラの方が好き
そんな"語り"を見かけることが結構ある。
要は、先天的にケモナーの人と、人間不信がケモナーに行き着いたひとの2種類いると思うんだよね。
ケモナーが惹かれているのは、単なる動物じゃない。
人間でもない。でも人格を持っている存在。
つまり、「人間ではない人格」なんだよね。
これって昔話で言うところの、喋ったり人と関ったりする狐や蛇や鶴と結構似た立ち位置なんじゃないかな。
🎐 オシラサマは「採り物」だった?
ここでさらに面白い話。
柳田國男の『大白神考』では、オシラサマを採り物との関係から考察している。
赤坂憲雄センセの記述がわかりやすかったから紹介するね。
名称も形態もたいへん多彩なオシラ神をめぐる信仰の共通点として、(1)木の枝に神の顔を刻むか描くこと、(2)毎年定まった祭りの日があること、(3)オシラサマを手に取って神語りをすること、の三点が挙げられた。この三つの共通項を手掛かりとして、オシラサマを日本人の固有信仰の拡がりのなかへ解き放とうとせる試み、それが『大白神考』のひとつの核をなす課題であった。(略)
さて、共通項の(1)(2)をめぐる柳田の思案の道行きこそが、オシラサマ=採り物説を構成することになる。神祭りの日に神前に歌舞すべき者が手に執るもの、それが採り物である。
(略)
すなわち、この採り物を手にすることで聖別が果たされ、それを手にしているあいだは神霊と交通する資格がある者と考えられたのだ。
赤坂憲雄 1994. p200 第四章 北の異族、南の同胞
採り物というのは、
祭祀や神楽で持つ祭具のこと。
榊
御幣
などが有名だね。
採り物を持つことで、人は神霊と交流する資格を得る。
つまり採り物は、異界との接続装置なんだ。
オタクくん、この辺から急に面白くなってきたと思わない?✨
🎨 ケモナーにとっての採り物は創作ではないか
じゃあ現代のケモナーにとって、採り物は何だろう?
あたしは、創作なんじゃないかと思う。
イラスト
小説
着ぐるみ
VRアバター
キャラクターデザイン
二次創作
ケモナー界隈って、本当に創作者が多い。
ただ好きなだけじゃない。
描く。作る。演じる。着る。なる。
そこまでやる人が多い。
しかも承認欲求より「好き」をひたすら追求したい気持ちが上回っているが多い印象。
さらに、インターネットのややアングラなところでひっそりとやっている場合が多い。
ふたばちゃんねるとかね。
「オタク」「アニメ」あたりは現代では現実世界でも市民権を得たけど、
こういう特殊性癖の人たちはまだまだインターネット上でしか交流できず、生きづらそう。
だから、創作を通じて、ケモノという異界の存在と接続している。
オシラサマだって木に顔を刻んだり描いて、オシラサマを手で踊らせる「オシラアソバセ」の行事がある。
創作して、ケモノキャラクターを動かしたりするケモナーに近くない???
どちらも、採り物を持って神と交信する巫者みたいなんだよね。
🦌 ケモノは現代のオシラサマなのか
ここで今回の仮説。
もし、
ケモノ=異界の存在
創作=採り物
だとすると、
ケモナー文化は
現代のオシラサマ信仰
として読めるんじゃないだろうか。
もちろん、ケモナー本人は信仰しているつもりなんてないと思う。
でも民俗学って、本人たちが自覚していない構造を読む学問でもある。
そう考えると、ケモナー文化は単なる趣味や性癖じゃなく、現代版の異種婚姻譚として見ることもできる気がする。
🌙 おわりに
あたしはね、ケモナーは獣人が好き以上に、
ケモノというマレビトを迎えている
んじゃないかなって思う。
昔の人は、狐や蛇や馬に神性を見た。
現代人は、ケモノキャラクターに神性を見る。
対象は変わった。
でも、「人間の外側にある何かと繋がりたい」という願いそのものは、案外変わっていないのかもしれない。
ねえ、オタクくん。
もしそうだとしたら、ケモナー文化ってただのサブカルチャーじゃなくて、人間が何百年も続けてきた異界信仰の最新版なのかもね🦊✨

