そうだ、山に登ろう【上り編】
さぁ、初登山が始まった。
わくわく半分、ドキドキ半分。
前日、山の歩き方について調べた。
上りは、足の裏をべたっとつけて、最後に蹴り出すように歩くといいらしい。
さらに、
「上りはVの字、下りは逆Vの字を意識すると、足の負担が軽減する」
とも書いてあった。
なるほど、スキーみたいな感じか。
内股歩きの末っ娘にも伝える。
自分のことより、娘のほうが心配だった。

山に入ると、すぐに急な階段が続く。
えー、いきなりしんどい。
これ、いつまで続くの?
階段は思ったより高くて急だった。
始まって早々、心が折れそうになる。
私は昔から階段が苦手だ。
脚力にも自信がない。
でも最近は少し違う。
ヨガやピラティスを続けてきて、少しは筋力がついた気がしていた。
だから今回、山に登ることで、その成果を感じられるかなと思っていた。
でも、なかなかそう簡単ではないらしい。
使う筋肉が違うんだな。
下りてくる人たちに「こんにちは」と挨拶しながらも、顔はひきつる。
前を向いて歩こうと思うのに、まだまだ続く階段を見たくなくて、つい足元ばかり見てしまう。
歩き方のイメトレはどこへやら。
やっと階段が終わったと思ったら、また階段。
老若男女、いろいろな人とすれ違う。
後ろから熊鈴の音が近づいてきた。
ソロで来ている年配の男性だった。
「お先にどうぞ」と道をあける。
慣れた足取りで、どんどん進んでいく。
凄いなぁ。
同世代か少し上くらいの女性が、一人で登っている姿も多くて驚いた。
カップル、家族連れ。
そして、山を駆け上がっていく男性たち。
トレランというらしい。
軽装で走っていて、みんなふくらはぎがムキムキだ。
すごーい。
自然を感じるはずなのに、こちらにはそんな余裕がない。
そのうち、末っ娘が言う。
「私も……だめ……」
え〜、頑張って!
娘は吹奏楽部。
運動はあまり得意ではない。
自分より、娘のほうが心配になる。
きっと、もう山は嫌だと思っているだろうな。
そして、ようやく休憩場所に到着。
みんな、水分をとったり、おやつを食べたりしながら束の間の休憩をしている。
娘に大好きなグミを渡す。
でも、気分は上がらないようで、テンションは低めだった。
休憩を終え、再び歩き始める。
すると、不思議と少し歩きやすくなった。
急な階段はあっても短く、なだらかな道も増えてきた。
どうやら、一番最初が最大の難関だったらしい。
私も娘も、少し余裕が出てきた。
「この木の根っこ、凄いね」
「うぐいす鳴いてるね」
そんな話をしながら歩く。
低めの段差を選びながら、ぬかるみに気をつけながら、一歩ずつ進んでいく。
途中、仙人のような杖を持ち、その山の名前が入ったTシャツを着た70代くらいの男性に出会った。
「カモシカがいるから見てごらん」
そう教えてくれる。
私たちのテンションは一気に上がった。
そこには、住み着いているというニホンカモシカ。
ちゃんと名前まであるらしい。

何人もの人がカメラを向けていたけれど、慣れているのか、しっかりカメラ目線だった。
すごーい。
こんな出会いがあるのも、山の楽しさなんだなと思う。
パワーをチャージ。
よし、あと半分頑張ろう。
そこからは、案外登りやすかった。
娘も、ようやく少し楽しめるようになってきたみたいだ。
「こんにちは〜」の挨拶も、自然と笑顔になる。
そして、展望台へ到着。
高い山ではない。
でも、ここまで来た。
風の気持ちよさと景色に、自然を感じた瞬間だった。
さらに、「頂上まで10分」の表示を見つける。
「あと少しだね」
「頑張ろう」
二人の気分も一気に上がる。
そして気づけば、もう頂上だった。
「わーい! やったね!」
辛かったことも、この景色を見た瞬間に吹き飛んだ。
これだから、みんな山に登るんだな。
頂上で食べたサンドイッチとおにぎりは、驚くほど美味しかった。
ゴールデンウィークということもあり、山頂にはたくさんの人がいた。
みんな、とても清々しい表情をしていた。
山の空気と景色に、気持ちまで洗われた気がした。
大変だったけれど、
「やればできるんだな」
そんな小さな自信にもなった。
50代になってからの新しいチャレンジ。
ちょっと楽しくなってきた。
いつもお読みいただきありがとうございます😊
まだまだ後編に続きます。
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