【せりふ三題噺】 TOKYO GIRLには寒いから
「大都会東京から北海道まではるばる転校してきました、ひがし きょうこです。
でも――
TOKYO GIRLって呼んでください!」
教室が一瞬、止まる。
手が挙がる。
「なんでヘルメット被ってるのー?」
きょうこは少し胸を張る。
「それはね――」
──30分前。
「お父さん大変!玄関にこんな大きいつららが!!!」
母の声がひっくり返る。
父が飛んでくる。
「ほんとうか!!きょうこが初登校中につららに貫かれて死んでしまう!!」
「まあどうしましょう!!防災用のヘルメットでも被らせましょうか!!!」
「恐るべし北海道!!」
──回想おわり。
「ってことがあったの。」
教室。
「へんなの」
その一言が、少しだけ背中を冷たくする。
『へんなの』『へんなこ』『合わない』『きもちわるい』
頭の奥で、昔の声が重なる。
きょうこ、びくっとする。
けれど次の瞬間。
クラスメイトが笑い出す。
「面白い子じゃん!」
「楽しい子〜!」
きょうこは目を丸くする。
「私がみんなに質問していいかしら」
「いーよー」
「登校手段ってやっぱり田舎は自転車なの?」
「そうだよ!冬はちがうけど」
きょうこ、がーん。
「と、東京ではね!交通機関が発達してて自転車なんて乗らないのよ!!!」
「自転車乗れないの?」
「乗れないじゃなくて!TOKYO GIRLは乗らないのよ!」
少しの沈黙。
「三輪車でくれば?」
きょうこ、固まる。
(真顔でディスられた)
「青木くんとかおじいちゃんの三輪車できてるよ」
雪国ではディスじゃなかった。
⸻
きんこーんかんこーん。
給食の時間、エビフライ。
きょうこは一口かじって、止まる。
「なにこのエビフライ、、こんな甘いエビフライ食べたことない」
「そんなに??じゃあ私のもあげるー!」
「おれも!」
皿にエビが増えていく。
視界がにじむ。
「泣くほど美味しいの?わたしのもあげるー!」
先生が笑う。
「寒いからだよ、寒いとエビ甘くなるの」
きょうこの頭の中。
寒い=エビ甘い
寒い=クラスメイト甘やかしてくれる
「寒いからか、、、」
⸻
帰りの会
「さようなら!」
椅子の音がいっせいに鳴る。
きょうこが立ち上がろうとしたとき、袖を引かれる。
「はい、忘れ物」
手の中に、もふっとした感触。
「TOKYO GIRLは忘れ物なんてしないのよ、ってなにこれ、手袋じゃない!しかも片方ずつちがう!私もうもってるわ!!」
「みんな2個持ってる、行きで濡れちゃうから」
「でもこれ私のじゃないわ」
クラスメイトが小さく首を振る。
「しー!!」
その瞬間。
「なにしてるのープレゼントは禁止だよー、トラブルのもとになるからねー」
教室が少しだけピリッとする。
一拍。
クラスメイト、声を張る。
「忘れ物だよね!とーきょーがーる!!」
別の子が耳元でこそっと言う。
「山田くんと西方さんの無くしちゃった手袋の即興だから、可愛くなくてごめんね!」
きょうこの胸が、じんわり熱くなる。
ぎゅっと手袋を握る。
「わっわすれものだわ!!!」
先生、にやっと笑う。
「わすれものならしかたないかー」
⸻
帰り道。
手袋は、左右ちがう柄。
でも、あったかい。
きょうこはぎゅっと握る。
⸻
帰宅。
「初めての学校どうだった?馴染めそう?怖い子いなかった??」
母が聞く。
「まだわかんない」
「みんな優しかった?」
きょうこは少し考える。
手袋を、ぎゅっとする。
「寒いから、優しかった」
母はちょっと、はてな顔。
いつもくらーいのしか描けないから
ほんわか日常系かきたかった
たのしかった!!
